地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

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「そ、う、ですね。……俺、帰らな、きゃ」

帰りたい、ではなく、帰らなきゃ、と言った。嘘をつくにしても、これがぎりぎりだ。

「……きっと、待ってる人もいるんだろうね」
「……」

俺は黙ってうつむいた。そんな人いるわけない。
シルヴァンは、それを肯定だと捉えたようだ。
俺の手を握る指に力がこもり、静かだけどはっきりとした声で「絶対に帰してあげるからね」とつぶやいた。





丘のふもとにたどり着き、街が近づいてくると、シルヴァンはローブのフードをかぶるよう俺に言った。
救世主として俺の顔は世界に広まっているらしい。
このローブには魔法がかけられており、フードをかぶった状態だと、まわりから気づかれにくくなるそうだ。

「ここが、エメラの街だよ」
「わあ……」

初めて足を踏み入れた異世界の街は、リアルとファンタジーが融合したような、不思議な雰囲気のところだった。
煉瓦が敷かれた道に、やっぱり煉瓦造りの家々。
でも空を見上げると高層ビルがにょきにょき伸びている。
至るところに花壇や街路樹があって、街の中は色とりどりの草花であふれている。

「す、すてきなところ、ですね」
「気にいってくれた？」
「はい」