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Ⅲ from A to A

第29.5話 黒

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アーロン:青年。

アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。18歳。


──────────────────

 それは、あまりにも突然だった。

 まるで、息をするように。

 だがその変化は、舞台の最終盤でどんでん返しが起こったかのように劇的だった。

アーロン 「…………ッ」

(SE アーロンが起き上がる音)

アーロン 「なんで……、って、アリアたちは!?」

 そこでアーロンは気づいた。

アーロン 「なんだ、ここ……?」

 黒。

 暗いというわけではない。

 それは、黒一色に世界が塗り替えられたようで──────

アーロン 「──────これじゃ、この世界の何もかもが消えちまったみたいじゃねえか」

アーロン 「って、他のやつらは……?」

(SE アーロンが歩き出す音)

アーロン 「アリア! ソフィー! レオ!」

(SE 歩く音)

アーロン 「おっさん! ルーナ!」

(SE 歩く音)

アーロン 「エスカ! ステラ!」

(SE 歩く音)

アーロン 「いたら返事してくれ!!」

アルトリウス 「あっはは、案外必死なんですね、アーロンさん」

アーロン 「! アルトリウス……!」

アルトリウス 「そんなに呼んだって、ボクたち以外、ここには誰もいませんよ」

アーロン 「ここには? じゃあ、どこにいるってんだよ!?」

 聞かずにはいられなかった。

アルトリウス 「あ、紛らわしい言い方をしてしまいましたね。つまり──────」

 だが、聞きたくない。

アルトリウス 「──────この世界には、ボクとアーロンさんしかいないってことです」

アーロン 「────────────」

アルトリウス 「ウソだと思うのなら、見てきたらどうですか?」

アーロン 「……ッ!」

(SE アーロンが走り出す音)

アーロン (くそ、いくらあいつでもそんな……!)

(SE 走る音)

アーロン (そんなことするはずがねえ……!)

(SE 走る音)

アーロン (理想の世界に作り変えるのが、アルトリウスの魔法だってんなら、こんな何もない、黒い世界なんて作るはずがない……ッ!)

(SE 走る音)

アーロン 「……はっ、はっ……」

アーロン (頼む……! 誰でもいい……! 誰か……!!)

 それから、どれくらい走っただろうか。

 1時間、1日、1週間、この世界に時間の概念があるのかはわからないが、とにかくアーロンは走った。走り続けた。

 そして──────

(SE アーロンが膝をついた音)

アルトリウス 「ようやく、諦めてくれましたか?」

アーロン 「…………」

アルトリウス 「ボクとしても、アーロンさんの死神の力は厄介でしてね。こうやって世界には干渉できても、アーロンさんには干渉できないんですよ」

アーロン 「…………」

アルトリウス 「かと言って、ボクの力ではアーロンさんを殺せない。だから、アーロンさんには諦めてもらうしかないんですよ」

アーロン 「……せえよ」

アルトリウス 「はい?」

アーロン 「うるせえ!」

(SE アーロンが立ち上がる音)

(SE 黒いオーラをまとう音)

アーロン 「冥王烈衝破めいおうれっしょうは!!」

(SE 黒いオーラをまとった一撃)

アルトリウス 「ぐああああっ!!」

(SE アルトリウスが倒れる音)

(SE 時間が巻き戻る音)

────────────

アーロン 「──────はっ……!」

アルトリウス 「……ボクにアーロンさんが倒せないように、アーロンさんにもボクは倒せないんですよ」

アーロン 「……っ」

アルトリウス 「あはは、アーロンさんが諦めないってことはわかってますよ」

アーロン 「アルトリウス! こんなことをして、なんになるって言うんだ!?」

アルトリウス 「はあ……、アーロンさん、言いましたよね? ボクは理想の世界を作るんです! すべてがうまくいった、幸福で満ち溢れた世界を!」

アーロン 「そのために、世界を壊すってんのかよ! めちゃくちゃじゃねえか!!」

アルトリウス 「創造の前には破壊が必要なんですよ。月並みですがね」

アーロン 「アルトリウス、お前はあの世界に生きている人を犠牲にしてるんだぞ!?」

アルトリウス 「はあ……、アーロンさん、ボクを説得しようたって無駄ですよ?」

アーロン 「…………」

アルトリウス 「ボクはこの力を手にするまで、何千、何万とやり直してきたんです。今更ボクが諦めるわけがないでしょう?」

アーロン 「それがどうした? 何万回繰り返したからって、何十万、何百万と繰り返しても諦めない保障はないだろ」

アルトリウス 「じゃあ、試してみますか?」

アーロン 「……?」

 その瞬間、黒い世界に一筋の光が差した。

アルトリウス 「──────ゲームをしましょう」

アルトリウス 「もちろん、どちらかが諦めたら負け、というルールでね」

 つづく
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