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説明されてもまったく分からないことって、世の中あるんだな、と俺は思い知らされていた。
シルヴァンが教えてくれたこと。
まじで、理解できない。

この世界には時限爆弾のような呪いが散らばっていること。
その呪いが爆発するまで、あと数年しかないこと。
爆発したら世界は滅びるということ。
呪いを解除するためには古代魔法が必要ということ。
全世界で勢力をあげ、どうにか魔法書らしきものは見つかったが、誰も見たことがない文字で記されていたこと。
研究も虚しくその文字はいまだ解読されていないこと。
この国ーーーアメイユというらしい、アメイユ国王が、夢で神のお告げを聞いた。救世主(俺?)が近くエメラ近郊の森に降臨するという内容だったこと。
その救世主は、黒曜石のような黒髪、黒い瞳を持つ青年だということ(黒曜石はさすがに盛りすぎ)。
そして、その青年が、誰も読めなかった魔法書を解読するということ。

「や、い、いみ、分かんないです」
「けれど現に、きみはこの本を読むことができた。そうだね?」
「そ、そうです、けど……」
「時間がないんだ。魔法書は全部で十冊ある。世界各地に散りばめられた呪いは、そこに載っている古代魔法で解くことができる。協力してくれないか。きみの力が必要なんだ」

ベッドの傍らに傅いて、シルヴァンは俺の手を握った。
真剣なまなざしをぶつけられて、どきどきする。

「それに……御宣託のとおりなら、きみは異界から来たんだよね。もとの世界に帰るための魔法も載っているかもしれないよ」
「あ……」
「こんな言い方は卑怯だと分かっているけれど、……シエル、自分の場所に戻りたくはない?」
「……」

正直に言えば戻りたくない。
あんな人生に帰るならここでのたれ死んだほうがましだ。
……だけど、それを口にするのはみじめだった。
ただでさえ、童貞を自らバラすという愚行を犯しているのだ。これ以上情けない思いはしたくない。

「シエル?……だめかな、お願いだよ。私を助けてほしい。きみだけが頼りなんだ」
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