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「おはよう、シエル。遅くなってごめんね。……ああ、洋服着てくれたんだね。すごく似合ってる」
「お、おはようございます……、えっと、ありがとうございます」
「せっかくだから、また髪をセットしてもいい?」
「あ、はい……」

バスルームに連れて行かれて、髪に触れられる。慣れた手つきで俺の頭をセットするシルヴァン。
いい匂いのするクリームをつけた指先が踊るように動く様子が、鏡の中に映っている。

「ほら、かわいくなった」

この前よりもカジュアルな感じに整えられた髪。
長い前髪が上げられて、おでこがまる見えになっている。くせ毛気味な髪の毛をうまく利用して、くしゅくしゅした感じ……なんか、ちょっとパーマっぽく仕上がってる……?気がする。
お祝いの夜よりアンニュイ?っていうか、なんか、うん、慣れないけど……シルヴァンが褒めてくれるなら、いいか。

「あとはローブだね」
「は、はい」

シルヴァンから贈られた箱の中に、焦茶のローブも入っていた。魔法防御+150みたいな雰囲気のローブだ。あまり華美ではないけど、凝った刺繍が袖口に施されている。
シルヴァンはそれを俺に着せてくれた。
ボタンの代わりに、同色のりぼんで前を留めるようになっていて、シルヴァンはりぼんをキュッと結んでくれる。
……あ。近い。
とか、意識、しちゃうじゃん。
これって、デートなんですか?って思いきって訊いてみたい。けど、ばっさり否定されたらと思うと、怖くて訊けない。
りぼんのかたちを整えてくれるシルヴァンを、じっと見つめる。見つめるっていうか、見惚れる?
お母さん譲りの美貌。けど、ただ綺麗なだけじゃなくて、輪郭とか鼻すじとか、骨格の感じが、ちゃんとしっかりり男の人で、かっこいい。
きれいで、かっこよくて、優しくて、見てるとそわそわした気持ちになるし、一緒にいると胸がどきどき、する。

「よし、と」

シルヴァンが顔を上げた。
ガン見していたから、ばっちり目が合ってしまった。
シルヴァンは何も言わずに微笑んで、当たり前のようにキスした。
……たぶん、キスしてほしい顔を、俺はしちゃっていたんだと思う。
最近すぐそういう気分になって、困る。
すごく困るけど、シルヴァンにキスされると気持ちよくて、「困る」がすぅっと、とけていく。
深くて長いキス。
やばい、出かけられなくなっちゃそう……と思い始めたタイミングで唇が離され、「そろそろ行こうか」とシルヴァンは俺の頬を撫でた。
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