上 下
67 / 163
2章

67 2-4

しおりを挟む



 約束の日、当初ルカは、正臣にたくさん触れて、好きだと言って、愛を交わすんだと、経験がないなりにも色々と考えていたのだ。
 そのためにこの日の用事を全て別の日に変えた。意地でも開けた。
 正臣の家では、いつ人が来るかもしれないということで、この日もルカのアパートへと正臣を呼んだのだ。偽姉と乳母は仕事へ行っている。
 いざ、するために、など、気恥ずかしいとか思いつつ、だ。

 なのに、正臣の行動は、それを易々と打ち破ってしまった。
 自らの寝室に誘い、お茶を、とか、少し会話を……などと思っていたルカを「まどろっこしいことは必要ないだろう?」と、にっこり笑ってベッドに押し倒したのだ。

 大事なことであるが、ルカは十九の性には敏感な年頃である。
 今、誰よりも魅力的に感じている相手にのしかかられて、反応しないわけがない。
 妙に迫力のある笑顔の正臣が、楽しげにルカのシャツのボタンを外してゆく。

「ルカ、男同士がやるのに、準備が必要なのは知っているか?」

「え、あ、あの……詳しくは、知らなくて……」

 ごめんなさい……と小さくなってうろたえる。

「今日俺は、その準備をしてきている。やるなら早いほうがいいんだ。……わかるな?」

 にこりと笑った顔が、脅迫しているようにすら見えた。その男らしさに、キュンとルカの胸がときめいた。

 その後は、あれよあれよという間の出来事だった。
 脱がされて、「綺麗な肌だな」と指を這わされて、ゾクゾクと震えながら、どう動いたら良いか分からず、なされるがままになってしまう。

 あれ? やっぱり私がやっぱり抱かれるのだろうか? と、混乱さえした。それでも問題はないのだが。いやだがしかし、……あれ? と、なってしまったのは仕方がないだろう。ルカはすっかり、なされるがままの生娘の気分だ。

「ほう? やはり童貞か」

 たどたどしいルカの様子に正臣が楽しげに笑う。

「そうだよ!!」

 もうやだ、恥ずかしい。

 ルカは、正臣に襲われていた。
 男の色気全開である。抱かれる立場である彼のペースになされるがまま翻弄されることになった。


  *


 ついに思いを遂げたルカは、無事、抱く側だった。めでたいことである。
 正臣に押し倒されて、あれよあれよと流され、翻弄され、そのかっこよさにときめくばかりの行為を、抱いた、と果たして言えるのかは、置いておくとして。
 行為としては、確かに抱いた。

 快感の波がようやく落ち着く。正臣をぎゅうぎゅうと抱きしめていた力が抜けて、ルカはべったりと彼の胸にしなだれかかった。
 ルカの膝の上にのった状態の正臣は、その身体を受け止めるように抱きしめてくれた。

「……気持ちよかったか?」

 クククッと楽しげに笑う声が上から降ってきて、ルカはけだるそうに「うん……」と頷いた。

「……すごかった……」

 自分で自慰をするときと違う。イかされた、とでもいうのだろうか、自分の思うタイミングと違うのが、気持ちいい。

「そうか」

 正臣が笑いを噛み殺して相槌をうっているのがわかったが、もう、今のルカは放心状態で、恥じらう余裕もなかった。
 抱いたのはルカだったはずなのに、むしろまだ入っているというのに、事後のそれは、完全に抱かれた側の反応である。
 おかしい。
 ルカは首をひねった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

処理中です...