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第8章√VS 【闇の魂】

第8章21 【第1ステージ】

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ネメシス「何だこりゃぁ?」

 瓦礫を適当に漁っていると、どう見ても後から置かれたと思われる紙切れが現れた。

ネメシス「なになに......『これは挑戦。まずは第1ステージだ』だと?」

 挑戦状......そう受け止めろってことか。全く、どこのどいつだ。こんな馬鹿なことをしやがった奴は......

ネメシス「ちゃ、ちゃれん......」

フェイ「父ちゃん、それ Challenger DarkSoulって読むんだよ」

ネメシス「何だって?」

 西の方の言葉か......オッサンには理解出来ねえよ......って待て!

ネメシス「今、ダークソウルとか言わなかったか?」

フェイ「ああ。差出人はダークソウルって事だよ。ってか、それなんなんだ?父ちゃん」

 なるほどな。自ら名乗りを上げてくれるとは、オッサンでもやりやすい相手だぜ。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァハト「大会の時に喧嘩を売られたとは思っておったが、まさか、直接再販しに来るとはな。はぁ......」

ヴァル「俺は今からでも殴り込みに行くぞ!」

フウロ「落ち着け、ヴァル。この文章には『まずは第1ステージだ』と書いてある」

ヴァル「だから何だよ」

ヴェルド「次があるって話だろ?」

ヴァル「だったら、尚更殴り込みに行くしかねえだろ。何を躊躇う必要があるんだ」

フウロ「ちょっとは賢くなったと思ってたんだがな。はぁ......」

ヴァル「はぁ?」

 全っ然言いたいことが分からねえ。今、動こうとしてるのって俺だけ?なんで、殴り込みに行こうと考える奴がいねえんだよ。おかしいだろ。

フウロ「どう見ても、これは挑発してるとしか思えない」

ヴァル「それがどうかしたか」

フウロ「王国議法その20。ギルド間の抗争を全面的に禁止する。ギルドに入る時、誰もが教えられる内容だろ」

ヴァル「そ、そうだったか?」

 やっべ、記憶にねぇ......みんな呆れた顔してるよ。忘れてるの俺だけかよ!

グリード「第2ステージは、この挑戦状を見た俺達から手を出しに行くってところだなァ。ったく、偉く頭の回る連中だぜェ」

ヴァハト「例え、切っ掛けが向こうにあろうと、直接被害を出しに行けば、儂らが悪いことになる。ここは、ぐっと我慢じゃ」

ヴァル「マジかよ......」

 ギルドをめちゃくちゃにしてくれた奴らの正体が分かってんのに、その訳わかんねえ決まり事で仕返しできねえとか、腹の虫が収まらねえ......

ヴァハト「言っておくが、夜中にこっそりとダークソウルのギルドに向かおうとするなよ?いいか?絶対じゃぞ!」

ヴァル「そもそも俺、ダークソウルの拠点なんて知らねえよ」

フウロ「まあ、道が分からなければ、1人勝手に暴れることもないか。念の為、私が監視しておくが」

ヴァル「何でだよ!」

フウロ「万が一を考えてだ。ヴェルドとかグリードに任せておけば、逆に仲間を付けた状態で行くことになるかもしれんからな」

グリード「ハッ、しっかりしてやがんなァ。つっても、俺もダークソウルの拠点なんぞ興味ねえから、知らねぇんだがなァ」

 お前の場合、酒の銘柄覚えるので必死だろうが。その脳みそ他のところに当てろやゴルァ。

ヴァハト「いいか。変な気を起こそうものなら、即うちのギルドから叩き出してやるからな。フリじゃないぞ」

ヴァル「......分かったよ。大人しくしてる。これでいいんだろ?」

ヴァハト「じーーーーーーーー」

 めっちゃ疑いの目を向けてくるな。確かに、感情的に動くのが俺だけど、抑える時はちゃんと抑えるんだぞ?ネイと同棲してても、これまで1度も手を出したことはねえからな?向こうから出してこようとして来た時は度々あったけども。

フウロ「......やっぱり、心配だ。今日は私がお前の家に泊まろう」

ヴァル「拒否権を行使する!」

フウロ「上司に拒否権など誇示出来ん!」

ヴァル「お前、俺の同期だろうが!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 その晩。

ヴァル「冗談だと思ってたけど、本当に来るとはな」

フウロ「私は嘘をつかない質だ。自らの発言には責任を持つ」

ヴァル「いや、そこ持たなくていいから」

 てか普通に考えてみろ?

 一人暮らしの男の家に女が1人。男と女が2人っきりになる。信用されてるのだろうが、信用されてない。よく分かんねえな。

フウロ「ふむ......冷たいな......」

ヴァル「なに、ネイのベッドを漁ってんだ」

フウロ「いや、こっそり帰ってきてるとかないかなと思ってだな」

ヴァル「ここ1ヶ月は俺1人だよ......」

フウロ「寂しいか?」

ヴァル「......」

 ......どうなんだろうな。

 いつもいつも遅くまで寝てるあいつを叩き起して、シロップに飯やって、そっからギルドに向かってあーだこーだ駄弁った後に依頼を適当に探して出る。そんな日常が、最早当たり前となっていた。

 だが、ここ1ヶ月はそれがない。唯一、シロップの世話だけは任されたままだが、最近はちょっとばかし落ち着いてる。

ヴァル「なあ、1つ聞いてくれるか」

フウロ「......」

 面と向かって話をするのもあれだな。適当に、月でも見ながら喋るか。

ヴァル「......俺は、1年くらい前まではこんな日常になると思ってなかった。訳わかんねぇ侵略者が来て、邪龍とかいうやべー奴と戦って、何故か神様と契約結んで、あーだこーだ騒いで......で、その神様には色んな問題があって、俺の知らないところであいつは成長していって......」

 ......俺は、何のために生きているのだろうか。

 ギルドに入ろうと決めた時、俺は、突然消えたゼグラニルを探すために、その時、1番近かった『グランメモリーズ』に入った。

 それからというもの、これといっためぼしい情報は何も無し。段々と、目的を見失っていった。

 だけど、あいつが来て、俺は、俺が何をすべきなのかに気づきかけていた気がする。気がするだけで、実際には何にも気づいていない。

ヴァル「......だけど、俺はあのギルドが好きだって事だけはずっと思ってたんだ。初代の名前は忘れちまったけど、たくさんの人が今日この日までに、色んなことをして、俺達にまで繋いで来てくれた。その中に、ネイがいるんだ。そして、俺も、ヴェルドも、フウロも、セリカも、みんながいるんだ。だから、俺は、俺達の家とも言えるギルドをぶっ壊した奴らを許せねぇ」

 ......柄にもねぇ事言っちまったかな。だけど、それが今の俺の気持ち。俺は、ダークソウルの奴らを許さねぇ。

ヴァル「っていうのが、俺の心境かな」

 フウロはどう思ってくれるだろうか。そう思って後ろを振り返ってみたんだが......

フウロ「すぅー......すぅー......」

 思いっきり、ネイのベッドで熟睡してやがった。

ヴァル「数分前の自分を殴り飛ばしたい」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ダークソウル......

 どうやら、私が危惧していたものとは違っていたようだ。とりあえずは一安心。だけど、ダークソウルが横に繋がりを持っている可能性もある。

 事と場合によれば、私はここにいられなくなる。

 それだけは嫌だ。1年も暮らして、私はこのギルドが好きになった。離れたくない。

 いつものように帰ってきたこの部屋も、何故だか私の心を表現するかのように暗く見える。

セリカ「......誰もいない......よし」

 自分の家に帰るだけなのに、なぜ、こんなにもビクビクとしているのだろうか。

 やっぱり、大会の後であの人とばったり出会ってしまったことが原因なのだろう。あの時は気づいてくれなかったが、もしかしたら後になって気づかれた可能性もある。そうだとしたら、あの人は何がなんでも私を連れ戻そうとする。例え、このギルドのメンバー全員を殺すことになっても......

 見つかりそうになる度に、私は所属していたギルドから逃げた。マスターにも、仲間にも、誰にも言うことなく、私は逃げた。でも、今回はちょっと違う。

 『グランメモリーズ』というギルドに、愛着が湧いてしまった。あのギルドから離れたくないと思った。

 ......どうか、ダークソウルがお父さんと繋がっていませんように。そう祈るだけだった。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 翌日。

 何やら、昨日以上に崩れたギルドが騒がしくなっており、何があったのだろうと、急ぎ足でギルドの方へと進んだ。

 なぜか、そこには、崩れたギルドの瓦礫に、雑に建てられた大きな柱に括り付けられたエレノアとエフィの姿があった。

グリード「第2ステージは貴様らの勝利だ。だが、勝敗はまだ1対1。第3ステージは我らの勝利だ。Challenger DarkSoulだとよ。気味の悪いことをしやがるぜェ」

セリカ「グリード?」

グリード「今朝、ちょっとばかし早く起きたからって、ここら辺を歩いていたらこれを見つけてなァ。秒で起きてる奴ら全員に知らせに行ったぜェ」

テラーチ「見たところ、爆発物とかそういう系のトラップは何も無かったよ。このまま晒し者にするのも可哀想だ。さっさと縄を解いてやりな」

グリード「分かったァ」

 ......またしても、ダークソウル......。心配しなければならないのだけれど、あの人との関わりが薄くなれば薄くなるほど、私の気持ちが楽になっていく。

 エレノアと、エフィがボロボロな状態で木に括り付けられていたというのにだ。本来、心配しなければならないことに意識を向けることが出来ないでいる。

ヴァル「もう我慢ならねぇ!俺は誰が止めようがアイツらのところに殴り込みに行くぞ!」

ヴェルド「俺もついて行くぞ!ヴァル!」

 昨日、ギルドが破壊された時以上にみんなは気が立っている。当たり前だ。仲間がやられたのだから。それで黙ってられるような人は、人の心を持っていない。

 私は......

ヴァハト「......落ち着け、お前ら」

ヴァル「じっちゃん!俺はもう我慢ならねえぞ!」

フウロ「マスター。私も、流石にここまでやられれば黙っていることは出来ない」

ヴァハト「......仲間がやられて何も思わん奴は、このギルドをやめちまえ」

セリカ「......」

ヴァハト「......なぁにが王国義法その20じゃ。2代目の言葉を借りれば、相手がやって来ようもんなら、儂らがやったところで何も問題はないはずじゃ!......戦争じゃ。ダークソウルの野郎共を、1人残らず叩き潰せーーー!」

「「「 おーーーーーーー!!! 」」」

 みんなは、ダークソウルに仕返しをする気満々でいる。でも、私にはそんな気持ちが湧いてこない。

 どうしても、お父さんとの事が切り離すことが出来ない。関係ない。これだけの事を見れば、ただのギルド間のいざこざに見えるのに。

ミラ「どうしたの?セリカ」

セリカ「......!」

ミラ「何だか、顔色が悪いように見えるわよ?大丈夫......なんて言わないけれど、何かあるなら話してちょうだい?」

セリカ「......ううん。何でもない」

ミラ「そう?」

セリカ「......」

 なぜだろう。悪いことは何も言ってないのに、なぜだか申し訳ない気持ちになってくる。

 ......無理矢理にでも、お父さんの事を忘れなければならない。なのに、なんで、こんなにも不安な気持ちで一杯になるのだろうか。

 ......

 ......

 ......
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