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Ⅳ 新しい朝

第35.5話 帝都陥落

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アンヘル:帝国に恨みをもつ剣士。死神と呼ばれる青年。21歳。
オリヴィア・ロベール:死神と行動をともにする錬金術師の女性。21歳。

ゴーマ:水の都・アクエリスの執政官を務める貴族。57歳。
ヴィルヘルム:旧ハルモニア帝国最後の皇帝。豪胆で狡猾。60歳。
マティアス・ロベール:オリヴィアの父。騎士団長。52歳。

~モブ~
兵士①②
騎士
男性
子ども


 ──────落日。

(SE 炎がパチパチと爆ぜる音)

 ここは、学術都市・フリージアの西に位置する大都市。すなわち皇帝の居城を中心に戴く帝都・グロリオーサ。魔導による輝かしい発展は、わずか数年で世界を統一するまでに至った。だが──────

(SE 炎がパチパチと爆ぜる音)

 そこにあったはずの栄華は蹂躙され、人々の営みはすべて炎の中に消え失せた。

オリヴィア 「…………」

 死神に加担する魔女、オリヴィア・ロベールは、燃える帝都を歩きながら、ここまでの道程に思いを馳せていた。

 魔導による発展、それは確かに力をもたらした。しかしその力は、支配する者とされる者に二分した。貴族と平民、魔法の才を持つ者と持たざる者、その線引きは、皮肉にも世界を平定した後、より一層明確なものとなった。

 ロベール家は帝国でも有数の名家の一族だった。現当主であるマティアス・ロベールは、騎士団長を務め、帝国における一大派閥である騎士団派を牽引している。そんな名家の出身であるオリヴィアは、錬金術の才に秀でており、帝国の魔導研究に一躍買っていた。しかし、そんな成功の道を進んでいた彼女は、ひとり帝都を抜け出し、遠い東の地で店を営んでいた。

────────────

 数年前。水の都・アクエリス郊外、森。魔法使いの店。

(SE 扉の開閉音)

アンヘル 「邪魔するぜ」

オリヴィア 「いらっしゃ……、またあなた?」

アンヘル 「いいじゃねえか。お前の薬はよく効くんだ」

オリヴィア 「……また貴族相手に喧嘩? そのうち捕まるわよ?」

アンヘル 「そんなヘマしねえよ」

(SE 棚を漁る音)

オリヴィア 「ちょっと、勝手に漁らないでよ」

アンヘル 「勝手知ったるなんとやらってなー。……っと、あったあった」

オリヴィア 「はあ、まったく……。お代、ちゃんと置いてってよ」

アンヘル 「ツケといてくれ」

オリヴィア 「また? 言っておくけど、慈善事業じゃないのよ? ただでさえ経営が……」

アンヘル 「ここの経営がうまくいってないのは、お前に商才がないからだろ?」

オリヴィア 「そんなことは、ないと思うのだけれど……」

アンヘル 「……じゃあ、これはどういう薬なんだ?」

オリヴィア 「それは確か、しゃっくりを止まらなくする薬ね。ジョークグッズのつもりだったけれど、しゃっくりを100回してしまうと死ぬって聞いて、売るのをやめたのよ」

アンヘル 「……やっぱ商才ねえわ、お前」

オリヴィア 「え?」

アンヘル 「それに、しゃっくり100回すると死ぬっての、迷信だからな?」

オリヴィア 「そうなの!? じゃあやっぱり販売しようかしら……?」

アンヘル 「それはマジでやめとけ」

────────────────

 アクエリス、平民街。

男性 「どうか明日まで、明日までお待ちください!!」

兵士① 「ああん!? もう散々待ってやったってのに、明日までだと!?」

男性 「し、しかし、いくらなんでも、金貨50枚なんて……」

兵士② 「それでも用意すんのが庶民の義務だろうが!」 

兵士① 「金になる魔物でも狩って納めるんだな!」

男性 「ひ……っ」

兵士② 「金を用意できなきゃ、お前の息子がどうなるか、わかってんだろうな!?」

男性 「……っ」

兵士① 「わかったら、とっとと金を集めてくるんだな!!」

(SE 男性が突き飛ばされる音)

男性 「ぐああっ!」

兵士① 「ははははは!!」

アンヘル 「おい、やりすぎじゃねえのか?」

オリヴィア 「ちょっとアンヘル……」

兵士① 「はっ、俺を誰だと思ってるんだ? 俺様はゴーマ執政官も一目置く……」

アンヘル 「うるせえ!」

(SE 殴打音)

兵士① 「ぐあああっ!?」

兵士② 「き、貴様! 何をする!?」

アンヘル 「まだやるか?」

(SE 鯉口を切る音)

兵士② 「ひっ、ひいいいい!!」

(SE 兵士②が走り出す音)

兵士① 「お、おい、待ってくれ!」

(SE 兵士①が立ち上がり走り出す音)

アンヘル 「おい、大丈夫か?」

男性 「は、はい……、私は……、しかし、息子が……」

オリヴィア 「……何か、あったんですか?」

男性 「……執政官に息子を、奪われたんです」

アンヘル 「……!!」

男性 「……それで、法外の金額を用意するように言われたんです」

オリヴィア 「ひどい、そんな……」

男性 「は、はは……私だけじゃないんです……、他にもそうやって……」

アンヘル 「…………なんとか、してやるよ」

男性 「ええ?」

アンヘル 「見過ごせねえよ。オリヴィア、手を貸せ」

オリヴィア 「言われなくても、そのつもりよ」

男性 「……! ありがとうございます!」

──────────────────────

 アクエリス、執政官邸宅、地下。

オリヴィア 「……まさか、執政官の屋敷の地下が、こんな魔物の巣窟になっていたなんて……」

子ども 「(遠くから)うわああああっ!!」

アンヘル 「!! 行くぞ!!」

(SE 2人が走り出す音)

(SE 魔物が肉を咀嚼する音)

オリヴィア 「……ッ!! うそ、でしょ……!?」

魔物 「……? グルルルル……ッ!」

アンヘル 「……」

(SE 黒い魔力がにじむ音)

魔物 「ガウッ!!」

(SE 魔物が飛びつく音)

アンヘル 「消えろ……ッ!!」

(SE 黒い魔力が迸る音)

(SE 魔物が消滅する音)

オリヴィア 「……っ、うっ、こ、こんな……、ひどい……っ!」

(SE オリヴィアが膝をつく音)

アンヘル 「……オリヴィア、なんとか、治せねえか……?」

オリヴィア 「……っ、もう……」

アンヘル 「……!! くそ!!」

オリヴィア 「……っ、うぅ、なんで、こんなことが……」

アンヘル 「……これじゃあ、他の子どもたちも……」

(SE オリヴィアが立ち上がる音)

オリヴィア 「……っ」

アンヘル 「オリヴィア、弔ってやれ」

オリヴィア 「………………ええ」

(SE 炎が巻き上がる音)

──────────────────────

 アクエリス、執政官邸、地下。

ゴーマ 「なんです? この騒ぎは……」

アンヘル 「お前か、執政官は」

ゴーマ 「だったらなんだって言うんです?」

オリヴィア 「あなたは、ゴーマ・ヴァンタレイ? よくもこんな……!!」

ゴーマ 「おや、そういう貴女は、オリヴィア・ロベールではありませんか」

オリヴィア 「どうしてこんなひどいことができるんですか!?」

ゴーマ 「ひどい? いったいなんのことでしょう?」

アンヘル 「とぼけるな!! 街から子どもを攫って、その親たちから金を巻き上げてんだろうが!!」

ゴーマ 「はあ、そんなことですか。稼ぐ力のない子供が消えたからといって、いったいなんなんです?」

オリヴィア 「……!!」

ゴーマ 「子供は無力、ロクに稼げもしないというのに、生意気で、すぐに泣きわめく」

アンヘル 「だから魔物の餌にしたってのか!?」

ゴーマ 「何か問題でも? もう子どもは死んでいるというのに、金を納め続ける庶民どもの姿は滑稽ですがね」

アンヘル 「───────────!」

(SE 黒い魔力をまとう音)

ゴーマ 「障壁よ、彼の者を阻みなさい」

(SE 魔力の壁が構築される音)

アンヘル 「───────────!!」

(SE 魔力の壁が壊される音)

ゴーマ 「な───────────」

(SE 黒い魔力の奔流)

──────────────────────

 アクエリス、平民街。

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「……………」

男性 「あ、あなた方は……!」

(SE 男性が駆け寄ってくる音)

男性 「執政官の屋敷に行かれたんですよね? 息子は、トールは、無事なんですよね?」

オリヴィア 「……っ、そ、それは……」

アンヘル 「…………すまない」

男性 「……そ、そんな……、嘘、ですよね?」

オリヴィア 「…………」

男性 「───────────」

(SE ナイフを取り出す音)

オリヴィア 「ちょ、何して……っ」

男性 「ああ、トール、リリィ、私もそっちに……」

(SE 震える手でナイフを突きつける音)

アンヘル 「! よせ!!」

(SE ナイフが刺さる音)

男性 「がっ……! ふ……!」

(SE 男性が倒れる音)

オリヴィア 「うそ、でしょ……っ?」

アンヘル 「…………っ」

──────────────────────

 アクエリス郊外の森、魔法使いの店。

オリヴィア 「…………」

アンヘル 「……っ、この国は、腐ってる……っ!!」

(SE 机を叩く音)

オリヴィア 「……ええ」

アンヘル 「なあ、貴族ってのは、全員あんな人でなしなのか?」

オリヴィア 「…………」

(SE 黒い魔力がにじむ音)

アンヘル 「だったら俺は、この国をぶっ壊す!!」

──────────────────────

 アクエリス、郊外の森、祭壇。

アンヘル 「な、なんだよ、ここ……?」

オリヴィア 「……祭壇、のように見えるけれど、工房、かしら?」

アンヘル 「工房? お前んとこみたいな?」

オリヴィア 「ええ……、だけど、ここは国の研究施設だと思うわ」

アンヘル 「国の研究施設?」

オリヴィア 「……我は智を探求する者、隠された智よ、現世に姿を現せ」

(SE 魔力が反応する音)

アンヘル 「!? なんだ!?」

オリヴィア 「よかった、私の権限はまだあるみたいね」

アンヘル 「おい、何が起きてるんだよ?」

オリヴィア 「まあ見ていなさい」

(SE 魔力によって建造物が構築される音)

アンヘル 「……なんだよ、これ? さっきまで外にいたよな!?」

(SE システムを操作する音)

オリヴィア 「帝国の研究施設は、魔法で異次元に隠しているの。帝国に認定された魔法使いだけがこの仕掛けを解くことができるんだけど……」

アンヘル 「どうした?」

オリヴィア 「……ホムンクルスの研究は、凍結されたはずじゃ……」

アンヘル 「ホムンクルス……?」

オリヴィア 「錬金術の一種で、人工生命体を錬成する研究よ……」

アンヘル 「ふぅん、そんなことやってなんの役に立つんだ?」

オリヴィア 「例えば、薬や治癒魔法では治せないような傷、そうね、腕を失ったとしましょうか、そんなとき、あなたならどうする?」

アンヘル 「はあ? ……そんなの、諦めるしかねえだろ。義手かなんかあれば別だけど」

オリヴィア 「そう、義手よ。今までの魔導義手は、簡単な動作しかできなかったんだけど、ホムンクルスの技術を使えば、新しい腕を拒絶反応なしで移植することが可能になるのよ。わかった?」

アンヘル 「ま、すげーってことはわかった」

(SE システムを操作する音)

オリヴィア 「……うそ、でしょ……?」

アンヘル 「どうした?」

オリヴィア 「ねえ、ホムンクルスを最も有効的に利用する方法、わかる……?」

アンヘル 「あ?」

オリヴィア 「……戦争の駒よ」

アンヘル 「……確かに、兵士を人工的に作れたら、人間は戦わなくていいからな」

オリヴィア 「そういうこと。だけど、これにはひとつ大きな欠点があった」

アンヘル 「欠点?」

オリヴィア 「ホムンクルスは、魂を持たないということよ。つまり、魔法が使えないの。だから、現代の魔法が支配する戦場には適さない」

アンヘル 「それで、その研究は凍結されたのか」

オリヴィア 「そういうこと。だけど───────────」

(SE システムを操作する音)

(SE 明かりが点く音)

(SE 培養液がこぽこぽと音を立てている)

アンヘル 「ひ、人か!?」

オリヴィア 「───────────そのガラスの向こうにいるのがホムンクルスよ」

アンヘル 「こ、これが……」

(SE システムを操作する音)

オリヴィア 「たぶん、このホムンクルスには、魂がある」

(SE 警告音)

アンヘル 「な、なんだ!?」

オリヴィア 「……防衛システムが起動したみたい……」

(SE ホムンクルスが召喚される音)

ホムンクルス 「…………」

オリヴィア 「ホムンクルス……!」

(SE 魔法が発動する音)

ホムンクルス 「……っ!?」

アンヘル 「なんだ……!?」

オリヴィア 「……なにこれ、こんな魔法使ったら……」

(SE 魔力が増す音)

ホムンクルス 「いやだ!! あああああああッ!?」

(SE 魔力が迸る音)

アンヘル 「おいおい、なんかまずくねえか?」

オリヴィア 「……こんな無茶な魔法……」

ホムンクルス 「あああ■■■■あっ!」

(SE 魔力の暴走)

ホムンクルス 「■■■■■■■■■■■■■■!!」

アンヘル 「ち、やるしかねえみたいだな」

(SE 剣を抜く音)

──────────────────────

アンヘル 「……ッ、はあ、はあ、なんなんだ、いったい……?」

オリヴィア 「上級魔法しか効かないなんて……」

アンヘル 「ああ、剣がすり抜けやがる……。どうなってんだ?」

オリヴィア 「たぶん、神懸かり……、魂を肉体に表面化させて、一時的に高次元の存在に人体を昇華させる外法だと思う……」

アンヘル 「一時的に?」

オリヴィア 「そう。だけど、今のは意図的に暴走させていたみたい。もともと魂の力と肉体の均衡がとれていないと成功しない術式なのよ。使いこなすためには、よほどの研鑽を積むしかないし、使いこなせたとしても神懸かりは魂を擦り減らす。普通の魔法使いならまず手を出さないわね」

アンヘル 「なるほど、ホムンクルスなら、魂を擦り減らしたところで替えはいくらでもきくってか」

オリヴィア 「ええ、でも、魂のあるホムンクルスっていうことは、人間と同じように自我を持つのよ。自分で考えて自分で行動する……。そんな命を弄ぶようなこと……」

アンヘル 「この中にいるホムンクルスは、みんなそうなのか?」

オリヴィア 「……そのようね」

アンヘル 「……俺たちが倒したホムンクルス、神懸かりが発動する直前、苦しんでいたよな」

オリヴィア 「そうね」

アンヘル 「……こいつらだけでも、助けてやれねえか?」

オリヴィア 「……無理よ。助けたところで、ホムンクルスはホムンクルス。魂があったとしても、創造主の命令は絶対。それは変わらないの。心は否定するのに、作製時のプログラムは覆らない。それが魂をもつホムンクルスなの」

アンヘル 「…………そうか」

オリヴィア 「…………」

アンヘル 「……オリヴィア、身を守ってろ」

オリヴィア 「……え?」

(SE 黒い魔力がにじむ音)

オリヴィア 「……!!」

アンヘル 「はああああっ!!」

(SE 剣を突き立てる音)

(SE 黒い魔力の爆発)

──────────────────────

(SE 黒い魔力がにじんでいる音)

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「……アンヘル、その力、やっぱり……」

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「神懸かりよ」

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「神懸かりは、術者の属性の適性がそのまま反映されるの。それで、アンヘルの闇属性は、特に魂を消耗するのよ。大丈夫? アンヘルまであんな暴走したら、私……」

アンヘル 「……なあ」

オリヴィア 「え?」

アンヘル 「あのホムンクルス、神懸かりが発動する直前、抗おうとしていたよな」

オリヴィア 「ええ……」

アンヘル 「弱い者を虐げ搾取する。そんな帝国のやり方は間違ってる」

オリヴィア 「……」

アンヘル 「オリヴィア、ここみたいな研究所、他にもあんのか?」

オリヴィア 「……アンヘル、もしかして」

アンヘル 「その研究所、潰してもいいか?」

オリヴィア 「……はあ、そう言うと思った。いいわ、協力してあげる」

アンヘル 「いいのか?」

オリヴィア 「魔法研究に携わる人間として、帝国の非人道的な研究は許せないわ」

──────────────────────

 それから、アンヘルとオリヴィアは帝国の魔法研究施設を壊滅させていった。非道な人体実験の被害に遭っていた民衆からは感謝の声が上がった。英雄ともてはやされていたのも束の間、事件は起きた。

 旧ハルモニア帝国西部に位置する白い町・ダフネシアでそれは起こった。

 ダフネシアは、新しく作られた町である。外部からの接触の一切を拒むかのように、町の四方に壁を構えている。帝国の技術力の高さを窺える壁の存在が、その町の異質さを際立たせていた。白を基調とした町並みは、浮世離れした清潔感を演出している。そこに生活感は感じられず、機能性を極限までに重視した町はただ機械的に日々を重ねる。およそ人が暮らしているとは思えない不気味な町である。

 ──────そして、白い町の住民は、そのすべてがホムンクルスで構成されている。

アンヘル 「……おい、オリヴィア、この町はなんだ?」

オリヴィア 「……ま、まさか、ホムンクルスしかいないというの……!?」

アンヘル 「なあ、こいつらは、ちゃんと生きてるのか?」

オリヴィア 「……ええ、ホムンクルスだから合理的に物事を判断するけど、自分で考えて生きてる……」

アンヘル 「……ホムンクルスは、帝国の魔導兵器なんだよな?」

オリヴィア 「…………」

アンヘル 「……ここで躊躇ったら、また何も悪くない平民が虐げられることになるんだよな?」

オリヴィア 「…………ええ」

アンヘル 「……そうか」

(SE 黒い魔力の解放)

アンヘル 「オリヴィア、下がってろ」

オリヴィア 「アンヘル……」

(SE 警告音)

オリヴィア 「……まさか、アンヘルの神懸かりに反応して、町中のホムンクルス全員が神懸かりを……?!」

アンヘル 「──────冥王衝破斬めいおうしょうはざん!!」

(SE 黒い魔力の爆発)

 ──────────────────

(SE 瓦礫が崩れる音)

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「アンヘル、大丈夫なの……?」

アンヘル 「…………」

オリヴィア 「アンヘル……?」

(SE 物音)

ホムンクルス 「……う、うぅ……っ」

オリヴィア 「ホムンクルス……っ」

ホムンクルス 「た、たすけ……っ」

(SE ホムンクルスが塵となって消える音)

オリヴィア 「…………ッ!!」

アンヘル 「は、はは……」

オリヴィア 「アンヘル……!」

アンヘル 「ははは、はははははっ!!」

オリヴィア 「アンヘル……?」

アンヘル 「くくく……、オリヴィア、俺は何に見える?」

オリヴィア 「え……?」

アンヘル 「何に見える?」

オリヴィア 「アン……」

アンヘル 「俺は、町をひとつ消した……!」

オリヴィア 「…………」

アンヘル 「ホムンクルスがどんなに凶悪な兵器だとしても、やってきたことは虐殺だ。帝国のやっていることと何が違う!?」

オリヴィア 「そんなこと……っ!」

アンヘル 「違わねえさ。俺のこの力は、奪うことしかできねえ。……だからオリヴィア、お前との旅もここまでだ。今まで付き合わせちまって、悪かった」

オリヴィア 「え?」

アンヘル 「俺は、このままひとりで帝国と戦う。このダフネシアのことは、遅かれ早かれ帝国に知られるだろう。そうなったら、今度こそ帝国も本気で俺たちを狙ってくるはずだ。もしかしたら、関係のない人も巻き込んじまうかもしれない」

アンヘル 「……幸か不幸か、俺の手はとっくに汚れてる。罪を背負うのは、俺ひとりで充分だ」

オリヴィア 「だったら、私もあなたと同じものを背負う。苦しみも痛みも、全部!」

(SE オリヴィアがアンヘルに抱き着く音)

オリヴィア 「いつか、言ったでしょう? 協力してあげるって」

アンヘル 「オリヴィア……」

オリヴィア 「それに、あなた、危なっかしいもの。私がいないと、帝国と戦う前に死んでしまうわ」

アンヘル 「手厳しいな……。勝手にしやがれ」

オリヴィア 「そうさせてもらうわ」

──────────────────────

 ダフネシアという町がある男によって滅ぼされたという事件を受けて、帝国はその男の討伐に向けて、帝国全土の町々に出入り禁止の御触れを出した。街の出入りには、その街の執政官あるいは皇族の許可証を必要とし、流通は先細り、多くの平民が苦汁を飲まされることとなった。ただでさえ虐げられる身分である平民の不満は募るばかりだった。そんな不満の原因がとある男のせいだという噂は、瞬く間に帝国全土に広まった。

 あるところでは、その男は山よりも大きい巨漢であるだとか、またあるところでは、その男は邪悪な気を放った魔物であるだとか、はたまたその男は、実は女であるだとか、憶測が憶測を呼び、かつて英雄と呼ばれていたはずの男は、いつしかこう呼ばれるようになっていた。

 死神、と──────

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、皇城、玉座の間。

マティアス 「陛下、例の死神が帝都に迫っているそうです」

ヴィルヘルム 「ほう、とうとう来たか。目障りな若造が」

マティアス 「どうされます?」

ヴィルヘルム 「……奴らは、ホムンクルスの研究を阻止することに執着しているのだったな」

マティアス 「はっ、ホムンクルスの研究所やダフネシアの件から、そう思えますが……」

ヴィルヘルム 「くく、ホムンクルスの錬成には、平民を使うからな。正義を振りかざすには、ちょうどよい大義名分だな」

マティアス 「…………」

ヴィルヘルム 「ならば、望みどおりにしてやろうではないか……」

マティアス 「と、言いますと?」

ヴィルヘルム 「ホムンクルスの部隊を帝都に放て」

マティアス 「…………は?」

ヴィルヘルム 「聞こえなかったか? ホムンクルスの部隊を放て、と言ったのだ」

マティアス 「しかしながら陛下、そのようなことをすれば、平民はもちろん、貴族にも被害が及ぶのでは……?」

ヴィルヘルム 「それがどうした? 儂が世を平定してからというもの、民どもの平和ボケが過ぎると思ってな。ここらで刺激を与えてやらねば、強き帝国臣民は育たたないというものだ」

マティアス 「…………」

ヴィルヘルム 「どうした、我が忠臣よ。それとも、この場で刃を交えようか?」

(SE 剣に手をかける音)

マティアス 「……っ、今すぐホムンクルスの部隊を出撃させます」

(SE マティアスが去る音)

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、平民街。

(SE 騒乱)

アンヘル 「帝都ってのは、こんなに騒がしいところだったのか?」

オリヴィア 「いいえ、異常よ」

アンヘル 「だろうな」

(SE 騎士たちが駆け付ける音)

アンヘル 「とんだもてなしだな、これが華の帝都流か?」

(SE マティアスが前に出る音)

オリヴィア 「…………!!」

マティアス 「久しいな、オリヴィア」

オリヴィア 「お父様……っ!」

マティアス 「不肖の家出娘が死神に加担しているとはな」

(SE 剣を抜く音)

マティアス 「なるほど、死神に誑かされたというわけか」

オリヴィア 「……っ!」

アンヘル 「さすがは騎士団長閣下、下衆な発想しかできないみたいだな」

(SE 剣を抜く音)

(SE 爆発音)

(SE 騎士たちのざわざわ)

オリヴィア 「……! どういうこと!? なんで貴族街で爆発が!?」

マティアス 「どうやら、ホムンクルスの部隊が進攻を始めたようだな」

オリヴィア 「ホムンクルスの部隊……、軍事転用、成功していたの?」

マティアス 「いったい、いつの話をしている? お前が研究を辞めてから、5年も経っているんだぞ? もっとも、お前は研究が凍結されたものと思っていたようだが」

オリヴィア 「…………ッ」

アンヘル 「なんだかわかんねえけど、ぶっ飛ばせばいいんだよな?」

(SE アンヘルが前に出る音)

オリヴィア 「アンヘル、悪いけど、ここは私が引き受ける。アンヘルは皇城を目指して」

アンヘル 「お、おい……」

(SE 爆発音)

オリヴィア 「行って! じゃないと、手遅れになる!!」

アンヘル 「……! わかった、死ぬなよ……!」

オリヴィア 「そっちこそ」

(SE アンヘルが走り出す音)

騎士 「おい!!」

マティアス 「放っておけ」

オリヴィア 「あら、いいの?」

マティアス 「ホムンクルスの部隊が放たれた今、帝都は終わりだ」

オリヴィア 「……」

マティアス 「ふふ、私の最期の相手が、オリヴィアだとはな……」

オリヴィア 「お父様とは、いつかこうなる気がしていたわ」

騎士 「相手はたかだか錬金術師ひとりだ! 取り掛かれ!!」

(SE 騎士たちの攻撃)

オリヴィア 「──────天地開闢かいびゃくの嵐よ!」

(SE 魔法の炸裂)

(SE 騎士たちの叫び声)

オリヴィア 「私をただの錬金術師と侮らないことね」

マティアス 「侮ったことなどない」

(SE 騎士たちが立ち上がる音)

マティアス 「我が隊に告ぐ。死神の後に続き、先ほどの命令通りに行動せよ」

騎士 「はっ!」

(SE 騎士たちが移動する音)

オリヴィア 「あら、いいの?」

マティアス 「彼らには、もともと別の任務を与えていた」

オリヴィア 「そう」

マティアス 「…………」

オリヴィア 「…………」

(SE 剣を構える音)

マティアス 「行くぞ……!」

オリヴィア 「……っ」

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、皇城。

(SE 遠くから爆発音)

アンヘル 「ちっ、胸糞悪りぃな」

(SE 歩く音)

アンヘル 「……それにしても、城内がもぬけの殻とは、どうなってるんだ……? 騎士の連中が追ってくるとも思ったけど、結局来なかったし……」

アンヘル 「……何かの罠か? いや、もし罠だったとしても、そのままぶっ飛ばしてやる」

(SE 立ち止まる音)

アンヘル 「……皇帝がいそうな場所は、ここだな」

アンヘル 「…………!」

(SE 扉を蹴破る音)

アンヘル 「おい、ここにいるんだろう!?」

ヴィルヘルム 「……ほう、お前が件の死神か。待っていたぞ」

アンヘル 「へぇ、街にホムンクルスを放った極悪人にしちゃあ、ずいぶん立派な椅子に座ってんじゃねえか」

ヴィルヘルム 「くだらん。お前は、そのような口を利くために、儂に謁見したというのか?」

アンヘル 「バカ言え、ぶっ殺しに来たに決まってんだろうが」

ヴィルヘルム 「そうでなくてはな」

(SE 立ち上がる音)

(SE 剣を召喚する音)

ヴィルヘルム 「よい退屈しのぎにはなりそうだ」

アンヘル 「舐めやがって……ッ!」

(SE 黒いオーラを纏う音)

(SE アンヘルが距離を詰める音)

アンヘル 「はあああっ!!」

ヴィルヘルム 「ほう……」

(SE 剣と剣がぶつかる音)

ヴィルヘルム 「それが死神の力とやらか。申し分ないな」

(SE 両者離れる音)

アンヘル (さすがに、このハルモニアを統一するに足る力はあるみたいだな……っ)

(SE 黒いオーラが増す音)

アンヘル 「冥王剛掌撃めいおうごうしょうげき!!」

(SE 黒いオーラの爆発)

ヴィルヘルム 「甘いわ!」

(SE 魔力の障壁が出現する音)

(SE 攻撃が防がれる音)

ヴィルヘルム 「さて、次は儂から行こうか」

(SE 剣を構え直す音)

(SE 光の魔力が増す音)

ヴィルヘルム 「光覇滅風こうはめっぷう!!」

(SE 光の魔力が吹き荒れる音)

アンヘル 「ぐああああッ!!」

(SE アンヘルが吹き飛ぶ音)

ヴィルヘルム 「その程度か? 死神」

アンヘル 「……んなわけねえだろ!」

(SE アンヘルが距離を詰める音)

アンヘル 「はああああッ!!」

(SE 剣戟)

ヴィルヘルム 「ふははははっ! 良い、良いぞ……!! もっと儂を楽しませよ!!」

アンヘル (……くそ、もっと、もっと力を……ッ!!)

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、平民街。

(SE 街が燃える音)

オリヴィア 「はあ、はあ、はあ……」

マティアス 「ホムンクルスが邪魔か?」

オリヴィア 「…………あなたたちの、仕業でしょう?」

マティアス 「違いない」

(SE 魔石を放り投げる音)

オリヴィア 「……っ」

(SE 魔石が転がる音)

オリヴィア 「これは……?」

マティアス 「……それは、今帝都を襲っているホムンクルスたちの個体情報を記録した魔石だ」

オリヴィア 「え……?」

マティアス 「その魔石を使えば、ホムンクルスの部隊を一掃できるだろう」

オリヴィア 「どういうつもり……?」

マティアス 「ホムンクルスの対処に回している私の隊を再び招集する必要があるからな」

オリヴィア 「え、それって……」

マティアス 「なに、皇帝には皇帝の、私には私の考えがあるというだけだ」

オリヴィア 「だったら、最初からホムンクルスを帝都に放つなんて、バカな真似しないで欲しかったわ」

マティアス 「それもそうだな」

オリヴィア 「……騎士団長っていうのも、なかなか窮屈そうね。私みたいに自由になればよかったのに」

マティアス 「そうできればよかったな。だが、そうはならなかった。それだけの話だ」

オリヴィア 「……そうね」

マティアス 「オリヴィア、お前は私を超えて行け」

オリヴィア 「そうさせてもらうわ」

(SE 魔石を拾う音)

(SE 魔石が輝く音)

オリヴィア 「……これでホムンクルスたちは消滅したはずだけど、もう帝都はおしまいね」

マティアス 「…………」

オリヴィア 「さてと、通させてもらうわよ」

(SE 魔力が集中する音)

オリヴィア 「──────星の錬金術よ、万物の智を導け!」

(SE 魔力がさらに増す音)

オリヴィア 「──────スターダストゲイザー!」

(SE 光の魔力の一閃)

マティアス 「ぐ……、腕を上げたな……」

(SE マティアスが倒れる音)

オリヴィア 「……! お父様!」

(SE オリヴィアが駆け寄る音)

オリヴィア 「…………今さら父親面なんて、ね」

マティアス 「……なに、ただの、気まぐれだ」

(SE 騎士たちが戻ってくる音)

マティアス 「それより、騎士たちが戻ってくる前に、あの男のもとへ行ってやれ。いくら神懸かりの力があるとはいえ、陛下の力には及ばないだろう……」

オリヴィア 「……そうさせてもらうわ」

(SE オリヴィアが立ち上がる音)

(SE オリヴィアが歩き出す音)

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、貴族街。

オリヴィア 「よかった、本当にホムンクルスを一掃できたみたいね」

(SE パチパチと炎が爆ぜる音)

オリヴィア 「……でも、関係のない人を巻き込んでしまったわね……」

(SE 黒い魔力の爆発)

オリヴィア 「……ッ!? あれ、アンヘル……?」

オリヴィア 「まさか、神懸かりの力が暴走して……」

──────────────────────

 帝都・グロリオーサ、皇城、玉座の間。

ヴィルヘルム 「ほう、それが、神懸かりの真の力か……」

アンヘル 「■■■■■■■■」

ヴィルヘルム 「なるほど、自我はないようだな」

(SE 剣を構える音)

ヴィルヘルム 「どれ、見極めてやろう……」

アンヘル 「■■■■■■■■■■ッ!!」

(SE 黒い魔力が薙ぐ音)

ヴィルヘルム 「……ッ!!」

(SE 片腕が落ちる音)

ヴィルヘルム 「くく、良い、良いぞ……!」

アンヘル 「■■■■■■■■■■」

ヴィルヘルム 「はははははははははッ!! これこそ、儂が生涯求め続けていた闘争だ!!」

(SE 光の魔力が漲る音)

ヴィルヘルム 「光覇滅風こうはめっぷう!!」

(SE 光の魔力が吹き荒れる音)

アンヘル 「■■■■■■■■■■!!」

(SE 黒い魔力の爆発)

ヴィルヘルム 「……!! ぐああああああっ!!」

(SE ヴィルヘルムが吹き飛ぶ音)

ヴィルヘルム 「くくく、これほどまでの力……、儂を満足させるに値するぞ……」

アンヘル 「…………」

(SE 黒い魔力の一閃)

ヴィルヘルム 「……ッ」

──────────────────────

 かくして、帝都は死神の手によって陥落した。その被害は、皇城周辺の貴族街にとどまらず、平民街ならびに下町にまで及び、生存者は騎士団長が率いる隊が救助した住民のみで、他はホムンクルスや家屋の倒壊の犠牲となってしまった。

 もはや死神に意思はなく、死そのものを体現したような災害と化していた。それがもとはアンヘルというひとりの青年だったという事実は誰も知らない。

 ただひとり、オリヴィア・ロベールを除いて────────────

オリヴィア 「神懸かりが暴走した、ということは、アンヘルは、もう……っ」

(SE オリヴィアが膝をつく音)

オリヴィア 「……っ、私、なんのために、ここまで戦って……っ」

つづく
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