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2章

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「ああ。女でも最初から気持ちいいわけじゃないんだ。それでも抱き合うのは、相手と触れ合いたいからだ。そうやって慣れていく内に身体も覚える」

「今は、きもちいい?」

「ああ」

「……割と?」

「そうだな」

 正臣は、クククッと喉を鳴らしておかしそうに笑っていた。釈然としない。心配していたはずなのに、ルカの方が宥められている。

「正臣さんは、私と交わることを、望んでくれている?」

「ああ」

 正臣の言葉に、迷いはない。でも、正臣の過去を知ってしまって、それをそのまま受け取ることは、ルカには出来なかった。

「でも、抱かれたいとは、思ってなかったでしょう?」

 探るルカの問いかけに、正臣は穏やかに笑う。

「……思っていたさ」

「え?」

「俺は、お前に抱かれたいと思っていた」

 見つめてくるその瞳は、笑っているのに、射抜くように真剣なものだ。冗談を言ってと怒ろうとしたルカは、動揺して言葉を失った。

「嘘……」

「俺はお前が男でも抱く気はなかった。もしお前が抱かれたいと望んだならば、まねごとはしても入れる気はなかった。……俺の知る行為は暴力だった。あれは身体に負担がかかる。だから、お前と情を交わすなら、お前に抱いてもらうしかないと思っていた。……まさか、自分から抱きたいと言ってくるとは思わなかったがな。お前が物好きでよかった」

 楽しげに笑いながら正臣が語る。だが、そんなことはどうでも良い。ルカは血の気が引くのを感じた。

「やっぱり負担がかかるの!?」

「バカ、お前じゃない」

 苦笑気味にたしなめられて、ああ、と、ルカは口をつぐむ。
 正臣の過去を思う。無理矢理の行為は、相当大変だったのだろう。何度かルカを受け止めてくれたが、未だゆっくり解してもきつそうなのだ。
 だからもう一度、正臣に真剣に伝えた。

「ねえ、正臣さん」

「なんだ」

「やっぱり私も、入れなくても良いよ。正臣さんと触れ合えるならそれでいい。入れられるのに負担がかかるなら、無理して欲しくない」

「大丈夫だ。無理などしていないさ。俺はお前に抱かれるのが好きだと言っているだろう? 余計な心配をするな」

 真剣に訴えたのに、正臣は苦笑してそう言うのだ。なんとも言えないもどかしさがルカを襲う。なんでもないように言われたからこそ、かえって事実をうやむやにされているように感じる。

「でも、あなたに負担がかかるのは、嫌だ」

「負担など、ないさ」

「……じゃあ、私を抱いてよ」

 負担じゃないというのなら、ルカが抱かれる方になればいい。嫌な気持ちの残る行為なんて、彼にさせたくない。


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