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2章
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しおりを挟むルカも馬鹿ではない。なぜ正臣が嫌がるかぐらいは想像がつく。自分が正臣の立場でも嫌だろう。と、理性では思うのに、それでも全部見たいと思ってしまうのだ。正臣の汚いところも、みっともないところも、全部見せて欲しい。カッコよくて綺麗なばかりの正臣だけじゃなく、隠しておきたいような姿まで、全部。ルカにだけ見せる正臣の姿が、もっともっと欲しい。
ふと、ルカを誘って淫らに腰を揺らし、笑いながら煽る正臣の様子が脳裏をよぎる。
「……」
間違いなく、ルカしか知らない正臣の姿だ。あの正臣がそんな姿を見せるだけで、相当すごいことだと思う。けれど。
……それで足りないなんて、贅沢かもしれないけど、さ。
拗ねていても仕方がない。ルカはいそいそと布団を敷いて共寝の準備をした。
手拭いを首にかけ、簡単に腰を縛っただけの浴衣姿で部屋に戻ってきた正臣は、ルカを見るなり、ふはっと堪えきれぬ笑いをこぼした。
布団を敷いていかにもその気満々の様子で、布団の上に座って、なのに顔は拗ねてそっぽを向いている。
「まだ怒っているのか?」
「別に怒ってないよ」
「そいつは良かった。……お前に嫌われると、どうすれば良いのか分からん」
そっぽ向いたままでいるルカの頭が、そっと撫でられる。正臣の声は、どこまでも楽しげだ。
正臣を相手にすると、いつもこうだ。本当に怒ってないし、意地を張ってるわけでもない。ただ、どうして良いか分からなくなる瞬間がある。いや、わかっている。「大丈夫」と言って正臣の方を向いて笑えば良いのだ。けれど、それをしたくない。
「ルカ」
優しく呼ばれてチラリとそちらに目を向ける。
ほら、と両手を広げてみせる仕草は、いつものルカと逆だ。おいでと言わんばかりの仕草に、胸が締め付けられる。
ルカはその腕の中に飛び込んだ。
「……おっと」
勢いを付けてそのまま押し倒して、正臣の腕の中に包み込まれる。ルカもその頭を掻き抱いた。
正臣が機嫌を取ってくれるのが嬉しい。拗ねた素振りに気を遣ってくれるのが嬉しい。一緒にいる時間がとれなくて寂しかった。きっと、自分は正臣に甘えているのだ。きっと正臣もそれをわかっていて、それに乗ってくれている。
疲れて帰ってきているのに。
「……ごめんなさい」
「気にしなくていい」
「うん」
正臣の上で身体を起こし、彼の腰を跨ぐようにして膝立ちをする。
キスをしながら乱れた着物の襟元に手を差し込んで素肌に触れる。
「……この体勢は、嫌じゃない?」
キスをしながら胸元をゆっくりと撫でる。
「ああ」
「……このまま、していい?」
「さあて、どうしようか」
「た、たまには私も正臣さんを見下ろしたい!」
押し倒され返されそうな気配を感じて、ルカが訴える。
「もっと触りたいから、正臣さんは寝てて!」
両肩を押さえつける必死な様子に、正臣がそっと目をそらしてククッと堪えきれない笑いをこぼした。
「さわり、たいのか?」
笑いを堪えながら楽しげに問いかけられて、ルカは頷く。
「……好きにしたらいい」
目を細めて笑った正臣が、力を抜いた。
たわいないやりとりがひどく楽しい。
抱き合いながら他愛もない言葉を交わす。体が重なることで、なお満たされてゆく。
なかなかゆっくり出来なかった寂しさが、ようやくぬぐわれた気がした。
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