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本編3 始まりのダンジョン入場します

第十二話 始まりの迷宮で邂逅(12)

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「はーいはいはいっ。おーしまい」笑う永依のあくどい必勝法。
まぁ勝てば官軍だけどね。冷静に考えるなら誰が見ても卑怯だ。

 綺麗な双眸から真珠の涙を流す。過呼吸の様子が無残だよね。
うずくまる状態で……嗚咽する体。見ていられない容赦のなさ。

 永依に預けた天然水。ボトルを回収する。そのまま手にすると
持参したタオルに注ぐ。水気は十分。その状態でココに渡した。
「これハンカチタオル。両眼主体に拭きとればラクになるから」

 説明と同時にタオルを握りしめた。まずは両目を丁寧に拭く。
つづけて顔全体から細い首。ていねいにタオルを裏返して拭う。


 ホッと一息。生きた心地らしいココ。怒鳴り声が周囲に轟く。
「どえらい卑怯さだ。武器を使用しての攻撃じゃないのかよ!」

 ケンカ腰のココだ。どこ吹く風の永依。言い訳もなしで笑う。
「卑怯って誉め言葉みたいなもんじゃね。勝ったらただしいの。
約束だからぜってぇ守らせるよ。お持ち帰りして奴隷に決定!」

「うううう」納得できないよね。唸るだけのココがかなり惨め。
「女の子相手の奴隷ひどくね?」戒め言葉だ。中途半端だけど。

「はぁ? ケーちゃん相手。奴隷ご奉仕させるはずねーからさ。
性的どうこうなんかもありえないしょ」信念だから撤回しない。


【個別ノ戦闘行為ガ決着ダ】プラス【勝者ノ権利ハ義務デ誓約】
――脳内で音声が響く。要約なら約束の順守。守らせるだろう。

 おかしな状況だ。管理者の認識なんて理解できるはずもない。
事前ルールの隙をついた結果。それでも管理者には認められた?

 強さは基準値。勝負の判定じゃない。常識もないココだから。
詐欺師に騙された状況なんだ。勝負に値しない結末だったよね。

 管理者権限。現実社会に歴然とある厳しさ。常に認識させる?

 ウサギから獣人に進化したココだ。それを自覚させるために?


 この勝負が正しいか別にして過剰だ。暴走の止まらない二人。

 今後ココを預ることになるんだろう。抱える問題も尽きない。
ダンジョンの謎。解明するために攻略も進めながら検証したい。

 この変容を遂げた世界。現実に理解しながら検証作業だろう。

 なにを優先すべきかわからない。巻きこまれ求められた結果。
それぞれの役割も同じ。すべてが解決するまで未来も見えない。


【勝者ノ権限ヲ行使デ契約】プラス【敗者ニ強制デ呪具ノ装着】
――脳内で響いた機械音。何の気なく聞き流しながら黙考する。

 七つの龍玉を集めない原典の西遊記。お釈迦さまの前身になる
三蔵法師に逆らう悟空の罰だ。それが額に強制された枷になる。

 分かりやすいイメージなら古い映画。囚人に装着する足かせ。
大昔に感じるかもしれないけれど一番イメージしやすいはずだ。

「ケーちゃんさぁ。負けたら呪具とか身体にイレズミつくの?」
 首を捻る永依に問われた。かんたんに応じられるはずもない。


「んっとね。呪いの道具よりも枷が近いとおもう。呪いの表現は
昔風じゃん。囚人につける足かせみたいな感じになるのかなぁ」

「ふーん。あーしに負けたココちゃん。足かせついちゃうんだ」
 なんとなく理解したらしい。右さし指を回す永依が思案する。

「勝者の権限? なんか約束したけどね。あーしからの命令とか
興味ないっしょ」なにか考えた永依。即座に朗報が届けられた。


【勝者ノ権限デ期間ヲ決定】プラス【装着呪具ノ効果ヲ設定ダ】
――再び脳内で機械音。サポートデスクかよと叫びたくなった。

 おバカさんでも理解できたらしい。上下に首を振り納得する。

「へぇ。期間と効果。設定できるんだ。期間は最低三年っしょ。
痛くする効果かぁいそう。あーしに命じられたら逆らえないの。
体とまって声なんかもなくなる感じ。そんなんでいいかなぁ?」

「三年かよ? 長すぎだから。勝負の結果にしてはひどいよね」
「んーん三年。それか始まりの迷宮だっけ。攻略おわるまでよ」
 おバカな永依っぽい結論だった。両拳を振り笑顔で断言する。


「呪具を決めるんだよね。ファンタジー世界なら首輪。足かせも
かぁいそー。やっぱちっちゃい腕輪。それに電撃効果じゃね?」

 永依の軽い発言。同時だった。ココが七色の輝きに包まれる。
細い両手首。奇妙な文様の黒腕輪があるね。妙に驚きの表情だ。

「ふーん。そんなに派手じゃない。装飾品に見えなくないよね」
 永依の言葉はかなり正しい。しっかり見つめて異和感ないし。

 ココが腕輪に触れる。両腕を上下と左右に振りながら確認だ。
正解か別にしても双方に異論ない。納得するしかないのだろう。
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