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第6章 【龍の涙】
第6章21 【龍王女】
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ヴァハト「酒じゃー!酒を持ってこーい!」
ミラ「マスター、そんなに飲んだら、またお体を壊しますよ?」
王都に来てまで変わらないこの光景。みんな、酒に酔い潰れて、そこら中で暴れている。一応、いつもの酒場と違って、ちゃんとしたお店なんだけどね。
なんで、6日目の試合に勝っただけでここまで大騒ぎできるかね......
セリカ「......」
レラ「セリカ、もう怪我は大丈夫?」
セリカ「レラ?うん、まだちょっと節々が痛いけど、もう大丈夫」
レラ「そう?」
セリカ「うん。流石はネイりんってところね。今日一晩ゆっくりしてたら完治すると思う」
レラ「......あの子ね、性格は悪いけど、セリカのために一生懸命戦ってくれたのよ」
知ってる。ネイりんもヴァルも、仲間のために命だって捧げられる。1年も過ごしてたら、それくらいの事は分かるから。
ネイ「おぉーい!酒を持ってこーい!妾はこの程度では満足せんぞー!」
セリカ&レラ「「 ゲッ...... 」」
ヴァル「おい!誰だ!こいつに酒を浴びせた奴は!今すぐ出てこい!」
グリード「おォおォおォ!やっぱ神様も酒好きなんだなァガッハッハッ」
ネイ「飲み比べでもしてみるか?」
あ、犯人分かった。
ヴァル「おい!誰なんだ!犯人現れろ!」
いや、今分かりやすいくらいの反応示してた人がいたじゃん!なんで気づかないの!?
ヴァル「仕方ねえ。許せネイ」
ネイ「あふ......」
いつもの腹パンで気絶。そろそろネイりんのお腹あたりが壊れるか、耐性がつくかのどちらかになりそう。
グリード「なんでェヴァル。折角いいところだったのによォ」
ヴァル「お前か犯人は!ネイに酒入り瓶を渡すなって言っただろうが!」
グリード「あァ?知らねえよォ」
シアラ「ヴェぇルぅドさぁま!私が入れたお酒を飲んでくれましたか?」
ヴェルド「だからくっ付くなお前は!で、そのグラスなら、ネイが紅茶と勘違いして飲んでたよ!」
まさかの別方向に犯人発見!?
ヴァル「......なんか疲れたわ」
うん、そうだろうね。激しい試合の後に、こんな大騒ぎなところにいて、疲れない方がおかしい。
グリード「おォ!ヴァル!神様の代わりに、俺と勝負しろやァ!」
ヴァル「殴り合いならいいけど、酒は勘弁だ」
グリード「男のくせに、根性のねえ奴だなァ」
ヴァル「うるせぇよ!」
ヴェルド「ヴァル、そんな事よりも、こいつどうにかしてくれねぇか?」
ヴェルドに、蛇のように巻き付くシアラ。ちょっと苦しそう。
ヴァル「自分でどうにかしてろ!」
ヴェルド「冷てぇ奴だ!氷属性習得してからとことん冷てぇな!」
ヴァル「お前は火属性習得してからとことん暑くなったな!」
属性って、そんな表に出てくるもんなの???
レラ「あはは......うるさい......」
同感です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あ"ぁ......あ"ぁ......」
なんでこんなに疲れてんだろ。俺、ツッコミ系主人公になったつもりはねえんだけどさぁ、なんなの?これ。
セリカ「お疲れ......だね?」
ヴァル「お疲れなんてもんじゃねえよ。酒飲みを抑える立場って、こんなに大変なんだなって感じだ」
セリカ「ごめん。ちょっと何言ってんのか分かんない」
ヴァル「......そういや、セリカ。もう怪我は大丈夫なのか?」
セリカ「うん。そこで酔い潰れてる神様のお陰で、なんとかね」
頬を赤らめて、気持ち良さそうに眠る俺の相棒。まるで、明日への不安は何もないと言った具合に平和そうな顔をしている。
ヴァル「......お疲れ様」
セリカ「お疲れ様、ネイりん......それと、ありがとね」
軽く頭を撫でてやる。
ヴァル「セリカ、ちょっと髪の毛触っていい?」
セリカ「?別にいいけど......」
ああ、なるほどな。
ヴァル「ネイの方がサラサラしてて綺麗だな」
セリカ「ちょっとそれどういう意味よ!」
ヴァル「そのまんまの意味だ」
確かに、最近やたらとシャンプーとかリンスの種類が増えたなとは思ってたが、そんなに髪の毛に命をかけてたとは思わなかったな。言うて、セリカも普通に綺麗に整ってるけどな。
ネイ「......呼ばれてる」
セリカ「うわっ......」
ネイ「呼ばれてる......」
ヴァル「どうした、ネイ」
突然、何かに取り憑かれたかのように立ち上がるネイ。そのまま、酒場の外に出て行く。
ヴァル「ま、待てよネイ!」
ネイ「呼ばれてる......」
セリカ「あ、待ってネイりん!」
止まる様子がない。仕方ないので、ネイの跡をつけていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイ「呼ばれてる......」
何分か歩いてネイりんが目指す場所が、何となく分かってきた。
目指しているのは、王城。王城と言えば、あのゼイラ王女がいる場所だが、まさか......ね。
ヴァル「なあ、あいつ、このままだと王城だけどさ、何に呼ばれてんだろうな」
セリカ「さあ?ネイりんの事だから、何かあるんだろうけど」
ヴァル「そうかなぁ......」
ネイりんの意識はハッキリとしていない。ハッキリとしないまま、王城を目指している。何かあると言うよりも、本当に何かに取り憑かれてるんじゃないだろうか?
ネイ「呼ばれてる......」
ヴァル「あいつ、色んな奴に取り憑かれるからな。普通に、なんかが取り憑いててもおかしくねえんだよな」
セリカ「そういや、そうだったね」
最近は出てくることが少ないけど、ネイりんの中には5つの人格があったんだっけ。それと、プラスしてユミの人格。一応、私がヒロインなのに、ネイりんの方がヒロイン属性高い気がするんだけど、気のせいだよね?
ヴァル「......で、辿り着いちまった訳だが」
その後、数分歩いて、あっという間に王城の目の前。門番がいないのが謎に不気味だ。
ネイ「......ここだ」
突如、足元を覆い尽くすくらいの大きさの魔法陣が出てきて、地面に穴が空いた。
セリカ「わ、わぁぁぁぁぁ!?」
ヴァル「セリカ!捕まれ!」
いつの間にか、ネイを小脇に抱えていたヴァルが、こちらに手を伸ばしてくる。
セリカ「ど、どうするつもり!?」
ヴァル「気合いだ気合だぁ!」
足元に火を灯して、なんとか落下速度を落とそうとする作戦。高所からの落下による骨折は防がれるが、代わりに、変な洞窟へと辿り着いてしまった。
ヴァル「......なんだ?ここは」
セリカ「鉱石がいっぱいくっ付いてる洞窟?しかも、この鉱石、グラレアルじゃない?」
ヴァル「なんだそりゃ?」
セリカ「グランアークでしか取れない希少な鉱石。とても軽くて丈夫だから、刀とか剣を作るのに適してるんだって」
ヴァル「そんなものが王城の地下にねぇ......」
まあ、グランアークで取れるんだから、ここにあっても不思議ではない。この鉱石は、鉱山とかから取れるわけではなく、そこら辺の地下にたまに埋まっている物。
それにしても、こんなにたくさんの鉱石が残ってるってことは、ここは採掘されていないようだ。王都にマナが溢れている理由も、この鉱石が原因なのかな?
ネイ「......あれ、私、なんでこんなところに」
ヴァル「気づいたかネイ」
ネイ「ヴァル?えっと、ここは?」
ヴァル「お前がここまで俺達を連れてきたんだ。むしろ、ここが何なのかを聞きたいのは俺達だ」
ネイ「......記憶がないです」
本当に取り憑かれていたんじゃないだろうか?
ヴァル「しまったな。とっくに穴が塞がれてやがる」
セリカ「えぇ......どうするの?」
ネイ「あ、こっちです」
ヴァル「なんかあるのか?」
ネイ「なんか、呼ばれてる気がするんです......」
そういや、ずっと「呼ばれてる......」って言ってたもんね。
ヴァル「なんかあるんだろうな。行ってみるか」
ネイ「ヴァル......」
ヴァル「どうした?」
ネイ「......疲れて足が......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あぁクソ。なんでいつもいつもお前はこんなんだよ」
ネイ「今更そんなことを言わないでください。常に疲れ気味なんです」
ヴァル「引きこもってばっかりだから体力が付かねえんだよ!」
セリカ「まあまあヴァル、落ち着いて」
ヴァル「落ち着いてられるか!どんだけ歩けばいいんだよ!こんな変わり映えしない場所を!」
ずぅーっと、キラキラした鉱石が並んでいる洞窟。オマケに、ネイを背中に乗せて天井の低い場所を歩いている。嫌でも腰に相当な負荷がかかる。
それに、ゴールが見えないっていうのも精神が病んでいく原因だな。ネイの言うがままに進んではいるが、いつになったら目的の場所に着くのか、それはネイにも分からないらしい。
ヴァル「本当に、いつになったらゴールに......」
そう言いかけた瞬間、目の前に大きな空洞が広がる。
ネイ「ここだ......」
ネイが自分から降りてこの場所に立つ。
ヴァル「なんじゃこりゃ?」
セリカ「龍の......骨?」
巨大な骨の塊。形的には、龍だと思って間違いはないだろう。
ヴァル「なんで、こんな所に龍の骨が......」
ネイ「......ジーク?どうしたの?」
ヴァル「なんか分かったか?」
ジーク「間違いねぇ。こりゃァ、俺の遺体だ」
......なんだって!?
ヴァル「これが、お前の遺体?」
ジーク「ああ。間違いねぇ。これは、大昔の俺だ」
そういや、ジーク達は魂だけの存在とか言ってたか。
セリカ「なんで、こんなところにジークの遺骨があるの?」
ジーク「知らねえよ。俺だってそれが知りたい」
ヴァル「昔、お前はこの場所で死んだとか?」
ジーク「さあな。俺だって昔の記憶はそこまで完璧に残ってるわけじゃねえんだ。ただ、ここに骨があるってことは、昔の俺がここで死んだってことだろうな」
骨に触れて何かを感じ取ろうとしてみるが、特にこれといって何もない。本当にただの骨だ。
ジーク「分かんねぇ。何も思い出せねぇ」
セリカ「......でも、死んでるはずなのに、凄いマナの量だよね」
「貴様ら、そこで何をやっている!」
ヴァル「っ......!」
振り返ると、そこには鎧に身を包んだ髭の濃いオッサンがいた。
「っ......貴様ら、グランメモリーズだな!何故ここにいる!」
セリカ「何でって言われても......」
ヴァル「俺達はネイに付き添って来ただけであって......」
ネイ「え?私のせいですか!?」
いや、事実お前のせいだろ。お前がどっか行かなきゃ俺達もついて行かなかったんだし。
「......なるほど。そういう事か。......ついて来い」
セリカ「え......?」
ついて来いと言ったが、どうする?
ヴァル「なあ、どうするよ」
セリカ「えぇ......でも、ここはついて行かないと、後々面倒なことになる展開じゃないの?」
ネイ「でも、あんなオッサンについて行きたくないですよ」
ヴァル「俺としても、見ず知らずの奴について行くのはゴメンだな。目的も分からねえんだし」
「何をしている?早く来い!」
えぇ......ついて行きたくねぇな。
でも、仕方ねえ。ついて行くか。
ヴァル「なあ、オッサン。どこに連れて行く気だ」
「オッサンじゃない。シドウだ。グランアーク騎士団総騎士長の者だ」
ああなるほど。約立たず集団のお偉いさんか。
シドウ「お前ら、ツクヨミという者は知っているな。そこにいる」
「「「 ゲッ...... 」」」
思い出した。こいつ、確かネイを拐っていった奴らのトップじゃねえか。思い出しただけで殴りたくなってきたが、今は我慢。
ヴァル「うちの仲間に何の用だ」
シドウ「用があるのは私ではない。ゼイラ様だ」
あの王女様かよ......めんどくせえなぁ。
シドウ「あのような強硬手段に出たことは謝っておこう。すまない」
ヴァル「ごめんで済んだら騎士団は要らねえんだよ」
セリカ「ヴァル、この人騎士団長」
そうじゃん。騎士団長じゃん......。
シドウ「私としては穏便に済ませたかった。ゼイラ様が考えている事は、私には分からない」
ヴァル「じゃあ、なんでそんな奴の言うこと聞いてんだよ」
シドウ「我が主だからだ。主の命を叶えるのが、私の仕事。ただそれだけだ」
よく分かんねえなぁ。要するに、その王女様がネイを拐えって言ったから拐いに来たって事だろ?冗談じゃねえ。
ゼイラ王女。そいつの真意を確かめてやる。
ミラ「マスター、そんなに飲んだら、またお体を壊しますよ?」
王都に来てまで変わらないこの光景。みんな、酒に酔い潰れて、そこら中で暴れている。一応、いつもの酒場と違って、ちゃんとしたお店なんだけどね。
なんで、6日目の試合に勝っただけでここまで大騒ぎできるかね......
セリカ「......」
レラ「セリカ、もう怪我は大丈夫?」
セリカ「レラ?うん、まだちょっと節々が痛いけど、もう大丈夫」
レラ「そう?」
セリカ「うん。流石はネイりんってところね。今日一晩ゆっくりしてたら完治すると思う」
レラ「......あの子ね、性格は悪いけど、セリカのために一生懸命戦ってくれたのよ」
知ってる。ネイりんもヴァルも、仲間のために命だって捧げられる。1年も過ごしてたら、それくらいの事は分かるから。
ネイ「おぉーい!酒を持ってこーい!妾はこの程度では満足せんぞー!」
セリカ&レラ「「 ゲッ...... 」」
ヴァル「おい!誰だ!こいつに酒を浴びせた奴は!今すぐ出てこい!」
グリード「おォおォおォ!やっぱ神様も酒好きなんだなァガッハッハッ」
ネイ「飲み比べでもしてみるか?」
あ、犯人分かった。
ヴァル「おい!誰なんだ!犯人現れろ!」
いや、今分かりやすいくらいの反応示してた人がいたじゃん!なんで気づかないの!?
ヴァル「仕方ねえ。許せネイ」
ネイ「あふ......」
いつもの腹パンで気絶。そろそろネイりんのお腹あたりが壊れるか、耐性がつくかのどちらかになりそう。
グリード「なんでェヴァル。折角いいところだったのによォ」
ヴァル「お前か犯人は!ネイに酒入り瓶を渡すなって言っただろうが!」
グリード「あァ?知らねえよォ」
シアラ「ヴェぇルぅドさぁま!私が入れたお酒を飲んでくれましたか?」
ヴェルド「だからくっ付くなお前は!で、そのグラスなら、ネイが紅茶と勘違いして飲んでたよ!」
まさかの別方向に犯人発見!?
ヴァル「......なんか疲れたわ」
うん、そうだろうね。激しい試合の後に、こんな大騒ぎなところにいて、疲れない方がおかしい。
グリード「おォ!ヴァル!神様の代わりに、俺と勝負しろやァ!」
ヴァル「殴り合いならいいけど、酒は勘弁だ」
グリード「男のくせに、根性のねえ奴だなァ」
ヴァル「うるせぇよ!」
ヴェルド「ヴァル、そんな事よりも、こいつどうにかしてくれねぇか?」
ヴェルドに、蛇のように巻き付くシアラ。ちょっと苦しそう。
ヴァル「自分でどうにかしてろ!」
ヴェルド「冷てぇ奴だ!氷属性習得してからとことん冷てぇな!」
ヴァル「お前は火属性習得してからとことん暑くなったな!」
属性って、そんな表に出てくるもんなの???
レラ「あはは......うるさい......」
同感です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あ"ぁ......あ"ぁ......」
なんでこんなに疲れてんだろ。俺、ツッコミ系主人公になったつもりはねえんだけどさぁ、なんなの?これ。
セリカ「お疲れ......だね?」
ヴァル「お疲れなんてもんじゃねえよ。酒飲みを抑える立場って、こんなに大変なんだなって感じだ」
セリカ「ごめん。ちょっと何言ってんのか分かんない」
ヴァル「......そういや、セリカ。もう怪我は大丈夫なのか?」
セリカ「うん。そこで酔い潰れてる神様のお陰で、なんとかね」
頬を赤らめて、気持ち良さそうに眠る俺の相棒。まるで、明日への不安は何もないと言った具合に平和そうな顔をしている。
ヴァル「......お疲れ様」
セリカ「お疲れ様、ネイりん......それと、ありがとね」
軽く頭を撫でてやる。
ヴァル「セリカ、ちょっと髪の毛触っていい?」
セリカ「?別にいいけど......」
ああ、なるほどな。
ヴァル「ネイの方がサラサラしてて綺麗だな」
セリカ「ちょっとそれどういう意味よ!」
ヴァル「そのまんまの意味だ」
確かに、最近やたらとシャンプーとかリンスの種類が増えたなとは思ってたが、そんなに髪の毛に命をかけてたとは思わなかったな。言うて、セリカも普通に綺麗に整ってるけどな。
ネイ「......呼ばれてる」
セリカ「うわっ......」
ネイ「呼ばれてる......」
ヴァル「どうした、ネイ」
突然、何かに取り憑かれたかのように立ち上がるネイ。そのまま、酒場の外に出て行く。
ヴァル「ま、待てよネイ!」
ネイ「呼ばれてる......」
セリカ「あ、待ってネイりん!」
止まる様子がない。仕方ないので、ネイの跡をつけていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイ「呼ばれてる......」
何分か歩いてネイりんが目指す場所が、何となく分かってきた。
目指しているのは、王城。王城と言えば、あのゼイラ王女がいる場所だが、まさか......ね。
ヴァル「なあ、あいつ、このままだと王城だけどさ、何に呼ばれてんだろうな」
セリカ「さあ?ネイりんの事だから、何かあるんだろうけど」
ヴァル「そうかなぁ......」
ネイりんの意識はハッキリとしていない。ハッキリとしないまま、王城を目指している。何かあると言うよりも、本当に何かに取り憑かれてるんじゃないだろうか?
ネイ「呼ばれてる......」
ヴァル「あいつ、色んな奴に取り憑かれるからな。普通に、なんかが取り憑いててもおかしくねえんだよな」
セリカ「そういや、そうだったね」
最近は出てくることが少ないけど、ネイりんの中には5つの人格があったんだっけ。それと、プラスしてユミの人格。一応、私がヒロインなのに、ネイりんの方がヒロイン属性高い気がするんだけど、気のせいだよね?
ヴァル「......で、辿り着いちまった訳だが」
その後、数分歩いて、あっという間に王城の目の前。門番がいないのが謎に不気味だ。
ネイ「......ここだ」
突如、足元を覆い尽くすくらいの大きさの魔法陣が出てきて、地面に穴が空いた。
セリカ「わ、わぁぁぁぁぁ!?」
ヴァル「セリカ!捕まれ!」
いつの間にか、ネイを小脇に抱えていたヴァルが、こちらに手を伸ばしてくる。
セリカ「ど、どうするつもり!?」
ヴァル「気合いだ気合だぁ!」
足元に火を灯して、なんとか落下速度を落とそうとする作戦。高所からの落下による骨折は防がれるが、代わりに、変な洞窟へと辿り着いてしまった。
ヴァル「......なんだ?ここは」
セリカ「鉱石がいっぱいくっ付いてる洞窟?しかも、この鉱石、グラレアルじゃない?」
ヴァル「なんだそりゃ?」
セリカ「グランアークでしか取れない希少な鉱石。とても軽くて丈夫だから、刀とか剣を作るのに適してるんだって」
ヴァル「そんなものが王城の地下にねぇ......」
まあ、グランアークで取れるんだから、ここにあっても不思議ではない。この鉱石は、鉱山とかから取れるわけではなく、そこら辺の地下にたまに埋まっている物。
それにしても、こんなにたくさんの鉱石が残ってるってことは、ここは採掘されていないようだ。王都にマナが溢れている理由も、この鉱石が原因なのかな?
ネイ「......あれ、私、なんでこんなところに」
ヴァル「気づいたかネイ」
ネイ「ヴァル?えっと、ここは?」
ヴァル「お前がここまで俺達を連れてきたんだ。むしろ、ここが何なのかを聞きたいのは俺達だ」
ネイ「......記憶がないです」
本当に取り憑かれていたんじゃないだろうか?
ヴァル「しまったな。とっくに穴が塞がれてやがる」
セリカ「えぇ......どうするの?」
ネイ「あ、こっちです」
ヴァル「なんかあるのか?」
ネイ「なんか、呼ばれてる気がするんです......」
そういや、ずっと「呼ばれてる......」って言ってたもんね。
ヴァル「なんかあるんだろうな。行ってみるか」
ネイ「ヴァル......」
ヴァル「どうした?」
ネイ「......疲れて足が......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「あぁクソ。なんでいつもいつもお前はこんなんだよ」
ネイ「今更そんなことを言わないでください。常に疲れ気味なんです」
ヴァル「引きこもってばっかりだから体力が付かねえんだよ!」
セリカ「まあまあヴァル、落ち着いて」
ヴァル「落ち着いてられるか!どんだけ歩けばいいんだよ!こんな変わり映えしない場所を!」
ずぅーっと、キラキラした鉱石が並んでいる洞窟。オマケに、ネイを背中に乗せて天井の低い場所を歩いている。嫌でも腰に相当な負荷がかかる。
それに、ゴールが見えないっていうのも精神が病んでいく原因だな。ネイの言うがままに進んではいるが、いつになったら目的の場所に着くのか、それはネイにも分からないらしい。
ヴァル「本当に、いつになったらゴールに......」
そう言いかけた瞬間、目の前に大きな空洞が広がる。
ネイ「ここだ......」
ネイが自分から降りてこの場所に立つ。
ヴァル「なんじゃこりゃ?」
セリカ「龍の......骨?」
巨大な骨の塊。形的には、龍だと思って間違いはないだろう。
ヴァル「なんで、こんな所に龍の骨が......」
ネイ「......ジーク?どうしたの?」
ヴァル「なんか分かったか?」
ジーク「間違いねぇ。こりゃァ、俺の遺体だ」
......なんだって!?
ヴァル「これが、お前の遺体?」
ジーク「ああ。間違いねぇ。これは、大昔の俺だ」
そういや、ジーク達は魂だけの存在とか言ってたか。
セリカ「なんで、こんなところにジークの遺骨があるの?」
ジーク「知らねえよ。俺だってそれが知りたい」
ヴァル「昔、お前はこの場所で死んだとか?」
ジーク「さあな。俺だって昔の記憶はそこまで完璧に残ってるわけじゃねえんだ。ただ、ここに骨があるってことは、昔の俺がここで死んだってことだろうな」
骨に触れて何かを感じ取ろうとしてみるが、特にこれといって何もない。本当にただの骨だ。
ジーク「分かんねぇ。何も思い出せねぇ」
セリカ「......でも、死んでるはずなのに、凄いマナの量だよね」
「貴様ら、そこで何をやっている!」
ヴァル「っ......!」
振り返ると、そこには鎧に身を包んだ髭の濃いオッサンがいた。
「っ......貴様ら、グランメモリーズだな!何故ここにいる!」
セリカ「何でって言われても......」
ヴァル「俺達はネイに付き添って来ただけであって......」
ネイ「え?私のせいですか!?」
いや、事実お前のせいだろ。お前がどっか行かなきゃ俺達もついて行かなかったんだし。
「......なるほど。そういう事か。......ついて来い」
セリカ「え......?」
ついて来いと言ったが、どうする?
ヴァル「なあ、どうするよ」
セリカ「えぇ......でも、ここはついて行かないと、後々面倒なことになる展開じゃないの?」
ネイ「でも、あんなオッサンについて行きたくないですよ」
ヴァル「俺としても、見ず知らずの奴について行くのはゴメンだな。目的も分からねえんだし」
「何をしている?早く来い!」
えぇ......ついて行きたくねぇな。
でも、仕方ねえ。ついて行くか。
ヴァル「なあ、オッサン。どこに連れて行く気だ」
「オッサンじゃない。シドウだ。グランアーク騎士団総騎士長の者だ」
ああなるほど。約立たず集団のお偉いさんか。
シドウ「お前ら、ツクヨミという者は知っているな。そこにいる」
「「「 ゲッ...... 」」」
思い出した。こいつ、確かネイを拐っていった奴らのトップじゃねえか。思い出しただけで殴りたくなってきたが、今は我慢。
ヴァル「うちの仲間に何の用だ」
シドウ「用があるのは私ではない。ゼイラ様だ」
あの王女様かよ......めんどくせえなぁ。
シドウ「あのような強硬手段に出たことは謝っておこう。すまない」
ヴァル「ごめんで済んだら騎士団は要らねえんだよ」
セリカ「ヴァル、この人騎士団長」
そうじゃん。騎士団長じゃん......。
シドウ「私としては穏便に済ませたかった。ゼイラ様が考えている事は、私には分からない」
ヴァル「じゃあ、なんでそんな奴の言うこと聞いてんだよ」
シドウ「我が主だからだ。主の命を叶えるのが、私の仕事。ただそれだけだ」
よく分かんねえなぁ。要するに、その王女様がネイを拐えって言ったから拐いに来たって事だろ?冗談じゃねえ。
ゼイラ王女。そいつの真意を確かめてやる。
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