40 / 44
40
しおりを挟む
翌朝。
顔を洗い、歯を磨いていると、ノックの音が聞こえた。
シルヴァンだ、と思いドアを開ける。
ところが、そこにいたのは弟の方だった。
エリオット。と、……ゼインも一緒だ。
俺は反射的に扉を閉めそうになった。
エリオットはともかく(でもシルヴァンもいないし緊張するけど)、ゼインは苦手だ。ってゆうか、俺ゼインに嫌われてるし。
俺を嫌いなやつはいっぱいいるけど、俺だってべつにお前のことなんか好きじゃないし。嫌われたってダメージないし!とか頑張って思ってはみるものの、やっぱりしんどい。つらい。
てか、なんで来た?また嫌味を言いに来たのだろうか。
「シエル、おはよ~」
「お、おは、おはよ、ございます」
エリオットがひらひらと手を振った。
笑顔はやっぱりお母さんそっくりで、シルヴァンにもよく似ている。そのとなりには、あいかわらず無表情なゼイン。大きな箱を抱えるようにして持っている。
「おはようございます」
「あ、おはよ、ございます……」
棒読みながら、ゼインもあいさつをしてくれたので頭を下げる。
エリオットが「おはようだけじゃなくてさ、言うことあるでしょ」とゼインを肘でつついた。
眼鏡をかけた端正な顔が微かに、ひく、と動く。
ほんの数ミリ眉間にしわが寄る。
ま、また何か嫌味を言われるんだろうかと俺は身がまえる。
エリオットが苦笑した。ゼインの背中を押す。
「お前のせいでシエルが怯えてるじゃん。この間、ひどいことを言ったんだろー?ちゃんと謝れよ、ほら」
「シエル、様」
「は、はい」
「先日は……、大変失礼なことを申し上げて、大変申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします」
「ちゃんと頭下げて。ごめんなぁ、シエル。ゼインが言いがかりつけたんだって?ほら、最初に屋敷に来た日。あれ八つ当たりだから。てか、俺のせい。ほんとごめん、まじで」
「はあ……」
話が見えない。
いや、ここへ来た日のことを言っているんだと言うことは分かる。
けど、八つ当たり?とかエリオットのせい?とか。
困惑して固まる俺に、一歩前近づいてきたゼインが視線を逸らしながら言った。
「……エリオット様のおっしゃるとおりです、本当に申し訳ございません」
「ゼインはあのときご機嫌ななめだったんだよ。妙な噂を信じちゃってさ」
「うわ、さ……?」
「そ。俺が国王陛下の御令姪サマと婚約間近~みたいなウワサ」
「ゴ、レイメイ、サマ?」
「……陛下の姪御様のことですよ」
心なしか多少柔らかな声でゼインが教えてくれる。
「エリオット様は、陛下の御令姪様に、乗馬を教えているんです。年は10も下の方ですが、利発で聡明な方です。大変な美姫でもいらっしゃいます」
「そう、すごくいい子だよ。けど、ゼインの方がずっと美人だし、頭もいい」
「……不敬ですよ」
「こんくらい言わなきゃ、お前すぐやきもち焼くじゃん」
「そんな、ことは」
「なくないだろ?噂なんか信じて、嫉妬して、焦って、屋敷に来たばかりのシエルに八つ当たりした。違う?」
「……ち、がわない、です」
「なあ?」
「っ、ですから、俺は謝っているじゃないですか」
蒼白く見えるくらい真っ白なゼインの頬が真っ赤になる。
俺は気がついた。
……あ。これ痴話喧嘩だ。俺、痴話喧嘩に巻きこまれたんだ……。
あー、勘弁してほしい。よそでやってくれよ……。
顔を洗い、歯を磨いていると、ノックの音が聞こえた。
シルヴァンだ、と思いドアを開ける。
ところが、そこにいたのは弟の方だった。
エリオット。と、……ゼインも一緒だ。
俺は反射的に扉を閉めそうになった。
エリオットはともかく(でもシルヴァンもいないし緊張するけど)、ゼインは苦手だ。ってゆうか、俺ゼインに嫌われてるし。
俺を嫌いなやつはいっぱいいるけど、俺だってべつにお前のことなんか好きじゃないし。嫌われたってダメージないし!とか頑張って思ってはみるものの、やっぱりしんどい。つらい。
てか、なんで来た?また嫌味を言いに来たのだろうか。
「シエル、おはよ~」
「お、おは、おはよ、ございます」
エリオットがひらひらと手を振った。
笑顔はやっぱりお母さんそっくりで、シルヴァンにもよく似ている。そのとなりには、あいかわらず無表情なゼイン。大きな箱を抱えるようにして持っている。
「おはようございます」
「あ、おはよ、ございます……」
棒読みながら、ゼインもあいさつをしてくれたので頭を下げる。
エリオットが「おはようだけじゃなくてさ、言うことあるでしょ」とゼインを肘でつついた。
眼鏡をかけた端正な顔が微かに、ひく、と動く。
ほんの数ミリ眉間にしわが寄る。
ま、また何か嫌味を言われるんだろうかと俺は身がまえる。
エリオットが苦笑した。ゼインの背中を押す。
「お前のせいでシエルが怯えてるじゃん。この間、ひどいことを言ったんだろー?ちゃんと謝れよ、ほら」
「シエル、様」
「は、はい」
「先日は……、大変失礼なことを申し上げて、大変申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします」
「ちゃんと頭下げて。ごめんなぁ、シエル。ゼインが言いがかりつけたんだって?ほら、最初に屋敷に来た日。あれ八つ当たりだから。てか、俺のせい。ほんとごめん、まじで」
「はあ……」
話が見えない。
いや、ここへ来た日のことを言っているんだと言うことは分かる。
けど、八つ当たり?とかエリオットのせい?とか。
困惑して固まる俺に、一歩前近づいてきたゼインが視線を逸らしながら言った。
「……エリオット様のおっしゃるとおりです、本当に申し訳ございません」
「ゼインはあのときご機嫌ななめだったんだよ。妙な噂を信じちゃってさ」
「うわ、さ……?」
「そ。俺が国王陛下の御令姪サマと婚約間近~みたいなウワサ」
「ゴ、レイメイ、サマ?」
「……陛下の姪御様のことですよ」
心なしか多少柔らかな声でゼインが教えてくれる。
「エリオット様は、陛下の御令姪様に、乗馬を教えているんです。年は10も下の方ですが、利発で聡明な方です。大変な美姫でもいらっしゃいます」
「そう、すごくいい子だよ。けど、ゼインの方がずっと美人だし、頭もいい」
「……不敬ですよ」
「こんくらい言わなきゃ、お前すぐやきもち焼くじゃん」
「そんな、ことは」
「なくないだろ?噂なんか信じて、嫉妬して、焦って、屋敷に来たばかりのシエルに八つ当たりした。違う?」
「……ち、がわない、です」
「なあ?」
「っ、ですから、俺は謝っているじゃないですか」
蒼白く見えるくらい真っ白なゼインの頬が真っ赤になる。
俺は気がついた。
……あ。これ痴話喧嘩だ。俺、痴話喧嘩に巻きこまれたんだ……。
あー、勘弁してほしい。よそでやってくれよ……。
18
お気に入りに追加
2,829
あなたにおすすめの小説
美形×平凡のBLゲームに転生した平凡騎士の俺?!
元森
BL
「嘘…俺、平凡受け…?!」
ある日、ソーシード王国の騎士であるアレク・シールド 28歳は、前世の記憶を思い出す。それはここがBLゲーム『ナイトオブナイト』で美形×平凡しか存在しない世界であること―――。そして自分は主人公の友人であるモブであるということを。そしてゲームのマスコットキャラクター:セーブたんが出てきて『キミを最強の受けにする』と言い出して―――?!
隠し攻略キャラ(俺様ヤンデレ美形攻め)×気高い平凡騎士受けのハチャメチャ転生騎士ライフ!
激レア能力の所持がバレたら監禁なので、バレないように生きたいと思います
森野いつき
BL
■BL大賞に応募中。よかったら投票お願いします。
突然異世界へ転移した20代社畜の鈴木晶馬(すずき しょうま)は、転移先でダンジョンの攻略を余儀なくされる。
戸惑いながらも、鈴木は無理ゲーダンジョンを運良く攻略し、報酬として能力をいくつか手に入れる。
しかし手に入れた能力のひとつは、世界が求めているとんでもない能力のひとつだった。
・総愛され気味
・誰endになるか言及できません。
・どんでん返し系かも
・甘いえろはない(後半)
異世界転移した男子高校生だけど、騎士団長と王子に溺愛されて板挟みになってます
彩月野生
BL
陰キャ男子高校生のシンヤは、寝て起きたら異世界の騎士団長の寝台に寝ていた。
騎士団長ブライアンに求婚され、強制的に妻にされてしまったが、ある日王太子が訪ねて来て、秘密の交流が始まり……騎士団長と王子の執着と溺愛にシンヤは翻弄される。ダークエルフの王にまで好かれて、嫉妬に狂った二人にさらにとろとろに愛されるように。
後に男性妊娠、出産展開がありますのでご注意を。
※が性描写あり。
(誤字脱字報告には返信しておりませんご了承下さい)
異世界に落っこちたら溺愛された
PP2K
BL
僕は 鳳 旭(おおとり あさひ)18歳。
高校最後の卒業式の帰り道で居眠り運転のトラックに突っ込まれ死んだ…はずだった。
目が覚めるとそこは見ず知らずの森。
訳が分からなすぎて1周まわってなんか冷静になっている自分がいる。
このままここに居てもなにも始まらないと思い僕は歩き出そうと思っていたら…。
「ガルルルゥ…」
「あ、これ死んだ…」
目の前にはヨダレをだらだら垂らした腕が4本あるバカでかいツノの生えた熊がいた。
死を覚悟して目をギュッと閉じたら…!?
騎士団長×異世界人の溺愛BLストーリー
文武両道、家柄よし・顔よし・性格よしの
パーフェクト団長
ちょっと抜けてるお人好し流され系異世界人
⚠️男性妊娠できる世界線️
初投稿で拙い文章ですがお付き合い下さい
ゆっくり投稿していきます。誤字脱字ご了承くださいm(*_ _)m
異世界トリップして10分で即ハメされた話
XCX
BL
付き合っていると思っていた相手からセフレだと明かされ、振られた優太。傷心での帰宅途中に穴に落ち、異世界に飛ばされてしまう。落ちた先は騎士団の副団長のベッドの上。その副団長に男娼と勘違いされて、即ハメされてしまった。その後も傷心に浸る暇もなく距離を詰められ、彼なりの方法でどろどろに甘やかされ愛される話。
ワンコな騎士団副団長攻め×流され絆され傷心受け。
※ゆるふわ設定なので、騎士団らしいことはしていません。
※タイトル通りの話です。
※攻めによるゲスクズな行動があります。
※ムーンライトノベルズでも掲載しています。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる