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第4章 ギルド体験週間編―3日目
ギルド体験週間3日目⑤ 買い物
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「残念だったね、ルーシィ?」
生徒会ギルドホームを後にし、フェリカがルーシッドにそう問いかけた。
「別に?元々期待なんてしてなかったし。逆に生徒会長が好印象を持ってくれてるのが驚きだったよ。もっと堅物な人かと思ってた」
「確かにそうだね~」
キリエが頷く。
ルーシッド達はキリエに歩くペースを合わせているので、ゆっくりと歩いている。
「にしてもさっきのルビィかっこよかったよねー!
『ルーシッドが生徒会に入らない限り、私が生徒会に入ることはありません。この意思は主席を辞退した時から変わりません』
だって!ルビィ男前!惚れ直しちゃうー!」
「あーもぅ、声マネすなっ!抱き着くなっ!」
フェリカに茶化されて、恥ずかしそうに顔を赤らめるルビア。
抱き着いてくるフェリカを必死に引きはがそうとする。それを見て笑うキリエ。
「でも、ルビアは良かったの?生徒会に入らなくて?」
「だから言ってるじゃない、ルーシィを差し置いて私だけ入るのは筋が通らないわ」
「とか何とか言っちゃって~、ホントは一人だけ違うギルドに入るのが寂しいんでしょー?」
「べっ!別にそんなんじゃないわよ!」
「あー、もうルビィは可愛いなぁー!」
「だから、抱き着くなって!そんなんじゃないって言ってるでしょ!?」
4人は、今日はギルド訪問は終わりにして、買い物に行こうという話になったのだった。
ディナカレア魔法学院内には、文房具や本など、勉強のために必要なものを買うことができる、いわゆる『購買』が存在する。飲食は食堂で自由に行うことができるので、飲食物は売っていない。それら日用品を買うためには外出し、市内にある店に行かなければならない。ちなみに外出に関しては以前にも述べたように、特に厳しい決まりはないので、放課後は自由に友達と買い物に行ったり、遊びに行ったりすることができる。
ルーシッド達は外出許可を得て、セントレア市内へと来ていた。ディナカレア王国の首都セントレアは、ちょうど魔法界の中心部に位置しているということもあり、魔法界の商業の中心地だ。数多くのギルドやレストラン、店、宿、娯楽施設、公共施設などが存在していて、非常に栄えた都市である。
夕方のこの時間になると、一日の仕事を終えて帰路につく人、レストランで食事をする人やたくさんの買い物客などで町はにぎわっていた。
ルーシッドは服屋に立ち寄り、靴下を選んでいた。
「うーん、でもこれだと長さが足りないなぁ…」
『寒いのですか?』
「あぁ、ううん。自分用じゃないんだ。まぁ、エアリーにはいずれにしろ式構築に協力してもらわなきゃだし、言ってもいいかな。実はね…」
ルーシッドがこの前ひらめいたあるアイディアを語る。
『なるほど、さすがルーシィですね』
「やってみないと上手くいくかわからないけどね。でも脚の付け根の部分から動かしたいから、ソックスだとちょっと足りないかなぁ」
『でしたら、靴下止め(ガーターベルト)を使ってはどうですか?』
「あ、なるほど。ちょうど魔法回路を書き込むのにもちょうどいいし、いいね」
次にルーシッドは魔法人形店を訪ねる。
「あら、いらっしゃい。ようこそ、可愛いお客さん」
「こんにちは。えっと、等身大の女性型の魔法人形を見たいのですが…」
「だったら、こっちよ」
店主は店の一角に案内する。そこには数体の魔法人形が椅子に座らされていた。顔の表情まで精巧に作られていて、今にも動き出しそうだ。この人形師はかなり良い腕をしているようだ。
「どれもすごく可愛いですね」
「ありがとう。人形魔法師の方かしら?」
「いえ、違うんですけど…ちょっと魔法人形に興味があってですね。色々試してみたいことがありまして」
「そうなの?
………動かなくてもいいなら、裏に失敗作があるけど?」
店の女主人は少し考えてからそう言った。
「え、それ売っていただけるんですか?」
「失敗作だからただであげるわよ。売り物にはならないけど、壊すのも可哀想で取っておいたやつだから」
「え、本当ですか?でもなんだか悪いですよ…」
「いいのよ。これも何かの縁だわ。その代わり、あなたが人形を使って試したいこととやらが上手くいったら見せてちょうだい」
「わかりました。必ずお見せします」
「ふふ、何だか楽しくなりそう」
ルーシッドが譲ってもらえることになった魔法人形は、売り物に出されているものと比べても遜色ないくらい美しい魔法人形だった。
「すごい…イメージにぴったりです」
「そう?良かったわ。この子もこんな奥にしまわれているより、使ってくれる人のところに行く方が幸せだと思うわ。でもこれ結構大きいけど、どうする?持って帰れる?」
「あ、じゃあ、ディナカレア魔法学院のルーシッド・リムピッド宛に届けてもらえますか?配達のお金はお支払いますから」
「わかったわ。じゃあ後で届けておくわね」
『魔法人形は何に使われるのですか?』
店から出るとエアリーがルーシッドに尋ねる。
「ふふふ~、こればっかりはちょっと教えられないかなー」
『ルーシィが私に隠し事なんて珍しいですね?』
「まぁね~、週末のお楽しみだよ~」
『そうですか、では楽しみにしておきましょう』
ルーシッド達はそれぞれ買い物を終えて集まり、魔法学院に戻った。学院に戻った後は、キリエの荷物を部屋に移し、少し模様替えをした。
ルーシッド達の部屋は3部屋ある。一番大きなリビングルームと大小2つの個室だ。リビングルームには対面式のキッチンと大きなテーブルにゆったりくつろげるソファがある。大きな個室は寝室にしてあり、クローゼットもある。今はベッドを3つ繋げて置いている。小さい個室には、元々大きな個室にも置いてあった分も含めて4つの勉強机が部屋の4隅に並べて置かれている。
キリエの引っ越しと模様替えを済ませたルーシッド達は、食堂に行き夕食を済ませてから部屋に戻り、部屋着に着替えた。
日の入りの鐘(13の鐘)は少し前に鳴ったが、部屋は魔法具のお陰で明るい。昔は日の入りと共に寝ていたのだから、魔法具の発明、文明の利器は素晴らしいものだ。
魔法界においては、日の入りの鐘以降は日の出の鐘(1の鐘)が鳴るまでは鐘は鳴らない。夜の時間はどのくらいの時が過ぎたのかはよくわからないし、誰も気にしない。眠くなったら寝るという感じだ。
ルーシッドは自分の勉強机に座り、エアリーと会話をしていた。会話の内容は明日のレイチェルとの対戦についてだ。
「火炎系の術式を少し増やしたいな。魔法と違って火自体を作り出せるわけじゃないからね。『燃える物質』を考えないと。『爆破』では、水を分解した時に発見した2つの物質を使ってるけど…」
水を分解して得られる気体とはつまり水素と酸素のことである。水素と酸素を混合させたものに点火すると爆発が起こることはわりと知られていると思うが、この魔法界においてそのことを知るものはいない。
『無色の魔力』の正体は『未分化物質』である。どんな物質でもなく、どんな物質にもなり得る物質。それが無色の魔力である。
ルーシッドは主に3種類の使い方をしている。
1つは『無色の魔力』、そのものを使用する術式である。無色の魔力を金属のように化学結合させて使用している。『空間掌握』や、ルーシッドの魔法障壁である『フォートレス』、空中に無色の魔力を敷いてそこを歩く『エアロステップ』、無色の魔力で包んだ部分の空気を圧縮して放出する『エアロカノン』などはこれを用いた魔術である。シンプルではあるが、相手にとっては視認できない分極めてたちが悪い。
2つ目は無色の魔力に特定の物質を引きつけたり、反対に引き離したりする作用を持たせる術式である。これによって、水や金属、砂などを集めて、魔法に似た効果を発揮することができる。
そして3つ目は無色の魔力自体を特定の物質に変化させる術式である。これによってルーシッドは水素を作り出し、空気中の酸素と化合させて爆発させているのである。
「今までの実験の中で発見した物質でいくつか候補があるから試してみようか。目標としてはやっぱり火の魔法みたいに赤い炎が、ごおって燃え上がる感じがいいよね。いかにも強そうって感じを出したいなぁ。あと、火の玉を飛ばしたりしたいなぁ」
『でしたらこういうのはどうでしょうか…』
「……いい!それいい!最高だよ、エアリー!イメージ湧いてきたぁ!」
そんな感じでルーシッドは少し遅くまで実験をしていたのだった。
とても明日、赤の魔法使い最強『完全焼却』の異名を持つレイチェル・フランメルと戦う人には思えない余裕で実験に打ち込むルーシッドだった。
生徒会ギルドホームを後にし、フェリカがルーシッドにそう問いかけた。
「別に?元々期待なんてしてなかったし。逆に生徒会長が好印象を持ってくれてるのが驚きだったよ。もっと堅物な人かと思ってた」
「確かにそうだね~」
キリエが頷く。
ルーシッド達はキリエに歩くペースを合わせているので、ゆっくりと歩いている。
「にしてもさっきのルビィかっこよかったよねー!
『ルーシッドが生徒会に入らない限り、私が生徒会に入ることはありません。この意思は主席を辞退した時から変わりません』
だって!ルビィ男前!惚れ直しちゃうー!」
「あーもぅ、声マネすなっ!抱き着くなっ!」
フェリカに茶化されて、恥ずかしそうに顔を赤らめるルビア。
抱き着いてくるフェリカを必死に引きはがそうとする。それを見て笑うキリエ。
「でも、ルビアは良かったの?生徒会に入らなくて?」
「だから言ってるじゃない、ルーシィを差し置いて私だけ入るのは筋が通らないわ」
「とか何とか言っちゃって~、ホントは一人だけ違うギルドに入るのが寂しいんでしょー?」
「べっ!別にそんなんじゃないわよ!」
「あー、もうルビィは可愛いなぁー!」
「だから、抱き着くなって!そんなんじゃないって言ってるでしょ!?」
4人は、今日はギルド訪問は終わりにして、買い物に行こうという話になったのだった。
ディナカレア魔法学院内には、文房具や本など、勉強のために必要なものを買うことができる、いわゆる『購買』が存在する。飲食は食堂で自由に行うことができるので、飲食物は売っていない。それら日用品を買うためには外出し、市内にある店に行かなければならない。ちなみに外出に関しては以前にも述べたように、特に厳しい決まりはないので、放課後は自由に友達と買い物に行ったり、遊びに行ったりすることができる。
ルーシッド達は外出許可を得て、セントレア市内へと来ていた。ディナカレア王国の首都セントレアは、ちょうど魔法界の中心部に位置しているということもあり、魔法界の商業の中心地だ。数多くのギルドやレストラン、店、宿、娯楽施設、公共施設などが存在していて、非常に栄えた都市である。
夕方のこの時間になると、一日の仕事を終えて帰路につく人、レストランで食事をする人やたくさんの買い物客などで町はにぎわっていた。
ルーシッドは服屋に立ち寄り、靴下を選んでいた。
「うーん、でもこれだと長さが足りないなぁ…」
『寒いのですか?』
「あぁ、ううん。自分用じゃないんだ。まぁ、エアリーにはいずれにしろ式構築に協力してもらわなきゃだし、言ってもいいかな。実はね…」
ルーシッドがこの前ひらめいたあるアイディアを語る。
『なるほど、さすがルーシィですね』
「やってみないと上手くいくかわからないけどね。でも脚の付け根の部分から動かしたいから、ソックスだとちょっと足りないかなぁ」
『でしたら、靴下止め(ガーターベルト)を使ってはどうですか?』
「あ、なるほど。ちょうど魔法回路を書き込むのにもちょうどいいし、いいね」
次にルーシッドは魔法人形店を訪ねる。
「あら、いらっしゃい。ようこそ、可愛いお客さん」
「こんにちは。えっと、等身大の女性型の魔法人形を見たいのですが…」
「だったら、こっちよ」
店主は店の一角に案内する。そこには数体の魔法人形が椅子に座らされていた。顔の表情まで精巧に作られていて、今にも動き出しそうだ。この人形師はかなり良い腕をしているようだ。
「どれもすごく可愛いですね」
「ありがとう。人形魔法師の方かしら?」
「いえ、違うんですけど…ちょっと魔法人形に興味があってですね。色々試してみたいことがありまして」
「そうなの?
………動かなくてもいいなら、裏に失敗作があるけど?」
店の女主人は少し考えてからそう言った。
「え、それ売っていただけるんですか?」
「失敗作だからただであげるわよ。売り物にはならないけど、壊すのも可哀想で取っておいたやつだから」
「え、本当ですか?でもなんだか悪いですよ…」
「いいのよ。これも何かの縁だわ。その代わり、あなたが人形を使って試したいこととやらが上手くいったら見せてちょうだい」
「わかりました。必ずお見せします」
「ふふ、何だか楽しくなりそう」
ルーシッドが譲ってもらえることになった魔法人形は、売り物に出されているものと比べても遜色ないくらい美しい魔法人形だった。
「すごい…イメージにぴったりです」
「そう?良かったわ。この子もこんな奥にしまわれているより、使ってくれる人のところに行く方が幸せだと思うわ。でもこれ結構大きいけど、どうする?持って帰れる?」
「あ、じゃあ、ディナカレア魔法学院のルーシッド・リムピッド宛に届けてもらえますか?配達のお金はお支払いますから」
「わかったわ。じゃあ後で届けておくわね」
『魔法人形は何に使われるのですか?』
店から出るとエアリーがルーシッドに尋ねる。
「ふふふ~、こればっかりはちょっと教えられないかなー」
『ルーシィが私に隠し事なんて珍しいですね?』
「まぁね~、週末のお楽しみだよ~」
『そうですか、では楽しみにしておきましょう』
ルーシッド達はそれぞれ買い物を終えて集まり、魔法学院に戻った。学院に戻った後は、キリエの荷物を部屋に移し、少し模様替えをした。
ルーシッド達の部屋は3部屋ある。一番大きなリビングルームと大小2つの個室だ。リビングルームには対面式のキッチンと大きなテーブルにゆったりくつろげるソファがある。大きな個室は寝室にしてあり、クローゼットもある。今はベッドを3つ繋げて置いている。小さい個室には、元々大きな個室にも置いてあった分も含めて4つの勉強机が部屋の4隅に並べて置かれている。
キリエの引っ越しと模様替えを済ませたルーシッド達は、食堂に行き夕食を済ませてから部屋に戻り、部屋着に着替えた。
日の入りの鐘(13の鐘)は少し前に鳴ったが、部屋は魔法具のお陰で明るい。昔は日の入りと共に寝ていたのだから、魔法具の発明、文明の利器は素晴らしいものだ。
魔法界においては、日の入りの鐘以降は日の出の鐘(1の鐘)が鳴るまでは鐘は鳴らない。夜の時間はどのくらいの時が過ぎたのかはよくわからないし、誰も気にしない。眠くなったら寝るという感じだ。
ルーシッドは自分の勉強机に座り、エアリーと会話をしていた。会話の内容は明日のレイチェルとの対戦についてだ。
「火炎系の術式を少し増やしたいな。魔法と違って火自体を作り出せるわけじゃないからね。『燃える物質』を考えないと。『爆破』では、水を分解した時に発見した2つの物質を使ってるけど…」
水を分解して得られる気体とはつまり水素と酸素のことである。水素と酸素を混合させたものに点火すると爆発が起こることはわりと知られていると思うが、この魔法界においてそのことを知るものはいない。
『無色の魔力』の正体は『未分化物質』である。どんな物質でもなく、どんな物質にもなり得る物質。それが無色の魔力である。
ルーシッドは主に3種類の使い方をしている。
1つは『無色の魔力』、そのものを使用する術式である。無色の魔力を金属のように化学結合させて使用している。『空間掌握』や、ルーシッドの魔法障壁である『フォートレス』、空中に無色の魔力を敷いてそこを歩く『エアロステップ』、無色の魔力で包んだ部分の空気を圧縮して放出する『エアロカノン』などはこれを用いた魔術である。シンプルではあるが、相手にとっては視認できない分極めてたちが悪い。
2つ目は無色の魔力に特定の物質を引きつけたり、反対に引き離したりする作用を持たせる術式である。これによって、水や金属、砂などを集めて、魔法に似た効果を発揮することができる。
そして3つ目は無色の魔力自体を特定の物質に変化させる術式である。これによってルーシッドは水素を作り出し、空気中の酸素と化合させて爆発させているのである。
「今までの実験の中で発見した物質でいくつか候補があるから試してみようか。目標としてはやっぱり火の魔法みたいに赤い炎が、ごおって燃え上がる感じがいいよね。いかにも強そうって感じを出したいなぁ。あと、火の玉を飛ばしたりしたいなぁ」
『でしたらこういうのはどうでしょうか…』
「……いい!それいい!最高だよ、エアリー!イメージ湧いてきたぁ!」
そんな感じでルーシッドは少し遅くまで実験をしていたのだった。
とても明日、赤の魔法使い最強『完全焼却』の異名を持つレイチェル・フランメルと戦う人には思えない余裕で実験に打ち込むルーシッドだった。
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