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1章
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しおりを挟むいっそのこと正臣を無理矢理にでも閉じ込めて、自分の物にできてしまえたら良いのに。押さえつけて、無理矢理奪って、縛り付けられたら良いのに。
以前考えた妄想が、再び心をくすぐる。
正臣の体を押し倒して、その両腕を掴み、口付けたい。自分の物だと感じたい。
彼は、どうするだろうか。
正臣を床に縫い付ける自分を想像して、ルカはぞくりと震えた。
彼の驚く表情が簡単に思い浮かぶ。
ルカの妄想の中の正臣は、従順だった。ルカの全てを受け入れてくれるままの正臣が浮かぶ。そんなわけないと訴える理性を無視して、ルカは正臣に触れる妄想を続けた。
私はおかしい。
ルカは正臣のあられもない姿を想像しながら自覚する。
正臣はルカのことを女だと思っている。当然、ルカのことを抱かれる側だと思っているはずだ。
漠然とだが、ルカもそう思っていた筈だった。なのに何度も繰り返す自慰の中で、気付いたことがある。
ルカは、正臣から抱かれる妄想を、一度たりともしたことがない。
肌を合わせることを何度も思い浮かべた。触れ合って、キスをして……。
しかし、そんな風に想像した何もかもは、ルカが男として正臣に触れていたものだ。
明確に考えたこともなかったが、どう考えても、正臣に抱かれているものではない。ルカが正臣に感じる欲は、男が女に抱く欲に限りなく近いものだった。
押し倒して口づけたい、驚いた様子で見上げてくる正臣を組み伏せたい。
そうはいっても、正臣がルカを抱きたいと言ってくれるのなら、それでもかまわなかった。けれど本心は、抱かれるよりも抱きたいと思っている。
自身を穿ち、彼を鳴かせたい。
その考えは、ひどく心にしっくりときた。
自分の感じている物が明らかになって、抱いているその欲に、ルカは驚いた。
けれど自覚してしまえば、思い浮かべる行為が明確にそちらへと流れた。
正臣さん、私を受け入れて。正臣さん。
妄想の中の正臣は、ルカを受け入れて、気持ちよさそうに喘ぐ。
かわいい。正臣さん、かわいい。すき。だいすき。
まぶたを閉じたまま達する快感の中、まぶたの奥で正臣が笑った。彼の中で果てるルカを、彼は笑いながら手を伸ばし撫でるのだ。
そんなこと、あり得ないのに。けれど、彼の笑顔が脳裏から離れない。
妄想は、幸せで、虚しい。
正臣の情はルカに向いているのに、本当のルカのことを好きなわけじゃない。
正臣が抱かれてくれるわけがない。彼にとってルカは女だ。二人に未来はないのだ。
泣きたい思いで、意味のない懇願を心の中で繰り返す。
でも、あなたが好きなんだ。
私が男だと気付いて。
どうか男だと気付かないで。
そのままの私を愛して。
私を男だと知っても嫌わないで……。
本人に言えない想いが胸の中で渦巻く。
あの人が欲しい、と小さく呟いた。
正臣にとって、男の自分はそういう対象ではないとわかっているのに、当たり前のように彼を抱く想像を捨てられない。あの、どう見ても頼りになる大人の男といった風情の正臣に、抱きたいという欲情を持った自分はきっとおかしいのだろう。
私は、手に入らない男に、恋をした。
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