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第二話 厳しすぎた過去とか浪人時代

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いまこれでも学生時代マジメだったんだ。授業とバイトばっか。
忙しい日々の生活。学内合コンの参加も数えるぐらいだったよ。

ちゃんと恋愛したことないから。ギャルに見られるような演技。
茶髪に染めて明るい性格のフリ。化粧で武装してるだけなんだ。

なにを隠そう秘めた心。完全コミュ障に近いオタクなんだから。

昔から夢小説とハーレクイン好き。隠しながら読みあさる毎日。
最近ネットで読める無料のサイト。たくさんあるから嬉しいよ。


実はさ……いやいやいや妄想とまんねぇし。そんなの関係ねぇ。
どこかの白馬に乗った王子様。いきなり現れるとお姫様抱っこ。

悪漢たちから救助される無頼漢。魂奪われたら流浪の貴族でさ。
亡国のアギじゃないアラブの王子さま。政変に巻きこまれるの。

誰にも見えないわかんない。頭のなかで妄想するのは自由だよ。
ほらなんだっけ? そもそも誰かに言い訳する必要あるのかな。


「わけがわからないよ」自分に似あわないセリフ。わかってる。

魔法少女ってのはさ。おそらく少女時代にみんなが憧れるんだ。
魔法の呪文を唱える。月に変わってお仕置きするのもおんなじ。

平凡だからなんにもできない。どこでもいる普通の子なんだよ。
偶然に魔法の力を手にいれる。世界を守る夢を実現させるんだ。

男もおんなじ。いやすんげぇバカだよね。自分より劣る女の子。
ちっちゃな子。向こうから好きになるの。お下劣展開なんだよ。

アイツも魔法を使えるフリなんだ。夢見る少女に見せた理想郷。
夢を代償に禁断の果実をついばむ。創世記のアダムとイブだね。


ひとには夢が必要なんだ。その瞬間は楽しい。気もちがいいの。

それでも……夢はいつか醒めるんだ。厳しい現実が待ってるね。
新妻だけど院長の娘さんもおんなじ。無事に済まないはずだよ。

末端でも上流に所属するひとたち。失態には社会の目が厳しい。
犯罪者に落ちぶれたおバカさんだ。慈悲もないまま死ねばいい。

後輩ちゃんも痛い現実。身体に刻みこんで後悔すればいいんだ。
あれ? なんかあたしってさ。失くしたものがあんまりないね。

アイツがあたしにくれたモノ……うーん。ロマンティックな夢?


大好きだったけどあの娘がいた。なんて事実もいまさらだから。
永遠みたいな深い夢から醒めた。なんもかもが一気に消滅した。


リアルの時刻は夜明けが近い。部屋は東窓だから朝日も見える。
朝日がサンサンおはようさん。それでも……国家は凋落したよ。

はるかな昔のリアルもどこかの夢。見たような現実なんだけど。
新聞奨学生ってのをやってたんだ。ほんのちょびっとだけどね。

なんもない地元から逃れたかった。花の東京はあこがれの聖地。
オタクの聖地……年末お盆の祭り。何度も参加した夢のなかだ。


怖さをしらない純粋培養地方民だ。初めての試練が与えられた。

なんか振り返るとヤツがいるわけじゃん。それも立派な親心だ。
無謀にも関東の国公立看護大を受験した。もちろん全敗したよ。

「お前を蝋人形にしてやろう」じゃない。親にお願い浪人生活。

「女の子が浪人なんて許しません」泣きわめいた母の親戚さん。
新聞配達を朝夕毎日こなしたんだ。予備校に通うだけでも大変。

わき目を振る暇もないほど厳しい。冷たい社会でたまに温もり。

すべてを同時期に学べたチャンス。金銭には変えられない経験。
どこにも属さない時間だったから。この世界の片隅で猶予期間。


それも当時からのお約束なんだよ。あの男に連絡だ……はネタ。

新聞奨学生は超絶早起き。販売店にトラックの到着から始まる。
まちまちの時間だけどね。かなり早ければ夜中の三時前なんだ。

すべての世界が寝静まる闇のなか。誰もいない世界じゃないよ。
実家のある大阪は国内第二の都市。深夜もにぎやかすぎるから。

それでも東京は決定的に違うんだ。関西地方と呼ばれる距離感。
県庁都市は地下鉄が走行するよね。都心にあるから複雑な路線。


そんな市内で南東に離れるんだ。いきなり田園風景が現れるよ。

南部に隣接するのは堺市なんだ。人口密度は地方県庁より都会。
かなり面積広いからおもしろい。都会みたいなイメージないね。

とにかく市内南部は区が広すぎる。たくさんに区分けされるよ。
バイクに乗る男性はスーパーカブ。縦横無尽に配達できるから。

あたしたち未成年。無免許だから配達カゴのゴツイ自転車だよ。
無骨でデカいんだ。駅前中心に狭い区域だけを配達するからさ。


配達する部数は調整される。計算できるからワナかもしんない。

必然的にマンション中心なんだ。もちろんエレベータはあるよ。
それぞれ階数が違うから大変だ。端から反対側まで移動もざら。

すべて配って二時間かからない。それが朝夕の二度になるんだ。

三時から六時。十五時から十八時ぐらい。日曜は朝刊だけだよ。
月曜はたまに休刊日になる週がある。朝刊配達のない幸せな日。
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