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四話
★看病
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「じっとしてろよ」
「ああ」
わしゃわしゃ
あまり下を見ないようにするが先ほどまでとは違う感覚が俺の中にあった。
(無だ。無になれ…)
鍛えられた体は触れるとまた違った魅力があった。無駄のない引き締まった体。一週間前に見たユウキのとは違って成熟した男の体だ。見ているだけで喉が乾く。
「…っ」
腹に触れると熱を出してるみたいに熱かった。内臓が近いからかそれとも不死鳥の特徴なのか。
(こんなに熱かったら平熱40度いくんじゃないか…)
「…ライは腹フェチなのか?」
「!!」
フィンが不思議そうに見ていた。泡を流した後も俺の手が離れていかず驚いている。
(やばい…!)
これでは俺が誘っているみたいだ。弾かれたように体を離す。
「わ、悪い!ボーッとしてた…」
「問題ない。もっと触ってくれていいのだぞ」
「はっ…!?」
ぐいっ
離れようとした手を左手が追いかけてくる。それから再び腹の上に置かれた。熱い体温を感じゾクリと震える。
「他の所も好きなだけ触ってくれ。ライにならどこでも、どれだけでも構わない。ナイフで刺されたっていい」
「んなことするわけないだろ!冗談でも言うな!」
フィンの方は冗談ではなかったのかニヤリと笑みを浮かべていた。
「もしライがそっちに目覚めたら受けてたとう」
「だからありえねえって!俺を変態にしようとするな!それと、こっから下、股間は洗わねえから自分でやれよ」
「そんな…っ」
悲しげな顔で見てくる。当たり前だろうとフィンの高ぶった股間を指差した。
「通常時でも躊躇うのに、たってる状態で他人に洗わせようとするな!そういうプレイはプロに頼め!!いいな?!」
「私はどんな状態のライでも洗えるし躊躇わないぞ」
「…あんたは自分が変態だということを自覚した方がいい」
俺の股間に触れようとする左手を掴み、問答無用で引き剥がす。フィンは今片手しか使えないので力は俺の方が上だ。
(だからこそ油断してた…)
主導権がこっちにあるからと隙を見せすぎたらしい。フィンが顔を寄せてくる。
「ライ…私にとってライは他人ではない。大切な人だ。だから触れてほしいのだ」
「大切な人なら股間を洗わせるな」
「好きだから仕方ないだろう…」
「すっ…!」
(さらっと言うな!さらっと!)
突然の爆弾発言に顔が赤くなる。頬が熱い。
「りんごみたいだぞ」
フィンが頬に触れてくる。顔が赤くなってるのは自分でもわかっていた。誤魔化すように手を払う。
「のぼせただけだ…っ」
「…可愛いなライは」
「!?」
「このままずっと眺めていたい」
「なっ…!!」
衝撃と恥ずかしさで言い返せなかった。浴室に充満する熱気。正面からの熱い視線。どうにかなりそうだ。
(これ以上この空間にいたらヤバイ…!)
無理矢理立ち上がる。
「のぼせた!もうでるからな!」
「ライ、待ってくれ」
「待たねえっ」
「足首…血が出ているぞ」
「!」
そういえば足首のことを忘れていた。色々あって感覚が麻痺していたが、シャワーで傷の表面が流れたのか出血している。
「洗ってから出た方がいい。ほら、ここに座って、足を私の方へ」
浴室のヘリに座らされる。俺のはフィンに比べれば薄皮一枚切られた程度の傷だ。消毒してガーゼを巻けば十分だろう。しかしフィンは眉を寄せ心配そうにみていた。まるで自分の事のように思い詰めた顔をしている。
「妖精猫め、よくもライの美しい体に傷を…」
「美しいって…こんぐらい平気だ」
立ち上がろうとすると肩を掴まれた。
「こら、立つんじゃない。“雑菌が入るからきちんと洗わないとダメ"なんだろう?」
「…うぐ」
自分の台詞を返され言い淀む。フィンがお湯をかけてきた。何故か足ではなく頭や肩にまでかけてくる。
「おいフィン…」
「ここも汚れているぞ」
首の後ろを指で確認された。熱い指先に触れられ心臓がはね上がる。
(お湯をかけられてるだけだ、落ち着け…!)
首の裏や、耳、脇腹。細かいところも見逃さない。片腕ということもあってかなり時間がかかっていた。まるで焦らされてるみたいにゆっくりと時間をかけて俺の体を流していく。
「フィン…っ、も、いいだろ…!」
「暴れると湯船に落ちてしまうぞ。ちゃんと座るんだ」
そういってフィンはシャワーを止め、俺の足を持ち上げた。傷を確認してからこちらを見てくる。
「まずは足首からふくらはぎだな。心配しなくていい。私はライのどこでも洗えるから任せてくれ」
「いいってもうっ!」
これはもう玉潰しの刑でいいんじゃないだろうか。さっきまで俺も同じことをしていたがやってる側の纏ってる空気が明らかに違う。フィンは今にも噛みついてきそうな雰囲気だしなんか怖い。
「ライの太ももは美しいな…」
「おい…っ!んっ…、変に、触るな、って…っ!」
するり
内腿の薄い皮膚の部分を撫でられた。ゾクリと震える。
「内腿も、腰骨も…色気がある…」
「はっ…フィ、ン…っ…」
フィンの呟きに体が反応していた。低く囁く声は体の奥をとかすみたいに熱くする。それを助長するように熱い手のひらが撫でてきた。頬に添えられる。
「ライ、こっちを見て」
「っ…!!」
オレンジの瞳が蜂蜜のように色を濃くしている。声も、手も、視線も全てが甘い。
(甘い毒だ…)
毒のように刺激が全身を巡り蓄積されていく。体はすでに反応していてフィンの事を指摘できる立場ではなくなった。
「んっ…ハア…フィン、もう、…」
「…」
フィンは俺の熱くなった体を見下ろして、ふうっと息を吐く。
「次はここだな」
「…!!」
フィンの指先が俺の高ぶったそれに近づいてきた。
ゴクリ
どちらかの嚥下する音が響く。ドクドクと心臓がはね上がり息が苦しい。
すっ
しかしフィンの指先は俺のには触れず、下腹部に移動していく。そのまま泡をつけて洗い始めた。
(え…??)
てっきり下半身を洗われるのかと思ったがフィンの指はそこには触れてこなかった。まさかこの期に及んで言いつけを守るつもりなのだろうか。
(ここまでしておいて今更…)
俺の動揺を感じ取ったのかフィンが目を合わせてくる。
「…ん?」
なんだ?といつもの笑みを向けてくる。
(こいつ…!!)
まるで次を求めた俺が淫乱なのだと言うような態度に腹が立った。
(腹黒め…!)
睨み付けるがフィンはさらりとかわして笑みを浮かべた。
「さて、これで完了だな。ピカピカになったぞ、ライ」
洗い残したところはないか?とあえて聞いてくる。意地が悪い。
「…はっ、終わったならっ、あんたは先に出ててくれ…!」
自分で処理するからとフィンを追い出す。しかしその途中で目眩がした。
(くそっ…ほんとに、のぼせてきた…っ)
長時間シャワーを浴びた上に血流が良すぎる状態(特に下半身)が続いていたのだ。のぼせるのも仕方ない。俺の異変に気付いたフィンが慌てて左腕を回してくる。倒れないよう支えてくれた。
「ライ!」
「わる、い…」
意識がぼんやりしてくる。体を簡単に拭かれた後、引きずられるようにしてベッドへ運ばれた。体が鉛のようだ。横になったまま動けない。まさか怪我人のフィンに助けられてしまうなんて。
(最悪だ…格好わり…)
ベッドの縁に腰掛けたフィンが覗き込んできた。額に手をあてたと思えばタオルで髪を拭いてくる。
「すまない。ライが可愛くて意地悪してしまった」
「…」
「飲み物のところに氷があったはずだ、持ってこよう」
思い立ったようにフィンがどこかへ消える。俺はその背中に手を伸ばしていた。ほとんど無意識だった。
すっ
しかしそれは空を切ってしまう。俺は腕を下ろしため息をついた。
(今、俺…何して…)
フィンを捕まえてどうするつもりだったんだろうか。
「ライ、持ってきたぞ。これを首にあてるんだ」
「うっ…つめ、た…」
「気持ちいいだろう?」
氷と水をいれたビニール袋だった。全身が熱かったので冷たさをより感じる。俺が目を瞑っていると頭を撫でられる感覚がした。再び目を開ければ、フィンに優しい目で見下ろされ、ドキリとする。
「…っ、なに、見て…んだよ…」
「愛おしいなと思って見ていた」
「それは……本能が…そうさせてるん…だろ…」
「!」
短い言葉でも十分伝わったのかフィンが目を見開く。それから眉を寄せた。
「ライへの感情が偽物だと言いたいのだな」
「…」
俺を愛おしく思う気持ちはフィン本人の気持ちじゃない。不死鳥の本能がそうさせてるだけだ。
(生まれ変わった時に居合わせただけでそこらの人間と俺に違いはない)
そう考えるだけで胸が締め付けられるようだった。
「あの時は…釈明できず終わってしまったからな…。今日は最後まで話させてほしい」
「な、にを」
「まず生まれ変わった時に居合わせた相手を好きになる現象だが、それは期間限定の話だ。数日、早ければ一日で抜ける短期的なものだ」
「!!」
フィンは俺の髪を指ですきながら囁くように言った。
「ライに関しても数日で興味を失くすのかと思っていたが違った。毎日興味がわき、目が離せなかった。…これは本能では説明がつかない」
「…!」
じっと真剣な瞳を向けられる。
「誰かがライに近付く度、心が荒れた。このどうしようもない感覚。制御できないほど大きな感情が私の中にあるのがわかる。今の私は醜い欲求の塊だ」
フィンの瞳が大きく揺れていた。何故か自分を責めるような言い方に疑問を感じた。
とん
フィンの膝を叩く。すると弾かれたように顔を上げた。オレンジの瞳と見つめ合う。
「ライ…?」
「性欲は三大欲求だろ。醜いもんじゃねえ。それに、今までが感情をオフにしすぎてただけで、何かに執着するのは普通のことだろ」
「…私に襲われたのに庇ってくれるのか」
「もう許したって言ったろ」
掘り返すなよと睨みつければフィンは首を振っていた。
「……敵わないなライには」
「それで。つまり、あんたは俺の事を本能関係なく好きって言いたいのか」
「ああ、本能ではない。信じられないと思うが……」
そういってフィンの手が俺の髪から離れていく。そのぬくもりを追いかけようと手を伸ばした。
ぎゅっ
今度は届いた。ホッとしてる自分がいる。熱い手を握りしめればフィンは目を見開いて驚いていた。
「ライ…?!」
「…よかった、俺が一人で浮かれてたわけじゃなくて」
「え」
「ついでに。俺も言ってなかったことがあるから伝えとく。前にあんたの事が好きかはわからないって言ったけど」
一呼吸置いて口を開ける。
「あんたのこの…暖かい手は…好きだ」
しんと静まり返った部屋に響く。俺は熱で頭がやられていたのか、必要以上に素直になっていた。言ってからやらかした事に気付く。
「あっ、いや、えっと…カイロとか湯タンポって気持ちいいだろ?そういう感じで好きというか…!」
フィンが固まっている。話しかけても声が届いてる気がしない。
「おいっ大丈夫か…ーんむっ?!」
唇が重なる。舌が入ってこない触れるだけのキスだった。
(!!!)
フィンの気持ちが唇の間からとろりと流れてくる。熱くてどうしようもないと言っていた感情が俺にまで伝播する。
「んっ…フィ、ン…はあ…っ」
キスしながらフィンが覆い被さってきた。
(右手の傷が…)
感覚のない右腕が潰れないよう腕で支えてやる。もう片方の腕でフィンの腰を掴むと、俺が抱きしめるみたいな形になった。フィンの全身がゾクリと震える。
「ライ…っ…」
「…あんたの、痛そうだ」
バスローブの合間から主張しているものに目がいった。痛そうなほどたっている。
(先走りもすげえな…)
ぴちゃ
フィンの高ぶったそれに指先で触れる。先走りでとろとろになっていた。指先で確かめたあと手のひらで包み込めばフィンが身震いする。
「っ…!!ライ?!」
「あんた今、片腕だからな。今夜だけ…特別に手伝ってやる」
「なっ…」
絶句しつつも逃げる様子はない。指に力をこめて刺激を与えれば堪えるような声が降ってきた。
「くっ…ラ、イ…っ」
「でけえな…」
この大きさでは男女問わず厳しいだろう。まじまじと見ていると、フィンが喉を鳴らした。
「あまり、煽らないでくれ…ライ…っ…!」
「ンンッ!ん~っ…!」
唇が再び塞がれる。今度は舌が入ってきた。ぬるりと熱いものが入ってくる感覚にゾクリと震える。
「ハアっ…ん…んう…っ、んむ、う…、はっ、ンン…」
舌を絡ませながら、手の中の高ぶりを思いだし擦ってみた。先走りのせいで動かしやすい。ぬちゃぬちゃと音もよく響いた。
「ら、い…っ」
キスの合間、フィンが少しだけ唇を離した。俺の体を見て、確かめるように触れてくる。ギラギラとした視線が刺さってきた。
「んっ…あんま、見るな…っ」
「ああ、ライ…夢みたいだ…」
「はあ、ハアっ、悪いけど、現実…だ、っ」
「悪いわけがない」
溶けて色が濃くなったオレンジの瞳が射貫いてくる。欲しいと全身で言われてるみたいだ。こちらまで火照ってくる。
「ライのも…していいか…?」
「は…!?」
俺のを見てお伺いを立ててくる。約束は忘れてないらしい。俺が触ってるのに触るななんて言えるわけがない。そもそも触りたくて仕方ないほどできあがってて断る理由がない。
「ん」
小さく頷くとフィンは目を輝かせた。そして後ろへ下がっていく。俺の膝辺りに腰かけて上半身を倒した。
「?」
「ライはリラックスしててくれ」
そういって顔を俺の下半身に埋めた。まさかと体が強張ったところで
ぬるっ
熱くて湿った感覚がする。敏感になった俺の先端を舐めているのだと数秒遅れて理解する。確かにフェラなら両手がいらないため今のライでもできる。
(できるが…!)
「あっ…!おい、フィ、んっ!まて、それっ!んあ……くっ、んん!」
最初は形を確かめるように舐めるだけ。全体が唾液で覆われ刺激を受けやすい状態になったところで
ぬちゅ…
フィンの熱い口の中に招かれる。舌も頬もどこも熱い。火傷しそうなほど熱いと感じるがそれが更に刺激になっていた。
「ああっ…!だめ、だ、フィ、ンッ!んんっ、もっ、」
「ん…出したいのか?」
「っ…!!」
もう出すのか?と揶揄され羞恥心に襲われる。舐められて少ししか経ってないが刺激は常に与えられていた。俺はとっくに限界だった。
「~っわ、るい、か!」
顔が熱い。きっと真っ赤になってるのだろう。そんな俺を見てフィンは顔をしかめた。
「フィン…?」
ぐちゅり
突然また咥えられた。しかも今度は強く吸い上げながら動かしてくる。こんなの耐えられるわけがない。腰が勝手に揺れた。
「ひっ!?ぐっ、イッ、アアっ!!んあっー!でる、イッ、イクからっ…!!」
「まだだ…もう少し」
「はあ?!んあっ…あ…っ」
あと少しというところで動きが止まる。もう一舐めでイけるのにとフィンを睨み付けた。フィンは俺のからゆっくりと舌を離して息を吐く。見せつけるようにぺろりと舌なめずりした。
「はあ、ライの味がするな…」
「ヘンタイ、が…っ」
何度も焦らされ苛立っていた俺はどうにかやり返せないかと思考を巡らせた。
(ん?刺激って…そういや…)
フィンのはどうなったのだろう。上半身を起こして確認する。
「!!」
腹につきそうな程反り上がっていて、どろどろととめどなく液体が垂れていた。先走りなのか精液なのか判別がつかない。俺のを舐めながらそんな状態になってたのかと驚く。
「そ、れ…」
「…私も、人のことは、言えないな」
「どうすんだよ…」
そんな状態で放っておいたら体に悪いぞと眉を寄せる。俺も俺で限界だったし、急かされるようにフィンのバスローブを掴んだ。
ぐいっ
俺の方に引き寄せて、横に倒した。俺がフィンを押し倒されたみたいな感じだ。
「なっ!ライ…っ!」
「俺は…やられたらやり返す質なんだよ」
上に乗ったあと自分のとフィンのを両手で包む。フィンは俺に乗っかられていることも手で包まれてることも信じられないのか、息を止めてこちらを凝視していた。
「っ…!!」
「はあ、はあ…フィンのも、やってやるって、いったろ」
「ライ…っ」
両手で刺激を与えればあっという間に先ほどまでの高ぶりを思い出す。擦りあげ、溶け合うように密着していると後頭部を掴まれた。引き寄せられる。
「んぐっ…!んううっ、ふっ、んむっ」
舌を絡ませながらのキスだ。下も上も気持ちよくて溺れそうだ。角度を変えながら何度も口付けていると頭の奥がふわふわしてくる。下から届く鋭い刺激とクスリのようにじんわりと脳を犯す快感。もう限界だ。
「はっ、ンンッ、んあっ、いきそ…っ、んん!」
「ああ、私も…だっ」
俺の後頭部を掴んでいた手が下半身にいく。二人分のそれを思いっきり擦ってきた。予想外の刺激にとうとう快感の波を越える。
「ああっ!?イッ、く…んあああっ…!!」
「ハアっハア…っ…!!」
熱い液体が勢いよく吐き出された。びしゃりと腹にかかった。手と、胸、顎にも飛んでくる。ひとまとめで擦ったせいでどっちがどっちの精液なのかわからない。
(くそっ…顔にまで…最悪だ…)
しかし今の俺に文句を言う元気はなかった。ぱたりとフィンに倒れこむ。
「はあっ…はあっ…、ねむ…」
大きく上下するフィンの胸の上で目を瞑った。疲労と睡魔が一気にくる。
「ライ…」
蕩けるような甘く痺れる声で名前を呼ばれた。まるで愛しい恋人に向けるような優しい声音。こんなの反則だろう。
「おやすみ、ライ」
背中を撫でられる感触。暖かい手が眠りを誘ってくる。
(やっぱり、この手…好きだな…)
俺はうつらうつらと意識をさ迷わせたあと、深い眠りについた。
「ああ」
わしゃわしゃ
あまり下を見ないようにするが先ほどまでとは違う感覚が俺の中にあった。
(無だ。無になれ…)
鍛えられた体は触れるとまた違った魅力があった。無駄のない引き締まった体。一週間前に見たユウキのとは違って成熟した男の体だ。見ているだけで喉が乾く。
「…っ」
腹に触れると熱を出してるみたいに熱かった。内臓が近いからかそれとも不死鳥の特徴なのか。
(こんなに熱かったら平熱40度いくんじゃないか…)
「…ライは腹フェチなのか?」
「!!」
フィンが不思議そうに見ていた。泡を流した後も俺の手が離れていかず驚いている。
(やばい…!)
これでは俺が誘っているみたいだ。弾かれたように体を離す。
「わ、悪い!ボーッとしてた…」
「問題ない。もっと触ってくれていいのだぞ」
「はっ…!?」
ぐいっ
離れようとした手を左手が追いかけてくる。それから再び腹の上に置かれた。熱い体温を感じゾクリと震える。
「他の所も好きなだけ触ってくれ。ライにならどこでも、どれだけでも構わない。ナイフで刺されたっていい」
「んなことするわけないだろ!冗談でも言うな!」
フィンの方は冗談ではなかったのかニヤリと笑みを浮かべていた。
「もしライがそっちに目覚めたら受けてたとう」
「だからありえねえって!俺を変態にしようとするな!それと、こっから下、股間は洗わねえから自分でやれよ」
「そんな…っ」
悲しげな顔で見てくる。当たり前だろうとフィンの高ぶった股間を指差した。
「通常時でも躊躇うのに、たってる状態で他人に洗わせようとするな!そういうプレイはプロに頼め!!いいな?!」
「私はどんな状態のライでも洗えるし躊躇わないぞ」
「…あんたは自分が変態だということを自覚した方がいい」
俺の股間に触れようとする左手を掴み、問答無用で引き剥がす。フィンは今片手しか使えないので力は俺の方が上だ。
(だからこそ油断してた…)
主導権がこっちにあるからと隙を見せすぎたらしい。フィンが顔を寄せてくる。
「ライ…私にとってライは他人ではない。大切な人だ。だから触れてほしいのだ」
「大切な人なら股間を洗わせるな」
「好きだから仕方ないだろう…」
「すっ…!」
(さらっと言うな!さらっと!)
突然の爆弾発言に顔が赤くなる。頬が熱い。
「りんごみたいだぞ」
フィンが頬に触れてくる。顔が赤くなってるのは自分でもわかっていた。誤魔化すように手を払う。
「のぼせただけだ…っ」
「…可愛いなライは」
「!?」
「このままずっと眺めていたい」
「なっ…!!」
衝撃と恥ずかしさで言い返せなかった。浴室に充満する熱気。正面からの熱い視線。どうにかなりそうだ。
(これ以上この空間にいたらヤバイ…!)
無理矢理立ち上がる。
「のぼせた!もうでるからな!」
「ライ、待ってくれ」
「待たねえっ」
「足首…血が出ているぞ」
「!」
そういえば足首のことを忘れていた。色々あって感覚が麻痺していたが、シャワーで傷の表面が流れたのか出血している。
「洗ってから出た方がいい。ほら、ここに座って、足を私の方へ」
浴室のヘリに座らされる。俺のはフィンに比べれば薄皮一枚切られた程度の傷だ。消毒してガーゼを巻けば十分だろう。しかしフィンは眉を寄せ心配そうにみていた。まるで自分の事のように思い詰めた顔をしている。
「妖精猫め、よくもライの美しい体に傷を…」
「美しいって…こんぐらい平気だ」
立ち上がろうとすると肩を掴まれた。
「こら、立つんじゃない。“雑菌が入るからきちんと洗わないとダメ"なんだろう?」
「…うぐ」
自分の台詞を返され言い淀む。フィンがお湯をかけてきた。何故か足ではなく頭や肩にまでかけてくる。
「おいフィン…」
「ここも汚れているぞ」
首の後ろを指で確認された。熱い指先に触れられ心臓がはね上がる。
(お湯をかけられてるだけだ、落ち着け…!)
首の裏や、耳、脇腹。細かいところも見逃さない。片腕ということもあってかなり時間がかかっていた。まるで焦らされてるみたいにゆっくりと時間をかけて俺の体を流していく。
「フィン…っ、も、いいだろ…!」
「暴れると湯船に落ちてしまうぞ。ちゃんと座るんだ」
そういってフィンはシャワーを止め、俺の足を持ち上げた。傷を確認してからこちらを見てくる。
「まずは足首からふくらはぎだな。心配しなくていい。私はライのどこでも洗えるから任せてくれ」
「いいってもうっ!」
これはもう玉潰しの刑でいいんじゃないだろうか。さっきまで俺も同じことをしていたがやってる側の纏ってる空気が明らかに違う。フィンは今にも噛みついてきそうな雰囲気だしなんか怖い。
「ライの太ももは美しいな…」
「おい…っ!んっ…、変に、触るな、って…っ!」
するり
内腿の薄い皮膚の部分を撫でられた。ゾクリと震える。
「内腿も、腰骨も…色気がある…」
「はっ…フィ、ン…っ…」
フィンの呟きに体が反応していた。低く囁く声は体の奥をとかすみたいに熱くする。それを助長するように熱い手のひらが撫でてきた。頬に添えられる。
「ライ、こっちを見て」
「っ…!!」
オレンジの瞳が蜂蜜のように色を濃くしている。声も、手も、視線も全てが甘い。
(甘い毒だ…)
毒のように刺激が全身を巡り蓄積されていく。体はすでに反応していてフィンの事を指摘できる立場ではなくなった。
「んっ…ハア…フィン、もう、…」
「…」
フィンは俺の熱くなった体を見下ろして、ふうっと息を吐く。
「次はここだな」
「…!!」
フィンの指先が俺の高ぶったそれに近づいてきた。
ゴクリ
どちらかの嚥下する音が響く。ドクドクと心臓がはね上がり息が苦しい。
すっ
しかしフィンの指先は俺のには触れず、下腹部に移動していく。そのまま泡をつけて洗い始めた。
(え…??)
てっきり下半身を洗われるのかと思ったがフィンの指はそこには触れてこなかった。まさかこの期に及んで言いつけを守るつもりなのだろうか。
(ここまでしておいて今更…)
俺の動揺を感じ取ったのかフィンが目を合わせてくる。
「…ん?」
なんだ?といつもの笑みを向けてくる。
(こいつ…!!)
まるで次を求めた俺が淫乱なのだと言うような態度に腹が立った。
(腹黒め…!)
睨み付けるがフィンはさらりとかわして笑みを浮かべた。
「さて、これで完了だな。ピカピカになったぞ、ライ」
洗い残したところはないか?とあえて聞いてくる。意地が悪い。
「…はっ、終わったならっ、あんたは先に出ててくれ…!」
自分で処理するからとフィンを追い出す。しかしその途中で目眩がした。
(くそっ…ほんとに、のぼせてきた…っ)
長時間シャワーを浴びた上に血流が良すぎる状態(特に下半身)が続いていたのだ。のぼせるのも仕方ない。俺の異変に気付いたフィンが慌てて左腕を回してくる。倒れないよう支えてくれた。
「ライ!」
「わる、い…」
意識がぼんやりしてくる。体を簡単に拭かれた後、引きずられるようにしてベッドへ運ばれた。体が鉛のようだ。横になったまま動けない。まさか怪我人のフィンに助けられてしまうなんて。
(最悪だ…格好わり…)
ベッドの縁に腰掛けたフィンが覗き込んできた。額に手をあてたと思えばタオルで髪を拭いてくる。
「すまない。ライが可愛くて意地悪してしまった」
「…」
「飲み物のところに氷があったはずだ、持ってこよう」
思い立ったようにフィンがどこかへ消える。俺はその背中に手を伸ばしていた。ほとんど無意識だった。
すっ
しかしそれは空を切ってしまう。俺は腕を下ろしため息をついた。
(今、俺…何して…)
フィンを捕まえてどうするつもりだったんだろうか。
「ライ、持ってきたぞ。これを首にあてるんだ」
「うっ…つめ、た…」
「気持ちいいだろう?」
氷と水をいれたビニール袋だった。全身が熱かったので冷たさをより感じる。俺が目を瞑っていると頭を撫でられる感覚がした。再び目を開ければ、フィンに優しい目で見下ろされ、ドキリとする。
「…っ、なに、見て…んだよ…」
「愛おしいなと思って見ていた」
「それは……本能が…そうさせてるん…だろ…」
「!」
短い言葉でも十分伝わったのかフィンが目を見開く。それから眉を寄せた。
「ライへの感情が偽物だと言いたいのだな」
「…」
俺を愛おしく思う気持ちはフィン本人の気持ちじゃない。不死鳥の本能がそうさせてるだけだ。
(生まれ変わった時に居合わせただけでそこらの人間と俺に違いはない)
そう考えるだけで胸が締め付けられるようだった。
「あの時は…釈明できず終わってしまったからな…。今日は最後まで話させてほしい」
「な、にを」
「まず生まれ変わった時に居合わせた相手を好きになる現象だが、それは期間限定の話だ。数日、早ければ一日で抜ける短期的なものだ」
「!!」
フィンは俺の髪を指ですきながら囁くように言った。
「ライに関しても数日で興味を失くすのかと思っていたが違った。毎日興味がわき、目が離せなかった。…これは本能では説明がつかない」
「…!」
じっと真剣な瞳を向けられる。
「誰かがライに近付く度、心が荒れた。このどうしようもない感覚。制御できないほど大きな感情が私の中にあるのがわかる。今の私は醜い欲求の塊だ」
フィンの瞳が大きく揺れていた。何故か自分を責めるような言い方に疑問を感じた。
とん
フィンの膝を叩く。すると弾かれたように顔を上げた。オレンジの瞳と見つめ合う。
「ライ…?」
「性欲は三大欲求だろ。醜いもんじゃねえ。それに、今までが感情をオフにしすぎてただけで、何かに執着するのは普通のことだろ」
「…私に襲われたのに庇ってくれるのか」
「もう許したって言ったろ」
掘り返すなよと睨みつければフィンは首を振っていた。
「……敵わないなライには」
「それで。つまり、あんたは俺の事を本能関係なく好きって言いたいのか」
「ああ、本能ではない。信じられないと思うが……」
そういってフィンの手が俺の髪から離れていく。そのぬくもりを追いかけようと手を伸ばした。
ぎゅっ
今度は届いた。ホッとしてる自分がいる。熱い手を握りしめればフィンは目を見開いて驚いていた。
「ライ…?!」
「…よかった、俺が一人で浮かれてたわけじゃなくて」
「え」
「ついでに。俺も言ってなかったことがあるから伝えとく。前にあんたの事が好きかはわからないって言ったけど」
一呼吸置いて口を開ける。
「あんたのこの…暖かい手は…好きだ」
しんと静まり返った部屋に響く。俺は熱で頭がやられていたのか、必要以上に素直になっていた。言ってからやらかした事に気付く。
「あっ、いや、えっと…カイロとか湯タンポって気持ちいいだろ?そういう感じで好きというか…!」
フィンが固まっている。話しかけても声が届いてる気がしない。
「おいっ大丈夫か…ーんむっ?!」
唇が重なる。舌が入ってこない触れるだけのキスだった。
(!!!)
フィンの気持ちが唇の間からとろりと流れてくる。熱くてどうしようもないと言っていた感情が俺にまで伝播する。
「んっ…フィ、ン…はあ…っ」
キスしながらフィンが覆い被さってきた。
(右手の傷が…)
感覚のない右腕が潰れないよう腕で支えてやる。もう片方の腕でフィンの腰を掴むと、俺が抱きしめるみたいな形になった。フィンの全身がゾクリと震える。
「ライ…っ…」
「…あんたの、痛そうだ」
バスローブの合間から主張しているものに目がいった。痛そうなほどたっている。
(先走りもすげえな…)
ぴちゃ
フィンの高ぶったそれに指先で触れる。先走りでとろとろになっていた。指先で確かめたあと手のひらで包み込めばフィンが身震いする。
「っ…!!ライ?!」
「あんた今、片腕だからな。今夜だけ…特別に手伝ってやる」
「なっ…」
絶句しつつも逃げる様子はない。指に力をこめて刺激を与えれば堪えるような声が降ってきた。
「くっ…ラ、イ…っ」
「でけえな…」
この大きさでは男女問わず厳しいだろう。まじまじと見ていると、フィンが喉を鳴らした。
「あまり、煽らないでくれ…ライ…っ…!」
「ンンッ!ん~っ…!」
唇が再び塞がれる。今度は舌が入ってきた。ぬるりと熱いものが入ってくる感覚にゾクリと震える。
「ハアっ…ん…んう…っ、んむ、う…、はっ、ンン…」
舌を絡ませながら、手の中の高ぶりを思いだし擦ってみた。先走りのせいで動かしやすい。ぬちゃぬちゃと音もよく響いた。
「ら、い…っ」
キスの合間、フィンが少しだけ唇を離した。俺の体を見て、確かめるように触れてくる。ギラギラとした視線が刺さってきた。
「んっ…あんま、見るな…っ」
「ああ、ライ…夢みたいだ…」
「はあ、ハアっ、悪いけど、現実…だ、っ」
「悪いわけがない」
溶けて色が濃くなったオレンジの瞳が射貫いてくる。欲しいと全身で言われてるみたいだ。こちらまで火照ってくる。
「ライのも…していいか…?」
「は…!?」
俺のを見てお伺いを立ててくる。約束は忘れてないらしい。俺が触ってるのに触るななんて言えるわけがない。そもそも触りたくて仕方ないほどできあがってて断る理由がない。
「ん」
小さく頷くとフィンは目を輝かせた。そして後ろへ下がっていく。俺の膝辺りに腰かけて上半身を倒した。
「?」
「ライはリラックスしててくれ」
そういって顔を俺の下半身に埋めた。まさかと体が強張ったところで
ぬるっ
熱くて湿った感覚がする。敏感になった俺の先端を舐めているのだと数秒遅れて理解する。確かにフェラなら両手がいらないため今のライでもできる。
(できるが…!)
「あっ…!おい、フィ、んっ!まて、それっ!んあ……くっ、んん!」
最初は形を確かめるように舐めるだけ。全体が唾液で覆われ刺激を受けやすい状態になったところで
ぬちゅ…
フィンの熱い口の中に招かれる。舌も頬もどこも熱い。火傷しそうなほど熱いと感じるがそれが更に刺激になっていた。
「ああっ…!だめ、だ、フィ、ンッ!んんっ、もっ、」
「ん…出したいのか?」
「っ…!!」
もう出すのか?と揶揄され羞恥心に襲われる。舐められて少ししか経ってないが刺激は常に与えられていた。俺はとっくに限界だった。
「~っわ、るい、か!」
顔が熱い。きっと真っ赤になってるのだろう。そんな俺を見てフィンは顔をしかめた。
「フィン…?」
ぐちゅり
突然また咥えられた。しかも今度は強く吸い上げながら動かしてくる。こんなの耐えられるわけがない。腰が勝手に揺れた。
「ひっ!?ぐっ、イッ、アアっ!!んあっー!でる、イッ、イクからっ…!!」
「まだだ…もう少し」
「はあ?!んあっ…あ…っ」
あと少しというところで動きが止まる。もう一舐めでイけるのにとフィンを睨み付けた。フィンは俺のからゆっくりと舌を離して息を吐く。見せつけるようにぺろりと舌なめずりした。
「はあ、ライの味がするな…」
「ヘンタイ、が…っ」
何度も焦らされ苛立っていた俺はどうにかやり返せないかと思考を巡らせた。
(ん?刺激って…そういや…)
フィンのはどうなったのだろう。上半身を起こして確認する。
「!!」
腹につきそうな程反り上がっていて、どろどろととめどなく液体が垂れていた。先走りなのか精液なのか判別がつかない。俺のを舐めながらそんな状態になってたのかと驚く。
「そ、れ…」
「…私も、人のことは、言えないな」
「どうすんだよ…」
そんな状態で放っておいたら体に悪いぞと眉を寄せる。俺も俺で限界だったし、急かされるようにフィンのバスローブを掴んだ。
ぐいっ
俺の方に引き寄せて、横に倒した。俺がフィンを押し倒されたみたいな感じだ。
「なっ!ライ…っ!」
「俺は…やられたらやり返す質なんだよ」
上に乗ったあと自分のとフィンのを両手で包む。フィンは俺に乗っかられていることも手で包まれてることも信じられないのか、息を止めてこちらを凝視していた。
「っ…!!」
「はあ、はあ…フィンのも、やってやるって、いったろ」
「ライ…っ」
両手で刺激を与えればあっという間に先ほどまでの高ぶりを思い出す。擦りあげ、溶け合うように密着していると後頭部を掴まれた。引き寄せられる。
「んぐっ…!んううっ、ふっ、んむっ」
舌を絡ませながらのキスだ。下も上も気持ちよくて溺れそうだ。角度を変えながら何度も口付けていると頭の奥がふわふわしてくる。下から届く鋭い刺激とクスリのようにじんわりと脳を犯す快感。もう限界だ。
「はっ、ンンッ、んあっ、いきそ…っ、んん!」
「ああ、私も…だっ」
俺の後頭部を掴んでいた手が下半身にいく。二人分のそれを思いっきり擦ってきた。予想外の刺激にとうとう快感の波を越える。
「ああっ!?イッ、く…んあああっ…!!」
「ハアっハア…っ…!!」
熱い液体が勢いよく吐き出された。びしゃりと腹にかかった。手と、胸、顎にも飛んでくる。ひとまとめで擦ったせいでどっちがどっちの精液なのかわからない。
(くそっ…顔にまで…最悪だ…)
しかし今の俺に文句を言う元気はなかった。ぱたりとフィンに倒れこむ。
「はあっ…はあっ…、ねむ…」
大きく上下するフィンの胸の上で目を瞑った。疲労と睡魔が一気にくる。
「ライ…」
蕩けるような甘く痺れる声で名前を呼ばれた。まるで愛しい恋人に向けるような優しい声音。こんなの反則だろう。
「おやすみ、ライ」
背中を撫でられる感触。暖かい手が眠りを誘ってくる。
(やっぱり、この手…好きだな…)
俺はうつらうつらと意識をさ迷わせたあと、深い眠りについた。
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