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49.王子様、全部買う

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「……どうした? 気になるのか?」

 スタッグ様は、お菓子をまじまじと見ている私にそう問いかける。

「えぇ、とても興味深いです」

 否定する理由もないので、私は正直に今の気持ちを言った。

「教会ではこういうの食ってないのか?」
「まぁ、食べますけど、こういう庶民的なものを見るのは初めてなもので……」
「なるほどな」

 スタッグ様は何かを考えているようだった。
 ……なんでしょう?
 そんな会話をしていると、店のご主人がお菓子を持って戻ってきた。

「はい、お待たせ、いつものやつだ」
「おう、いつも悪いな……ところで、追加注文してもいいか?」
「あぁ、構わねぇが……」

 追加注文? 他に買うものがあるのでしょうか?
 ……まさか。

「ここにあるもの……全部くれ」
「ぜ、全部!?」
「全部ですか!?」

 ご主人が驚愕すると同時に、私も驚愕の声を上げた。
 いや、全部って正気ですか!? どう持ち帰るつもりですか!?

「あ、いや、全部っつっても、全種類3つずつってことな」
「なんだよ……驚かせやがって……」

 ご主人が胸を撫で下ろす……。
 ……全くです……もうちょっとハッキリ言ってくださいよ……。

「こいつへのプレゼントみたいなものだ、頼むよオヤジ」
「はいよ、ちょっと待ってな」

 ご主人は再び店の奥へと向かった。
 ……にしても。

「私のプレゼントに全種類のお菓子ですか?」
「いや……欲しいような目で見てたからよ……」

 確かに欲しかったですけど……全種類は多いですよ……。

「安心しろ、金は俺が出すからよ」
「いや、そういう問題じゃなくて……」

 ……これどう持ち帰る気ですか?
 そう言いたかったが、ご主人が紙袋を持ってこちらに戻ってきたので、何も言えなかった。

「ほいよ、お待たせ」
「すまねぇな、ほい、釣りはいらねぇ」
「毎度どうも」

 ご主人にお金を渡し、スタッグ様は明らかに重そうな紙袋を受け取る。
 ……だが、意外に余裕そうな表情をしていた。

「じゃ、また来るぜ」
「おう、そこの坊ちゃんもまたな」
「は、はい……」

 ぼ、坊ちゃん……確かにそうですが、なんか違和感がある……。
 そんなこんなで、手が塞がっているスタッグ様の為に扉を開け、私たちは外に出た。
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