63 / 153
第8章 地下迷宮探索編
地下迷宮探索④ 第2階層
しおりを挟む
「ここが…第2階層…」
ルーシッド達は階段を降り、第2階層へと到着した。時間は10の鐘がなったところなので、午後3時くらいである。あと3時間もすると13の鐘(日の入りの鐘)が鳴る。別に地下迷宮なので元々暗いし明かりもつけているし、日の入りの鐘が鳴った後も活動しても特に問題はないのだが、日の入りの鐘以降は地下迷宮でも鐘が鳴らなくなるので時間がわからなくなる。かなり長期間に渡って時間がわからなくなるような状況の場合、数分おきに時間を知らせる道具(一般的には砂時計が用いられる)を用いて時間を測る担当のタイムキーパーを設けることがあるが、今回は一晩だけということもあり、タイムキーパーは準備していなかった。
時間経過がわからない中で不必要に動き回るのは、体力の消耗度合いを見誤ってしまうこともあるので危険である。よって、日の入りの鐘が鳴ったら、区切りの良いところでキャンプを張って休み、体力回復に努める方が良い。
ルーシッド達のクラスは今日中に、すなわちあと3時間で第2階層を踏破することを目標にしていた。
「第1階層とはまた違った雰囲気だね~」
「そうね。かなり広々としているわね」
ライムとシアンがそう話した。
第1階層から下ってきた感覚でもかなり下ってきたという気がしたが、第2階層の天井は高く、第1階層とは違い、地下迷宮であるにも関わらずかなり開放的な印象を与えた。
「でも、ここからだと先まではよく見えないね…どのくらい広がってるんだろう?」
「私が全体を照らしてみる?」
ライムに対して、ルビアがそう言う。
「え、そんなことできるの?」
「まだ3時間しか使ってないから大丈夫よ。寝ている間は使わないし。だいぶ余裕があるから」
「さ、さすがSランク…」
BランクやCランクの魔法使いで照明を担当している者は、すでに一度は照明担当を交代している。
Bランクの魔法使い達の中でも、ペルカ・パーチメントは魔力消費量が少ない魔法のため、あと数時間は使用できる状態である。
Cランクの魔法使い達の最大魔力量は平均して5000マナくらいである。ここから、妖精に与えるお菓子の食材分と、魔法の燃料分を支払うことになる。これは、最初に述べたように、低位の火の魔法や光の魔法であれば、その明かりの大きさにもよるが、自分の周囲を照らせるくらいの明かりで2時間分くらいの魔力量に相当する。
そして、Cランクの魔法使いの魔力再生成可能時間は平均2分間くらいであり、このクラスのメンバーもだいたいそのくらいであった。なので一度、最大魔力量まで使い切ったり、魔法の発動を終了したりすると、2分間は魔法が使えない。
それで、このような場合は二人交代制の形を取って行うのが基本である。1人しか行えない場合は、魔法石や魔法具でカバーすることになる。
この魔力再生成可能時間は最大魔力量まで使い切らなくても、1つの魔法の発動を終了してしまうと生じてしまう。
もちろん、ランクは『純度』『基本属性数』『魔力生成速度』『最大魔力量』『魔力再生成可能時間』の5つの要素の総合値で判定されるため、必ずしもランクが低ければ魔力再生成可能時間が長いというわけではないが、基本的にはランクが高ければ短くなる傾向にある。
魔力は詠唱の一節目の段階で必要であり、この段階で魔力再生成可能時間に達していなければ、魔法は発動しない。ゆえに、次の魔法は必ずこの魔力再生成可能時間が経過してから行う必要がある。
魔法使い達にとって、自分の魔力再生成可能時間を体感で正確に把握できるかどうかが必須のスキルと言える。魔力は生成しようと思うと存在が分かるが、普段自分の魔力の存在を知覚することは不可能である。魔力はゲームなどに存在するMPのように、体内に最大魔力量分が存在しているわけではないからである。
この魔力再生成可能時間は、Aランクの魔法使い達の中では平均すると1分を切っている。やはり、この辺りが才能の違いといったところなのかも知れない。
ちなみにルビアを初めとしたSランクの魔法使いの魔力再生成可能時間は平均5秒程度である。ルビアは3秒、サラは6秒である。これが世界に20人いないと言われているSランクの実力である。
ルビアが肩の辺りに浮かせていた照明用の火に追加詠唱を行うと、火はいくつもに分裂した。そして、ルビアが念じると、地下迷宮の奥深くへと順々に飛んでいき、明かりが広がっていく。
すると、第2階層の全貌が見えてきた。
「すご~い!広いねー!」
そこは1つの階層と呼ぶにはあまりにも広い空間だった。1つの階層の中にも階段や中二階のような段差や坂道などが多くあるようだ。そして、どこまで続いているかわからない吹き抜けの穴が各所に空いていた。
「この穴を下れば下まで行けるんですかね?」
ジョンが先生に尋ねる。
「行けることは行けますよ。ただし、この穴がどこまで繋がってるかはわかりません。第3階層とは限りません。何十メートル先の可能性もあります。
どの穴が第何階層に通じているのか把握していて、下まで降りる手段を有している迷宮探索ギルドのメンバー達はショートカットとして利用しているようですが、今回はやめておいた方がいいと思います」
「そ、そうですね…やめておきます…」
「この階層のどこかに、第3階層に下る階段があります。まずはそれを探しましょう」
ルーシッド達は階段を降り、第2階層へと到着した。時間は10の鐘がなったところなので、午後3時くらいである。あと3時間もすると13の鐘(日の入りの鐘)が鳴る。別に地下迷宮なので元々暗いし明かりもつけているし、日の入りの鐘が鳴った後も活動しても特に問題はないのだが、日の入りの鐘以降は地下迷宮でも鐘が鳴らなくなるので時間がわからなくなる。かなり長期間に渡って時間がわからなくなるような状況の場合、数分おきに時間を知らせる道具(一般的には砂時計が用いられる)を用いて時間を測る担当のタイムキーパーを設けることがあるが、今回は一晩だけということもあり、タイムキーパーは準備していなかった。
時間経過がわからない中で不必要に動き回るのは、体力の消耗度合いを見誤ってしまうこともあるので危険である。よって、日の入りの鐘が鳴ったら、区切りの良いところでキャンプを張って休み、体力回復に努める方が良い。
ルーシッド達のクラスは今日中に、すなわちあと3時間で第2階層を踏破することを目標にしていた。
「第1階層とはまた違った雰囲気だね~」
「そうね。かなり広々としているわね」
ライムとシアンがそう話した。
第1階層から下ってきた感覚でもかなり下ってきたという気がしたが、第2階層の天井は高く、第1階層とは違い、地下迷宮であるにも関わらずかなり開放的な印象を与えた。
「でも、ここからだと先まではよく見えないね…どのくらい広がってるんだろう?」
「私が全体を照らしてみる?」
ライムに対して、ルビアがそう言う。
「え、そんなことできるの?」
「まだ3時間しか使ってないから大丈夫よ。寝ている間は使わないし。だいぶ余裕があるから」
「さ、さすがSランク…」
BランクやCランクの魔法使いで照明を担当している者は、すでに一度は照明担当を交代している。
Bランクの魔法使い達の中でも、ペルカ・パーチメントは魔力消費量が少ない魔法のため、あと数時間は使用できる状態である。
Cランクの魔法使い達の最大魔力量は平均して5000マナくらいである。ここから、妖精に与えるお菓子の食材分と、魔法の燃料分を支払うことになる。これは、最初に述べたように、低位の火の魔法や光の魔法であれば、その明かりの大きさにもよるが、自分の周囲を照らせるくらいの明かりで2時間分くらいの魔力量に相当する。
そして、Cランクの魔法使いの魔力再生成可能時間は平均2分間くらいであり、このクラスのメンバーもだいたいそのくらいであった。なので一度、最大魔力量まで使い切ったり、魔法の発動を終了したりすると、2分間は魔法が使えない。
それで、このような場合は二人交代制の形を取って行うのが基本である。1人しか行えない場合は、魔法石や魔法具でカバーすることになる。
この魔力再生成可能時間は最大魔力量まで使い切らなくても、1つの魔法の発動を終了してしまうと生じてしまう。
もちろん、ランクは『純度』『基本属性数』『魔力生成速度』『最大魔力量』『魔力再生成可能時間』の5つの要素の総合値で判定されるため、必ずしもランクが低ければ魔力再生成可能時間が長いというわけではないが、基本的にはランクが高ければ短くなる傾向にある。
魔力は詠唱の一節目の段階で必要であり、この段階で魔力再生成可能時間に達していなければ、魔法は発動しない。ゆえに、次の魔法は必ずこの魔力再生成可能時間が経過してから行う必要がある。
魔法使い達にとって、自分の魔力再生成可能時間を体感で正確に把握できるかどうかが必須のスキルと言える。魔力は生成しようと思うと存在が分かるが、普段自分の魔力の存在を知覚することは不可能である。魔力はゲームなどに存在するMPのように、体内に最大魔力量分が存在しているわけではないからである。
この魔力再生成可能時間は、Aランクの魔法使い達の中では平均すると1分を切っている。やはり、この辺りが才能の違いといったところなのかも知れない。
ちなみにルビアを初めとしたSランクの魔法使いの魔力再生成可能時間は平均5秒程度である。ルビアは3秒、サラは6秒である。これが世界に20人いないと言われているSランクの実力である。
ルビアが肩の辺りに浮かせていた照明用の火に追加詠唱を行うと、火はいくつもに分裂した。そして、ルビアが念じると、地下迷宮の奥深くへと順々に飛んでいき、明かりが広がっていく。
すると、第2階層の全貌が見えてきた。
「すご~い!広いねー!」
そこは1つの階層と呼ぶにはあまりにも広い空間だった。1つの階層の中にも階段や中二階のような段差や坂道などが多くあるようだ。そして、どこまで続いているかわからない吹き抜けの穴が各所に空いていた。
「この穴を下れば下まで行けるんですかね?」
ジョンが先生に尋ねる。
「行けることは行けますよ。ただし、この穴がどこまで繋がってるかはわかりません。第3階層とは限りません。何十メートル先の可能性もあります。
どの穴が第何階層に通じているのか把握していて、下まで降りる手段を有している迷宮探索ギルドのメンバー達はショートカットとして利用しているようですが、今回はやめておいた方がいいと思います」
「そ、そうですね…やめておきます…」
「この階層のどこかに、第3階層に下る階段があります。まずはそれを探しましょう」
0
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる