魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

2日目 昼休み

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午前中の日程が終わり昼休みとなった。ルーシッド達のクラスも昼ごはんを食べるために食堂へと来ていた。

「アン、かっこ良かったね~」
アンの幼馴染で、同じパーティーのシャルロッテがそう言った。
「そ、そう?ありがと。緊張したけど、上手くいって良かったわ」
「水の飛行魔法、すごかったな~」
「ルーシィが考案した新魔法ね。入試で出題されたときは、そんなのできっこないって思ったけど、それを完成させてたっていうんだから驚きだわ…」
「でもあれってすごい魔力操作が難しいんじゃない?」
「それに使用する魔力量もすごそう、アンじゃなきゃ無理な作戦だったね」
「んー、まぁ確かに高位の妖精を2人も使役するから、食材の魔力はかなり使うわね。でも、実際の魔法に使う魔力はそうでもないのよ。そこがルーシィの魔法のすごいところだわ。あれは水を無限に作り出しているわけじゃなくて、放出した水を翼に戻すっていう、水を循環させる魔法なのよ。ほんと、よくそんなこと考え付くわよね。
だから確かにバランスを取るのにある程度の慣れが必要だけど、魔力操作に関しては、そこだけに集中できるから意外と楽よ。特に今回は一定の高度で停止するだけだったから、ほとんど魔力操作もいらなかったし。
実際の攻撃に関しても、ほとんど魔法具の補助があったから、狙い定めて引き金を引くだけ。
毎回のことながら、ルーシィにはホント驚かされるわ。なんであんなにポンポンととんでもないアイデアを考え付くのかしら…」
シアンはため息をついた。

「でもアンもこれで一躍1年生筆頭って感じだね」
「え、なっ、なんでよ」
ライムがにこにこしてそう言うと、シアンはしどろもどろで答えた。
「さっき他のクラスの人がアンのこと話してたよ。『水の女神』とか『水の天使』とかっていう二つ名が付いてるみたい」
「なっ、ちょっ、何それ!めちゃくちゃ恥ずかしい!訂正してよ!」
「いや、訂正のしようがないじゃん。『水の悪魔』とかにすればいいの?」
「より悪くしてどうするのよ、もう!」
「まぁまぁいいじゃない。私はアンが注目されて嬉しいよ。だって私たちのアンはすごいんだもん。今まで話題になってなかったのがおかしいんだよ」
シャルロッテもにこにこしながらそう言った。
「でも今回の結果は私の功績じゃないわ。全部ルーシィのお陰…本来ならルーシィがもっと注目されるべきなのよ…私はちゃんと、私の実力によって評価されたいわ」

切なそうに言うシアンを見て、ライムはぽつりと言った。
「…やっぱり、アンはかっこいいよ」


「ねぇねぇ、ヘティー、さっきの私どうだった?」
「そうね、良かったんじゃないかしら。まぁ、土の操作魔法オペレイトマジックの専門家のあなたなら、あれくらいできて当然と言えば当然だけど」
オリヴィアに尋ねられて、そう答えたヘンリエッタ。2人はいつも食堂の大体同じ席で食事をしていた。
「もー、もっと褒めてくれてもいいじゃーん」
拗ねたような態度を取るオリヴィアを横目で見て、ため息をつくヘンリエッタ。

「ヘティー、ごめんね?」
「……何よ急に謝ったりして?また隠れて何かしたの?」
「ちっ、違う違う!そんなんじゃないって!その…ほら、せっかく推薦決まってたのにさ、私のわがままに付き合わせてさ」
「あぁ、その話」

ヘンリエッタの実家、オートロープ家は代々『草木の魔法』を得意とする、ウェストニア公国でも有数の魔法使いの名家だ。『草木の魔法』は、水の魔法によって、特殊な種を発芽・成長させ、草木を操作して用いる魔法のことであるが、オートロープ家はただ単にその魔法が得意だというだけでなく、草木の交配や品種改良を行って、草木の魔法の触媒となる『魔法の種マジックシード』を作る独自の技術に長けていた。今現在、草木の魔法で一般的に使用されているもののうちのいくつかは、オートロープ家が品種改良によって作り出したものだ。ゆえに、オートロープ家はかなり裕福であった。

その一人娘であるヘンリエッタは幼いころからその才能を発揮しており、その才能を認められて、母国のウェストニア公立魔法学院に、全授業料免除の特待生としての推薦入学が決まっていたのだった。そんな素晴らしい評価を受けた愛娘を誇りに思っていたヘンリエッタの両親は、ヘンリエッタが突然、隣国のディナカレア魔法学院を受験すると言い出したので、大いに困惑したものだ。
確かにディナカレア魔法学院は、ディナカレア王国のみならず、各国から受験者が集まる魔法界一の学校であることは間違いない。しかし、それぞれの国にある魔法学院にも様々な特色があり、その面に関して言えばディナカレア魔法学院に劣っているわけではない。とりわけ、ウェストニア公国は、草木の魔法や魔法薬学の分野に関して言えば、ディナカレア魔法学院よりはるかに上だった。
その学院から特待生として声がかかるということは、魔法薬学の分野に関して将来が約束されたようなものである。ヘンリエッタは魔法薬学の道を辞めるという訳でもなく、ただその申し出を断って、わざわざ一般試験を受け直すと言い出したので、両親も訳が分からず、オートロープ家ではかなりの騒動となったのだった。

「別にあなたに付き合ったわけじゃないわ。ただ、自分の事を知らない人たちの中で、自分の力を試してみようと思っただけよ」
「そっか、そうだよね~」
オリヴィアはそれを聞いて少し寂しそうに言った。

「……まぁ、ただ、そうね。あなたが耕した土は良い土だわ。私の植物はあなたの土じゃないと綺麗に成長しないのよね。それも少しはあるかしら。ほんの少しだけよ」

それをきょとんとして聞いていたオリヴィアは、少ししてにや~っとした顔になった。

「え~、ヘティーには私の力が必要だってぇ?そこまで言うなら仕方ないなぁ~。これからも協力してあげないこともないかな~」
「調子に乗らないの」
そう言いながらもヘンリエッタは笑顔だった。
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