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2章
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しおりを挟むやるかと言われて挑んだものの、結局、最後まですることはできなかった。
ルカは、人生の厳しさというものを感じていた。途中まではそれっぽいこともできた。というか、された。
そうして、男同士が最後までするとなると準備が必要なのだといって、まねごとだけしかできなかった。
ルカ一人だけ気持ちよくなって終わったことは、不覚としかいいようがない。
なのに、正臣はといえば、上機嫌だった。
ククッと笑いを漏らす正臣はずっと楽しげだ。
「何か、おかしいですか?」
ルカが口を更にとがらせれば、正臣はニヤリと笑う。
「そりゃ、おかしいだろうよ。……こんな綺麗な男が、俺のようないい年した男におっ勃ててるんだ。何の冗談かと思うだろう?」
「……は?」
「お前は、かわいいな」
楽しげに笑って正臣が身を寄せてくる。「ほら、口を開けろ」と囁かれて、重ねられた唇から舌が差し込まれる。くちゅくちゅと水音の立つ交わりのようなキスをして、彼の目は弧を描いた。
「ふ、ふふっ、これで勃つのか。傑作だ」
興奮して頭をもたげたルカのペニスを、正臣が楽しげに弾いた。
「……、馬鹿にしてる!?」
何を楽しんでいるのか理解出来ず、ルカは恥ずかしさをごまかすように悲鳴を上げた。
「逆だ。……逆だよ、ルカ」
優しい声色に、訳がわからない。そのまま抱き寄せられて、宥められるように背中をポンポンと叩かれる。
「そうか。お前は、俺に興奮するのか」
最初からそうと言っているのに、今更そんなことを呟かれても。
ルカは反応に困ってしまう。
「……なあ、ルカ。次はいつにする? そのときは、準備をしてきてやろう」
ルカは抱きしめられたまま、正臣の楽しげな声色を聞く。どんな顔をしているのかは見えなかったが、気分が良さそうにしているのは伝わってきた。
「……正臣さんの都合の付く、一番早い日で!」
ルカには正臣が何を考えているかわからない。正臣の言葉の意図を考えるのを諦めて、半ば自棄になって率直な欲望を言えば、正臣の身体が楽しげに揺れた。
「わかった」
クックと楽しげに身体をゆらしながら正臣が頷く。
これは受け入れられたのだろうか。
結局、正臣の本心はよくわからないまま流された気がした。
本当は、正臣の気持ちもよくわかってないのに、言われるがまま甘え求めていいのか。迷う気持ちは、まだなおルカの中に残る。
正臣の身体だけじゃなく、心も欲しい。けれど、ルカはそう遠くない未来、この国から出て行く。互いに終わりが来るのがわかっている関係だ。
正臣の気持ちはどこにあるのだろう。かといってそれをはっきりさせることに、どれだけの意味があるのか。身体だけでも恋情に応えてくれるというのなら、それ以上を望むのは、身勝手すぎるのではないか。
ルカのことを好きだと正臣は言った。その好きは、今はどこにあるのだろう。本当に以前と同じ恋情なのだろうか。それとも必死なルカにほだされただけか。
わからない。
あの優しい視線にこもる気持ちは、何なのか。
何もわからないまま、好きだからこそ抱かせるのだといった正臣の言葉に、縋るしかなかった。
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