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第一話「2022年8月30日アイムジャグラーEX」

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時代が進むと世界は変化した。それはここ数年の話に限らない。

良し悪しの問題じゃない。すべてに共通するかもしれない事情。
各種の状況が絡み金銭に余裕はない。それが一番の要因なんだ。

回胴式遊技機と呼ばれるゲームに触れる。その客まで激減した。
全国津々浦々のパチンコ店。スロットマシンの正式名称になる。

昨今話題にあがることもない。世間の大多数が認知していない。
古き良き時代。30兆円産業……制度の変化で落ち目の業界だ。

未知のウイルスが世界を席巻する。やり玉にされた業界だった。
ゆがめられた操作による誤情報。責められる側にも要因はある。

現状把握にyoutube配信。各種の動画だけ視聴している。
真っ当な経緯で誕生した業界じゃない。目に映らない闇もある。


雑誌をふくめた紙の本が売れない。これもよくない変化だろう。

そもそも昔から地方や都市に関係ない。電車やバスの移動時間。
公共交通機関の暇つぶし。高齢者なら病院の待ち時間だろうか。

落ちついて着席する環境。個人で楽しめることは限られていた。
半世紀近く前に生まれた携帯ゲーム。そこから急激に進化する。

ポケベルからPHSに変化。時代ごとに小型化される携帯電話。
いまは高精細の画面に表示されて何でもできるスマートフォン。

個人の自由と意思尊重だ。徐々に細分化されていく趣味と性癖。
それは隣りあわせた家族も変わらない。究極の選択で個人主義。


何分にも久しぶり……冒頭から冗長化したようだ。申し訳ない。
あぁ。まずは自己紹介になるだろう。仮名で悪いが北木タキだ。

そうだなぁ昭和末期の就職。夜間短大卒業と同時の平成バブル。
そんな状況の転職から通勤での単車事故。後遺症に悩まされた。

何度か転職を繰り返しながらも流された。そのまま進んだ現状。
結婚の機会も訪れなかった。もちろん扶養する子どもはいない。

ちいさな頃から趣味は読書になるだろう。マンガなら数万冊だ。
各種の小説も数千冊は読んだのか……現在。千冊も部屋にない。

タバコを吸い始めたのが入院時の暇つぶし。時代にも流された。
昭和末期から平成初頭の企業人。おそらく多数が喫煙者だった。


バブル時代のパチンコ店……怪しかった。怪しい店員ばかりだ。
ほぼ現代ヤクザに等しい。奇妙にえらそうな態度に口調なんだ。

初期パチンコは機械の筐体。内部プログラムすべて穴だらけだ。
時代が進むと機種攻略誌も誕生する。プログラムは解析された。

パチスロは基盤封印の4号機。パチンコは爆裂CRの確変機だ。
筐体と制御の穴をつく攻略。裏モノから爆裂万枚機も誕生した。

それが規制強化で終焉。ゆるやかな5号機と確変回数に上限だ。
しかしメーカー技術で少しづつ増える爆裂機復活で規制の強化。

2月に5号機とCRが完全撤去。導入できない店は廃業された。
ここで往時から半減。大型店増加でも遊戯台数は減少の一途だ。


今回制限を記すならパチンコで最大出玉は1500個になった。

パチスロならビッグボーナス純増250枚。一撃性に上限値だ。
これは2400枚でストップ。ここで有利区間リセットされる。

あまりにひどいと業界団体の直訴から純増で2400枚に緩和。
年内に玉とメダルを使用しないコインレス機も誕生する予定だ。

名称はスマートパチンコ。パチスロと呼ばれる新基準機になる。
これについては現状わからない。喜びと批判ないまぜの現状だ。

わかり次第の説明だろう。そんな状況が起こるのかもしれない。
だがしかしになる。機械の設置には莫大な改装費も必要だろう。

あまりにも還元しない。還元できず現状衰退一途の業界なんだ。


さて。あまりに長い前置きになった。申し訳ない気もちだけだ。
「北木タキのパチプロ日記」モドキでパクリそんなタイトルだ。

本家になるパチプロ日誌。これは亡き田山幸憲氏の絶筆になる。
もちろん絶版となり現状で入手することが難しいかもしれない。

パチンコ必勝ガイドで連載。東大中退パチンコ生活者の日誌だ。
酒とパチンコ好きな彼の人生。それらが凝縮された名著である。



――2022年8月30日は天候くもり。これも偶然の邂逅だ。

はるか昔の2号機時代パチスロに初めて触れたのは昭和の末期。
実家から100mも離れていないご近所さん。怪しい店だった。

その当時……工業高校の建築科を卒業。その翌々年だったかな。
大和川を越えるとすぐの堺市勤務時代。臨海工業地帯の入口だ。

夜は市の名称がついた私立大学。夜間短期大学部に通う生活だ。
通勤途上の単車事故で左足腓骨折。左足首は靭帯の損傷だった。

入院の前に初めて触れたパチンコ。ほとんど何も知らない状況。
ビギナーズラック……短大で話した。友人に影響された結果だ。


入店してすぐの台。千円札を両替して100円二枚を投入する。
ハンドルを右に回すと流れるパチンコ玉。追加で二枚投入した。

全員がパンチパーマ。怪しげな店員に背後から肩をたたかれる。
「お客さんの台大当りしとるわ。ハンドルを右に回せばでるよ」

それが俗に呼ばれる一発台。特定穴入賞で大当たりする機種だ。
15分ぐらいだった。オレンジの大箱と小箱一個で制止される。

パンチ店員が出玉を運んだ。カウンタ上で計数機に流される箱。
計数機が排出する白い紙片のまま。オバチャン店員に手渡しだ。

おおきな文鎮10本ちいさめ1つ。ゴムで結んでから渡される。
どうすればいいかもわからずに呆然。オバチャンが奥を指差す。


自動ドアをくぐり抜け突き当り。ちいさな窓の前に文鎮を置く。
そのまま換金されて窓から出された皿上。10500円もある。

初心者とも呼べない素人だ。店の罠だったのか純粋に幸運かな。
その数か月後に両替と間違えて借りたメダルだ。それが始まり。

パチスロは高砂製作所の2号機だ。ウインクルでたぶん負けた。


――おそらく事務所は16時まで不在。正午から二時間の割引。

布施イオン傍になる美容室だ。サービスタイムは激安690円。
伸びた髪がウザかった。10分ほど早い。あまりにもムシ暑い。

200m先にある関西発祥の大型チェーン。西日本で最大級だ。
あくまで偶然なんだ。4号機の終焉でほとんど打たなくなった。

たまに触れた5号機ほとんどがジャグラー。それもノーマルだ。
出玉を大量獲得できるストック機。爆裂AT機は大好物だった。

お遊びで数回触れた6号機。興味がなかっただけかもしれない。
ほぼ変わらないジャグラーの機械割。純増枚数が減っただけだ。


パチンコ人口は激減した。攻略誌も売れないから配信がメイン。
無料娯楽として楽しめる演出。相反する演者のガチ配信もある。

かつて田山幸憲氏が誌上連載した。攻略誌パチンコ必勝ガイド。
創刊当初から活躍するライターによる。演者としての配信動画。

一番勉強になる動画は自分よりも下の世代になるガリぞうさん。
いまも自宅に近い店でパチンコ生活者。プラスして演者活動だ。

ノーマルメインで立ち回り。開発メーカーにも依頼される関係。
ガリぞうさんでも難しいと伝える6号機だ。ジャグラーの攻略。

千円ベースがあがり同じ機械割でも獲得枚数がはるかに減った。


数年入店していない。すべてあわせて2000台の設置らしい。
ゆっくりと徘徊する。よさげな空台は300ゲームでバケ二回。

やはり機械割の高いマイジャグラー。客づきもよく人気機種だ。
強いイベント日なんだろう。すこしは興味がでたかもしれない。

とにかく伸びた髪がウザい。ほとんど待たずにサッパリ気分だ。
まだ時刻も正午を回ったばかり。16時までの時間は長すぎる。

再び店内を徘徊。もちろんマイジャグラーにめぼしい台はない。
バケが二回のファンキーも着席。困った時はアイムジャグラー。

ジャグラーで最も数おおい設置だ。割と目だつ位置にある角台。
履歴を見てビックリ1100ゲーム。ビッグバケともに7回だ。


合成確率が驚く80分の1である。なんでこれ空いてるのかな。
(アイムは設定6で機械割106%。合成確率が127分の1)

履歴ではビッグ連チャン。はまらずモミモミ状態からのバケ連。
54ゲーム回しで放置されている状態なんだが。おかしくない?

小役が悪いのか。着席した客が素人かもわからない状況だった。
とりあえず16時に事務所。諭吉さん五枚は入手できる予定だ。

一枚は負けても悔いが残らない。それぐらいオイシイ台だろう。
まずは千円で46枚。ブドウ5回とチェリー。あまり回らない。

追加一本なくなる前に先光りだ。もちろん中押し上段に7狙い。
下段7から右も嬉しい7絵柄。二本投資で喜びの単独ビッグだ。


小役は普通。ただしハマらずに128ゲーム内のビッグばかり。
(カードに自動計数される最新の設備。この機能はありがたい)

計数機500枚キープ。下皿のビッグ分を消化して撤収だろう。
そこから若干のモミモミ状態。来なかったバケも連チャンする。

まもなく15時30分。ビッグ後は135ゲームの撤収だろう。

自分だけで2100ゲームちょっと。ビッグ9回。バケ7回だ。
3100ゲームの合成104分の1。866枚回収で終了する。

そのまま交換すると驚きの等価だ。15000円の勝利だった。
(オマケとして16枚。缶コーヒーとお茶。ちいさなデカビタ)

わずか三時間実戦だ。初めて6号機で勝利したのかもしれない。
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