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2章
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しおりを挟むなんとかうまく嫌われないように、この状況を躱したい。
でも本心を答えなかったら、正臣はこのまま冗談で流していってしまうのではないか……そんな気もする。
そこまで考えて、ルカは息をのんだ。
もしかして、そういう事か?
くれてやると彼は言った。それが全てだとしたら? それを受け取れないのなら知ったことではないと、ルカの本気を試されているのだとしたら? 冗談で流しても許されるように?
だから正臣さんは私を試すように見てるのか? ……怖じ気づいた私が、逃げられるように?
その可能性に思い至って、ぞわりと総毛立つような恐れが走った。ごまかすとこのまま正臣を失う気がする。怯えて身を引くと、二度と正臣は距離を詰める隙を見せない気がする。
ルカが正臣を絡め取ろうとしたところで、敵うわけがない。相手はルカよりも一枚も二枚も上手だ。なら、正臣が示した道を真正面から進むしかない。
ルカは身を正して正臣を見た。
「抱きたいです。あなたが欲しいです」
私は、本気だ。
伝われと、目を見てはっきりと言い切る。けれど不安で声が震えてしまった。本当にこの選択で正臣に嫌われないのか。本当に望んで大丈夫なのか。
楽しげに笑う正臣から、目をそらしたいような不安が込み上げたが、今、伝えなければ、曖昧なこの関係は、どうにもならないのだと自分に言い聞かせた。
ルカが伝えなければ、正臣は二度とルカの気持ちに踏み込んでこないとしたら。そんなのは嫌だ。このまま躱され続けるのは嫌だ。
正臣の本心がわからなくてもいい。ルカに身体を差し出すほどの情があるというのなら、それで。
前みたいな恋情でなくてもいい。本当は嫌だけど、我慢する。だから正臣さん、冗談で流さないで。
「好きです。あなたが好きなんです……」
おそるおそる手を伸ばした。
笑顔の彼の頬に触れれば、正臣がふわりと表情を和らげた。
正臣はずっと笑顔だった。でも、触れた瞬間、正臣の何かが変わったのだ。もしかしたら、正臣も緊張をしていたのかもしれない。だとしたら、きっとこれで、よかったんだ。
「……そうか」
穏やかな声だった。
それだけで間違えていなかったと思えた。ほっとした。
触って良いのだ。求めても許されるのだ。
頬に触れたルカの手の上に、重ねるように正臣の手が添えられる。あたたかくて、きもちいい。
向けられた正臣からの感情に泣きたいほどの喜びが込み上げる。
頬に触れたまま身を寄せれば、ルカの望んだまま、ふわりと唇が触れ合った。正臣がそれを受け入れていた。許されているのを感じる。
嬉しい。反面、緊張した。ルカは本当にこれでいいのかと思いながらこぼれた吐息を震わせた。
これは家族や親しい者達との触れ合いとは違う。東国人たちは挨拶にキスなどしない。するのは閨で色事をするときぐらいらしい。
男らしい硬派な顔立ちだというのに、彼の唇は思いのほか柔らかで、それに驚いたルカの身体は震えた。
それに満足して、ルカは一度身体を離そうとした。が、引きかけたルカの頭を、大きな手の平が拒んだ。ぐっと抱き込まれるように頭を押さえつけられる。
「……んん!?」
戸惑うルカに、正臣の口が噛みつくように深く重ねられた。
ぬるりと差し込まれた正臣の舌に絡め取られて、ルカは、うくん、うくんと必死に応える。
突然のことに、訳がわからない。頭が焼き切れそうだ。
呆然とするルカに、正臣がニヤリと笑う。
「じゃあ、やってみるか?」
戸惑いながらも興奮が抑えられないルカの目の前で、正臣が見せつけるようにシャツのボタンを一つ外した。
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