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Ⅲ from A to A

第29話 再び……

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アーロン:魔法使いの助手を自称する剣士。
ソフィー:ハルモニア皇帝の妹。ソフィア・リ・ハルモニア。18歳。
ウルフィリア・ベルナルド:旅をするために爵位を手放したおっさん。32歳。
ルーナ:姉妹で傭兵業をしている剣士の女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。

ステラ:天才剣士として名高い、ルーナの妹。18歳。
エスカ・ベルナルド:旅をしている調香師の女性。ウルフィリアの妻。32歳。

アリア・メイザース:災厄の魔女と呼ばれる錬金術師。21歳。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。18歳。


 アルトの遺跡、最深部。

(SE 重い扉を開ける音)

ルーナ 「アリア・メイザース!!」

アリア 「……ようやく来たか」

ルーナ 「アンタ、いったい何を企んでいるの!?」

アリア 「…………」

ルーナ 「ちょっと! なんとか言いなさいよ!」

アリア 「はあ、私はアーロンに用があるんだ。キミは少し黙っていてくれないか?」

ルーナ 「はあ?」

ウルフィリア 「そりゃちょっと冷たいんじゃない?」

エスカ 「ええ、あなたにはなくても、私たちには用があるんです」

ソフィー 「それに、皇帝陛下から、あなたを拘束するよう勅命を仰せつかっています」

アリア 「あの皇帝が、私を?」

レオンハルト 「皇帝陛下と面識があるんですか?」

アリア 「……皇帝に動きがあったということは、私の仮説は正しいということか……?」

ステラ 「無視ですか……」

(SE 構える音)

アリア 「ふむ、試してみるか」

(SE 剣を召喚する音)

ルーナ 「話が早いじゃない」

(SE 抜刀する音)

アーロン 「……?」

アリア 「…………」

(SE 剣がアリアに突き刺さる音)

アリア 「……ッ!!」

(SE 血が床に落ちる音)

アーロン 「なっ!?」

ルーナ 「はあっ!?」



(SE 時が巻き戻る音)

(SE 重い扉が開く音)

アーロン 「──────ッ!?」

ルーナ 「アリア・メイザース!!」

アリア 「……ようやく来たか」

アーロン 「……?」

アリア 「……ほう、何か覚えている様子だね?」

アーロン 「……!!」

ルーナ 「は? なに言ってんの?」

アリア 「──────薄氷よ、堅牢な障壁となせ」

(SE 氷魔法が発動する音)

ルーナ 「(くぐもった声で)ちょっと! 入れなさいよ!!」

アーロン 「どういうことだ?」

アリア 「キミ以外は、死の記憶を持っていないようだからね」

アーロン 「死の記憶……? まさかあんたも」

アリア 「私は違う。だが、この魔石が教えてくれるんだ」

アーロン 「やっぱ天才は違うな。……それで、何を知ってる?」

アリア 「何も知らないさ。ただ気づいただけだ」

(SE 氷に刀が弾かれる音)

アリア 「この世界は歪だ。人が死なない。恐らく死んだ場合、時間が巻き戻る」

アーロン 「……!」

アリア 「そしてキミは、時間が巻き戻った後でも記憶を保持できる」

アーロン 「お見通しってことかよ」

アリア 「ふむ、やはり死神の力が関係しているのか……、となれば……」

(SE 氷が割れる音)

死神 「■■■■■■■■■■■■」

エスカ 「……ッ!!」

アリア 「どうやら、死神に適応する巫がいるようだね。だが──────」

(SE 死神がアリアに吸収される音)

アリア 「……くっ、ふふ、まあこんなところか」

アーロン 「なっ!?」

ソフィー 「え、黒い魔力が、アリアさんに……?」

ルーナ 「まさか、アーロンと同じような力を……!?」

アーロン 「アリアも、神降ろしの才能があるってことか……!」

アリア 「なに、いくら天才の私とはいえ、そんな才能はないさ」

アーロン 「じゃあ……」

(SE 小瓶に入った液体が揺れる音)

アーロン 「それは……!」

アリア 「おや、知っていたか。そう、月の雫という霊薬を飲んだんだ。もっとも、これを何本も飲んでも、神降ろしは習得できなかったがな」

(SE 黒い魔力がにじむ音)

アリア 「ふふ、これで旧時代の魔法にも耐えられる……」

ルーナ 「ごちゃごちゃと何言ってんのよ!」

(SE 刀を振る音)

アリア 「僭王の魔法インペリアルフォース時間停止タイムストップ起動ブート

(SE 時が止まる音)

ルーナ 「…………」

ステラ 「お姉ちゃん!?」

アリア 「ふむ、今まで成功例がなかった時間停止タイムストップの起動ができたか。しかし、時を止めるというより、空間の固定か……」

ウルフィリア 「ちょっと、俺たちのことは無視かい?」

アリア 「……」

(SE 短刀を振る音)

アリア 「僭王の魔法インペリアルフォース空間転移テレポート起動ブート

(SE ウルフィリアが転移する音)

ウルフィリア 「なっ……!?」

ソフィー 「おじさんが一瞬で……!?」

アリア 「ふむ、空間転移テレポートの対象を他人に設定できるようになったか」

エスカ 「皆さん、下がってください!」

(SE 小瓶を取り出す音)

(SE ステラがルーナを抱える音)

(SE アーロンたちが飛び退く音)

エスカ 「私だって、錬金術の心得があるんです!」

(SE 小瓶を放る音)

アリア 「ふ、私に錬金術で勝負を仕掛けてくるとは……」

(SE 粉を振りまく音)

(SE 小瓶が割れる音)

エスカ 「爆発しない……?」

アリア 「爆発物の錬金は繊細だ。少しでも遺物が混じれば、反応はしない」

エスカ 「そんな……」

アーロン 「アリア! もう充分だろ!」

アリア 「充分? 何をもって充分なんだ?」

アーロン 「アリア、頼む。もうこれ以上仲間を傷つけるアリアを見たくないんだ」

ルーナ 「アーロン……?」

アリア 「アーロン、キミとはこの前初めて会ったはずだ。なぜそこまで私に固執する?」

ウルフィリア 「……え、青年とは、古い知り合いじゃ……」

アリア 「……やはりキミは、違う世界から来たんだな?」

エスカ 「……!」

レオンハルト 「違う、世界……?」

アリア 「これは私の仮説だが、おそらくこの世界は、何者かによって作られたものだろう」

アーロン 「……!!」

ルーナ 「そんな馬鹿な話、あるわけないじゃない。ステラ、いくわよ」

(SE 刀を構える音)

ステラ 「…………」

ルーナ 「……ステラ?」

ステラ 「……そうだとしたら、あの不思議な夢の辻褄が合う……」

エスカ 「アーロンさん……」

アーロン 「…………」

アリア 「ふむ、キミの様子を見るかぎり、どうやら当たっているようだな」

ソフィー 「……本当、なんですか?」

アリア 「……ッ!? まずいな……!」

(SE 天井が崩れる音)

アリア 「─────風よ、巻き上がれ、テンペスト!」

(SE 竜巻が起きる音)

(SE 瓦礫が吹き飛ぶ音)

ウルフィリア 「なになになにっ!?」

ルーナ 「どういうこと……!?」

レオンハルト 「新手ですか?!」

ステラ 「上! 上を見てください!!」

ソフィー 「…………!!」

エスカ 「あれは……」

アルトリウス 「……さすがに仕留めきれませんでしたか」

アーロン 「アルトリウス!?」

ソフィー 「な、なんで、アーサーがここに……?」

アリア 「おいおい、ここは旧ハルモニア文明の重要な遺跡だぞ。それを、砂のお城を崩すみたいに扱ってもらっては困るな」

(SE アルトリウスが降り立つ音)

アルトリウス 「…………」

アーロン 「何しに来たんだよ、アルトリウス」

アルトリウス 「ああいえ、アリアさんに不穏な動きがあったので、直接確認しに来ただけです」

レオンハルト 「陛下、それは私たちが……」

アルトリウス 「やはりアーロンさんが関わると、この世界の運行に差し障るようですね」

ソフィー 「ちょっと、無視?」

アルトリウス 「はあ、この世界は失敗か……」

アーロン 「おい、何を……」

アリア 「……皇帝がこの世界を作った、ということか」

ルーナ 「はあ!?」

アルトリウス 「やはり、アリアさんは気づいてしまうんですね……」

ステラ 「世界を作るって……」

アルトリウス 「……ステラさんと、エスカさん、ですね」

エスカ 「…………」

アルトリウス 「貴女たちには、感謝してほしいんですけどね。元の世界では死んでいたところを、ボクがこうして生かしてあげたんですから」

ステラ・エスカ 「……!!」

アルトリウス 「エスカさんは死神をその身に降ろすことはなかったし、ホロロコリスがホムンクルスたちの暴走で焼け落ちることもなかった」

ウルフィリア 「──────」

ルーナ 「ホロロコリスが……?」

ソフィー 「そ、そんな……」

アルトリウス 「ああそう、ホムンクルス関連の事件すべてがなくなったから、アリアさんがメイザースの名を捨てることもなかったし、ソフィアのホムンクルスは生まれず、ソフィアが城を追放されることもなかった」

アーロン 「何が言いたい?」

アルトリウス 「こんなに幸福が溢れている世界なのに、アーロンさんは不満を持っているのですか?」

アーロン 「…………」

アルトリウス 「はあ、しかし、アリアさんに気づかれてしまったのは失態ですね」

ルーナ 「さっきから、ぺちゃくちゃ、うるさいのよ!」

(SE ルーナが高速で移動する音)

アルトリウス 「──────地に伏せろ」

(SE ルーナが地に伏せる音)

ルーナ 「がはっ! な、なんなの、よ、これ……っ! 動けない……!!」

ステラ 「お姉ちゃん!!」

アリア 「……まさか、魂に作用する魔法……」

アルトリウス 「あはは、見ただけでわかるなんて、さすがですね」

アーロン 「そういうことなら……!」

(SE 剣を振る音)

アルトリウス 「アーロンさんは、少し分が悪いですね」

(SE アルトリウスが飛び退く音)

ウルフィリア 「なに、皇帝陛下と戦う流れなの!?」

ソフィー 「話を聞くためには、そうするしかないみたいです」

ウルフィリア 「そう、なら……!」

(SE 矢を放つ音)

アルトリウス 「……」

(SE 矢が弾かれる音)

アルトリウス 「はあ、どうやら、アーロンさんだけに原因があるわけじゃないみたいですね」

ソフィー 「そこ!」

(SE 銃声)

(SE 魔力が打ち消される音)

アルトリウス 「ソフィア、今の貴女の魔力には、浄化の力が乗っていない。ボクには届かないよ」

アーロン 「はあっ!」

(SE 剣を振る音)

アルトリウス 「……っ!」

(SE アルトリウスが飛び退く音)

アルトリウス 「やはり、脅威となり得るのは、アーロンさんか」

アーロン 「ごちゃごちゃ!」

(SE 剣を振る音)

アーロン 「うるせえ!」

(SE 剣を振る音)

アルトリウス 「はあ、面倒だ……」

──────────────────

 つづく
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