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俺なんか着飾ったって馬子にも衣装にすらならないと思う。
けど、シルヴァンがあんまり張り切っているので、断るのが申し訳なくて「……じゃあ、ちょっと、だけ」と了承してしまった。
「ありがとう、かわいくしてあげるからね。任せて」
かわ……?
どうせならかっこよくしてほしいなあと思うけど、シルヴァンみたいな超美形にそんなこといえなくて、あいまいに笑って首をかしげた。
「うわあ、ほら、見て。見てごらん、シエル、とってもかわいい!すっごくいいよ!」
「ぅ……そ、そう、ですか……?や、やっぱり、似合ってない……ような……」
「自信を持ちなさい。素敵な仕上がりだよ。保証する。私の救世主様は、すごくかわいらしい」
「はあ……」
目の前の大きな鏡には、確かにいつもと違う俺の姿が映っている。
パッと見派手なキラキラしたジャケットは、ベースが濃紺だからか、着てみるとそこまで浮いた感じもしない。同じ素材の細身のパンツもぴったり合っていて、なんかちょっとスタイルよく見える?かも……。
なによりも違うのは髪型だ。
長い前髪を耳にかける感じに流してセットされて、いつもは隠れてる……というか隠している、おどおどしがちな奥二重の目が見えている。眉も軽く整えてもらった。
見違える、とまではいかない。しょせん土台は俺だから。……でも、ふだんよりは断然いい……かもしれない。
かわいい、とはぜんぜん違う気がするけど……。
けど、シルヴァンが喜んでくれるなら、いいか。
へら、と笑う。鏡の中でシルヴァンと目があった。にっこりと、笑い返してくれる。
「ん、っ♡」
ちゅ♡
突然頬にキスをされ、鏡の中の俺の顔が、見る見るうちに真っ赤になった。
「えぁ、な、なに、なんで、」
「シエルがあんまりかわいらしくてね。嫌だった?」
「や、ぃ、や、じゃない、けど、び、びっくり、した」
「ふふ、ごめん。だけど、本当によく似合ってる。……あ、すこしタイが曲がっているかな。こっちを向いて」
「あ、はい……」
シルヴァンが結んでくれた細身のネクタイ。長い指が、角度を直してくれる。
「よし、と」
「あ、ありが、とう……」
「うん」
視線が、合う。
見つめあうと、やばい、キスしたく、なる。
「シエル……」
「ん」
頬を寄せられ、反射的に目を閉じた。
「かわいい」
「ふ……♡」
さっきと同じ。べつにエッチくない軽いキス。
俺は馬鹿みたいにどきどきする。
「んん♡」
あ、でも、でも、長い。
ついばむ感じじゃなくて、ただぴったりと合わせられる唇。
重なった場所が、どんどん熱を帯びてくる。
やばい、とけそ……♡
唇からとけちゃったら、どうしよう……。
けど、シルヴァンがあんまり張り切っているので、断るのが申し訳なくて「……じゃあ、ちょっと、だけ」と了承してしまった。
「ありがとう、かわいくしてあげるからね。任せて」
かわ……?
どうせならかっこよくしてほしいなあと思うけど、シルヴァンみたいな超美形にそんなこといえなくて、あいまいに笑って首をかしげた。
「うわあ、ほら、見て。見てごらん、シエル、とってもかわいい!すっごくいいよ!」
「ぅ……そ、そう、ですか……?や、やっぱり、似合ってない……ような……」
「自信を持ちなさい。素敵な仕上がりだよ。保証する。私の救世主様は、すごくかわいらしい」
「はあ……」
目の前の大きな鏡には、確かにいつもと違う俺の姿が映っている。
パッと見派手なキラキラしたジャケットは、ベースが濃紺だからか、着てみるとそこまで浮いた感じもしない。同じ素材の細身のパンツもぴったり合っていて、なんかちょっとスタイルよく見える?かも……。
なによりも違うのは髪型だ。
長い前髪を耳にかける感じに流してセットされて、いつもは隠れてる……というか隠している、おどおどしがちな奥二重の目が見えている。眉も軽く整えてもらった。
見違える、とまではいかない。しょせん土台は俺だから。……でも、ふだんよりは断然いい……かもしれない。
かわいい、とはぜんぜん違う気がするけど……。
けど、シルヴァンが喜んでくれるなら、いいか。
へら、と笑う。鏡の中でシルヴァンと目があった。にっこりと、笑い返してくれる。
「ん、っ♡」
ちゅ♡
突然頬にキスをされ、鏡の中の俺の顔が、見る見るうちに真っ赤になった。
「えぁ、な、なに、なんで、」
「シエルがあんまりかわいらしくてね。嫌だった?」
「や、ぃ、や、じゃない、けど、び、びっくり、した」
「ふふ、ごめん。だけど、本当によく似合ってる。……あ、すこしタイが曲がっているかな。こっちを向いて」
「あ、はい……」
シルヴァンが結んでくれた細身のネクタイ。長い指が、角度を直してくれる。
「よし、と」
「あ、ありが、とう……」
「うん」
視線が、合う。
見つめあうと、やばい、キスしたく、なる。
「シエル……」
「ん」
頬を寄せられ、反射的に目を閉じた。
「かわいい」
「ふ……♡」
さっきと同じ。べつにエッチくない軽いキス。
俺は馬鹿みたいにどきどきする。
「んん♡」
あ、でも、でも、長い。
ついばむ感じじゃなくて、ただぴったりと合わせられる唇。
重なった場所が、どんどん熱を帯びてくる。
やばい、とけそ……♡
唇からとけちゃったら、どうしよう……。
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