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43.王子様の誘い

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「……てなわけで、兄は夜会に遅れたというわけだ」
「……」

 正直……結構面白かった。
 まぁつまらなさはありますけど……過去の話と比べたら断然マシですね。

「ど、どうだ?」
「……及第点ってところですね」
「そ、そうか!」

 彼は嬉しそうな顔を浮かべる。
 ……かわいいところもあるんですね。

「と、ところで! 違う話だが……」
「あらあら、唐突ですね。その辺りはまだ全然ですね」
「……」

 ……彼は黙ってしまった。
 でも、事実は事実だと思いますけどね。

「……で、なんですか?」

 これ以上黙ってもらえると一向に進まない為、催促してみる。
 すると彼は呆れた表情で再び口を開いた。

「……この茶菓子なんだが……どうだ? 美味いか?」
「……茶菓子?」

 話をしていてすっかり忘れていたのだが、確かに、今日のtyが足は一段と美味しい。

「美味しいですけど……それが何か?」
「いや……その……差し支えなければなんだが……」

 彼はどぎまぎしながら話している……。
 なんでしょう……凄くろくでもないものの予感がします。

「この茶菓子……これで切れるんだが……その……」
「……」

 あぁ、今なんとなく分かりました。
 要するに私と……。

「そ、そそそそそそ、その、これを……いいいいい、一緒に……」
「……」

 彼は顔を真っ赤にしながら、デートの誘いをしているようだった。
 ……全く、乙女ですか? ……なんか、からかいたくなりましたね。

「なんですか? 聞こえないのですけど? はっきり言ってくださいよ、貴方の口は飾りですか?」
「こ、こっちから誘うの慣れてないんだよ!」

 ……しょうがない人ですね。

「つまり、茶菓子が切れたので一緒に買いに行きましょうと……そういうことですか?」
「そ、そうだ!」

 彼は嬉しそうに返事をするが……これには少し……どころか、かなり問題があるように見える。

「いや……私たちが、それも2人で街に出たら騒ぎになりません?」

 仮にも王国第二王子と聖女。
 大騒ぎになるに違いない、ましてやエネマを待たせているわけですし。

「大丈夫だ、策はちゃんと考えてある」
「……ほう?」
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