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七話 敵は桶狭間にあり

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竹中家伝来、家宝の刀が、重治の思いに応えた。
再び、あの輝きが目の前に、よみがえってきたのである。


淡い光りから始まり強い白色光に、どんどんと輝きを増していく。

重治は、慌てて過去から戻って来た時に着ていた着物を収納より取り出し、小脇に抱えた。


『これで準備O.K.いつでもいらっしゃーいだ』


こんな軽い調子の言葉とは裏腹に、これから再び始まる過去での冒険の事を考えながら重治は、信長の元へと旅立っていくのであった。






「わしは、打って出て、今川の貴族かぶれどもに、一泡ふかせてやるべきかと…」


「なにを言う柴田殿。相手は二万五千人を超える兵を要するという、とても相手になり申さぬ。ここは、籠城すべきかと…」


「林殿。ここは、打って出て、見事に死に花を咲かせましょうぞ」


「いやいや、ここは、籠城しかありませぬ!」


「いやいや、打って出ることこそ最良てあると…」


「いや、籠城だ」


「いやいや、出陣すべきと」


家臣たちは口々に思いをぶつけ合うも、結論がでることはない。


「お館様、ご決断を」


「……」


「お館様」


清洲の城では、今川義元の上洛に対する戦略を決めるため、連日に渡り、繰り返し繰り返し、評定が催されていた。





その場所には、重治は見覚えがなかった。

脱出不可能な迷路に入り込んだ織田家評定の繰り返されていた頃、包まれた光から解放された重治の見た光景は、これまで見たことのない、初めて来る街並みであった。


重治の前に広がるその街は、大きな街並みでありながら、この時、異様な緊迫感が溢れ出ていて、ピリピリとした空気が流れていた。


目立たない路地裏に入り込み、小脇に抱えて持ってきた着物に着替えを終えた重治は、この街がどこの街であるかを調べる事に決めた。


重治は、目の前を通りすぎようとした行商人らしき人物に声をかけた。


「あのぉ、すみません…」

「…」


商人らしき出で立ちの男は、胡散臭げな表情のまま無言で重治を見返した。


「おのぉ、この街はなぜ…」


この街と、今のこのざわつきながらも緊迫した一種異様な空気の理由を尋ねてみた。


「…お前、そんなことも知らないのか」


行商人は、僅かの時間も惜しむかの様子でありながらも重治には、さすがは商売人という腰の低い物言いで丁寧にこの街の置かれた現状を告げた。

商人の言葉から、戻りついたこの場所が、織田家の統治する清洲の街であったことを知る。

清洲の街は、重治の知っていた以前の街並みの面影は全くなく、見事なくらいの繁栄ぶりをしめしていたのである。


「清洲か、助かった」


不安を感じていた重治であったが、今いる街が清洲であったことを知り、ほっと安堵を感じた。

しかし、そのことよりも問題だったのは、もう一つの知り得た情報、今川義元が駿府城を出て、上洛に向かっている最中だということである。


状況を知った重治には、少しでも早く清洲城に入り、信長に合う事が何よりも重要な今の自分の役割であると考えた。



「帰れ、帰れ、帰れ。お前のように怪しい者を城内に入れる訳にはいかん」


「頼む。入れてもらうことが叶わぬのなら、池田恒興殿か木ノ下藤吉郎殿、前田利家殿、誰でもいい。何とか、つなぎをとってくれ、頼む」


街から城門まで全速力で到達した重治であったが、入城を拒まれ思惑通りとはいかない。堅く閉ざされた清洲城の追手門、入城を拒み続ける門番に重治は、何度も頼みこんだ。


「だめだ、だめだ。戦の迫ったこの城に得体の知れないお前みたいなものを城に入れてみよ、俺の頭が胴から離されてしまうわ。」


清洲城を前にして重治は、門番からの許可を貰えず、中に入ることがどうしても出来ないでいた。


「どうしたどうした?いったい何を騒いどる?」


「これは、木ノ下様」


「うん??そ、そのほうは、もしかして……」


清洲の城の門番と、もめていた重治に救いの神があらわれる。揉めていた門番とのやり取りを見て後ろから現声をかけたのは、木ノ下藤吉郎であった。

重治は、藤吉郎の顔をみて、即座に深々と頭をさげてみせた。


重治の見つめたその顔は、重治の以前に知るものよりも、いくぶんかは老け、髪も薄くなっているようではあるが、まぎれもなく、猿顔の木ノ下藤吉郎のものであった。


「藤吉郎殿、ご無沙汰しておりました」


「や、やはり、そちは、重治殿…」


「城下へは、やはり、お母上の所へ」

「ははは、さすが、何もかも、お見通しで御座いますなぁ…」


この時代、藤吉郎の母は清洲の街に住んでおり、起こりうるであろう今川との戦禍より避難させるため、藤吉郎は、城下の街に出かけていたのである。
その事が重治に幸運をもたらしてくれた。
いや、これもまた、歴史の時間の流れが、重治に味方したに過ぎないのかもしれない。


「さあ、城の中へ。お館様もお喜びになられるでしょう」


そうして、重治は藤吉郎に導かれ城の中へ入っていったのである。

そのあとの重治は、藤吉郎が信長との繋ぎをつけてくる間、藤吉郎の家で待つ事になる。


今、城の中では、重臣たちによる織田家の生き残りをかけた、今川に対する作戦会議が催されていた。

そんな緊迫した状況の中での下級家臣の藤吉郎の信長への目通りは、簡単なことではなかったのである。

このときの藤吉郎の身分はまだまだ低く、行われている軍事評定に、お呼びのかかることは無かったのである。


まず、藤吉郎は、信長に会うための最短距離をとるため、前田利家とつなぎをとっていた。

利家は、重臣ではなかったが、信長の信頼は厚く藤吉郎と比べると格段の差があったのである。


焦る気持ちのなか、イライラと時を過ごす。

その間の重治は、家を出たり入ったりと全く落ち着きがない。動物園の白熊の行動となんのかわりもない。


今、こうしているときも今川勢は尾張に近づき、そのために、一つまた一つと砦が落とされ、人が死に続けているのだ。

その事を考える時、重治は、自分の無力を感じずにはいられず、とてもじっとしている事など出来なくなってしまうのである。


藤吉郎が出かけて、かなりの時間が過ぎていた。


藤吉郎の家の前を、出ては入り、出ては入り、白熊になっていた重治の目に、長屋作りの家屋の間の路地の向こうから、走ってくる、重治待望の藤吉郎の姿が飛び込んできた。

その姿は藤吉郎、一人だけでなく、その後ろに続く三人が、藤吉郎の後ろに見え隠れしながら、こちらに向かい走ってきているのが確認できた。


「はぁはぁはぁ、し、重治なのか?」


どれだけ必死で走って来たのであろうか、息も絶え絶えに重治に語りかける。


「はぁはぁはぁ、えっ……な、なんとまぁ…」


「はぁはぁ…お、おまえ、年を取らぬのか?」


「どうです!?私の言った通りでしょ」


四人は、各々が口々に叫ぶような大声で重治に話しかける。そして、重治のことを不思議な物でも見るように、じろじろとなめるように眺めみたのである。


重治は、改めて、目前の四人に深々と頭を下げた。


みんなに再び会えた喜びで、瞳からは次から次に涙がこみ上げてくる。

重治が顔を上げたときには、目からの洪水のように止めどない涙が流れ出していた。


「恒興殿、長秀殿、利家殿。みなさん、ご無沙汰しておりました」


重治は涙で言葉を詰まらせながらも何とか、再び出会えた喜びを言葉にしていた。

池田恒興は、重治の最後の言葉が終わる前、重治に近づき、力いっぱい抱きしめた。

重治を抱きしめる恒興の腕は、戦国の時を生き抜いてきた、荒々しく、たくましい一人の猛者のものとなっていた。


「重治。よくぞ、戻った」


そう言いながら、抱きしめる力は、緩まるどころか、どんどん強まっていく。


「おぅ、こんな所じゃ、なんだ。わしの家に行こう。なっ……」


「丹羽様、こんな所とは、あまりに非道ございまする」


「ははは、いや、すまぬ、すまぬ」


「ははははは」


「言葉のあやじゃて。‥‥でもないが、まあ、許せ。はははは」


重治の消えていた数年の月日は、目の前の四人の容姿を変えていた。
しかし、そんな月日を重治に全く感じさせない四人の歓迎に、重治は、ますます、感極まっていった。


「しかし……、何というか、誠にお前は神の使いとしか言いようがないのぉ。‥‥全く、年を取っておらぬではないか」

「誠に、不思議な奴じゃのぉ」


「今この時、重治が現れた。これぞ天の配剤。そうとなれば時が、おしい。重治。お前は長秀の所で待て。わしが、お館様につなぎを付けて、すぐにでも目通り出来るよう、手筈を整えてくる」


重治との対面を終え、重治の話しを聞いた恒興は、そう、言うとすぐに来た道を急ぎ戻っていったのである。


残された面々は、恒興の指示通り、長秀の家へと向かう事にしたのであった。


「かなり、慌ただしくなってきましたね」


「そのようだな……」


「重治。なぜ、お主は、そんなに落ち着いておられるのじゃ。すでに義元は、三河の国境近くにまで来ているらしい」


「……」


「なのに、お館様は、未だ出撃か籠城かさえ、決めかねておられる……」


信長の家臣である三人は、先程の和やかな顔とは打って変わり、悲壮感さえ、漂わせている。



織田家VS今川家

この時の戦力は、織田方 二千、それに対する、今川方 二万五千と記されており、誰が考えても織田方に勝ち目など、あろうはずがないと思われていた。



重治は、長秀が言うように、まるっきり平気でいたわけではない。


『自分の伝える言葉で、織田家の命運が決まる』


重治には、そのことが予感めいたものに感じてならなかった。


以前、重治が過去に関わりを持った時、歴史は変わらなかった。また、今回もそうである事を重治は、祈っている。

重治が歴史への関わりをもし拒絶した時、歴史が変わる。そう重治は考えるようになっていた。


今、重治がこの戦国の世にいるということが、歴史の自然の流れであって、重治が歴史に関わりを持つ事事態が重治自身の宿令であると感じるようになっていたのである。


丹羽長秀の家に着いた重治たちは、城に向かった池田恒興の帰りを待つ事になった。


「さすがに、こんな所と、言われるはず……」


長秀の家は、家と言うよりも、屋敷と言った方が遥かに正しい。


重治は、呟いたあと、にっこりと藤吉郎に笑いかけた。

自分を含めて、先ほどから漂う悲壮感、そして、みんなの緊張をほぐしたかったのである。


「重治殿、それは、あんまりでございます」


さすが将来は太閤にまで上り詰める藤吉郎である、重治の気持ちをすぐに察したのか、大げさな物言いをし場を和ませようとした。


「はっはははは」


この時の一連の出来事が、藤吉郎の隠れた反骨精心に火をつけ、執拗なほどの出世に興味を抱かせ、出世街道をばく進する、きっかけに、なったのかどうかは定かではない。



笑みを取り戻して、しばらくすると、恒興のつなぎとは別件として、城からの使いの者が丹羽邸にやってきたのである。


今川軍に動きがあり、丹羽長秀に今すぐに軍事評定に出仕せよとの知らせであった。


重治は、長秀、利家らと相談すると、長秀の共として登城をする事に決めた。

ここに来て、織田家に許された時間がほとんどないことに気づかされてしまったからである。


三人は、無言、早足で、登城。評定場に向かっていた。


評定場には、すでに、いつにも増しての多くの家臣たちが集まっていて、三人の到着が最後となったようであった。

その中には、信長につなぎをとるために、先に登城していた池田恒興もすでに着座をおえていた。

この時点での様子から、信長への取次は、まだ成功していないようである。

最後に到着した三人は、一番末席に席をつくこととなっていた。


「お館様のおなりです」


信長お付きの小姓の声と共に織田家当主、信長が現れた。
信長は最も奥、皆の正面の上座あたる席にについた。


「物見より、新たな情報が入りました」


着座した信長に、すぐに最新の報告が届けられる。


「報告いたします。沓掛城に入城していた今川義元は、松平元康、朝比奈泰朝の両名に先陣をきらせ、丸根、鷲津砦に迫っております。両砦のおちてしまうのに、さほどかからぬものかと」


信長は、とても不機嫌そうにその報告を聞いていた。
その時、それまで、信長のぼんやりと焦点の定まらなかった視線が、ある一点で突然に止まった。


信長は、少し小首を傾け、なにやら暫く考えたかと思うと、いきなりに立ち上がり、重治に向かって早足で近づいていった。
その間中、一点に固定された信長の視線がはずれることは一度もなかった。


そして重治の前まで来た信長は、立ち止まり、静かに座る重治を抱きしめた。


「よく……、よくぞ、もどった……」


その後の信長は、何一つ言わなかった。

重治を抱擁から解き放した後、誰にもなにも話すことなく、ただ沈黙を保ったまま、評定場から出て行ってしまったのである。

突然の信長の不可解な行動に、場内はざわめきたった。


評定場に残された家臣たちの呆然とするなか、信長に対する不信が強まっていく。
信長を批判するものや、支持するものたち全ての者の間に不穏な空気がただよいだしたのだ。


重治は突然立ち上がり、評定場をでていった、信長の後を追った。





重治の耳に鼓の音が聞こえてくる。

ポーン ポーン ポーン

 人間五十年

 下天のうちをくらぶれば

 夢まぼろしの如くなり

 ひとたび生をうけて

 滅せぬもののあるべきか



そこには、幸若、敦盛を舞う信長の姿があった。

その舞は、死を覚悟した信長の決意が現れ、見るものすへてを圧倒してしまうものであった。


その様子を部屋のすみから見ていた重治は、信長の幸若の舞の終わりの余韻を待ったなか、これからの戦いにおいて、最も重要な事を告げようとしていた。



「重治、すまぬな……」

「……」

「はは、このような時では、ゆっくり話しもできぬ」

「……」

「すまぬな、不甲斐ない当主で……」


信長は、重治にひたすら詫びた。


「……明日、……昼時、天があれまする」


重治は、ゆっくりと、それでいて大きく、自信あふれる声で信長に告げた。


「まことのことか」


それまで重治に向けられた信長の優しい視線が突然鋭くキラリと光った。

考え込む、信長の顔つき表情が変わって行く。

重治の語られた、たった一言から様々な事を導き出していく。


それまで悲壮感さえ漂わせていた表情が、今は期待に胸膨らます子供のような表情に変わっていっていた。

考えがまとまったのか、信長は、重治を見つめニヤリと笑った。



信長は、転がる鼓を拾い上げ、打ちたたく。


ポーン ポーン ポーン ポン ポン ポンポン

力強い音とともに、再び信長は、舞を舞い始めた。



 人間五十年

 下天のうちをくらぶれば

 夢まぼろしの如くなり

 ひとたび生をうけて

 滅せぬもののあるべきか



先のものとは、まるで違う、力強く生命感があふれでる舞であった。


「では、まいるか」


信長は、再び、ニヤリと笑った。
その笑いは、重治に向けられた感謝に間違いなかった。


「はい」


部屋を出て行く信長に続く重治。行き先は、勿論先ほどの評定場である。


信長のあとに続く重治は、ざわめきたつ評定場に信長と共に入った。
そして、部屋の奥の上座へと信長に導かれるまま腰を据えた。

信長が再び着座したにも関わらず、ざわめきの収まる事はなく、むしろ大きくなったようにさえ感じられた。


「お館様、ここにいたっては、籠城するより手はありませぬ。どうか、そう下知を下されますように」


織田家重臣、林秀貞の言葉に場内のざわめきは収まっていった。

信長のいない間に家臣たちがまとめた意見だったのである。



信長は、静まった場内で突然に立ち上がった。

再び、ざわめき出す場内にいる重臣たちに睨みを効かしたあと、信長は力強く言いはなった。


「皆の者、出撃じゃ!」


信長のこの一声で、場内ざわめきはおさまり、静まり返った。

先ほどまでの投げやりな態度とは、打って変わった、力強く自信にあふれた信長の姿に、家臣たちの緊張が一気に高まったのだった。


「われに、ご神託がおりた」

「…………」

「今川義元めに、天罰がくだる」

「うぉおーおー」


信長のカリスマが発揮された瞬間であった。

それまで、バラバラになっていた家臣の気持ちをたった一言で、一つにまとめ上げる。


「明朝、日の出と共に、出撃いたす。以上じゃ」

「はっー」


評定場にいた全ての者は、一斉に立ち上がり、我先にと部屋を出て行く。
日の出の時間までは、あとわずかばかりであった。



西暦1560年 永禄三年五月十九日未明 日の出とともに、信長は清洲の城を出発し熱田神社へと向かった。


信長は、自らが先頭を切り、つき従う武将は、わずか数人であった。

もちろん、その中には、若かりし信長が友と言った、丹羽長秀、前田利家そして池田恒興が含まれていたのは、言うまでも無いことである。
そして、肝心要のあと一人、重治といえば、相も変わらず、一人で馬に乗ることはできず、恒興の馬に同乗させてもらっていた。


信長は、熱田神社にて、出撃準備に手間取り遅れた、後続の武将を待ち、戦力が整うのを待った。

そうして全ての家臣が集まったあと、熱田神宮にて、先勝祈願をおこなった。


この時点での織田方の戦力は二千人、対する今川方は、二万五千人を超える軍勢であった。

圧倒的、絶対優位に立つ今川勢は、織田方の砦をいとも簡単に、次々落としていっていた。


信長が必勝祈願していたその時、義元は、沓掛城に入城し滞在している。

そんな義元本隊もその日の昼前には、沓掛城を出立し、尾張へ向かい進撃を再開した。



「今、われわれに、神の御加護がついた。間もなく天は荒れ、今川に天罰が下る」

「敵は田楽桶狭間じゃ。皆の者、我に続け。義元めに思い知らせてやるのじゃ」

「うぉおーおー!」


「重治、お前はここで勝利を祈っておれ。心配いたすな」


そう、重治に告げると信長は、出陣していったのである。


重治の言葉の全てを信じていても、圧倒的兵力の差と、馬にも乗れない重治の身の安全を思へば、信長は重治をその場に残す事を最良としたのである。



進撃を続けていた義元は、突然の豪雨に休息をとらざるを得なかった。

その場所は、田楽狭間と呼ばれ、山あいの狭い盆地に本陣をしいて雨宿りとしていた。



義元を突然に襲った、豪雨や落雷に、義元は休息を余儀なくされていた。

そんな義元を襲った、その天候の急激な変化は、信長方二千人の存在をかき消していた。


田楽桶狭間というその場所は、極めて狭い盆地であり、その場所に留まれる兵力は、わずか五千人余りである。

今川勢二万五千の兵力は、細長く山間部に分散した形をとらざるを得なかったのであった。
奇襲を仕掛けた信長勢には、兵力差を埋めて、余りある状態であったのだ。


「義元の首をとったぞぉ」


その戦いは、わずかな時間で、日の暮れる頃には、決着がついていた。

信長は、重治の指示通り、敵大将の首をとった優位な立場に立ちながらも、義元の首を討ち取るのみで全軍引き上げさせている。

その結果として、義元を討ち取られた今川勢は、駿府へ退却を余儀なくされ、進軍は止まった。

織田信長は、最小限の被害で、最大の勝利を修めるという結果をだしたのである。



この戦いの後、勢力分布図は、大きく書き換えられる事となる。

三河から尾張の一部にまで、達していた今川領は、松平元康、のちの徳川家康の独立により、三河の領地すら手放す事になったのである。

この家康の独立したことにより、織田、松平の両家の同盟が成立する。

この桶狭間以降、信長は東への備えが必要なくなり、勢力拡大へ動き始めることとなるのである。
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