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3章
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しおりを挟む「東国の革命が成功したらしいぞ!」
木を植えて間もない頃、その知らせは入った。
「父さんは?」
「無事だ。多少弱っていたということだが、回復し始めているらしい」
待ち望んだ情報に、ルカは姉と手を取り合って喜んだ。
「じゃあ、落ち着き次第、私は東国の方に向かうよ」
思ったよりずっと早く東国に戻れそうで、ルカは喜んだ。せっかく会えたのにまた離れるのは寂しいなどと、姉たちと話しをしていた。
だというのに、父の無事を喜んだのも束の間、そのまま東国は鎖国された。
「東国に渡れないって、どうして……」
「いくら情勢が不安定だからって、鎖国をするとは思わなかった」
「……鎖国?」
「ああ、貿易は維持されるが、入国は完全にシャットアウトだ」
ルカは言葉を失った。すぐにでも戻りたいのに、貿易船が入れるのは港の一部のみだという。
「残念だが、しばらくは様子を見るしかないだろう」
歯がみするルカを慰める声がしたが、今は聞きたくなかった。
他国からの介入を阻止し、旧体制側の人間の国外逃亡を防ぐためだという。人の往来は特に厳しく、ほぼ不可能となっていた。
しかしルカの属する場所は商業だ。どれだけ鎖国していても交易を完全に断つことはできない。
また、東国の政権を握った革命政府と西国の関係は良好である。
物流を使えば東国に戻ることができるのではないか。
最初はそう思って交渉を始めた。だが、ルカの両親が革命軍と深く関わりがあった事で、返って規制は強くなっていることが判明した。
帰国の許可は下りなかった。
フォンタナ商会は力がありすぎた。内政に影響しかねない組織の人間が、これ以上入国するのを警戒された。ましてや革命政府にも発言力がある父の存在もある。下手をすると商人達がその気になれば、影響力は革命政府をしのぎかねない状況だ。父の跡を継ぐルカの存在は、警戒されていたのだ。
物流と手紙のやりとりはできるが、それらの検閲も厳しく、人間の出入国はそれ以上に厳しく監視された。父親の人脈を持ってすら、それをかいくぐるのは無理だった。
そんな中で、正臣に手紙を出すなどできるはずもなかった。開戦中はルカと正臣の立場上、軍からの検閲があるだろうため、論外。そして革命後の今となっては、彼の立場がどのような状況であるかもわからない状態だ。正臣は軍人だ。革命政府からすると敵側の人間だ。ルカ自体が警戒されているのに、正臣へ連絡をとることで、軍人の彼に不利に働かないか。ルカの都合で動いて正臣にどんな影響を及ぼすのか考えると、手紙を送るのは躊躇われた。
革命政府から商会の人間を助けたということで優遇されれば良いが、もし知られて軍からの制裁がないとも限らない。もしくは別の思いもよらない疑いを革命政府から受けたりはしないか。正臣の状況がわからない以上、伝手のない状況で連絡は取れなかった。
「これは、しばらくかかるかもな」
義兄が情勢を確認しながら苦く溜息をついた。同じく新聞や手紙を確認しながら、ルカはルカは希望的観測を呟く。
「二、三年?」
「そのくらいですめばいいが」
困った様子の義兄に、ルカも小さく頷いた。
元々そのくらいは覚悟していたのだ。それが少し伸びたところで問題はない。
だが、革命は成功した。あと数年すれば開国されるはずだ。
悔しく思いながらも、今は仕方がないと割り切るしかなかった。
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