ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

文字の大きさ
上 下
27 / 44
五話

殴り書きのメモ

しおりを挟む
 ゴオオオオ…

 目の前で炎が揺れている。あっという間に燃え広がった炎は空間全てを燃やし尽くすように暴れていた。

「…」

 私はそれをボーッと眺めるだけだった。何も感じない。ふとライの顔が浮かんだ。
 (そうだ、帰らないと)
 使命感に引きずられるように炎に背を向けた。



 チリリン

「またやったわね、あんた」
「!」

 店に戻るとグレイが待っていた。腕を組み、表情も固い。

「グレイ、何の話だ?私は散歩していただけだが」
「隠さなくていいワ」

 睨まれる。前髪の奥から鋭い視線が届く。

「最初からあたしは気付いてるワヨ。あんた龍矢の追っ手、全部殺してるデショ」
「…」
「答えなくていいワヨ。その表情が答えてるようなものダカラ」
「……人殺しは出ていけと?」

 空気がひりつく。

「そうは言ってないワ。ただ、あたしがせっかく霧を使って穏便に追い返そうとしてるのに…毎回灰にしちゃうんダカラ。流石にカチンときちゃったワケヨ」
「申し訳ない…グレイは気付いてないものだと…」
「これでも店を始めてから長いのヨ。周辺への意識は広げてるつもリ」
「わかった…今後はグレイの指示を仰ごう」
「よろしい」

 グレイがやっと腕を下ろし怒りモードを解いてくれた。ホッとする。

「グレイ、この事だが…」
「ライに言わないでくれって?わかってるワヨ。あたしは余計な事には顔を突っ込まない主義なノ」
「“つじつま合わせ"をしてるのにか?」
「“つじつま合わせ"は副業。それ以上でもそれ以下でもナイ。何より終わった後の軌道修正をしてるだけで物事に介入してるわけじゃないワ」
「…そうか」
「ライのためにも真っ当に生きなさいよね」
「わかっている」

 そのつもりだ、と誰に言うでもなく呟くのだった。


 ***


『~♪』

 心地よい声が聞こえてくる。朝日が顔に当たって眩しい。寝返りを打ってみるが一度覚めた頭は眠気を追いかけることはなかった。諦めて目を開けた。

「眩しっ……うわっ」

 上体を起こそうとしてギョっとした。隣にフィンが寝ていたのだ。すやすやと穏やかな寝息をたてている。
 (そうだった…!まだ慣れないな…)
 数日前のリフォームによって同室になったものの未だに慣れていなかった。スナックの仕事やリフォーム後の新環境によってバタバタしていたのだ。おかげでフィンともほとんど話せていなかった。なのに昨日も今日も目を開けたらフィンが横にいて寝てるんだから心臓に悪い。距離感バグもいいところである。

「とりあえず…シャワーいくか…」

 昨日も疲れて寝落ちしてしまったから早急に体を洗いたい。ベッドから出ようとすると

 ぐっ

 腕を掴まれた。

「なっ…フィン、起きてたのかよ」
「ライの独り言で起きた」
「どうもすみませんでした(棒読み)」
「冗談だ。ライが起こしてくれるのを期待して待っていたのだ」
「…なんだそれ」

 新婚生活か何かと勘違いしてないか?呆れつつもフィンの腕から抜け出して立ち上がった。

「どっちにしろまだ起きるには早いぜ。寝たの4時ぐらいだし、もう少し寝とけよ」

 朝日の感じからしてまだ7時とかそれぐらいの時間だろう。フィンはスナックの仕事の後は大体外へ散歩に行く(昨日も遅かったはず)。それでは全然寝れてないだろう。

「ライの方こそ寝た方がいいぞ。人間には質のいい睡眠が大事だとゲームが言っていた」
「…あんたゲームもしてるのか」
「ああ、グレイのスマホでこっそりな」
「こっそりって…」

 幻獣もデジタル化が進んでいるのか。ずる賢さしか上がってない気がするが。

「とりあえず俺はもう眠気飛んでるしいいんだよ。シャワー行きたいし。じゃ、また昼にな」

 無理矢理会話を終わらせて背中で扉を閉じた。個室を出ると誰もいなくて静かなものだった。どうやらグレイも今日は早めに切り上げたらしく私室に入っていて姿が見えない。ここ最近ずっと店が賑わっていたから疲れたのだろう。休ませておこう。

 ぺたぺた

 裸足のまま廊下を進むと暗くなった店内が見えてきた。カウンターの隅、皿洗いなどをする水場のところにベニクラゲの水槽があった。

「おはよ、ベニクラゲ」

 起きたらベニクラゲに挨拶するのが習慣になっていた。そのままベニクラゲの正面に腰かける。

『~♪』

 ベニクラゲ(の子供?)はまだ何かを認識できる知能はなくずっと歌ってるだけだ。しかしその美しい歌声には毎日癒されていた。カウンターに頬杖をつきボーっと眺める。

『~♪~♪』
「早くあんたとも話せるようになりたいな」

 願いを込めて水槽をつついた。いくらつついてもベニクラゲに変化はない。諦めてシャワーに向かおうとしたところでとあることに気付いた。

「これって…」



「ぼ、ぼ、ぼ♪ボーンキ♪ボーンキドーテ♪」

 店内BGMが鳴り響く。うるさくて仕方ない。酔ったグレイといい勝負だ。そんな中俺は眉間に皺を寄せ悩んでいた。

「こっちか?いやあっちのやつか…」

 先程カウンターで見つけたのはグレイの書き殴りのメモだった。自分で買いに行くつもりだったのか、字は汚いし商品名も略称ばかりで素人の俺にはさっぱりである。
 (疲れてるみたいだし買い出しぐらいはと思ったんだけどな…わっかんねえ…)
 主な買い出し内容は化粧水やメイク道具など。町一番のディスカウントストア(ボンキ)に来て探してみてるが一向に見つかる気配がない。BGMや色味の強い店内もあいまって目が回ってくる。

「お客様なにかお探しですか?」

 店員が近寄ってくる。黒髪を三つ編みにした大人しめな髪型だった。店員は下を向いたままボソボソと話しかけてくる。店内BGMに負けそうな声量だ。

「そのメモ…買い出しをお願いされたんですか?」
「えっ…いや、まあ」
「優しいんですね。私に手伝わせてください。どんなものを探してるんですか??」

 俺が戸惑っているのをいいことにどんどん詰めてくる。これはナンパなのか。いや事情聴取か(店内で怪しい動きしてたしな、今の俺)。どちらにせよ居心地悪いのは確かだ。買い出しは諦めてさっさと店を出ることにしよう。

「待って、行かないでください」

 じいっ

 俯いてた店員がこちらを見てくる。目があった瞬間、ピクリと体が痺れた。
 (なんだ、今のは…)

 ぐぐっ

 (あ、足が…動かない…!?)
 足どころか手や頭も微動だにしない。指の関節一つ、動かすことができないのだ。唯一動くのは口元だけ。まるで金縛りだ。
 (一体何が起きて…!!)

「私あなたみたいなチョイ怖系が好きで、ここのスタッフに応募したんです。柄が悪いお客さんたくさん来るからちょうどいいなって」

 (チョイ怖ってなんだ、チョイ怖って)
 チョイ悪親父の劣化版か。ちょいワルすら今時聞かない。顔が動かせたら苦笑いを浮かべていただろう。

「あなたも目付きが悪くて怖そうで…見た目全部タイプです。しかも、誰かのために朝早くから買い出しに来たんですよね…可愛い!推せます!最高ですっ!」

 店員は独り言のようにブツブツと言っていた。その瞳は一度も瞬きせずこちらを見つめ続けていた。彼女の目は空気にさらされ続け、充血している。
 (なんでそんな必死に…っ)
 瞬きをすればいいのに目を閉じようとしないのだ。その必死な形相に、流石の俺もヤバイと思った。一般的な“店員としての行動"からは逸脱している。どうにかして逃げたいが怪奇現象みたいな金縛りをどう解くか。
 (ん?待てよ、怪奇現象…?)

「あんた…幻獣か?」
「!」

 突然の金縛り。怪しい言動ばかりのこの店員。幻獣ではないかと当てずっぽうで言ってみたが、途端に店員は表情を凍らせた。

「オマエ、ワタシタチヲ知ッテルノカ!!」

 半狂乱で叫び襲いかかってくる。

「待て!落ち着けっ…!!」

 真っ赤に充血した店員が首を絞めてきた。

 ギチチッ

「ぐっ…っ…!!」

 元々自由ではなかった体が呼吸する自由すら奪われてしまう。声も出せなければ逃げる事もできない。容赦なく締め付けてくる指先。
 (殺される…!!)
 本当に死を覚悟したその時だった。

 スッ

 俺と店員の間に手鏡を持った男が現れる。

「!!」

 何事かと思ったが、

 するり

 首を絞めていた店員が何故か動きを止めていた。指の力も弱まっていたので簡単に抜け出せる。一歩、二歩と後ろに下がった。男は鏡の向きを変えず後ろの商品棚に置く。鏡は常に店員の方を向いていた。
 (店員が…鏡に映った自分と見つめあってる…)
 動きを止めたのと何か関わりがあるのだろうか。不思議に思ってると男がこちらに振り返ってきた。

「これで大丈夫。騒ぎになる前に出よう!」
「あ、ああ」

 男に手を引かれる。俺は言われるままボンキドーテから脱出した。そのまま裏の通りに移動する。男は誰もいないのを確認してからこちらを見た。微笑んでくる。

「また会えると思ったぜ、ライ!」
「??」

 (なんでコイツ、俺の名前を知ってんだ…?!)
 訝しむように睨みつけた。男は笑顔のまま上着を脱いだ。

 ばさっ

「っ!?」

 上着が顔に投げつけられる。慌てて引き剥がせば

「じゃじゃーん、俺でーす」

 目の前に学生服を着た青年が立っていた。
 (姿が変わった…!て、まさか!)
 自由自在の変化能力。見覚えのある学生服。そして何度も見た顔…すぐに思い出した。

「おまっ…ユウキだったのかよ?!」

 いつぞやの化け狐一家の跡取り息子である。ドッペルゲンガーの一件以来会ってなかったが相変わらず元気そうで何よりだ。驚く俺にユウキは遠慮なく飛び付いてきた。

「そうだよ~!くうう~!夢じゃない!ライがいるー!」
「おいっはなせっ!」

 俺に会えたことで感極まってるようだ。尻尾があればブンブンと勢いよく振っていただろう。まるで大型犬に襲われてる気分だ。分類としては狐だけども。

「会いに来てくれるって言ってたのにライ全然来てくれないし、グレちゃうかと思ったぜ!?」
「忙しかったんだって」
「ほんとかよー?ほっぺにキスしてくれたら許す!」
「じゃあ許されなくていい」
「ひどっ!冷たい!」

 顔をしかめつつユウキの腕から逃げた。再度抱きついてくる事はなかったのでホッとする。

「ユウキ、さっきの店員は何だったんだ。幻獣だよな?」
「あの子はメデューサっていう目が合った者を石化させる幻獣だよ。初めて見たから確証はないけど」
「目が合うだけで石化…強すぎるだろ…」
「タイマンは強いけど外からの干渉に弱いんだよね。視界の外から近づいて鏡を向ければ、そこに映った自分に石化をかけられて動けなくなるから」
「なるほど…」

 だからさっき鏡が現れた事で動けるようになったのか。

「じゃあ鏡をどければあの子はまた動けるんだな」
「そうそう。他のスタッフが揺すったりしてるうちに石化も解けるから心配いらないよ」
「よかった」
「…相変わらずライはお人好しだなあ。幻獣相手にそれじゃいつか食われるよ」
「ご忠告どうも」

 ユウキの方を見た。今日は制服姿でちょっと違和感がある。
 (前は私服か和服だったからな…)
 早帰りだったのか、それともサボったのか。俺の疑問を感じ取ったユウキは胸を張って「早帰りだよ!」と言った。

「今日は中間試験で午前中だけ!しかもボンキ寄ったらライに会えたし優勝すぎる~」
「へえ…試験があったのか。で、どうだった?」
「…」
「どうだったんだよ。試験の手応えはあったのか?」
「赤点かも、あははーイテテテテっ」
「ちゃんと勉強するって言ってたのはどの口だ?ああん??」
「イデデッ!勉強したけど山が外れたんだってー!!」
「山なんて張るな!全部ちゃんとやれ!!」
「うえーー鬼ーー!!」

 耳を引っ張りながら説教する。ユウキは涙を浮かべてこちらを見上げた。うるうると年下ならではの甘え方をしてくる。

「ライぃ~また勉強教えてくれない?」
「断る」
「え~さっき助けてあげたのにな~」
「うっ…」
「俺がいなかったら石化したまま首絞められて死んでたかもな~」
「…」
「声も出せずに誰にも気づいてもらえないまま~嫌な死に方だったろうな~~」
「わかった、わかったから…」

 (こんなのわかったと言うしかないだろ…)
 これで断れる奴はいるのだろうか。ヤクザ並みの揺すりである。将来が恐ろしくてならない。

「はあ。勉強を教えるのはいいがこっちだってやることがあるんだ。それを終わらせてからにしてくれ」
「もちろん、いいよ。手伝う!」

 にこにこと上機嫌で頷いている。

「で、何なの?やる事って」
「買い出しだ」

 グレイの殴り書きのメモを取り出して見せた。

「ふむふむ」
「化粧品関係でよくわかんねえんだよな…」
「ちょっと待ってねー」

 ユウキはメモを読みながらスマホで検索をかけている。

「うん、おっけ。これね、一番目と三番目のは俺も使ってるやつだよ」
「なっ!?」

 ユウキも使っている??どういうことだ。ただの化粧品じゃないのか??

「いや、普通の化粧品だよ。俺、女性にも変身しないとじゃん?だから女性を理解するためにも化粧知識やメイク方法も一通り教わってんだー」
「た、大変だな…」
「まあ一族を背負うってことに比べたら軽いもんだぜ。で、メモのやつなんだけど、このままボンキで買った方が早いと思うんだよなー」
「戻るってことか?あの子と遭遇しないか…?」
「二人組で行動してる相手に襲ってくるほど馬鹿じゃないでしょ。昔のメデューサなら二人まとめて石化とかあったのかもだろうけど、今のはたかが知れてるよ」

 だからこそ人間と共存できてるんだろうけどねとユウキは言った。
 (そうか、幻獣の能力は変わっていくのか)
 人間と交配が進んだり世代が進むごとに能力も劣化していく。新たな発見である。
 (なら…フィンの不死身の能力も変わったりしないのか?)
 フィンは不死身だし世代交代はしてないと思うが肉体は変わってきてるわけだ。長い時間をかけて少しずつ能力に変化があってもおかしくないのではないか。今度聞いてみよう。

「そういう狐ヶ崎の一族は劣化してないのか?」
「俺らは血を選んで繁殖してるから大丈夫~」
「…」
「そんな顔しないでっ!危ないこととか犯罪はしてないから!ねー!ほんとだって!ライ~嫌わないで~!!」

 ユウキの家系に深入りするのはやめておこうと心に留めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄は十年前になされたでしょう?

こうやさい
恋愛
 王太子殿下は最愛の婚約者に向かい、求婚をした。  婚約者の返事は……。  「殿下ざまぁを書きたかったのにだんだんとかわいそうになってくる現象に名前をつけたい」「同情」「(ぽん)」的な話です(謎)。  ツンデレって冷静に考えるとうっとうしいだけって話かつまり。  本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

オオカミ獣人にスローライフの邪魔される ツンデレはやめてくれ!

さえ
BL
一章完結→二章に続きます スローライフがしたい!とにかくスローライフを送りたいんだ! 前世での社畜っぷりのせいかスローライフを神に望むほど憧れた主人公アキトはゆっくりと誰もいないところに家を建てて、運命の伴侶と過ごすことを目標に異世界転生をした。でも、その目標を達成することがスローライフを困難にさせるってこと!?という真理に、、、 運命の伴侶、アセナはツンデレで血気盛んな獣人なのでスローライフには向かない。わかっているけどアセナがいいんだ! ストーリー 一章は冒険 二章はスローライフ邪魔され R-18には※をつけます。 一章完結 二章スローライフ(願望)編に続きます。 面白い!って思っていただけたら応援よろしくお願いします。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった) 妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。 そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。 その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。 私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。 誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた

まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。 その上、 「お前がフリーダをいじめているのは分かっている! お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ! お前のような非道な女との婚約は破棄する!」 私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。 両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。 それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。 私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、 「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」 「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」 と言って復縁を迫ってきた。 この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら? ※ざまぁ有り ※ハッピーエンド ※他サイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。 小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

処理中です...