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第6章 さぁ、ファッションショータイムだ!

第143話 アナザーワールズ、初名乗り

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 ……意見が分かれてしまった。
 ……決定権は何の意見も言っていないゴルドが握っている。

「ゴルドちゃん……どっち」
「あ、いや……そうだな……」

 ゴルドは戸惑っている様子だった。
 いやもうどっちでもいいから……。

「ゴル爺早く!」
「はよ決めんかい、髭親父」
「ひ、髭親父はないだろ!」
「ゴルドちゃん……時間無いよ……」

 ……あぁもう!

「もういいから早く! 『転生』!! これで決まり!!」
「あ、ちょ、ちょっと待てよ! こ、こうか? 『転生』!」
「あはは! ま、いっか! 『転生』!」
「ほな、いきましょ、『転生』」
「決まりだね……『転生』」

 掛け声と共に、私たちはカードを腕輪に翳した。
 各々カラフルな鎧に身に纏い、いざ名乗りだ。
 えぇーと……変身したら、私からだったよね? ……って、みんなが私に向かって「早く言えよ」と言うように見つめている……早く言うか。

「い、異界の探索者! ひゅ、ヒューマンシーカー……猪飼瑠璃!」

 私は指示書通りの動きを加えつつ、名乗りを上げた……やっぱり恥ずかしい!
 台詞も緊張のあまり噛んでしまった。
 私が名乗りを上げると、続いてリンの番だ。
 私はポーズを固定しつつ、横目で彼女を見つめた。

「射抜く探索者! エルフシーカー、リン!」

 リンのポーズは「射抜く探索者」で両手をクロスさせ、戦士名名乗りで両手で円を描き、最後の名乗りで左手に持っているボウガンを右肩近くまで上げ、もう片方の手は左腰近くでピースサインを作るという構成だった。
 ……リンだからか、かわいく見える。
 続いてラピスの番だ。

「美しき探索者、サキュバスシーカー、ラピス……やで」

 ラピスは「美しき探索者」の部分で両手に持つ扇子を舞うように振った後、戦士名を名乗るところで花が咲いたように両手で楕円を描き、最後の名乗りで胸の近くで両腕をクロスさせるという構成……かっこよさと美しさを兼ね備えたラピスらしい名乗りだった。
 続いてゴルド……。

「剛力の探索者! ドワーフシーカー、ゴルド!」

 ゴルドの名乗りはまず、「剛力の探索者」の部分で相撲のような四股踏みを行い、戦士名名乗りで両手に持つ斧を縦横無尽に振り回した後、最後に扉を開けるように両手を開いくという、逞しさを強調したような名乗りだった……なんで四股踏みなのかキセノンに聞いたら「それっぽいから」と何とも言えない回答をした……まぁゴルドは気合入れて名乗ったし、いいのかな?
 最後に名乗りのトリを務めるのはキセノン……。

「鍛える……探索者、ヴァンパイアシーカー……キセノン」

 キセノンは「鍛える探索者」の部分でマッスルポーズをとった後、戦士名名乗りで爪を立てて襲うようなポーズをし、最後の名乗りで両手を広げ、Y字を作る……キセノンらしさがなんとなく伝わる名乗りだ。
 ……と、最後の名乗りか、えーっと……息を合わせるんだよね?

「ダン……「ダンジョンを……「ダンジョ……「ダンジョン……「ダ……」」」」」

 ちょっと! バラバラじゃん!

「……やり直そう、みんな」

 私がそう言うと、みんなは静かに頷いた。

「行くよ? 1,2……」
「「「「「ダンジョンを迅速にデリート!!」」」」」
「ダンジョン探索隊……「「「「アナザーワールズ!!」」」」」

 私が息を合わせやすいようにカウントダウンをすると、みんなで打合せ通りのポーズを取りながら、名乗りを上げた。
 こ、これでいいのかな?

「……できたね……名乗り」
「うーん、でもバリバラバラって感じ?」
「リンちゃん……帰ったら……練習……しよう」
「……だね!」

 練習? これ練習するの? ……まぁいいけど。

「それじゃ、みんな、行くよ!」
「うん! なんかバリ気合入ってきたかも!」
「せやな、なんかやる気が湧いてきたで!」
「ま、確かにやる気は出るな」
「うん……名乗り……効果……ある」

 みんなの言う通り、名乗りを上げたらなんかやる気が湧いてきたかも。
 よし、安全地帯で待機してるあの姉妹のためにも、早いとこダンジョンボスを退治して、ちゃちゃっとダンジョンをデリートしますか!
 私たちは気合を入れ、前進した。
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