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1章
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しおりを挟む「さて、他に用事はあるのか?」
「いえ、おかげさまで入り用の物が買えました。ありがとうございます」
本当は、もう少し町中を確認しておきたかったが、この状態でこれ以上目を付けられるのはよくない。今日は戻っておこう。
「では、家まで送ろう」
……もしかして私、めちゃくちゃ警戒されてない? なんでそこまで? か弱い女の子だよ? もしかして男だってバレてる? いやいや、異国人顔だから、むしろ性別わかりにくいはずだ。となると美女だから引き留めたいのか?
しかし、一条という軍人はどう見ても三十を超えてる。
ところでルカは十八だ。とっくに成人しているとはいえ、正臣から見れば子供のはずだ。だが手を貸さなければならないと思わせるほどの子供ではない。むしろこの国の人からしたら、実年齢より老けて見える程度かもしれない。
……そうか! それでか!!
西国の人間からすると、ルカは結構な童顔である。時には十四、五の女の子と間違われることさえある。しかし、東国の女性は顔立ちがおぼこいまま老ける。ルカの顔立ちだと、二十歳はとうに過ぎているようにすら見えるらしいのだ。女装していなくても、ルカは童顔と異国人顔のせいで、東国の者からは性別さえ迷われるほどだ。
つまり、西国の妙齢の女性に見えるからこそ、裏を疑われているのだ。
ならばルカとしては、ここは疑われないように、無害な子供アピールをした方が良いかもしれない。
「あの、一人で帰れます。至らないように見えてしまうかもしれませんが、私、もう十八です。こんなにお気遣いいただかなくても……」
これでどうだ!! 一人でできるもん! 作戦!!
大人なんだからね! というと、余計に幼く見えてしまう作戦である。……そう、今までの実体験として、これを言うと、絶対に子供扱いされる台詞である。
ちくしょう! 私、もう大人なのに!!
「……じゅうはち」
案の定、目の前の男は年齢を聞いて固まった。
目を見開いて見下ろすほどか……。思惑通りなのに、納得がいかない。
そんなに若いと思わなかったって? 「こどもじゃないか……」って呟いたの聞こえてんだぞ! いや子供じゃないし。なんで十八が子供なんだよ! 東国の成人十六だろ? なんなら十四で嫁いでる子知ってるぞ!? 私なんてちゃんと乳母も偽姉も守ってここまできたのに……!
狙い通りの結果だというのに、なぜかとても不本意である。
「……なおのこと送ろう。また、いらぬ輩に絡まれてしまっては、助けた甲斐がない」
「……ありがとうございます」
挙げ句、作戦失敗であった。
……くそぅ。仮住まいの場所もバレてしまうってことか……。
とはいえ、この日のルカの一番の目的は、軍人崩れに絡まれる前に終わらせている。西国へ渡る船の空きが出たときに知らせがくるよう渡りをつけることができたのだ。
ちょっと目をつけられたのは痛いが、後はおとなしく潜伏するだけだ。おとなしく送られておけば、これ以上軍人と関わることなどないだろう。
それでもうまいこと理由をつけて途中で正臣と別れるつもりだったルカだが、そう上手くはいかなかった。
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