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外伝 【白と黒の英雄】

外伝14 【白の家族】

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「なんなんだ、この化け物共は!」

「分からない。だが、黒月の兵器ではなさそうだ」

「チッ......、あいつらなら、これくらい用意できるとは思うがな!」

 橋の麓で幾重もの血が重なる。

 敵味方関係なく血を撒き散らし、あたりを真っ赤に染めあげていく。

「サツキ、離れるなよ。奴らがどこから来るか分からんからな」

「分かっている。セイヤッ!」

 サツキの槍が化け物共の体を串刺しにした。

「カンナ!状況は!」

「は、はい......、ええええええっと、死者2000人超え。負傷者もかなり多く、とても治療が追いつきません」

 カンナの慌てぶりはいつもの事だが、いつもに増して慌てている。

「状況は非常にまずい傾向にあります。このままでは、軍隊が壊滅してしまうでしょう」

 1人冷静なクウガがそう言う。

 言われなくても分かってはいる。分かっていても、この状況を打破することが出来ない。

「暗殺隊の方にも、同じような騒ぎが起こっています。ただ、向こうは犠牲者が少ないようです」

「当たり前だ。向こうは暗殺隊とかいう化け物組織なんだ。悔しいが、実力は遥かに上なんだ」

 こんなことなら、白陽にもそれなりの専用組織を作っておけばよかった。
 いくら数が多くても、個々の実力は暗殺隊に比べ物にならないほど劣る。

「カンナ危ない!」

 慌てふためくカンナに、血飛沫を浴びて真っ赤に染まった化け物が襲いかかってきた。

「いやっ......」

「セヤァッ!」

 空間を切り裂き、そこから派生した雷の刃が化け物の体を真っ二つにする。

 真っ赤な血飛沫が、カンナの顔にかかる。

「下がってろカンナ」

「兄さん、下がれと言われて、どこに下がればいいんだ?」

 サツキに言われて気がついた。

「クソっ、奴ら......」

 奴らは、軍隊を丸ごと囲んでいた。

「逃げ場なし。見事なまでに奴らの作戦勝ちですな」

 悔しいが、本当にその通りだ。

 襲いかかってきた当初の、姿が見えない、という特性は血飛沫によってある程度見えるようになった。ただ、それでも一切血の付いていない奴らはたくさんいる。そのせいで、1人、また1人と、数を減らされてきている。

「撤退しようにも出来んとは......」

 万事休す。この状況を把握するまでに時間をかけすぎた。

 いや、だとしたら、なぜ黒月はあまり死者が出ていないのだ。いくら勘のいい軍隊と言えど、姿が見えないのだから初撃でかなり数を減らされるはず。

 考えすぎか。暗殺隊なら敵の存在を感じ取るのは容易だ。悔しいほどに。

「兄さん。あまり、考え事はしないでくれ。敵の狙いが分からない以上、兄さんを失うわけにはいかないんだ」

「すまん。少し、考えすぎてしまっていた」

 戦いに集中しなくては。
 四方八方から飛びかかってくる化け物。手当り次第に雷の刃を当てる。

 それでも、手が回らないところが出てくる。

「まずい、ジリ貧だ......」

「兄さん!」

 気を抜いた俺に、サツキがいつもに増して慌てた声で槍を突き刺してくる。

「なっ......」

 気づいた時には遅かった。
 俺に襲いかかってきた化け物が、俺の顔面にまで迫る。サツキの槍も、俺の刀も間に合いそうにない。

「えいっ!」

 間に合わないと思っていた化け物の体が、突如真っ二つに割れ、その血を俺の顔に浴びせる。

「デルシア......!?」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 月が、赤く染まった大きな橋を照らしている。
 橋の中央辺りは、あまり色が変わっていないが、両端の部分は暗い赤色で染まり尽くしている。
 目の前に見える光景は、白陽の兵が1人、また1人と数を減らしている様。

(お願い......兄さん......)

 全速力で駆け抜ける。

 敵は万を余裕で超えている。白陽の軍隊は見事なまでに囲まれている。逃げ場はないし、外から近づくこともできない。

 ならば......

「えいっ!」

 空高くに飛び、兄さん達がいる場所へと真っ直ぐに落ちる。その際、兄さんに迫っていた化け物を1匹斬り倒した。

「デルシア......!?」

「大丈夫ですか!兄さん!」

「......だ、大丈夫だ!」

 兄さんはすぐに理解したようだ。
 『今はデルシアの言うことを聞いた方がいい』。少なくとも、それに近い何かは感じてくれたはずだ。

「兄さん、説明は後でします。今は」

「この状況を打破する。だろ?デルシア」

「......はい!」

 互いに背を合わせての戦いが始まった。

 姿が見えず、どうにかして存在を察知するしかない敵。暗殺隊と違って、こちらの兵はその存在に気づきにくいようだ。

「兄さん!一方向だけを攻撃し続けてください。ここは撤退した方がいいです!」

「分かった。だが、側面の敵はどうするんだ。逃げてる間にも奴らはやってくる」

 それは、私がどうにかする。敵の存在は簡単に感じ取れるようになっている。みんなを逃がしている間、他の奴らの相手は十分できる。

「姉さん。なんでも1人でやろうとしないでくれ。私は姉さんを信じている。だから、姉さんも私を信じてくれ」

 隣に立つサツキが頼もしい表情でそう言ってくる。

「死ぬかもしれませんよ」

「元より承知の上だ!行くぞ!」

 サツキの突き出した槍が、橋とは反対の方向にいる敵を一掃する。

「まだまだ!」

 なんとなくでしかないが、逃げ道の確保はできた。あとは、なんとかして追手を逃れるだけ。

「全員撤退!殿は俺達が務める!」

「し、しかしシンゲン様。そ、それではシンゲン様の身ががががが......」

「心配するなカンナ。俺には、頼れる妹が2人いるからな」

 それでも心配そうな顔をしていたカンナだが、クウガに背を押されて撤退する兵達の後を追った。

「女に頼るとか、男として恥ずかしくないのか兄さん」

「信頼している、と受け取ってくれ」

「......了解だ」

 サツキがやれやれと見せつつも、ほんの少しの笑みを浮かべていた。

「貴様らの相手はこの俺達だ!誰一人としてこの先へは進ません!」

 兄さんの雷の刃が、化け物達を取り囲むように雷の牢を作っていく。

「デルシア、奴らは何体いる?」

「向こう側に2万、こちら側には、恐らく1万くらい......」

「1万か......」

「厳しいか?」

「......俺を誰だと思っている。余裕だ」

 そう言うと、兄さんは刃を天高くに上げる。すると、雷の牢の中に最早雨とも言えるほどの雷が降り注ぎ、敵を丸焼きにしていく。

 今ので、軽く2000程は死んだだろうか?

「この際だからハッキリさせておく。デルシア、お前は俺達の味方か?」

「味方です。でも、戦争を続けると言うのなら、敵になるかもしれません」

「そうか。考えておく」

 シンゲン兄さんとは、関わった時間が少なかった故に話が通じないと思っていたが、どうやらそれはただの思い過ごしだったらしい。

 話せば分かることもある。アルフレア兄さんはそうじゃなかったが......。いや、あれは兄さんの頭が硬すぎたからかな?

 敵は、あの雷の攻撃を見たあとも怯まずにやってくる。その様は、まるで暗殺隊を彷彿とさせるが腕はあちらの方が遥かに上。本能のままに殺すのと、命令によって的確に殺すのとではかなり違う。だからこそ、奴らの動きは単調であり、難しい。

「オラオラオラァ!」

 橋の方から大声を上げて化け物を斬り殺していく音が聞こえる。

「デルシア!助けに来たぞ!」

 あれは......ネイ!?いや、ジーク!?なのか?

 1人の少女の姿が分かっているのに、なぜここまで誰なのかを悩む必要があるのだろうか。

「あの、背中の火傷は......」

「あぁん?これか?こんくれぇ大丈夫だ。ちょっとヒリヒリするけど、なんの問題もねえ」

 ジークに問題がなくても、ネイの方に問題がある気がするのだが。

「デルシア、一応聞いとくが、この子は味方ってことでいいのか?」

 当たり前の話だが、突然のネイの登場にシンゲンが驚きを隠さずに問いかけてくる。

「大丈夫です。味方っちゃ味方ですから」

「なんだその微妙な言い方は。おれはみ・か・た・だ!」

 うるさい......。そんな耳元で言わなくても......、ネイだったらすぐに味方と言えただろうが、ジークは少し微妙な気がする。

「これ以上は聞かん方がいいんだな。なら、さっさとここをどうにかするぞ!」

 全員の目が、化け物達がいる方へと集中する。敵は、未だに兄さんの出した雷の牢によってこちらに攻めてこれない。

「全員逃してはダメなんだよな?姉さん」

「そうです。奴らの生き残りが、いつどこで暴れるか分かったもんじゃないので」

「そう言うことだ。つーわけで、えーっと、滅び......いや違う、煌めき......これも違、ああ、流星剣!」

 技名くらい考えとこうよ......。そんな締まらない感じで強そうな一撃を出さないでほしい。

「うーん......、イマイチピンとくるのが思いつかねえなぁ......」

 技名に悩むジークは置いといて、私は私でこの問題を解決しなくては。

《ピュー!》

 突然、サツキが口笛を吹く。

「空から攻撃した方が早い」

 大きな天馬がやって来た。

「技名に悩んでいるようなら、いい感じのものを見せてやろう。ホーリースピア!」

 天高くに飛んだサツキの槍が、無限に分身し、化け物達の頭上へと降りかかる。

「おぉ、かっけぇ!」

 そんな男の子みたいに目をキラキラしないで。ジークはもうちょっとおっさんみたいな雰囲気を......いや、その体でやるのはやめてほしい。そう考えると、別に今のままでもいいやと思った。

「俺も負けてられんな。雷雨・閃光の刃」

 兄さんがさっき見せた技をもう一度放つ。
 サツキと兄さんのでかなりの数を減らすことができた。もうそんなに数もいない。あとは、己の感覚を頼りに残党を狩るだけ。

「逃がしません!」

 横を突っ切ろうとした化け物を斬り殺す。赤い鮮血が辺りに散る。

「儚き?いや違ぇ、じゃあ、死滅?なんか違う。あぁ、流星剣!」

 もう流星剣だけでいいんじゃないか?変な肩書きは付けなくていいだろ。
 そう思ったのだが、きっと、ジークは『流星剣』だけでは気に入らないから何かを付け足そうとしているのだろう。技名ってそんなに大事なの?


「ふぅ......」

 これで全部だ。他に気配は感じない。

 全部片付いた時には、両腕が真っ赤に染っていた。あまり、血は好きではないが、全身が染まっているわけではないのでまだ良しとしよう。

「......デルシア。ありがとうな。お前のお陰で生き延びれた」

「いえ、私は兄さんと話をしたくて......」

「分かっている。その件に関しては、向こうとなんとかして進めよう」

 兄さん達を助け出せれて、おまけに説得もできた。一石二鳥だ。

「お前はこの先どうするんだ。向こうに仲間達がいるんだったよな?」

「はい。だから、早く無事を確認しにーー」

「デルシア避けろ!」

 ジークが物凄い勢いで迫ってくる。

 避けろ。敵がまだいるということなのか?でも、気配はどこにも感じない。どこに避けーー

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「デルシア避けろ!」

 少女がデルシアに向かって物凄い勢いで迫る。

 避けるも何も、どこにも敵の存在は感じない。しかし、あの少女の顔はイタズラでもなんでもない。本物だ。

「あぅっ......」

 少女の嫌な予感は当たった。
 デルシアの背から大量の血が吹き出る。

「......デルシア!」

「姉さん!」

 本当に一瞬の間にデルシアがやられた。息はしてあるが、このままでは危ないのは一目瞭然だ。

「おい!敵は!」

「チッ、どっかに逃げやがった......」

 これも嘘ではない。敵は、本当に一瞬の間にデルシアへ迫り、そして致命傷になるような一撃を与えて去って行った。

「おい、お前。回復魔法は使えるか」

「悪ぃが、俺は武力専門だ。もしかしたら、こいつが使えるかもしれねえが今は無理だ」

 よく分からないことを言ったが、とりあえず今は無理らしい。

 馬車は全部引き上げてしまったし、一体どうすれば......。

「ああああああ、あの、私が手当します」

 茂みからカンナとクウガが現れた。

「お前達、なぜ逃げてない!」

「すみません。シンゲン様。責任は私がとります」

「いや、今はどうでもいい。むしろ、居てくれて助かる」

 カンナが両の手から治癒術をかける。

 ひとまずはこれで大丈夫だろうが、今すぐにでもしっかりとした手当をしなければならない。

「白陽に連れ帰らねば......」

 デルシアの仲間にどうやって伝えるべきか......。

「おいお前。デルシアをこっちで預かることを、向こうに伝えてきてくれないか?」

「無理......だ......」

 少女までもがその場に倒れ伏した。

「どうやら、この体、そろそろ、充電、切れ、だ......」

 そのまま目を閉じて寝てしまった。

「......仕方ない。不安にさせてしまうが、今はこうするしかない」

「置き手紙でも置いとくか?」

「一応そうしといてくれ。無駄だろうが」

 聞きたいことが山ほどあったと言うのに、厄介なことが舞い込んできた。早くに目を覚ましてくれると良いのだが......。
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