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第10章 営・業・再・開

第242話 ウシメン

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「じゃあ、ゴルドが戻るまでこれにお湯入れて待ってよっか」
「瑠璃はん……なんやそれ?」
「これはね、『ウシメン』だよ」

 私が手に取ったのは、かなり小さいカップ麺……ウシメンだ。
 牛骨スープが特徴の手軽に食べられるカップ麺だ。
 私は居間にあるポットから5人分のウシメンにお湯を注いだ。
 そして、付属のプラスチック製のフォークの袋を開けた。

「瑠璃はん、そのフォーク、どうするつもりや?」
「こうするの」

 私はウシメンの蓋を抑えるように、フォークを突き刺した。
 フォークはまるで、地面に突き刺さった槍のように聳え立っている……これこそウシメンの醍醐味だよね。

「ほら、こうすれば蓋が取れないでしょ?」
「な、なるほど……画期的やな」
「これで3分くらい待つの、そうすれば出来上がり」

 3分もすれば、ゴルドも戻ってくるだろう……多分。

「どんな風になるんだろう……バリ楽しみ!」
「なんか……待ちきれ……ない」

 私たちはウシメンを見つめつつ、ゴルドの帰還を待った。



「い、今戻ったぜ……」
「あ、ゴルドおかえり、ウシメンできたよ」
「う、ウシメン?」

 ゴルドが椅子に座り、私たちは突き刺さったフォークを抜き取り、蓋を開けた。

「おぉ……瑠璃ちゃん……これ……ラーメン?」
「そうだよ」

 蓋を開けると、食欲をそそるような牛骨の香りが居間に漂った。

「さ、食べよ」
「ルリルリ、どうやって食べるの?」
「フォークですくって、すすって食べるの」
「すするの? こ、こんな感じ?」

 リンは私が言った通りに麺を掬い……すすった。

「……んん! これバリ美味しい!」
「ほ、ほなウチも!」

 ラピスもリンの真似をし、ウシメンを口の中に入れた。
 ……今更だけど、これって共食いかな? って、失礼か。

「……」

 ラピスは……沈黙した。
 ……あれ? 口に合わなかった?

「ラピスちゃん……大丈夫?」
「おいラピス? 火傷でもしたのか?」

 ラピスは……涙を浮かべながら、麺を飲み込んだ。

「……美味い」
「……ラピス?」
「瑠璃はん……これめちゃくちゃ美味いで……絶妙なしょっぱさ……動物系なのに臭みも無い……最高や……」
「そ、そう……」

 ラピスはウシメンが大変気に入ったのか……フォークで面を一気に掬い、口の中に入れた。
 なんだろう、普段上品に見えるラピスが、はしたなく口いっぱいに食べ物を入れている……相当気に入ったらしい。
 ラピスはその流れで、スープも一気飲みしてしまった。

「ラピスちゃん……そんなに……美味しかった?」
「最高や! キセノンはんも早う食べ!」
「うん……いただきます」

 キセノンはラピスの食べっぷりに少し引いていた……皆から見ても相当異様な光景だったようだ。
 私も伸びないうちに早く食べてしまおう。

「いただきます」
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