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第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!

第154話 アナザーワールズの拠点

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「あはは! ゴル爺バリ疲れてるじゃん!」
「はぁ……はぁ……お前ら……はぇんだよ……」
「年寄りが無理するからやで、ふふふ」

 リンとラピスは相変わらずゴルドをからかっていた。
 3人とも、ダンジョンの後なのに元気だねぇ。

「それで……瑠璃ちゃん……海底帝国……だけど」
「あぁ、それってどういう国なの?」
「うん……魚とか……甲殻類が……進化した……種族……住んでる……らしいよ」
「らしい?」
「うん……資料……あんまり……ない」
「へぇ……それで、他には?」
「うん……」

 私とキセノンは海底帝国ラブカルドについて話し合った。
 キセノンから聞いた話では、その国はキセノンたちの世界で初めて出来た国らしく、それ故に彼らはプライドが高いらしい。
 そんなんだから、侵略行為を何度も繰り返し、サンルートは勿論、リンの故郷のファンスウィン共和国、キセノンの故郷のモーファサ王国にも攻めてきたことがあるらしい。
 そのたびに沈静していき、最終的に国ごと行方不明になったようだ……
もともと国があったのは「太平洋のど真ん中」、そこから、地球で言う南シナ海、インド洋と移動していき……最後に確認されたのは、カリブ海の辺りらしい。

 ……そんなこんなで、キセノンと海底帝国について話していると、いつのまにか、いかいやに到着していた。
 ……あれ?

「ねぇキセノン……なにあれ?」

 私はつい、いかいやの入り口を指差した。
 いかいやの入り口には、それまでそこになかった「看板と旗」があった。
 旗には地下室にあった……アナザーワールズのロゴが描かれていた。

「私たちの……拠点……わかりやすく……した……」
「いやいや分かりやすくって……叔母さんの許可は取ったの?」
「うん……琥珀ちゃん……いいよって……言った」
「な、ならいいけどさ……」

 それなら別に文句は言わないけど……結構目立つな……。

「わぁー……なんかバリおしゃれだね!」
「せやなぁ、なんかええ感じやな」
「ワシは反対したんだけどよ、琥珀さんが良いって言ったから……仕方なく認めたぜ」

 ゴルド! そこはちゃんと言ってよ!

「ねぇねぇルリルリ、ノンノン! この看板、なんて書いてあるの?」

 リンは看板を指差してそんなことを言ってきた。
 私は徐に看板に近づいて……読み上げてみた。

「ダンジョン探索隊アナザーワールズ総本部……困ったらおいでよ?」

 看板には漢字の部分にフリガナが振られていて、その他、メンバーの名前……つまり私たちの名前までデカデカと描かれていた。
 しかもみんなの名前の部分には各々の特徴が描かれていた、例えば私には日本刀、リンならエルフの長い耳、ラピスは牛の角、ゴルドは斧でキセノンはコウモリの羽……。
 なんというか、どことなく可愛らしく見える。

「困ってる……子どもとか……助けられるように……わかりやすくした」
「あぁー、駄菓子屋だから、子どもたちにわかりやすくしたの?」
「うん……」

 なるほどね、ダンジョンが出たらここまで伝えてくれるかもしれないという事か……いいアイデアかもしれない。

「あら、みんな帰ってたのかい?」
「あ、叔母さん……」

 私たちが看板に見とれていると、いかいやの玄関が開き、叔母さんが顔を出してきた。

「みんな、夕飯出来てるよ、早く上がってきなさいな」
「わーい! ハクハクのご飯!」
「ウチお腹空いたわぁ」
「今すぐ行きます!」

 リン、ラピス、ゴルドは足早に中へと入っていった。

「じゃ、私たちも行こうか、キセノン」
「うん……ねぇ……瑠璃ちゃん……」
「何?」
「瑠璃ちゃん……明日……暇? 海底帝国……調べたい」
「あー……」

 明日かぁ……そういえば、明日からは大学院だ。
 メールで「既に地震の心配はなく、謎の建物も出てきては消えるの繰り返しで予測不可能なので、なし崩し的に泊まり解禁」とかいう内容のものが来ていたので、恐らくしばらくはここに帰ってこれないだろう……。
 ダンジョンが出たらどうしようか? そういえばそこんところ、みんなと相談しなきゃな。

「ごめん、しばらく大学院なんだ、また今度ね」
「うん……」
「とにかく、中入ろ、キセノン」
「わかった……入る……」

 私たちは手をつないで、いかいやの中へと入っていった。
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