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第五章 エンドの街にて
一話 クランハウス
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『チュンチュン、チュンチュン、チュンチュンチュン』
魔素の濃い辺境地域にあるエンドの街は、近くの森からの訪問者のさえずりから朝が始まる。
「おっちゃん♪おっちゃん、起きてる?」
その楽しげな声の主は、元気いっぱい駆け込んできたネコ耳をつけた美女であった。
冒険者デビューを無事に済ましたおっさんは、拠点を決めるべく親友の毛むじゃに相談をする。
冒険者御用達安宿や金持ち相手の高級宿。借家に買い取り、候補を上げれば両手の指でも足りはしない。
相談を受けたゴルドの答えは、意外でありながらも納得の出来る解決策。
ゴルドが現役冒険者の頃ホームとしていた建物が現在、息子のパーティー4人のホームとして利用されている。
クランハウスとしての機能を備えたその建物は、部屋数なして20室を越える大きな多機能な建物である。
そんな有用な建物を利用しないなんて手は考えつかない。
息子のジンからも快く了解を取り付けた結果、おっさんの本拠が確定したのである。
最果ての街エンドには、クランハウスの密集したエリアが存在する。
ギルド会館に近く、その上、街の出入口でもある城門へのアクセスも良いそんな場所である。
そんな便利な地域の一角にあるゴルドの屋敷の隣には、このエンドでも有数なクラン山茶花の本拠の屋敷が存在していた。
「リルアさん、早いですねぇ♪」
「おはようニャ♪アイリス、おっちゃん、起きてるニャ?」
美女に美少女、朝からとても絵になる風景である。
「ヨッシーさんは、今日クエストはお休みして、街中を見て回って生活用品なんかを購入して歩くそうです」
「ナイス情報ニャ♪ありがとニャ♪情報を制する者ニャは、おっちゃんを制するのニャ♪♪」
くるりと踵を返したリルアは、越えてきた垣根に向かって走り始める。
流石は山猫族というべきか、音もなく2mの高さの垣根を軽く跳び越え隣の屋敷へと姿を消した。
「いったい、何だったですかねぇ?」
いつもの詠唱訓練を始めたアイリスに山猫美女の気持ちはわからない。
両親のいない孤児院で育った17才のアイリスに、異性への興味は未だ発現していない。
僅かばかりに、命の恩人のおっさんの笑顔が心に忍び込んだ以外には…
「うーん、よく寝ました♪久しぶりのベッドのせいか、何だか腰に違和感が…」
この日のおっさんの朝はのんびりしていた。
昨日の大活躍から寝坊を宣言。朝食抜きの無職時代の生活を再現していた。
ゴルドのクランハウスだった屋敷には、一度に20人は食事をとれる大食堂が存在している。
のんびり寝坊を堪能したおっさんは、そんな食堂を通り抜け、炊事場に併設されたテーブルを前に腰を降ろした。
「ゴルちゃん、おはよう♪」
「ああ、おはよう♪あんまり寝てると背中に根が生えてくるぞ♪」
ニコリとおっさんに笑みを向けると、手元のカップに入ったコーヒーを一気に飲み干した。
魔素の濃い辺境地域にあるエンドの街は、近くの森からの訪問者のさえずりから朝が始まる。
「おっちゃん♪おっちゃん、起きてる?」
その楽しげな声の主は、元気いっぱい駆け込んできたネコ耳をつけた美女であった。
冒険者デビューを無事に済ましたおっさんは、拠点を決めるべく親友の毛むじゃに相談をする。
冒険者御用達安宿や金持ち相手の高級宿。借家に買い取り、候補を上げれば両手の指でも足りはしない。
相談を受けたゴルドの答えは、意外でありながらも納得の出来る解決策。
ゴルドが現役冒険者の頃ホームとしていた建物が現在、息子のパーティー4人のホームとして利用されている。
クランハウスとしての機能を備えたその建物は、部屋数なして20室を越える大きな多機能な建物である。
そんな有用な建物を利用しないなんて手は考えつかない。
息子のジンからも快く了解を取り付けた結果、おっさんの本拠が確定したのである。
最果ての街エンドには、クランハウスの密集したエリアが存在する。
ギルド会館に近く、その上、街の出入口でもある城門へのアクセスも良いそんな場所である。
そんな便利な地域の一角にあるゴルドの屋敷の隣には、このエンドでも有数なクラン山茶花の本拠の屋敷が存在していた。
「リルアさん、早いですねぇ♪」
「おはようニャ♪アイリス、おっちゃん、起きてるニャ?」
美女に美少女、朝からとても絵になる風景である。
「ヨッシーさんは、今日クエストはお休みして、街中を見て回って生活用品なんかを購入して歩くそうです」
「ナイス情報ニャ♪ありがとニャ♪情報を制する者ニャは、おっちゃんを制するのニャ♪♪」
くるりと踵を返したリルアは、越えてきた垣根に向かって走り始める。
流石は山猫族というべきか、音もなく2mの高さの垣根を軽く跳び越え隣の屋敷へと姿を消した。
「いったい、何だったですかねぇ?」
いつもの詠唱訓練を始めたアイリスに山猫美女の気持ちはわからない。
両親のいない孤児院で育った17才のアイリスに、異性への興味は未だ発現していない。
僅かばかりに、命の恩人のおっさんの笑顔が心に忍び込んだ以外には…
「うーん、よく寝ました♪久しぶりのベッドのせいか、何だか腰に違和感が…」
この日のおっさんの朝はのんびりしていた。
昨日の大活躍から寝坊を宣言。朝食抜きの無職時代の生活を再現していた。
ゴルドのクランハウスだった屋敷には、一度に20人は食事をとれる大食堂が存在している。
のんびり寝坊を堪能したおっさんは、そんな食堂を通り抜け、炊事場に併設されたテーブルを前に腰を降ろした。
「ゴルちゃん、おはよう♪」
「ああ、おはよう♪あんまり寝てると背中に根が生えてくるぞ♪」
ニコリとおっさんに笑みを向けると、手元のカップに入ったコーヒーを一気に飲み干した。
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