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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
バトルボール1年決勝②
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バトルボールの試合に臨む1年5クラスの選手、ルビア・スカーレット、フェリカ・シャルトリュー、シアン・ノウブル、ミスズ・シグレ、ルーシッド・リムピッドの5人がコートへと出てくる。
ルビアとフェリカは予選と同じく何の魔法具も持っていなかったが、ミスズは予選と同じ魔法具を右手につけているようだ。
シアンが手にしていたのはエリアボールで使っていたものと同じで、いわゆる狙撃銃と呼ばれる両手で持って構えるタイプの銃に似た形状の魔法具だった。エリアボールで使用していたものより一回り細身で、右肩に担ぐ形で持っていた。エリアボールで使用していたのは、水と風の魔法を発動して競技用ボールを飛ばす仕様だった。しかし、シアンもミスズと同様、黄の魔力は持っていないので、バトルボールに出場するためには魔法具で土の魔法を発動する必要がある。エリアボールで使用したものとは別物の魔法具だろう。
「本当によくあんなにたくさんの魔法具を準備したものよね…」
「ほんまやで。あいつは魔法具作成を何やと思ってるんや。趣味の工作みたいに考えとるんか」
列の一番後ろを歩いてコートに入ってきたルーシッドは、左右の腰にそれぞれ異なる魔法具を装備しているようだった。
「あれは…まぁサンドボールの魔法具やろうな」
「まぁ、ルーシィさんが普通の魔法でバトルボールに出場するんだったら、間違いなく必要でしょうからね」
ルーシッドが利き手の右の腰に装備しているのは、円形の盾のような形状をした魔法具であり、その表面には魔法回路が描かれていた。その魔法具の上部からは持ち手のようなものが突き出していた。
「今回の魔法回路は展開式でなく、一般的な形状のものみたいね」
「せやな。あれは…ソードシールドやろか?にしては少し小さいか?短剣用やろか?」
「盾は魔法回路の最小面積って感じね。それに短剣ってのはちょっと不自然よね。バトルボールの攻撃にはサンドボール以外使えないものね、用途がわからないわ」
「せやなぁ。ほんまあいつの考えることはようわからん。それに左のは…銃か?銃タイプの魔法具は珍しいな。それにあれは…何用なんや?」
魔法界には『銃』という概念は存在している。魔力が低く、低位の生活魔法しか使えない魔法使いによって考案された攻撃用魔法具の1つだ。だが、魔法はもともと離れたところの対象物に攻撃することを得意としている。それに、中距離攻撃用魔法のマジックボールは低位の魔法である。そんな低位の魔法すらまともに使えない魔法使いは、魔法競技に出る機会すらない。決闘などに関しても、近接武器や防具などならまだしも、わざわざ離れた対象物を攻撃するために魔法具を使用する必要はほとんどないため、銃タイプの魔法具は、概念としては存在しているが一般的ではない、というのが今の魔法界の現状と言ったところだ。
「さすがにルーシィさんでもあの大きさに魔法回路を組み込むことはできませんよね。ということは、右の魔法回路で左の魔法具も発動するんでしょうか?」
マリンがそう言うと、シヴァが少し考えて首を振る。
「悪くない読みやけど、それはおかしないか?剣みたくそれ自体を振り回すんやったら、なるべく軽くしよ思てそうするのはわかるわ。でも銃やったら分ける意味ないんとちゃうか?実際んとこ銃の形なんて何でもいいんやから。あの銃身の部分は両手で持って構えやすいようにしたり、照準を合わせやすいようにする意味だけで、魔法的な意味は特にないんやから」
「そうよねぇ…サリーさんはどう思う?何か知らない?」
「そうですね。私はあの2つは別々の魔法具な気がします」
「……え?どういうこと?」
フリージアがサラに話しかけた時、試合開始の合図が鳴る。
それと同時に選手たちは詠唱に入ったり、魔法具を発動させたりと動き出した。
ルーシッドも両方の魔法具に手をかける。右の魔法具の持ち手の部分に手をかけると、魔法回路に黄の魔力が流れる。そして、持ち手についていた引き金を人差し指で引くと、持ち手についていたシリンダーのようなものが回転して妖精の踊りが流れる。魔法が発動したのを確認すると、ルーシッドは左右の魔法具を同時に引き抜いた。
「相変わらずルーシィさんの魔法具は発動が速いわね…」
「あれは…どっちも銃?ますますわからんな…どういう使い分けなんや?」
ルーシッドが右の盾から引き抜いたのは短剣ではなく銃だった。盾は魔法回路と、銃を収めておくホルスターの役割を果たしていたようだ。魔法石は銃の方にはめ込まれているので、銃をホルスターに収めた状態でないと魔法が発動しない仕組みのようだ。
ルーシッドは両手に異なる形状の銃型の魔法具を手にしていた。せっかく先に魔法を発動したにも関わらず、攻撃する素振りは見せずに辺りの様子を伺うルーシッド。数秒遅れで相手選手の1人が魔法を発動させ、サンドボールをルーシッドめがけて放ってきた。ルーシッドはその攻撃を交わすことなく、左手に持った魔法具をサンドボールに向け、狙いを定めて引き金を引いた。
するとサンドボールは急にその形状を維持できなくなり崩れ落ちる。そして、ルーシッドは左手の魔法具と入れ替わりに右手に持った魔法具をかざした。すると、逆再生するかのように再び砂はサンドボールに戻る。だが、そのボールはルーシッドとは逆方向に飛んでいき、相手選手に命中してルーシッドが1点を獲得した。
「なんや……今のは……?
あいつ何したんや?」
ルビアとフェリカは予選と同じく何の魔法具も持っていなかったが、ミスズは予選と同じ魔法具を右手につけているようだ。
シアンが手にしていたのはエリアボールで使っていたものと同じで、いわゆる狙撃銃と呼ばれる両手で持って構えるタイプの銃に似た形状の魔法具だった。エリアボールで使用していたものより一回り細身で、右肩に担ぐ形で持っていた。エリアボールで使用していたのは、水と風の魔法を発動して競技用ボールを飛ばす仕様だった。しかし、シアンもミスズと同様、黄の魔力は持っていないので、バトルボールに出場するためには魔法具で土の魔法を発動する必要がある。エリアボールで使用したものとは別物の魔法具だろう。
「本当によくあんなにたくさんの魔法具を準備したものよね…」
「ほんまやで。あいつは魔法具作成を何やと思ってるんや。趣味の工作みたいに考えとるんか」
列の一番後ろを歩いてコートに入ってきたルーシッドは、左右の腰にそれぞれ異なる魔法具を装備しているようだった。
「あれは…まぁサンドボールの魔法具やろうな」
「まぁ、ルーシィさんが普通の魔法でバトルボールに出場するんだったら、間違いなく必要でしょうからね」
ルーシッドが利き手の右の腰に装備しているのは、円形の盾のような形状をした魔法具であり、その表面には魔法回路が描かれていた。その魔法具の上部からは持ち手のようなものが突き出していた。
「今回の魔法回路は展開式でなく、一般的な形状のものみたいね」
「せやな。あれは…ソードシールドやろか?にしては少し小さいか?短剣用やろか?」
「盾は魔法回路の最小面積って感じね。それに短剣ってのはちょっと不自然よね。バトルボールの攻撃にはサンドボール以外使えないものね、用途がわからないわ」
「せやなぁ。ほんまあいつの考えることはようわからん。それに左のは…銃か?銃タイプの魔法具は珍しいな。それにあれは…何用なんや?」
魔法界には『銃』という概念は存在している。魔力が低く、低位の生活魔法しか使えない魔法使いによって考案された攻撃用魔法具の1つだ。だが、魔法はもともと離れたところの対象物に攻撃することを得意としている。それに、中距離攻撃用魔法のマジックボールは低位の魔法である。そんな低位の魔法すらまともに使えない魔法使いは、魔法競技に出る機会すらない。決闘などに関しても、近接武器や防具などならまだしも、わざわざ離れた対象物を攻撃するために魔法具を使用する必要はほとんどないため、銃タイプの魔法具は、概念としては存在しているが一般的ではない、というのが今の魔法界の現状と言ったところだ。
「さすがにルーシィさんでもあの大きさに魔法回路を組み込むことはできませんよね。ということは、右の魔法回路で左の魔法具も発動するんでしょうか?」
マリンがそう言うと、シヴァが少し考えて首を振る。
「悪くない読みやけど、それはおかしないか?剣みたくそれ自体を振り回すんやったら、なるべく軽くしよ思てそうするのはわかるわ。でも銃やったら分ける意味ないんとちゃうか?実際んとこ銃の形なんて何でもいいんやから。あの銃身の部分は両手で持って構えやすいようにしたり、照準を合わせやすいようにする意味だけで、魔法的な意味は特にないんやから」
「そうよねぇ…サリーさんはどう思う?何か知らない?」
「そうですね。私はあの2つは別々の魔法具な気がします」
「……え?どういうこと?」
フリージアがサラに話しかけた時、試合開始の合図が鳴る。
それと同時に選手たちは詠唱に入ったり、魔法具を発動させたりと動き出した。
ルーシッドも両方の魔法具に手をかける。右の魔法具の持ち手の部分に手をかけると、魔法回路に黄の魔力が流れる。そして、持ち手についていた引き金を人差し指で引くと、持ち手についていたシリンダーのようなものが回転して妖精の踊りが流れる。魔法が発動したのを確認すると、ルーシッドは左右の魔法具を同時に引き抜いた。
「相変わらずルーシィさんの魔法具は発動が速いわね…」
「あれは…どっちも銃?ますますわからんな…どういう使い分けなんや?」
ルーシッドが右の盾から引き抜いたのは短剣ではなく銃だった。盾は魔法回路と、銃を収めておくホルスターの役割を果たしていたようだ。魔法石は銃の方にはめ込まれているので、銃をホルスターに収めた状態でないと魔法が発動しない仕組みのようだ。
ルーシッドは両手に異なる形状の銃型の魔法具を手にしていた。せっかく先に魔法を発動したにも関わらず、攻撃する素振りは見せずに辺りの様子を伺うルーシッド。数秒遅れで相手選手の1人が魔法を発動させ、サンドボールをルーシッドめがけて放ってきた。ルーシッドはその攻撃を交わすことなく、左手に持った魔法具をサンドボールに向け、狙いを定めて引き金を引いた。
するとサンドボールは急にその形状を維持できなくなり崩れ落ちる。そして、ルーシッドは左手の魔法具と入れ替わりに右手に持った魔法具をかざした。すると、逆再生するかのように再び砂はサンドボールに戻る。だが、そのボールはルーシッドとは逆方向に飛んでいき、相手選手に命中してルーシッドが1点を獲得した。
「なんや……今のは……?
あいつ何したんや?」
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