S系攻め様は不憫属性

水瀬かずか

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【番外編】雑多な諸々・掌編

ポッキーの日(11月11日)

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「……課長」

 恋人となったのだから、このくらいはジョークとして許されるのでは。
 そんな期待を込めた軽い気持ちでポッキーを咥えて顔を近づける。
 無表情な彼は、俺を見るなり眉を顰めて不愉快をあらわにした。

 ……バカな事をした。

 わかりきっていた事だというのに、つい浮かれてやってしまった。
 そんな後悔がこみ上げた瞬間、小さな溜息と共に眉間に皺を寄せた顔が近づいてくる。
 え?
 戸惑いと、乗ってくれた課長の優しさに呆然としながら、近づく顔を見つめてしまう。
 近くで見ると厳つい印象よりも整った顔立ちやパーツの端正さに改めて気付かされる。
 ゴツさと強面なパーツ配置でつい見落としがちだが、やっぱこの人イケメンだよな。
 見惚れていたが、ぽりっとポッキーをかじる音で我に返る。

 ぱき、ぽり。
 音を立てて顔が近づいてきて、それから、ぴたりと止まった。
 こんなに近くにいるのにお預けかよ、と一瞬思ったが、違うと気付く。
 この人がこれだけ譲歩してくれた、そういうことだ。だったら甘えてもいいよな。

 止まった課長の唇までの数センチ、食べ進めて、ようやく唇が彼に届く。
 そのまま噛みつくように課長にキスをして「ごちそうさまでした」と笑った。
 こんなくだらない事に付き合ってもらえる事がうれしい。嫌がりながらもそれが許される立場になったのだと実感する。

「……楽しかったか」

 溜息交じりの低い声に「はい」と頷く。
 くだらないことをした気恥ずかしさと、反面それが楽しくてたまらなかった気恥ずかしさとで、笑いながらも顔が熱くなる。
 課長も恥ずかしかったのだろう、耳が赤かった。



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