上 下
27 / 61
第四章 異世界生活

九話 おっさんとおっさん

しおりを挟む
「なんだ、この***文字化けは…」


「そうね、ステータスの数値に関しては、人並み。魔力が0以外、それほど気になる所はないわね…」


「えっ、魔力0?‥0で、どうして魔法が発動するの?」


義弘を除く三人は、ひとつひとつの項目を見落としがないようにと、入念に確認をしていく。


「だから、そこが意味不明。文字化けは、たぶんまだ発動の芽が現れていないってことじゃないかな?」


「う~ん、どちらにしても判らないことだらけねぇ…」


どうにも、おっさんのステータス、一見だけでは意味不明、人外指定だけは免れたようであり一安心である。

この世界の数学は、かなり進歩が遅いようで、無限大∞の概念は存在しないようである。


「あの、それでミリアさん、わたくしのギルド登録の方は、もう大丈夫なんでしょうか?」


「あっ、ごめんね。犯罪履歴も無かったみたいでオールO.K.今から直ぐにでもクエスト受けられるわよ♪」


ステータス鑑定結果をチェックされても大きなトラブルにならなかったことにほっとする義弘である。


「おう、ヨッシ♪クエスト受けるのか?」


「ああ、俺も冒険者となった以上はクエスト受けて、上位のレベルを目指す」


そこに巨人の星は見えないが、おっさん嬉々として右手を斜めに差し出し指さした。


「そうか♪では、これからのヨッシのサポートは、俺がしよう♪」


毛むくらじゃのおっさん、とても嬉しそうである。
それまでカウンター一人で、鬱々としていたのがまるで嘘のよう。


「ゴルちゃん♪本当かい?ゴルちゃんが一緒なら鬼に金棒だよ」


「鬼に金棒?‥なんか判らんが、俺に任せとけ!」


異世界アラフォー無職のおっさん義弘と毛むくらじゃおっさん、お節介ゴルドの最強タッグが生まれた世紀の瞬間である。


この二人、数年後には、世界で知らない人はいないと言われる程の冒険者となるのはまた別のお話し。
沢山の冒険を繰り返し名声を高める『おっさんず』本人達の納得を無視して、こんな名前だけが先走っていく。


「…ゴルド♪では、引退は、もういいの?」


その言葉は、世話役としておっさんに着いて来たリリーからのものである。
そんなゴルドを心配するリリーの言葉は、ドタバタとギルド食堂を賑わせ続け周囲の注目の的となっていたゴルドたちへの感心が重なりあって、ここにいる冒険者全ての気持ちの代弁にもなっていたのであった。


「ああ、それな…」


鼻筋を照れ臭げにゆっくり擦りながらゴルドは続ける。


「…膝、治ったみたいだから、止めるは♪」


「つまり、引退は撤回!?」


「ああ…」


「「「「「「ワアアァー」」」」」」」


一人の叫びは次々と伝染していき、最後はギルド会館内全てに響き渡った。


『ゴルちゃん慕われてるなぁ』

それは嬉しさと少し妬みの隠った義弘の心の声である。

人見知りもあってこれまで尊敬や親しみとは無縁だった義弘。親友となったそんなゴルドの様子は、羨ましくも妬ましくもあった。


「じゃあ、膝が治ったってことは、やっぱりさっきのヨッシーの魔法が?」


「ああ、あの輝きの瞬間、俺の膝が暖かくなった。あの感覚、間違いなく治癒魔法」


「なるほど、では、ヨッシーさんのレベルも見直しした方がいいのかもしれませんね‥」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~

笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。 鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。 自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。 傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。 炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

追放歌姫の異世界漫遊譚

あげは
ファンタジー
「お前、クビな」 突然Aランクパーティー『銀の戦剣』を追放された少女リリナ。 リリナは『歌姫』というユニークジョブの持ち主だった。 歌うことで、守り・攻撃・回復すべてを担うことができる万能職である。 そんな彼女は、幼いころにいなくなった母を探すという目的を立て、旅に出ることを決意し、 道中出会った魔物や幻獣、精霊を仲間に加え、気の向くままに世界を回る。 一人の少女とモフモフたちによる漫遊譚が、幕を開ける。 一方で、リリナを追放した『銀の戦剣』は、リリナの知らぬ間に落ちぶれていくのであった……。 *なろう、カクヨムにも投稿

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...