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3章
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しおりを挟む「レン……!!」
生家に馬車が到着するなり、家から飛び出してきたのは妙齢の女性だ。母とよく似た面差しで、姉のフローラだとすぐにわかる。わかってしまえば、込み上げてくるのは懐かしさだ。
「姉さん……!」
飛びついてきた姉を抱き留めて「熱烈な歓迎だね」と笑う。
西国のフォンタナ商会は、首都に拠点を構えている。そしてその近くにルカの生家があり、ルカの姉は結婚してそこで暮らしている。ルカは当分そこに住まわせてもらうことになっていた。しかし落ち着き次第、家を探して出るつもりだ。
なぜなら十年も離れていた姉家族とずっと一緒に暮らすのは普通に辛い。
東国フォンタナ商会の拠点は既に東国であり、西国フォンタナ商会はルカの親戚が経営する物だ。同じ名前を背負っていても、別の会社だ。とはいえ、東国商会で貿易する商品の情報は西国首都の支店で統括しており、ルカの父が会社を興すまでは子会社だった経緯から、同じ社屋で間借りしている状態だ。互いに提携しているため、都合が良くそのままなのだ。ルカは東国商会に在籍したまま、西国商会との関連業務に携わることになる。
姉と再会を祝いながら、ルカはこれから新しい生活が始まるのを実感した。
六つ上の姉は、別れた当時十代半ば、東国に行くことを嫌がり、伯父夫婦に引き取られた。現在は西国商会の跡取りと結婚して、子供も二人いるということは手紙で知っている。
腕の中の姉の顔は涙に濡れていて、よほど心配させたのだとわかる。おそらく、帰ると知ってから二年も音信不通だった弟を、よほど心配していたのだろう。
母と似ていると思った姉の顔は、見ているうちに十年前の面影と重なって、ようやく姉である実感がわいてくる。
自分よりも小さくなってしまった姉に不思議な感じがした。当時姉は十四ぐらい。ルカには大きな大人に見えていた。
しかし、今見る姉は記憶の中の姉とあまり変わりなく思える。けれど、子供が三人もいるという姉は、ルカよりも一回り小さくかわいらしい。
二年前の最終情報より子供が一人増えていた。しかも生まれたのが数ヶ月前だというのだから、産後にしては元気なようだ。
「姉さん、ちっちゃくなっちゃったね」
「相変わらず生意気ね! あなたは、成長したわ。……大きくなったわね、レン」
姉は涙ぐんだ目でルカを見上げて、そっと頭を撫でた。
姉家族は、ルカを家族として受け入れてくれた。
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