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第五章 エンドの街にて

六話 新しきことに

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そんな二人の結婚のお披露目は、山茶花のメンバーからはやっぱりかと。そしてゴルドの屋敷の住人からは全くの寝耳に水と驚かれ、とにかく二人は盛大な祝福受ける。


「みんな、ほんとうに有り難う。」


「「「ワアー」」」『パチパチパチパチ』


大食堂に踏み台で簡単にこしらえられたら雛壇で二人は、喝采の止まない中深く深く頭を下げた。


「私、この年になって初めての妻を娶ります。しかもこんなにも可愛いく優しい、素晴らしい嫁であります」


『パチパチパチパチ』


「ここにいる皆さんは、私の個人的な特殊な事情を知っている方ばかりです。私は、少し変わったチートな力を授かりました」


真剣なおっさんの表情と言葉。会場の喝采は徐々に治まり二人への注目が高まり始めた。


「現在、私は恥ずかしながら無職で、初めての冒険者で、たぶん魔物を殺すことは私に出来そうにありません‥」


「大丈夫♪私たちがいる。魔物を倒すことだけが冒険者じゃない。ヨッシーは‥、お前のその与えられた力は、十分に冒険者としてやっていける」


山茶花のリーダーであるアトリが励ますように声を掛ける。


「有り難うございます。そこで、私は何が出来る考えました。そして思いました。右も左もわからない異世界人の私に優しくしてくださったこの街の人達に恩返しをしていきたい。出来るかどうか‥、いやたぶんですが私の力ならそれが出来る」


しずかになった全ての者が真剣なおっさんの続く言葉を待つ。


「私は、人に役立つ物を作りたい。今日、魔道具屋を覗いていて、それが出来るのではないかと感じました。まだ、始めた訳でもありません。しかし、この世界の嫁をいただいた以上、私の出来るこの世界への貢献をしていきたい。皆さん、未熟者の私ですが御指導賜りたくお願い申し上げます」


最後におっさんは深々と頭を下げる。もちろん、隣のリルアもそれに併せ少し遅れて頭を下げた。


『……パチパチ、‥パチパチパチパチパチパチ』

少しな間合いの後盛大な拍手が二人を包む。



魔道具制作。それは一般に広がることのない特別な職業。
魔道具制作、この世界では、国により優秀な錬金術師を囲い込み、一部の普及品以外、独占する魔道具制作レシピによってのみ作られる。

錬金術というスキルの発生さえ稀なうえ、その能力の開花に至っては一筋縄ではいかないという。そんな無謀かと思われるような魔道具制作におっさんはチャレンジするという。

この世界の常識を知る普通の者なら馬鹿な奴と笑い呆れるだろう。しかし、ここにいる者達だけは違う。


『やっぱり、おっさんだからなぁ』


これまでのおっさんの奇跡をそばで見た者は、蔑みの笑いなどではなく、期待の拍手を持って受け入れたのである。


「では、裏庭に工房でも建てねばならんな♪」


「そうだな、極力内密に…、ああ、面倒だが王家にも知らせないとな」


アトリとゴルドの二人だけのトップ会談は、この世界の常識を知らない主役を外して話し続けられていく。

持つべきものは、やっぱり友ということである。


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