42 / 63
Ⅲ from A to A
第26.5話 捨てられた皇子
しおりを挟む
シルヴィア:平民街で繁盛している酒場の看板娘。17歳。
店主:シルヴィアが働いている酒場のマスター。
エドワード・ストライフ:平民街と下町をつなぐ通りにある酒場を営んでいる男性。55歳。
ジョン:エドワードの酒場の常連。44歳。
~モブ~
客
帝都、平民街、酒場。
店主 「…………」
シルヴィア 「はい、お待たせしました。ごゆっくりお過ごしください」
(SE カップを置く音)
(SE 足音)
店主 「…………ああ」
シルヴィア 「どうしたんですか? さっきから何か考えていたようでしたけど……」
店主 「え? ああ、いえ……」
シルヴィア 「マスターが言い淀むなんて珍しいですね。言いたくないことはすぐはぐらかすのに……」
店主 「言いたくない、というわけではないのですが……」
シルヴィア 「というわけではない?」
店主 「まあ、ことがことなので……」
客 「……ごちそうさま、お代、ここに置いておくよ」
シルヴィア 「はい、ありがとうございます!」
(SE 扉の開閉音)
(SE 食器を片付ける音)
(SE テーブルを拭く音)
(SE 足音)
店主 「……お客さんも引きましたし、少し話しましょうか」
シルヴィア 「あ、はい」
店主 「……私が考えていたのは、あの、アーロンという青年のことです」
シルヴィア 「アーロン、さん……」
店主 「あの方、どこか見覚えがあると思っていたんですよ」
シルヴィア 「……だから、アーロンさんに色々教えてあげたんですね」
店主 「まあ、少し懐かしかったのかもしれませんね」
シルヴィア 「懐かしい?」
店主 「はい、私が城に仕えていた頃の記憶が蘇りますよ」
シルヴィア 「え?」
店主 「そういえば、私が城でどのうような仕事をしていたかは、話していませんでしたね」
シルヴィア 「あ、はい、そうですね。でも、平民の出としては、高い位置にいたんですよね?」
店主 「ええ、ただ運が良かった、という部分もあるんでしょうがね」
シルヴィア 「いやいや、そんなことないと思いますよ。それで、お城では何をされてたんですか?」
店主 「城では、執事長補佐をしていました」
シルヴィア 「おお。執事長は由緒正しい執事の家系が代々務めるものですから、その補佐だなんて……」
店主 「ふふふ、改めて情報を整理すると、平民としては出世した方ですね」
シルヴィア 「それで、何を思い出してたんですか?」
店主 「おっと、その話でしたね。シルヴィアさんは、城を追われた皇子の話を聞いたことはありますか──────」
◇
エドワードの酒場。
ジョン 「そういや、捨てられた皇子の噂を聞いたことあるか?」
エドワード 「おいおい、俺を誰だと思ってるんだ? 天下のエドワード様だぜ? で、どんな話だったか?」
ジョン 「聞いたことがないのかよ」
エドワード 「ど忘れしただけだって」
ジョン 「……捨てられた皇子ってのは、その題の通り、城を追放された皇子の話だ」
エドワード 「追放された皇子、ねえ。一体どんな悪いことをやらかしたんだ?」
ジョン 「それが、帝国を滅ぼしかねない禁忌の力を持ってるだとか、旧ハルモニアの遺物との相性が良いだとか、色んなことを聞くけどな」
エドワード 「ほおん、もしそんな噂が本当だったら、忌み嫌われて当然だわな。それがやんごとなき皇族から産まれたとなりゃ……」
ジョン 「まあ、そういうことだわな」
エドワード 「だけど、そんな皇子を殺さずに捨てる、なんて帝国のやり方らしくないんじゃないか?」
ジョン 「うーん、殺すは殺すで、処理に困るとか?」
エドワード 「ま、なんにせよ、帝国にうしろめたい事情があるのは確かってことだな」
ジョン 「はは、そもそもこんな噂が本当か嘘か、わからないしなあ」
◇
平民街、酒場。
シルヴィア 「え、もしかしてその話、本当にあったことなんですか?」
店主 「ええ、当時私は、皇族の出生記録などを管理していましたからね」
シルヴィア 「うわ、それじゃ本当にあったことなんですね」
店主 「はい」
シルヴィア 「……でも、それでなんで、アーロンさんが……、まさか……!」
店主 「……そうですね、彼の目元が、今は亡きフレイア・ウィル・ハルモニア様にそっくりで……」
シルヴィア 「ええ、そうなんですか? え、その、皇子様が城を追われたのって……」
店主 「……ちょうど、20年前でしょうか。殿下が、1歳になる年でしたので……」
シルヴィア 「20年前……」
店主 「ええ、あのアーロンさんも、よほどの若作りでない限り、20歳前後といったところでしょう」
シルヴィア 「……それじゃあ……」
店主 「まあ、もしかしたら、ですけどね……」
シルヴィア 「……でも、あのアーロンさん、快活でカッコイイ人でしたけど、どこか謎のある人でしたよね……」
店主 「カッコイイ、ですか……」
シルヴィア 「い、いやいや! 別に、そんなんじゃないですからね!」
店主 「ふふふ……」
シルヴィア 「マスタぁ~!」
(SE 扉の開閉音)
店主 「さ、休憩は終わりです」
シルヴィア 「はい、いらっしゃいませ~!」
つづく
店主:シルヴィアが働いている酒場のマスター。
エドワード・ストライフ:平民街と下町をつなぐ通りにある酒場を営んでいる男性。55歳。
ジョン:エドワードの酒場の常連。44歳。
~モブ~
客
帝都、平民街、酒場。
店主 「…………」
シルヴィア 「はい、お待たせしました。ごゆっくりお過ごしください」
(SE カップを置く音)
(SE 足音)
店主 「…………ああ」
シルヴィア 「どうしたんですか? さっきから何か考えていたようでしたけど……」
店主 「え? ああ、いえ……」
シルヴィア 「マスターが言い淀むなんて珍しいですね。言いたくないことはすぐはぐらかすのに……」
店主 「言いたくない、というわけではないのですが……」
シルヴィア 「というわけではない?」
店主 「まあ、ことがことなので……」
客 「……ごちそうさま、お代、ここに置いておくよ」
シルヴィア 「はい、ありがとうございます!」
(SE 扉の開閉音)
(SE 食器を片付ける音)
(SE テーブルを拭く音)
(SE 足音)
店主 「……お客さんも引きましたし、少し話しましょうか」
シルヴィア 「あ、はい」
店主 「……私が考えていたのは、あの、アーロンという青年のことです」
シルヴィア 「アーロン、さん……」
店主 「あの方、どこか見覚えがあると思っていたんですよ」
シルヴィア 「……だから、アーロンさんに色々教えてあげたんですね」
店主 「まあ、少し懐かしかったのかもしれませんね」
シルヴィア 「懐かしい?」
店主 「はい、私が城に仕えていた頃の記憶が蘇りますよ」
シルヴィア 「え?」
店主 「そういえば、私が城でどのうような仕事をしていたかは、話していませんでしたね」
シルヴィア 「あ、はい、そうですね。でも、平民の出としては、高い位置にいたんですよね?」
店主 「ええ、ただ運が良かった、という部分もあるんでしょうがね」
シルヴィア 「いやいや、そんなことないと思いますよ。それで、お城では何をされてたんですか?」
店主 「城では、執事長補佐をしていました」
シルヴィア 「おお。執事長は由緒正しい執事の家系が代々務めるものですから、その補佐だなんて……」
店主 「ふふふ、改めて情報を整理すると、平民としては出世した方ですね」
シルヴィア 「それで、何を思い出してたんですか?」
店主 「おっと、その話でしたね。シルヴィアさんは、城を追われた皇子の話を聞いたことはありますか──────」
◇
エドワードの酒場。
ジョン 「そういや、捨てられた皇子の噂を聞いたことあるか?」
エドワード 「おいおい、俺を誰だと思ってるんだ? 天下のエドワード様だぜ? で、どんな話だったか?」
ジョン 「聞いたことがないのかよ」
エドワード 「ど忘れしただけだって」
ジョン 「……捨てられた皇子ってのは、その題の通り、城を追放された皇子の話だ」
エドワード 「追放された皇子、ねえ。一体どんな悪いことをやらかしたんだ?」
ジョン 「それが、帝国を滅ぼしかねない禁忌の力を持ってるだとか、旧ハルモニアの遺物との相性が良いだとか、色んなことを聞くけどな」
エドワード 「ほおん、もしそんな噂が本当だったら、忌み嫌われて当然だわな。それがやんごとなき皇族から産まれたとなりゃ……」
ジョン 「まあ、そういうことだわな」
エドワード 「だけど、そんな皇子を殺さずに捨てる、なんて帝国のやり方らしくないんじゃないか?」
ジョン 「うーん、殺すは殺すで、処理に困るとか?」
エドワード 「ま、なんにせよ、帝国にうしろめたい事情があるのは確かってことだな」
ジョン 「はは、そもそもこんな噂が本当か嘘か、わからないしなあ」
◇
平民街、酒場。
シルヴィア 「え、もしかしてその話、本当にあったことなんですか?」
店主 「ええ、当時私は、皇族の出生記録などを管理していましたからね」
シルヴィア 「うわ、それじゃ本当にあったことなんですね」
店主 「はい」
シルヴィア 「……でも、それでなんで、アーロンさんが……、まさか……!」
店主 「……そうですね、彼の目元が、今は亡きフレイア・ウィル・ハルモニア様にそっくりで……」
シルヴィア 「ええ、そうなんですか? え、その、皇子様が城を追われたのって……」
店主 「……ちょうど、20年前でしょうか。殿下が、1歳になる年でしたので……」
シルヴィア 「20年前……」
店主 「ええ、あのアーロンさんも、よほどの若作りでない限り、20歳前後といったところでしょう」
シルヴィア 「……それじゃあ……」
店主 「まあ、もしかしたら、ですけどね……」
シルヴィア 「……でも、あのアーロンさん、快活でカッコイイ人でしたけど、どこか謎のある人でしたよね……」
店主 「カッコイイ、ですか……」
シルヴィア 「い、いやいや! 別に、そんなんじゃないですからね!」
店主 「ふふふ……」
シルヴィア 「マスタぁ~!」
(SE 扉の開閉音)
店主 「さ、休憩は終わりです」
シルヴィア 「はい、いらっしゃいませ~!」
つづく
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜
摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。
ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m
フリー声劇台本〜BL台本まとめ〜
摩訶子
恋愛
ボイコネのみで公開していた声劇台本の中からBLカテゴリーのものをこちらにも随時上げていきます。
ご使用の際には必ず「シナリオのご使用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m
【フリー台本】一人向け(ヤンデレもあるよ)
しゃどやま
恋愛
一人で読み上げることを想定した台本集です。五分以下のものが大半になっております。シチュエーションボイス/シチュボとして、声劇や朗読にお使いください。
別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。
フリー台詞・台本集
小夜時雨
ライト文芸
フリーの台詞や台本を置いています。ご自由にお使いください。
人称を変えたり、語尾を変えるなどOKです。
題名の横に、構成人数や男女といった表示がありますが、一人二役でも、男二人、女二人、など好きなように組み合わせてもらっても構いません。
また、許可を取らなくても構いませんが、動画にしたり、配信した場合は聴きに行ってみたいので、教えてもらえるとすごく嬉しいです!また、使用する際はリンクを貼ってください。
※二次配布や自作発言は禁止ですのでお願いします。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
関西弁彼女 男性向け(女声)シチュエーションボイス フリー台本
しましまのしっぽ
恋愛
関西弁の彼女の台本です。
男性向け(女声)のシチュエーションボイスのフリー台本を置いてます
私の地域の関西弁になるので標準の関西弁とは異なる可能性があります。
ご自由お使いください
イラストはノーコピーライトガールかお借りしてます
保健室のあのコ
うめめ
恋愛
五月の連休明けのある日、授業で使ったプリントを保健室登校の中原夢乃に届けることとなった作間海斗。クラスでの出来事を教えてほしい、と夢乃にお願いされ、海斗は保健室に通うようになる。そんな関係を続けていくうちに、次第に二人は惹かれていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる