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45.王子様、兎になる

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「それで……スタッグ様は何とお呼びすれば?」
「そうだなぁ……うーん……」

 どうやら決めていないらしい。
 そうですね……彼は性欲大魔神で、それでいて多くの女性から好かれている……ならば。

「ラビットなんてどうです?」
「ら、ラビット?」

 私の提案に彼は困惑する。
 ラビット……長い耳が特徴のかわいい動物だ。
 東方の国では鳥だと考えられているらしい……本でそう読みました。

「貴方の性欲を考えると妥当だと思いますけど?」
「だとしても……男でラビットはおかしいだろ……」
「それもそうですね……ならば……省略して、ビートでどうです?」
「ビートか……まぁ、ラビットよりかはマシか」

 ビート……まぁ、悪くはないですよね?

「じゃ、よろしくお願いしますよ、ビート様?」
「はいよ……ヘラクレス」

 私たちはお互いに名前を呼び合い……それを了承した。

「……さて、お前も着替えろ」
「はぁ……」

 私は軽く返事をし、着替え始める……って。

「外に出てくださいよ」
「男同士だから別に……」
「出てください」
「はい……」

 全く……まぁ、さっさと着替えましょうか。



「着替え終わりましたよ」

 私は颯爽と着替え、部屋に戻る。
 既に彼も着替えを終えていた……先ほどとは違う貴族のような服に眼帯。
 ぱっと見どこか辺境の貴族のように見える。

「……」
「……なんですか?」

 彼は私をまじまじと見つめている。
 ……そんなにおかしな恰好ですかね? 現にこれスタッグ様の服なんですけれども。

「お前……結構似合ってるな」
「……そうですか?」
「あぁ……どこか辺境の貴族のように見える」
「……」

 辺境の貴族……私が見た貴方と全く同じ感想じゃないですか。
 なんか悔しい……からかうか。

「そうですね、貴方の場合、頭にバンダナでも巻いたらもっと似合っていると思いますよ」

 私は笑いながらそう言ってやった。
 ……すると彼は。

「バンダナか……いいかもな! よし!」
「……は?」

 彼は何か思いついたかのようにクローゼットへと向かう。
 いや……何が「よし!」なんですかね。
 ……数秒もしないうちに、彼は戻ってきた。

「……どうだ?」
「……ほう」

 彼は……首にバンダナを巻いていた。
 なるほど……様になっていますね。

「似合っていますよ、案外」

 私は素直に感想を述べた。
 彼は尚のこと上機嫌になったのか、笑みを浮かべた。

「さ、行くぞ、こっちだ」

 彼は優しく私の手を握り、部屋を出た。
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