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本編3 始まりのダンジョン入場します

第十話 始まりの迷宮で邂逅(10)

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「なんでいきなりさ。お互い声かける前から闘うんだ! なんか
おかしくねぇ?」二人の間立ちはだかる。拳を握っての力説だ。


「『出会って五秒でバトル』とかさ。いきなりマジかよ。漫画を
リアルな実体験だ」頭を抱えた。ネタも交じえた愚痴だけどさ。

 絶叫で闘いも止まった。言葉は間違いなく通じているらしい。
本気で残念だよ。理解できるはずもない現実。泣きたくなった。

 だがしかし昔から無類のケンカ好き。格闘家でもある永依だ。
神妙に感じる様子を前にすると哀れみかな。厳しくはできない。

 同じバトルマニアで考え方がちがう。納得できるはずもない。


「最初の前提条件だよ。人間は『話しあいの解決』。目標にして
綺麗に収束しない」苦笑して伝える。理解されないらしいけど。

「同じ言葉を話す相手だからね。平和にいきたくないのかな?」
 真っ向から正論ぶちかました。同時に声を失くしたらしいね。

 感情を抑えながら怒りの表情だ。永依まで持論を展開したよ。
「でもケーちゃんさぁ。いきなり攻撃されたから倍返しだよね」


「思考が同じ。なんで話しあう前から敵対的行動するのかなぁ。
そもそも闘いからはなにも生まれない。生産性がないんだから」

 一見して神妙にみえるだけだ。その本質も残念すぎる両者だ。
永依は細かい部分を考えない。意味を理解できないウサ耳少女。

 前提として外見以外の共通点もない。三人寄れば文殊の知恵は
有名なことわざ。三んいても解決できない状況が哀しいんだよ。

 生活の環境も異なる三人だ。揃ってもそれだけで意味がない。


「闘ったあと友情が芽生える。少年漫画じゃ定番なんだけどさ」
 残念ながら共通点もない。意思疎通の難しさに泣きたくなる。

「まぁいい。なにが欲しい? オレからで良ければ買うけどさ」
 状況をまとめる適任者もいない。無理やりでも収束させるよ。

「いやいやいや。金銭買ってもダセェじゃん。意味ねぇっしょ」
「じゃあどうすんだ?」ふざけた永依の言葉。怒り心頭だった。


「うーん。期間限定するけどさ。負けたら奴隷なるんじゃね?」
「相手を奴隷にしてなにさせたい?」永依の思惑。理解不能だ。

「勝ったら一定期間かなぁ。負けたヤツには命令できんじゃん」
「構わない」永依の思いつき発言。軽く応じるウサ耳少女だよ。

「へぇ。OKするんだね」怪しい笑みだ。永依の挑発だろうが。


「負けるはずないからな。ダンジョンの攻略。手伝わせようか」
 負ける理由はないだろう。ウサ耳少女も躊躇わずに同意した。

「はぁマジっすか。じゃあ勝ったら奴隷にできる権利で決定!」
 格闘家でもある永依。秘策でもあるのか負ける気ないらしい。

 双方ともに自分が勝利する。それしか考えていない状況だね。
意見をまとめられずに頭を抱えた。解決策もないから流される。


【迷宮デ個人対戦ヲ確認ダ】プラス【対決ト戦闘行為ヲ容認ダ】
――また音声。なんて思考だよ。なんで対決として認めるんだ。

 そもそも人間の脳に直接。音声指示だ。言葉を判断して伝える
相手だから思考? 状況すべてを完全理解している存在だよね。

 入口応答も不可解だ。どこかで映像を俯瞰してリアルタイムの
認識で対応かなぁ。正しく理解してから音声として伝えている。

 円陣の対照位置から静かに向かいあう二人。正面で対峙する。

 圧倒的な強者だろうウサ耳少女だ。敵対者は実力で劣る永依。

 自信満々に見える態度。秘策だろうか。なにかの目的がある?


「ふーっふっふっ。さぁどっからでもかかってきなさいよねっ」

 誰が聴いても昔のチンピラにしか感じない言葉。永依の挑発を
ウサ耳少女がどう理解しているんだろう。表情で分からないね。

「まったく気にならない。完全に悪役のセリフじゃないかな?」

「デカ胸ウサギ女め。あーしは悪役令嬢じゃない。失礼っしょ」
 そもそも脈絡のない挑発が始まりだ。理不尽の固まりが永依。


【金属ノ武具ハ使用禁止ダ】――また音声。永依に直接指示だ。

「なるほど。革グラブの内部でも金属ナックルはダメなんだね」

 黙って革のグラブを外す永依だ。ポケットを両手で探しながら
確認してるよ。右掌に金属の棒を握る。ここでは制限されない。

 うつむいてニヤリと笑った。直接じゃないから大丈夫と確信。
思案してからジャージの後ポケット。長財布を引っぱりだした。

 永依が長財布のポケットから小袋をとりだす。左掌に握った。
「ケーちゃんが預かってね」言葉と同時。こちらに放り投げた。


【急所ノ直接攻撃ガ禁止ダ】プラス【命ノ奪取ガ絶対ニ禁止ダ】
――また音声だけど禁止事項の厳守だ。脳内に直接伝えられた。

 納得できる内容だ。それぞれ考える部分もあり神妙に応じた。
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