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第一章「記憶あるのに個人情報なし」モブなオレ。

第五話「令嬢が可愛すぎる件について」他意はない。

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「申し訳ございませんっ第三王女さま!」速攻初手90度。腰折りでの陳謝だ。
 この即応で許される確率がアップする。オレは……元社畜。リーマンなのか?

 なんか各地で頭を下げまくる街頭演説。地方議員に立候補した経験者とかさ。
それともアレか。なにか社内偽装が発覚。矢面に立って謝罪会見する部長さん。


 ダラダラ冷や汗流して頭を下げる役職。似あうのツッコミ止めてくださいね。
「さてお嬢さんたち。一言だけ伝えるよ」ひと時の感情。流されたオレが悪い。

 言い訳しないけど初のダンジョン入り。最弱のスライムはアッサリ討伐した。
テンション超アゲアゲで塩をまいたんだ。討伐と呼べない一方的すぎる蹂躙だ。


「鬼はぁ外。福はぁ内!」前世の豆まき。あれは節分で神事だから意味は違う。
 立春前日行事「邪を払い福と春を呼ぶ」悪霊払い。それが始まりなんだよね。

 よくよく考えればモンスターは魔物だ。「邪悪な魔物を追い払う」同じ状況。
スライムに一撃で必殺効果のある塩まき。他の魔物たちそれぞれ弱点あるよね。

 化学反応か物理対策の違いだけなんだ。攻略が進めば危険なヤツらも現れる。
オレの剣技と魔法の攻撃が通じればいい。それでも必殺技になりえる攻撃力だ。

 モノを投げるだけで侯爵令嬢が倒せる。同様にアレも通じるならありがたい。


「侯爵令嬢を含めて矢面にする気はない。慣れるまでは着いてくるだけでいい。
スライムはキモいだけで終わったけどね。これからはヒト型モンスターになる」

 いつもより多く……違うそうじゃない。「かなり警戒心が必要になるんだよ」
この世界のゴブリン。オークはヒト型だ。それでも18禁「くっ殺」じゃない。

「弱っちぃから平気さ。まぁ問題ないな」無双であるジンさんが教えてくれた。
でも少女に重症を負わせたら確殺される。危険物のお嬢さまたち三人の護衛役。


「これはゲームじゃないよ。現実なんだ」前世記憶に頼るゆるい意識がヤバい。
自分としては精いっぱいマジメに伝えた。「はい……」静かにうつむく三人娘。


 広場の端にある階段は下層につながる。先頭で周囲を気配り注意して降りた。
情報どおりなら二層は定番のゴブリンだ。緑肌の小鬼は二足歩行タイプで最弱。

 子供よりちっちゃい身体に武器を持つ。深層に近づけば進化系のヤツもいる。
まぁそれでも序盤は弱っちぃモンスター。ヒト型相手に拒否感なければ大丈夫。


「あれだよ。魔物の血は赤くないからさ。ヒト殺しの気分は感じなくていいよ」
 動物を殺める感覚など持つ理由もない。攻撃されると大けがで死ぬのも対等。


「そうよね。経験値の糧にしないと困る」目的があり趣味で倒すわけでもない。
いつもなら伯爵令嬢も温厚な性格だろう。バカを倒す強さが欲しくて固い決意。


 分岐や迷路がない一本道のダンジョン。岐路から敵が複数現れることもない。
「キィキィ」前方から妙な鳴き声が響く。予定どおり前方から三匹のゴブリン。

 聴いたとおり醜悪すぎるヤバい見た目。三人娘もドン引きして背後で震えた。
こいつら相手に攻撃魔法はもったいない。こんなこともあろうかと対策済みだ。

 懐から小さな袋。開くと真っ赤な粉だ。レイラさんが用意した激辛の香辛料。
「うん。これが秘密兵器。2号になるよ」対人戦で最大の効果がある特効薬だ。

 前世のマンガとかラノベでも活用した。費用対効果面で検討する必要はある。
たまたまスライムに効いた塩は安いんだ。香辛料は他国から輸入する高級品だ。


 かなり刺激臭で鼻孔に寄せるとヤバい。高額だからほんの少量だけ使用する。
棍棒を構えてまっすぐ突っこむゴブリン。1メートルぐらい手前で粉を投げた。

「ギョエェェェェ……」苦痛のうめき声。醜悪な顔は最大限ゆがんで昏倒した。
「いやいやすげぇ。効果あったじゃん」「スゴい」おもらしに背後で賞賛だよ。

 時間を置いて三匹のゴブリンは消えた。目前にちいさなドロップ品も見える。
体力のない女たち。子どもたちも闘える。初心者向けの低層階なら余裕じゃね。


 とりあえず……これも知識チートかな。用意したレイラさんに報告できるよ。
メッチャ疑いながら準備してくれたから。そのおかげで三人娘も尊敬の視線だ。

「おにーちゃん恰好いぃ。困っちゃぅよ」侯爵令嬢の目がハートマークじゃん。
そんなチョロいんダメとツッコみたいよ。第三王女も機嫌を直してくれたかな。


 ジンさんに怒られるけど二層も無双だ。エンカウント確殺で広場に到着する。
「さていよいよ三層だ。気を引きしめて」「はいっ!」真剣に伝えると即応だ。


「美少女三人見守り隊長」おかしな依頼。それほど悪くもない雰囲気で攻略だ。
 おもらしはフラグに直行するから無言。しっぺ返しの「きっと来る」対策だ。

 三層はコボルト。四層はオークだった。もちろん秘密兵器2号くんが大活躍。
五層からも定番なんだ。ジャインアントバット。キラーアント。ヘルハウンド。

 スケルトン。オーガのテンプレモンスター。10層が中ボスのビッグベアだ。


「デカいね」特徴を伝えればいいのかな。体長ほぼ2メートルで体重数百キロ。
黒い短毛が全身に生えるツキノワグマだ。ツキノワグマは前世の本州にいたね。

 都内と呼べるかわからない県境の山林。関西圏でも奈良山中辺りで出現する。
「ある日森のなかで出会う」アイツだよ。もちろん花咲く道じゃない地下迷宮。

 どこかの誰かが創造した異空間なんだ。不思議なダンジョンは10層区切り。
挑戦する冒険者の試練に中ボスが現れる。それぞれが特徴を秘めたモンスター。


 10階層まで到着するとゲーム仕様だ。空間の中央にうずくまるビッグベア。
イメージで「これから奥義を授けよう!」男声の幻聴。脳内で響いたんだけど。

 もちろん空手道場の師範じゃないから。そもそもダンジョンの中ボスだから。
なぜか「クマちゃん先生お願いします!」そう叫びたくなる雰囲気あるんだよ。


 事前に迷宮階段を下りながら説明した「伯爵令嬢は左の背後から水魔法攻撃。
第三王女も物理対策の防御魔法を展開だ。侯爵令嬢は特訓した土魔法を使え!」

「ウガァ!」どこかの巨大怪獣じゃねぇ。始まりが巨大なファイアボールだよ。
ほぼ顔面中央に炸裂したからうめき声だ。伯爵令嬢の水鉄砲も両目に追撃する。

 暴れる巨体が太い両腕を振り回したね。第三王女は結界状の透明な防御壁だ。
侯爵令嬢が土魔法で地面ごと掘削してる。足元をとられた黒い巨体が横転した。


 ラストアタックになる攻撃は近接物理。いわゆる魔法剣をギルドで借りたよ。
高級品だから壊すとヤバい請求額になる。炎をまとわせる首切りロングソード。

「ウギャアアアアッ!」一撃確殺だった。叫び声をあげながら飛んでいく頭部。
さよならさよならさよなら。また会おう。轟音と同時に転倒した巨体が沈んだ。


「やった!」三人が手のひらハイタッチ。なぜキミたちそのまま抱きつくのさ。

 重さを感じない柔らかい体は甘い香り。香水か体臭か脳まで痺れる甘さだね。
いやいやいやいやお嬢さんお待ちなさい。忘れ物じゃねぇ主人公じゃないから。
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