89 / 424
第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past
閑話 エルフの過去 その1 ~ラサル氏族~
しおりを挟む
「ラサルの民よ! よく聞くのだ! 今日こそは、憎き『カストル氏族』の奴らを根絶やしにするのだ!! それこそ、我らがラサル氏族の使命である!!」
……お母様が、兵士たちに向かってそんなことを叫ぶ。
私は目の前にいる兵士たちを、ただ見つめていた。
「ニオブ様―!!」
「俺はニオブ様のために戦います!」
「ニオブ様のためなら私の命などいりません!!」
……『ニオブ』、私の事だ。
「……ほら、ニオブ。声援に応えろ」
私の隣にいた、「お姉様」が、そんなことを言ってきた。
……応える、と言ってもどうやって?
「……お姉様、応えると言っても、どうやって?」
「簡単だ、手を上げればいい」
「……手を」
私はお姉様の言う通りにした。
……すると、兵士たちは、まるでそれを待ち望んでいたかのように、声を上げた。
「うおおおおおおおおお!! ニオブ様!!」
「ニオブ様! ニオブ様!」
「我らが命はニオブ様のために!!」
……兵士たちは歓声を上げるが、私には、何も感じなかった。
☆
私たち、エルフは複数の氏族によって成り立っている。
その中でも大きい氏族は、ラサル、カストル、ルクバト、ポラリス、アルタイル。
この5つの氏族は、長年争いが絶えない。
カストル氏族は、かつてラサル氏族をまるで奴隷のような扱いをし、ラサル氏族がそれに対する復讐のようにカストル氏族を襲っている。
ルクバト族は、ポラリス族のかつての族長を殺害し、それに対する報復合戦が定期的に行われている。
アルタイル族はかつてエルフを統一していた歴史があり、そんな過去の栄光を取り戻そうと定期的に小さい氏族を襲撃している。
……正直、私はそんな過去に捕らわれている氏族のトップに嫌気がさしていた。
だって、それは大昔に起きたことだし、今は今で、その先にも未来があるわけでしょ?
……私こと、「ニオブ・ラサル」は、ラサル氏族の族長の娘。
故にラサル氏族の者たちからは神の子のように見られている。
……私はそんな大層な子じゃないのに。
いつも族長であるお母様から、「我らはラサル族の頂点である、頂点は、常に完璧でなければならない」、そんなことを言われていた。
常に、頂点になるための勉強、勉強、勉強、勉強……その毎日。
だから、自由な時間も少なかった。
……数少ない自由な時間、私はただ、実家の庭に佇んでいた。
外に出ても、どこかで争いが起こっていて、必ずどこかで死体が転がっているからだ。
……この庭は、様々な木が植えられていて、端から見たら森だと言うだろう……そのくらい広かった。
何故か知らないけど、ここにいると落ち着くんだ。
嫌なことも、何もかも……全てが忘れられて、無になれる。
……お母様が、兵士たちに向かってそんなことを叫ぶ。
私は目の前にいる兵士たちを、ただ見つめていた。
「ニオブ様―!!」
「俺はニオブ様のために戦います!」
「ニオブ様のためなら私の命などいりません!!」
……『ニオブ』、私の事だ。
「……ほら、ニオブ。声援に応えろ」
私の隣にいた、「お姉様」が、そんなことを言ってきた。
……応える、と言ってもどうやって?
「……お姉様、応えると言っても、どうやって?」
「簡単だ、手を上げればいい」
「……手を」
私はお姉様の言う通りにした。
……すると、兵士たちは、まるでそれを待ち望んでいたかのように、声を上げた。
「うおおおおおおおおお!! ニオブ様!!」
「ニオブ様! ニオブ様!」
「我らが命はニオブ様のために!!」
……兵士たちは歓声を上げるが、私には、何も感じなかった。
☆
私たち、エルフは複数の氏族によって成り立っている。
その中でも大きい氏族は、ラサル、カストル、ルクバト、ポラリス、アルタイル。
この5つの氏族は、長年争いが絶えない。
カストル氏族は、かつてラサル氏族をまるで奴隷のような扱いをし、ラサル氏族がそれに対する復讐のようにカストル氏族を襲っている。
ルクバト族は、ポラリス族のかつての族長を殺害し、それに対する報復合戦が定期的に行われている。
アルタイル族はかつてエルフを統一していた歴史があり、そんな過去の栄光を取り戻そうと定期的に小さい氏族を襲撃している。
……正直、私はそんな過去に捕らわれている氏族のトップに嫌気がさしていた。
だって、それは大昔に起きたことだし、今は今で、その先にも未来があるわけでしょ?
……私こと、「ニオブ・ラサル」は、ラサル氏族の族長の娘。
故にラサル氏族の者たちからは神の子のように見られている。
……私はそんな大層な子じゃないのに。
いつも族長であるお母様から、「我らはラサル族の頂点である、頂点は、常に完璧でなければならない」、そんなことを言われていた。
常に、頂点になるための勉強、勉強、勉強、勉強……その毎日。
だから、自由な時間も少なかった。
……数少ない自由な時間、私はただ、実家の庭に佇んでいた。
外に出ても、どこかで争いが起こっていて、必ずどこかで死体が転がっているからだ。
……この庭は、様々な木が植えられていて、端から見たら森だと言うだろう……そのくらい広かった。
何故か知らないけど、ここにいると落ち着くんだ。
嫌なことも、何もかも……全てが忘れられて、無になれる。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【本編完結】アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~
奏
恋愛
同じアイドルグループ所属の陽葵と美月はファンに大人気のカップリング。
Q.公認状態だけれど、実際の関係は……?
A.恋人同士
甘えたな年上キャプテン×クールな年下後輩
基本的にバカップルがイチャイチャしているだけで鬱展開はありませんので、安心してご覧下さい。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
*本編完結しました。今後は番外編を更新します
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる