56 / 99
蛇の道は蛇
しおりを挟む
「……ふう」
止血の包帯を巻き終え、一息つく高千穂。
鳥のように背の高い木に上り、遠くの山火事を眺める。
「ははは、燃えろ燃えろ。どうせなら国中にまで広がってしまえばいいのだ」
退廃的な考えだと自覚しながらも森を飲み込んでいく火を見ると自然と胸がすく。
住処を追われた鳥たちが火の粉と共に夜空に舞う。冬を目前にしても飛び立つことをしなかった鳥たちだ。渡り鳥ではない。居場所を失えば空を飛びまわれる自由があろうと未来はない。
「これだ、これが見たかったのだ。これこそが正義であり平等なのだ」
不思議な巡り合わせ。付き従うだけの人生だったが、それを貫いたからこその褒美となる光景がそこにあった。
後押しするかのような一陣の風。枝を揺らし、高千穂の背中を押す。
同時に耳元に通過する風切り音。
高千穂の身体は前から倒れ、地面に向かう。
「ふっ、来たか」
綻ぶ口元を落下しながら頭巾で隠す。
目線の先に刀を携えた一人の男。暗い足元の中、不安定な山道を鹿のように軽やかに、猪のように突き進んでいる。
このまま地面に下りれば刀で叩き切られる。
太い枝に足を引っかける。そして枝を軸に身体を回転させて着地する。
「さあ、どうでる? 猿のように根元から這い上がってくるか?」
そんな間抜けな真似をする男ではない。
「すー……はー……!」
山道を駆けおりながら男は深呼吸する。
そして息を止めたかと思うと、鳥のように飛ぶ。否、跳躍する。
動物では例えようのない異様な跳躍力。せめて例えるなら天狗のよう。
「天狗のように羽は生えてはおるまい!」
自分の高さにまで迫る跳躍を目の当たりにしても狼狽えず、高千穂は苦無を投げつける。
「……っ……はっ……!」
キィン、キッィン!
男は空中でありながらも刃こぼれした刀で苦無を弾く。
跳躍の勢いは殺さないままに迫る。
「素晴らしい強さだ。だがこれならどうかな!」
迫る男に対し、あえて逃げるのではなく真正面から向かう。
「っ!?」
面食らったような表情を見せる男。
慌てながらも冷静に、柄の頭に手のひらを当て刃先を高千穂に向ける。
刃先は高千穂の心臓に正確に狙いを定めていた。
ガッ!
しかし刃先は高千穂の胸を捉えるも貫きはしない。
「はははっ! 足は天狗でも頭は猿のようだったな!」
黒布の下に見え隠れする石。
「ちぃ……!」
刃先をずらし狙いを変えようとするが、
「遅い!」
高千穂は右足を振り上げる。
鋭い風切り音。
頭より上にあげた右足、足袋の先には鋭利な仕込み刀。
空に舞う血しぶき。
「ちぃっ……!」
男の顎に浅い切り傷。致命傷は免れた。血と共に蓄えていた髭もはらりと散る。
「運が良かったな、この仕込み刀には毒は塗られていない」
奇襲に失敗した男は手詰まり。一旦距離を置こうとするが、
「だから遅いと言っているのだ!」
高千穂は上げていた右足を振り下ろす。
踵が額を捉えた。
「えいっ!」
力を込めて蹴落とす。
返り討ちに遭った男は枝や葉にもまれながら地に落ちる。
高千穂は悠々と木の枝に着地する。木の葉を揺らし落とし下の視界を確保する。
舞い落ちる木の葉の陰に、よたりよたりと敗走する男の姿を発見。
「お前が悪いのだぞ……せっかくの機会を無駄にしたお前がな……」
口を頭巾で覆っても漏れる笑い声。
軽く跳躍。行く先を阻む小枝を苦無で切り落とし無傷で着地。
男の前に先回りし立ちはだかる。
「どこへ逃げても無駄だぞ……竜之助」
竜之助は額を抑えながら舌打ちする。
「忍びのくせしてよくしゃべる野郎だ」
「いつもは返事以外は寡黙を徹しているのだがな、今宵は仕方ないのだ。積もりに積もった仕事が片付いたのだ。これくらいは許されよう」
「……山吹のことか」
「左様。長年仕えた腹心にも教えなかった隠れ家があったとはな……まったく、忍びという者は浮かばれん」
「お前の本性を薄々見抜いてたんだろう。ただまあ詰めが甘かったみたいだが」
「本性……本性といえば俺も、竜之助、お前の本性を見抜いているのだぞ」
「きめえ。気安く俺の名前を呼ぶんじゃあねえ」
「まあ聞けよ、竜之助。俺たちは兄弟。そうだろ?」
「……はあ?」
「おっと勿論血は繋がってないぞ。しかし俺とお前はよく似ているんだ」
「まだ毒が残ってるんじゃあねえか、お前」
「境遇の話だ。お前の所作、まるで貴族で生まれ育ったかのように美しかった。それでお前は良い人間だと将軍も娘も騙されただろうが俺は違う。どれだけ美しく振る舞ってもぬぐえぬ匂いがあるのだよ」
「……」
竜之助は高千穂の話に耳を傾けるでもなく黙り込む。
「俺は今では武家に仕えているが元は貧民だ。いや民なんて呼ぶのも相応しくない、人の身でありながら家畜同然だった。親の顔なんて知らないし考える暇もない。気付いたら木の鍬で干乾びた土を耕していた。とある日、一人で畑仕事をしていると見知らぬ者に攫われてしまった。どこに連れていかれたか、わかるか? まあ言わなくてもわかるよな」
忍びの出自のほとんどが身寄りのない子供。里に 招かれ教育されるか、忍び個人に教育されるか、流派によって違いがある。
拾われて生活が楽になったかと問われればそうでもない。日が暮れれば仕事が終わる合図だったが里では訓練に終わりはない。昼夜も一日の境もないようなもの。
「そして生き残った俺が仕えることになったのが山吹家だった。その時はまだ戦乱は起こらず世は平穏でのんびりとした田舎暮らし。苦無ではなく、また鍬に持ち替える日々が始まった。どんな些細な用事も叶えれば感謝され、何の成果を得られなくても最低限の飯は出る。今までの人生とは一変した。良いことだと思うか? いいや違う。のんびりとした時間が俺を苛まされる。今までの俺の人生は何だったのだと。何もせず、ぐうたらしているような人間が当たり前のように幸せを享受していることに俺は許せなかった」
目に映るものすべてが憎かった。さりとて忍びの身。忍びの身であれば忍び難きを忍ぶのみ。
しかしその忍びが実を結ぶかのような出来事が起きる。
「そして再び人生は一変する。戦乱が起きたのだ。戦乱の波は此の地にまで及ぶ。日に日に細くなっていく。家が、町が、民が、自然もだ。自分事であるのに喜ばずにはいられなかった。これこそが平等なのだ。他人も、私も、平等に不幸になる。逆はない。幸福になる時は必ず上下優劣が生まれる。平等はないのだ。どん底へと落ちていくのが平等であり正義なのだ」
竜之助の心がざわつく。耳を傾けているわけではないのに、身体が、心が、傾きそうになる。
「……いい加減、お前の声に聞き飽きた。今度から身の上話は暇も持て余した老人とするんだな」
「とんだ外道だと思うか? しかしお前にもわかるだろう? 人が落ちていくのに、穢れていくのに、滾るものがあるだろう?」
「な、なにを、勝手な」
「おっと~図星だな~? 例えば……手にも届かぬような高貴な女や男勝りの生意気な女を手籠めになんてしたら最高だよな~?」
あえて具体的な例を挙げる下劣な行い。しかし竜之助は否定できなかった。刀を振ろうとしたがぐっと堪える。
「怒るなよ、兄弟。いや穴兄弟とでも言っておこうか。朽葉は良い女だっただろう? 生意気が人間の形にしたような女だったが良く尽くしてくれたであろう。あれは俺が仕込んだのだ。仕込むのには苦労した。初夜なんてずっと涙と鼻水を流していたからな。流すのは血だけにしてほしいものだ」
竜之助は睨みを尖らせる。
「おいおい怒るなよ? それにお前が賊狩りに乗り気になったのも姫に誘われたからだろう?」
「お前、見ていたのか!?」
「おっと当てずっぽうが当たったか。まあ、そんなことだろうと思ったが……兄弟よ、残念だがお前に春は訪れない」
喋りすぎたためにずれた頭巾の位置を直す。
「本心で言えば見逃しても良かったのだが……今の主は小心者でな。仕事はきっちりとしておかないといけぬのだ」
高千穂は苦無を握り直す。
竜之助は刀を、握り直せない。
「額への蹴りが大きかったようだな。大した忍耐力だ。本当は喋っているのもやっとだろうに」
「……やめろ……こっちへ来るな……」
「お前は捨てきれない人間だったのだよ。一夜抱いた女に情が移ったばかりに身を亡ぼすのだ」
「……敵討ちなんて高尚な真似しねえよ……それで死人が生き返ったりはしねえし……俺はただ……」
「さらばだ、兄弟。死も考えようでは救済なのだよ。このくそったれの世界と縁を断つことができるのだから」
「……気に食わねえ奴を殺してきただけだ」
高千穂が落ちていた小石を踏む。
すると後方の藪から一本の矢。
何者かが隠れていたわけではない。
射る者がいたとするなら竜之助だ。
実はこの周辺は竜之助の縄張り。獣を狩るよりも人間の侵入者を殺すための罠を張っていた。
「なに!?」
不意を突かれた高千穂だったが射出音を聞き取ると軽く跳躍し躱す。
飛んできた矢は竜之助へと目がけて飛ぶ。
止血の包帯を巻き終え、一息つく高千穂。
鳥のように背の高い木に上り、遠くの山火事を眺める。
「ははは、燃えろ燃えろ。どうせなら国中にまで広がってしまえばいいのだ」
退廃的な考えだと自覚しながらも森を飲み込んでいく火を見ると自然と胸がすく。
住処を追われた鳥たちが火の粉と共に夜空に舞う。冬を目前にしても飛び立つことをしなかった鳥たちだ。渡り鳥ではない。居場所を失えば空を飛びまわれる自由があろうと未来はない。
「これだ、これが見たかったのだ。これこそが正義であり平等なのだ」
不思議な巡り合わせ。付き従うだけの人生だったが、それを貫いたからこその褒美となる光景がそこにあった。
後押しするかのような一陣の風。枝を揺らし、高千穂の背中を押す。
同時に耳元に通過する風切り音。
高千穂の身体は前から倒れ、地面に向かう。
「ふっ、来たか」
綻ぶ口元を落下しながら頭巾で隠す。
目線の先に刀を携えた一人の男。暗い足元の中、不安定な山道を鹿のように軽やかに、猪のように突き進んでいる。
このまま地面に下りれば刀で叩き切られる。
太い枝に足を引っかける。そして枝を軸に身体を回転させて着地する。
「さあ、どうでる? 猿のように根元から這い上がってくるか?」
そんな間抜けな真似をする男ではない。
「すー……はー……!」
山道を駆けおりながら男は深呼吸する。
そして息を止めたかと思うと、鳥のように飛ぶ。否、跳躍する。
動物では例えようのない異様な跳躍力。せめて例えるなら天狗のよう。
「天狗のように羽は生えてはおるまい!」
自分の高さにまで迫る跳躍を目の当たりにしても狼狽えず、高千穂は苦無を投げつける。
「……っ……はっ……!」
キィン、キッィン!
男は空中でありながらも刃こぼれした刀で苦無を弾く。
跳躍の勢いは殺さないままに迫る。
「素晴らしい強さだ。だがこれならどうかな!」
迫る男に対し、あえて逃げるのではなく真正面から向かう。
「っ!?」
面食らったような表情を見せる男。
慌てながらも冷静に、柄の頭に手のひらを当て刃先を高千穂に向ける。
刃先は高千穂の心臓に正確に狙いを定めていた。
ガッ!
しかし刃先は高千穂の胸を捉えるも貫きはしない。
「はははっ! 足は天狗でも頭は猿のようだったな!」
黒布の下に見え隠れする石。
「ちぃ……!」
刃先をずらし狙いを変えようとするが、
「遅い!」
高千穂は右足を振り上げる。
鋭い風切り音。
頭より上にあげた右足、足袋の先には鋭利な仕込み刀。
空に舞う血しぶき。
「ちぃっ……!」
男の顎に浅い切り傷。致命傷は免れた。血と共に蓄えていた髭もはらりと散る。
「運が良かったな、この仕込み刀には毒は塗られていない」
奇襲に失敗した男は手詰まり。一旦距離を置こうとするが、
「だから遅いと言っているのだ!」
高千穂は上げていた右足を振り下ろす。
踵が額を捉えた。
「えいっ!」
力を込めて蹴落とす。
返り討ちに遭った男は枝や葉にもまれながら地に落ちる。
高千穂は悠々と木の枝に着地する。木の葉を揺らし落とし下の視界を確保する。
舞い落ちる木の葉の陰に、よたりよたりと敗走する男の姿を発見。
「お前が悪いのだぞ……せっかくの機会を無駄にしたお前がな……」
口を頭巾で覆っても漏れる笑い声。
軽く跳躍。行く先を阻む小枝を苦無で切り落とし無傷で着地。
男の前に先回りし立ちはだかる。
「どこへ逃げても無駄だぞ……竜之助」
竜之助は額を抑えながら舌打ちする。
「忍びのくせしてよくしゃべる野郎だ」
「いつもは返事以外は寡黙を徹しているのだがな、今宵は仕方ないのだ。積もりに積もった仕事が片付いたのだ。これくらいは許されよう」
「……山吹のことか」
「左様。長年仕えた腹心にも教えなかった隠れ家があったとはな……まったく、忍びという者は浮かばれん」
「お前の本性を薄々見抜いてたんだろう。ただまあ詰めが甘かったみたいだが」
「本性……本性といえば俺も、竜之助、お前の本性を見抜いているのだぞ」
「きめえ。気安く俺の名前を呼ぶんじゃあねえ」
「まあ聞けよ、竜之助。俺たちは兄弟。そうだろ?」
「……はあ?」
「おっと勿論血は繋がってないぞ。しかし俺とお前はよく似ているんだ」
「まだ毒が残ってるんじゃあねえか、お前」
「境遇の話だ。お前の所作、まるで貴族で生まれ育ったかのように美しかった。それでお前は良い人間だと将軍も娘も騙されただろうが俺は違う。どれだけ美しく振る舞ってもぬぐえぬ匂いがあるのだよ」
「……」
竜之助は高千穂の話に耳を傾けるでもなく黙り込む。
「俺は今では武家に仕えているが元は貧民だ。いや民なんて呼ぶのも相応しくない、人の身でありながら家畜同然だった。親の顔なんて知らないし考える暇もない。気付いたら木の鍬で干乾びた土を耕していた。とある日、一人で畑仕事をしていると見知らぬ者に攫われてしまった。どこに連れていかれたか、わかるか? まあ言わなくてもわかるよな」
忍びの出自のほとんどが身寄りのない子供。里に 招かれ教育されるか、忍び個人に教育されるか、流派によって違いがある。
拾われて生活が楽になったかと問われればそうでもない。日が暮れれば仕事が終わる合図だったが里では訓練に終わりはない。昼夜も一日の境もないようなもの。
「そして生き残った俺が仕えることになったのが山吹家だった。その時はまだ戦乱は起こらず世は平穏でのんびりとした田舎暮らし。苦無ではなく、また鍬に持ち替える日々が始まった。どんな些細な用事も叶えれば感謝され、何の成果を得られなくても最低限の飯は出る。今までの人生とは一変した。良いことだと思うか? いいや違う。のんびりとした時間が俺を苛まされる。今までの俺の人生は何だったのだと。何もせず、ぐうたらしているような人間が当たり前のように幸せを享受していることに俺は許せなかった」
目に映るものすべてが憎かった。さりとて忍びの身。忍びの身であれば忍び難きを忍ぶのみ。
しかしその忍びが実を結ぶかのような出来事が起きる。
「そして再び人生は一変する。戦乱が起きたのだ。戦乱の波は此の地にまで及ぶ。日に日に細くなっていく。家が、町が、民が、自然もだ。自分事であるのに喜ばずにはいられなかった。これこそが平等なのだ。他人も、私も、平等に不幸になる。逆はない。幸福になる時は必ず上下優劣が生まれる。平等はないのだ。どん底へと落ちていくのが平等であり正義なのだ」
竜之助の心がざわつく。耳を傾けているわけではないのに、身体が、心が、傾きそうになる。
「……いい加減、お前の声に聞き飽きた。今度から身の上話は暇も持て余した老人とするんだな」
「とんだ外道だと思うか? しかしお前にもわかるだろう? 人が落ちていくのに、穢れていくのに、滾るものがあるだろう?」
「な、なにを、勝手な」
「おっと~図星だな~? 例えば……手にも届かぬような高貴な女や男勝りの生意気な女を手籠めになんてしたら最高だよな~?」
あえて具体的な例を挙げる下劣な行い。しかし竜之助は否定できなかった。刀を振ろうとしたがぐっと堪える。
「怒るなよ、兄弟。いや穴兄弟とでも言っておこうか。朽葉は良い女だっただろう? 生意気が人間の形にしたような女だったが良く尽くしてくれたであろう。あれは俺が仕込んだのだ。仕込むのには苦労した。初夜なんてずっと涙と鼻水を流していたからな。流すのは血だけにしてほしいものだ」
竜之助は睨みを尖らせる。
「おいおい怒るなよ? それにお前が賊狩りに乗り気になったのも姫に誘われたからだろう?」
「お前、見ていたのか!?」
「おっと当てずっぽうが当たったか。まあ、そんなことだろうと思ったが……兄弟よ、残念だがお前に春は訪れない」
喋りすぎたためにずれた頭巾の位置を直す。
「本心で言えば見逃しても良かったのだが……今の主は小心者でな。仕事はきっちりとしておかないといけぬのだ」
高千穂は苦無を握り直す。
竜之助は刀を、握り直せない。
「額への蹴りが大きかったようだな。大した忍耐力だ。本当は喋っているのもやっとだろうに」
「……やめろ……こっちへ来るな……」
「お前は捨てきれない人間だったのだよ。一夜抱いた女に情が移ったばかりに身を亡ぼすのだ」
「……敵討ちなんて高尚な真似しねえよ……それで死人が生き返ったりはしねえし……俺はただ……」
「さらばだ、兄弟。死も考えようでは救済なのだよ。このくそったれの世界と縁を断つことができるのだから」
「……気に食わねえ奴を殺してきただけだ」
高千穂が落ちていた小石を踏む。
すると後方の藪から一本の矢。
何者かが隠れていたわけではない。
射る者がいたとするなら竜之助だ。
実はこの周辺は竜之助の縄張り。獣を狩るよりも人間の侵入者を殺すための罠を張っていた。
「なに!?」
不意を突かれた高千穂だったが射出音を聞き取ると軽く跳躍し躱す。
飛んできた矢は竜之助へと目がけて飛ぶ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる