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第一話 調理師のハーレム入り(1)

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「もしもし粉モノ店です。花ばーちゃんの孫。杵築ミナミだよ」
 自分で電話かけるのはじめてだ。経験ないから緊張しまくり。

「あぁ! おはようさん。ようやく連絡してくれたの。えっと。
お店で会ったけど。電話じゃ顔が見えないからわかんないかな」

 電話のむこうは男性だ。名刺ケースの一番だった弁護士さん。
「声きいてわかりました。お店で話したよ。おヒゲのオジサン」

「そそ。忙しいからって無精ひげだからゴメン。ほんとごめん。
なんの相談ごと?」見た目はこわい。優しい感じで安心したよ。


「お店つづけるのたぶんムリです。でも手放したくはないです。
どうにかできないか話? それとダンジョンに入りたいです!」

 なんか安心したよ。考えてることぜんぶぶちまけちゃうほど。

「へ? 確かに防災管理。安全確保……経営。難しいんだよね。
不動産管理会社。あぁ! ダンジョンね。行きたいんだっけ?」

 お店で話した。熊みたいなオジサンだよね。明るい声のひと。

「はい。ゲームやったことがない。モンスターに興味あるんだ。
それにわたし。いま死んだって泣いて悲しむひともいないから」

 とくに深いわけ。あるわけでもないんだ。ぜんぶ不安なだけ。


「ボクの旧友。トモダチも弁護士なんだ。靱本町のダンジョン。
自衛隊と政府の公認。探索メンバーが実のお子さんなんだって。
あー嫁さんの弟がケージくん。探索のリーダー役らしいからさ」

「ケージくん? あたり前だけど女の子じゃないよ。オトコ……
ちょっと距離おけばいいかな。わたし好かれるとも限らないし」

 むかしの嫌な記憶。フラッシュバックして声がでなくなった。

「えっと詳しくないけどさ。ケージくんはさわやかな好青年だ。
面識ある相手だから連絡とれるんだけど……ミナミちゃんって。
特技は料理だよね? 18歳だから今年からは成人の扱い……」


 なんかおかしなことになった。電話してお昼すぎたばかりだ。

 地下鉄に乗るのひさしぶりかもしれない。電車はICカード。
祖母が準備したそのままだったよ。問題ないから使えたけどね。

 乗りかえる必要もない御堂筋線。本町駅だったね弁護士さん。
教えられたとおりいけばいい。天王寺の改札でカードをタッチ。

 新大阪方面千里中央行きだよね。一番前の車両に乗ればいい。

 動物園前から大国町。なんばから心斎橋だ。次が本町だった。
本町でおりた。そのままエスカレータで改札まであがったんだ。


 どっちいけばいい? いきなり不安。なんもかもわかんない。
「あ。あれだ。ミナミちゃ~ん。こっちだよ。こっちおいで!」

 わたしより幼い女の子。だけど昔のわたしよりずっと派手だ。
ピンク色の髪の毛? 真っ赤なジャージ。腕を振りまわしてる。

 そのまま目が点になる。隣にいる女の子。ウサギさんだよね。
むかって左。そびえる白の長い耳だ。右の黒い耳はねたまんま。

 ちいさく手を振ってくれた。視線がつよくておそろしいけど。

 おそれながら二人がいる改札に近づいた。カードタッチする。
ピンク色の女の子が前にいたんだ。いきなり軽く抱きつかれた。


「はじめて乗ったんでしょ。ミナミちゃん。お疲れ永依だよー!
オトコがダメなの? だからココちゃんと二人。お迎えにきた」

 笑顔の女の子はエイちゃん。ウサギさんがココちゃんらしい。

 地下鉄出口のエレベータ。地上は北御堂ミュージアムだって。
お迎えの二人。お寺の横にある中学を卒業したばかりらしいよ。

 そのまま高校通う予定が誘拐された。みんなで心配したって。
日本で一番生徒のおおい学校。通信制に進路を変更させられた。

 いろいろと伝えられながら並んで歩いた。わたしは真ん中だ。
なんでよ。すこしだけ見おろす二人。細いけどきっと強いんだ。

 九州時代ケンカの毎日だったわたし。それでも勝てない強さ。


 北御堂から西に進むと高速道路だ。その先に見える広い道路。
ビックリした。おおきな公園すべて囲うように高い壁があった。

 道路は普通に車が走ってる。だけど周りみんな自衛隊さんだ。

 三人並んで信号を渡るとビックリ。自衛隊さんに敬礼された。

 わたしの目がまたまた点になる。笑みをうかべたエイちゃん。
ポケットからカードがでた。わたしの首に頭からヒモを通した。

 そのまま腕を引っぱられたよ。「靭公園」ダンジョンらしい。
東園は基地らしい。おおきいコンテナなんだけど事務所だって。

「お待たせケーちゃん! ミナミちゃんすぐに合流できたよー」


 エイちゃんが声かけしたのは若い男性。右足が機械なんだよ。

「よかった。心配してたんだ。勝利さんの旧友が弁護士さんだ。
隈本さんからお願いされたって。ダンジョンに入りたい料理人」

「思い立ったが吉日」……祖母がいつも使ってた。ことわざだ。

 なにかをはじめようと考えたらすぐに実行するのがいいんだ。
ためらったりせずにマジメにとりくめばいいんだ。そんな教え。
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