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Ⅱ 騎士団の陰謀

第13話 水の都・アクエリス

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アリア・エインズワース:帝都郊外で店を営んでいる魔女。21歳。
アーロン・ストライフ:魔法使いの助手兼用心棒をしている青年。21歳。
ソフィー:元ハルモニア帝国第2皇女。元気で明るい少女。18歳。
フィリップ・ベルナルド:ヴァンという怪鳥を相棒にしている鳥使いのおっさん。32歳。
ルーナ:ハルモニア帝国第4皇子の側近をしている女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:ハルモニア帝国騎士団で小隊長を務める青年。19歳。

リラ:考古学者の女性。24歳。

モブ
男①・②



 大地の神殿を出た魔法使い一行は、森にさしかかっていた。

ルーナ 「…………」

ソフィー 「ふぃー、ようやく下山できましたねー」

フィリップ 「なかなか険しい山だったね」

ルーナ 「…………」

アーロン 「……どうした、ルーナ?」

ルーナ 「な、なにが?」

アーロン 「いや、なんかこの森に入ってから様子がおかしいと思って」

ルーナ 「そ、そんなこと、ないわよっ」

ソフィー 「いやあるでしょ」

フィリップ 「あ、虫」

ルーナ 「ひ、ひいっ!」

フィリップ 「ウ・ソ」

ルーナ 「ふん!」

(SE フィリップが殴られる音)

フィリップ 「あだっ!!」

レオンハルト 「ルーナさん、虫が苦手なんですね」

ルーナ 「うっさい!」

(SE レオンハルトが殴られる音)

レオンハルト 「なしてっ!?」

アーロン 「でも、虫型の魔物バグは大丈夫だったじゃねえか」

ルーナ 「なんか苦手なのよ……」

アーロン 「なんだそりゃ」

ルーナ 「いいじゃない! 別に……」

アリア 「ふふ、これは思わぬ弱点を知ってしまったね」

ルーナ 「ぐぬぬ……。あ、あそこ、休めそうじゃない?」

アーロン 「だな。今日は、あそこで休むか。リラもそれでいいよな?」

リラ 「はい! 大丈夫ですよ! どうせ水の都まではご一緒するんですから、お気になさらず!」

フィリップ 「…………」



 夜、フィリップが見張りを担当している。

(SE 草が揺れる音)

フィリップ 「はあ、誰の差し金?」

フィリップ 「……って言っても、答えてくれないよね」

(SE 草が揺れる音)

フィリップ 「まあ、好きにすればいいよ」

────────────

 翌朝。

フィリップ 「おーい、もう朝だよー」

アーロン 「……ん、ああ、悪いな、おっさん」

レオンハルト 「……おはようございます」

ルーナ 「…………おっさん、ちゃんと見張ってた? 変なことしてないでしょうね?」

フィリップ 「してないよ! なんでそんなに信用ないの?!」

ルーナ 「自分の胸に聞いてみなさい」

フィリップ 「……おかしい、まったく心あたりがない」

ルーナ 「はあ……」

ソフィー 「んぅ~、うるさいなぁ……、って、もう朝!」

ルーナ 「アンタ、野宿だっていうのに熟睡しすぎよ」

ソフィー 「やはは……」

アリア 「……すー、すー」

フィリップ 「およ、アリアちゃんは、まだ起きてないね」

ルーナ 「このクソ魔法使い……」

アリア 「……(む、もう朝か……)」

アーロン 「……こいつの寝顔をこんなまじまじと見るの、何気に初めてだな……」

アリア 「…………(な、なななななにを言っているんだ、この男は!?!?)」

レオンハルト 「アーロンさん?」

フィリップ 「おやおや~? 青年ってば、アリアちゃんの寝顔に見惚れちゃったのかな?」

アーロン 「そ、そんなことねーよ」

ルーナ 「あら、アーロンにも可愛いところあるのね」

ソフィー 「あー! 私、二度寝するので、私の寝顔見てもいいですよ!」

アーロン 「なに言ってんだ」

ルーナ 「ソフィーも懲りないわね……」

アリア 「……(起きるタイミングを逃してしまった……)」

アーロン 「…………」

アリア 「……(なんだ? アーロンがじっと私のことを見つめている気がする。まさか、本当に私に見惚れて……)」

アーロン 「おい、アリア、起きてんだろ」

アリア 「!? ふぁ~あ、よ、よく寝た~」

アーロン 「……どこから聞いてた?」

アリア 「え? ……おそらく最初から……」

アーロン 「だ、だったらすぐに起きろよ」

フィリップ 「青年、珍しく取り乱してるね」

アーロン 「うっせー」

ソフィー 「どうせ私じゃアーロンさんを振り向かせられませんよー」

フィリップ 「そうは言ってないでしょー。ソフィーちゃんにもチャンスはきっとあるよ」

(SE 草が揺れる音)

リラ 「ふぃー、この周辺にも旧ハルモニアの遺跡はあるもんですねー。つい早起きして散策してしまいました」

フィリップ 「……」

ソフィー 「へー、収穫はあったんですかー?」

リラ 「それはもちろん! 興味深いものが見れましたよー!」
 
ソフィー 「いいですね!」

ルーナ 「こほん、そろそろ行きましょう」

ソフィー 「あ、は~い」

フィリップ 「そうだね。今日のうちに水の都まで行くんでしょ?」

レオンハルト 「はい、ここからであれば、夕暮れまでには到着すると思います」

ソフィー 「まさか、それまで歩きっぱなし、ですか?」

ルーナ 「当然でしょ」

ソフィー 「うえー」

ルーナ 「歩けば着くんだから、頑張りなさい」

ソフィー 「はーい……」

フィリップ 「はは、なんだかルーナちゃん、ソフィーちゃんのお姉ちゃんみたいだね」

ルーナ 「なっ! 誰がこんな生意気な妹を欲しいって言うのよ」

ソフィー 「私だって、こんな口うるさいお姉ちゃんなんて欲しくないですぅ~」

アーロン 「おいおい、あんたら仲良いな」

ルーナ・ソフィー 「良くない(です)!」

レオンハルト 「ははは、仲良し姉妹ですね」

ルーナ 「ふんっ!」

(SE ルーナがレオンハルトをどつく音)

レオンハルト 「うぐぇっ!」

フィリップ 「レオくん、案外無謀だね」

レオンハルト 「どうして僕だけ……?」

ルーナ 「どうでもいいでしょ。ほら、さっさと行くわよ」



 夕暮れ。水の都、アクエリス。

ソフィー 「や、やっと着いた……」

ルーナ 「まったく、だらしないわね」

アーロン 「まあ、疲れてるのには違いないな」

ソフィー 「ですよね! あー、水の都、久しぶりだなあ。レオくん、今日はもう自由なんでしょ?」

レオンハルト 「あ、はい。宿を取ったら、皆さんそれぞれ自由にしてください」

ソフィー 「やった! じゃあ、夜ごはんはあそこに食べに行って、温泉に入って……」

フィリップ 「ソフィーちゃん、一段とはしゃいでるね」

ルーナ 「いいわね、気楽で」

リラ 「あ、皆さん、私はこれで失礼しますね! ここまでありがとうございました! 良い旅を!」

レオンハルト 「あ、はい、こちらこそありがとうございました」

(SE 凄い速さで去っていく音)

フィリップ 「…………」

ルーナ 「あれもあれで、騒がしいやつだったわね」

ソフィー 「やはは……」

アリア 「……アーロン、今日は久しぶりにどうだい?」

アーロン 「あ? いいぜ、俺もちょうどやりたいって思ってたんだ」

ルーナ 「……アンタたち、急に距離縮めすぎじゃない?」

アリア 「む? なんのことだ?」

アーロン 「……ああ、はは。俺たちはただ、久しぶりに飲み比べでもやらねえかって話してただけだ。ルーナ、いったいナニを想像したんだ?」

ルーナ 「なっ!? バッッッッカじゃないの!?」

アーロン 「ははは、悪い悪い」

フィリップ 「青年、キミも案外はしゃいでるんじゃないの?」

アーロン 「かもな。そうだ、おっさんも一緒にどうだ?」

フィリップ 「いいね。最近ごたごたしてたし……」

アーロン 「アリアも、いいよな?」

アリア 「ああ、もちろんだよ」

ソフィー 「…………」

───────────

フィリップ 「よーし、いざ飲み屋街へ!!」

アーロン 「なんでおっさんが仕切ってんだよ」

フィリップ 「青年? ひどくない?」

アリア 「ふふ……」

アーロン 「レオも来るか? というか、来い」

レオンハルト 「わかりました」

アリア 「ルーナとソフィーも来るかい?」

ルーナ 「私は……」

ソフィー 「…………」

ルーナ 「……はあ、まったく」

アリア 「む?」

ルーナ 「……ソフィー、ちょっと付き合いなさい」

ソフィー 「ふぇ? ……うわわっ」

(SE ルーナがソフィーを引き寄せる音)

ルーナ 「私たち、2人でデートしてくるから」

ソフィー 「で、デート!?」

アーロン 「珍しいこともあるもんだ」

ルーナ 「別に。ただの気まぐれよ」

ソフィー 「やはは……、ルーナさんの気持ちは嬉しいですけど、私、普通に男の人の方が好きですよ?」

ルーナ 「バカ。そういう意味じゃないっての」

 ソフィー 「うぇえ?」

ルーナ 「ま、そういうわけだから」

ソフィー 「うわわ、ちょっ、引っ張らないでくださいよ!」

(SE ソフィーが引きずられていく音)

アーロン 「行っちまった」

────────────

 アクエリス、メインストリート。

ルーナ 「ほら、アンタ、街を回りたかったんでしょ?」

ソフィー 「え?」

ルーナ 「か、勘違いしないでよ。未成年をひとり夜の街に放り出すわけにもいかないから、私がついていってあげるって言ってるの。別に、アンタを気遣ったわけじゃないんだからね」

ソフィー 「ルーナさん……」

ルーナ 「ふん」

ソフィー 「ツンデレってやつですか?」

ルーナ 「ぶつわよ?」

ソフィー 「あわわ、冗談ですよ、冗談!」

ルーナ 「まったく。……あ、あそこのお店なんかいいんじゃない?」

ソフィー 「ほうほう、ルーナさん、案外センスあるじゃないですか」

ルーナ 「なんで上からなのよ。年下のくせに」

ソフィー 「あら、身分では私、ソフィア・リ・ハルモニアの方が上なのですけれど?」

ルーナ 「元、でしょ! それにその喋り方気色悪い」

ソフィー 「気色悪いってなんですか! 気色悪いって!」

男① 「よう、お姉ちゃんたち、2人だけか?」

ルーナ 「……そうだけど?」

男② 「おいおい、寂しいじゃねえか。俺たちと一緒にイイことしない?」

ルーナ 「……あら、アンタたち、私たちを満足させられるっていうの?」

男① 「そりゃもちろん! 今までのどんな男よりもイイ体験させてやっからさ」

ルーナ 「その言い草、私が男を食い漁るようなビッチに聞こえるのだけど?」

男② 「あい?」

ルーナ 「はあ……」

(SE 鞘に刀を納める音)

ソフィー 「あれ? ルーナさん、いつの間に刀を抜いてたんですか?」

(SE 男たちのズボンが下がる音)

ソフィー 「うわっ! なんでズボンを降ろしてるんですか!?」

男①・② 「うわああ!」

ルーナ 「まったく、アンタたちごときが私たちと釣り合うわけがないでしょう?」

男①・② 「ひ、ひいいいいいいい!! すいませんでしたあああ!!」

(SE 男たちが逃げていく音)

ルーナ 「ふん、身の程を弁えなさい」

ソフィー 「さすがですね、ルーナさん」

ルーナ 「ほら、ごはん食べに行くわよ」

ソフィー 「はい!」



 アクエリス、酒場。

アリア 「アーロン、私はまだまだいけるよ?」

アーロン 「へえ、手、震えてるぞ」

アリア 「ふふ、それは、キミが酩酊状態で目を回しているだけじゃないか?」

レオンハルト 「あはは、その辺にしたらどうです?」

フィリップ 「2人とも、よくそんなに飲めるねー。……あ、あっちの席に美女発見! 行ってくる!」

(SE フィリップが移動する音)

フィリップ 「やあ、可愛いお嬢さん、良かったら、俺様と飲まない? 今ならなんと、あそこに座ってる青年も付いてくるよ?」

美女① 「え、なにこのおっさん」

美女② 「でもぉ、あの人イケメンじゃない?」

アーロン 「なんだ?」

フィリップ 「ね! どうかな?」

美女① 「ふぅん、悪くないじゃん」

美女② 「……いや、やめとこ?」

美女① 「……あ、そうね、やめとこやめとこ」

フィリップ 「うぇっ?」

(SE 美女が去っていく音)

アリア 「……」

(SE どす黒いオーラが出る音)

フィリップ 「ちょちょちょっ!! アリアちゃん!!」

アリア 「なにかな?」

フィリップ 「なにかな? じゃなあい!! せっかく女の子と飲めそうだったのに!」

アリア 「私がいるだろう?」

フィリップ 「だってアリアちゃん、青年とだけ飲んでてつまんないんだもん」

アリア 「そ、そんなことはないっ」

レオンハルト 「それに、あの女の人たち、フィリップさんじゃなくて、アーロンさんを見てましたけどね」

フィリップ 「言うんじゃない! 俺が傷つく」

レオンハルト 「言ってて悲しくないんですか……?」

フィリップ 「悲しい! 俺も飲む!」

アーロン 「案外相性良いのな、レオとおっさん」

アリア 「年上に振り回されるのに慣れてるだけじゃないかい?」

レオンハルト 「あはは、アーロンさんとフィリップさんとではタイプが違いますけどね」

アーロン 「おいおい、そこでなんで俺が出てくるんだよ?」

アリア 「自分の胸に聞いてみることだな」

(SE フィリップが机に突っ伏す音)

フィリップ 「……がー、がー」

アーロン 「潰れたか……。レオ、おっさんを運ぶから手伝ってくれ」

レオンハルト 「あ、はい、わかりました」

(SE 2人が席を立つ音)

アーロン 「ほら、俺らの分の代金は置いとく。アリア、どうせまだ飲み足りないんだろ?」

アリア 「ふむ、ではこの飲み比べは私の勝ちだね」

アーロン 「勝負を預けただけだ。この続きはまたな」

アリア 「ふふ、あいかわらずだね、キミは」

レオンハルト 「……フィリップさん、大丈夫ですか?」

フィリップ 「……う~ん、キミ可愛いねぇ……、うぇっへへ」

アーロン 「寝言が気持ち悪いな……。レオ、そっち持ってくれ」

レオンハルト 「はい」

(SE フィリップを立たせる音)

(SE 店から出る音)



 アクエリス、料理店。

ルーナ 「ほどよく静かでいいわね」

ソフィー 「そうですね。あむ、あむ……。ん-、美味しい」

ルーナ 「……アンタ、よく食うわね」

ソフィー 「ふっふっふ、まだまだいけますよー」

ルーナ 「太るわよ?」

ソフィー 「あー! 禁句ですよ! 禁句!」

ルーナ 「ふふ……。あ、美味しいわね」

ソフィー 「ですよね! あ、お姉さまの料理、1口貰えますか?」

ルーナ 「いいわよ。って、今アンタなんて言った?」

ソフィー 「へ? ……あ」

ルーナ 「アンタ、私のことお姉さまって……。ぷふっ、そうよね、アンタ第2皇女だもんね、妹なのよね」

ソフィー 「むぅ、だって、ルーナさん、お姉さまみたいなんですもん」

ルーナ 「……! アンタ、今朝私と仲良いなんてありえない、みたいなこと言ってなかった?」

ソフィー 「そこまでは言ってないですけど……。それを言うなら、ルーナさんもでしょう?」

ルーナ 「それは……」

ソフィー 「私、嬉しかったです、誘ってくれて」

ルーナ 「……あっそ」

ソフィー 「はい……」

(SE 食器とフォークが鳴る音)が2人の間を支配する

ルーナ 「話したかしら、私、2つ下の妹がいたの。そうね、ちょうどアンタと同い年の」

ソフィー 「へ?」

ルーナ 「似てるのかもね、妹と」

ソフィー 「……私、ルーナさんのこと、誤解してました」

ルーナ 「誤解?」

ソフィー 「ルーナさんって最初は、怖い人だと思ってたんですけど……」

ルーナ 「怖い、ですって?」

ソフィー 「ひぃっ、そういうところですよっ! ……それは置いといて。ルーナさん、案外優しいですよね。私なんかを気にかけて、誘ってくれたりして……」

ルーナ 「アンタ、危なっかしいのよ。見てるこっちがハラハラする」

ソフィー 「危なっかしい? 私のどこが……あむ、あちち」

ルーナ 「落ち着いて食べなさい。はあ、そういうところよ、そういうところ」

ソフィー 「むぅ……」

ルーナ 「アンタ、自分のお姉さんとは仲良かったの?」

ソフィー 「どうなんでしょう。わかりません」

ルーナ 「は? アンタのお姉さん、クーデリア皇女殿下は、同腹の姉妹でしょう?」

ソフィー 「やはは、確かによく可愛がってくれましたし、仲は良かったんだと思います」

ルーナ 「え?」

ソフィー 「……皇位継承は選挙で行われるっていうのは、知ってますよね? じゃあ、その選挙に出馬する条件が決まっていることは決まっていることは知ってますか?」

ルーナ 「……知らないわ」

ソフィー 「皇族の魔法を発現させることが条件となっているんです。お姉さまは、発現させることができませんでした」

ルーナ 「へえ……、皇族なら誰でも魔法を使えるわけじゃないのね」

ソフィー 「はい、でも、私は、それを発現させてしまいました。それからです、今まで優しかったお姉さまが豹変したのは」

ルーナ 「…………」

ソフィー 「皇族って面倒ですよね。魔法が発現しなかっただけで、姉妹の絆が壊れてしまうんですから」

ルーナ 「……別に、皇族じゃなくても、そういうのあるわよ」

ソフィー 「へ?」

ルーナ 「私、姉妹で剣術をやってたんだけど、妹の方が強くて巧かった」

ソフィー 「…………」

ルーナ 「……正直、妹の才能に嫉妬してた。だけど同時に、誇らしくもあったわ。……アンタのお姉さんがどう思ってるかはわからないけどね」

ソフィー 「……。やっぱり、ルーナさんは優しいですよ」

ルーナ 「アンタ、やっぱり嫌いだわ」

ソフィー 「またまた~」



 アクエリス、高台。

アリア 「ふう、少し、飲み過ぎたかな……」

(SE ゆるやかな風が吹く音)

ルーナ 「あら、飲んだくれの魔法使いじゃない。おひとり?」

アリア 「む、キミたちか。フィリップが酔いつぶれてね、アーロンたちが先に宿に連れていったんだ」

ルーナ 「へえ、それでひとりこんなところにいたのね」

アリア 「そういうキミたちこそ、ずいぶん仲が良くなったみたいじゃないか」

ソフィー 「え、そうですかね」

ルーナ 「別に、どうでもいいでしょ」

アリア 「おや、否定しないところを見ると、本当に仲が良くなったようだね」

ルーナ 「そ、そんなんじゃないわよ」

ソフィー 「またそういうこと言う! いいじゃないですか、せっかく仲良くなったんですから」

ルーナ 「はあ……、手のかかる妹が増えたって感じだわ」

アリア・ソフィー 「……!!」

ルーナ 「な、なによ」

アリア 「……キミが、そんなことを言うなんてね」

ソフィー 「ルーナさん! 嬉しいです!」

(SE ソフィーがルーナに抱きつく音)

ルーナ 「ちょっ、ソフィー、離れなさいよ……!」

ソフィー 「イヤですぅ!」

アリア 「ふふ、よかった……」

ルーナ 「アリア、アンタ、そんな顔もできたのね」

アリア 「こほん、私はただ、ともに行動する仲間の仲が良くなってほっとしただけだ。仲が悪いままだと居心地が悪くて仕方ないからね」

ルーナ 「……あっそ」

ソフィー 「やはは、それじゃあ、ここはいっちょ裸の付き合いといきませんか?!」



 アクエリス、宿、温泉。男湯。

アーロン 「ふぅ、まさかあのおっさんが酔いつぶれるなんてな」

レオンハルト 「でも、久しぶりでした。こんな楽しい時間を過ごしたのは」

アーロン 「……よかったな」

レオンハルト 「はい」

アーロン 「……にしても、露天風呂なんてただの外にある風呂だと思ってたけど、なかなかいいもんじゃねえか」

レオンハルト 「そうですねー。ここまでの疲れが一気に吹っ飛びますよね」

アーロン 「ああ、まったくだ。ソフィーじゃねえけど、疲れたのには変わりないからな」

(SE 女湯の方から扉が開く音が聞こえる)

──────────────────

 女湯。

ソフィー 「わあ! 貸し切りです!!」

ルーナ 「ちょっと、走ると転ぶわよ」

アリア 「すっかりお姉さんじゃないか」

ルーナ 「うっさい」

ソフィー 「そうだ、洗いっこしましょうよ! 洗いっこ!」

ルーナ 「しない」

ソフィー 「むむむ、勝った」

ルーナ 「なっ! ど、どこ見て言ってんのよ!!」

ソフィー 「どこっておっぱ……」

ルーナ 「うっさい。言わなくていい。それに、そんなのあったって、戦闘の邪魔になるだけだわ」

ソフィー 「そんなムキにならなくても。小さくても魅力はありますよ」

ルーナ 「うざ」

アリア 「こほん、ほら早く身体を洗って温泉を堪能しようじゃないか」

(SE ぽよん)

ソフィー 「ま、アリアさんには負けちゃうんですけどね」

ルーナ 「…………」

──────────────────

 男湯。

レオンハルト 「…………」

アーロン 「どうした、レオ」

レオンハルト 「女湯、少し賑やかじゃないですか?」

アーロン 「そうだな、ソフィーたちも入ってきたんだろ?」

(SE 扉が開く音)

フィリップ 「ちょっと! おじさんを除け者にするなんてひどいじゃないの!」

アーロン 「おっさん、もう平気なのか?」

フィリップ 「おじさんはね、女の子の匂いがするところに飛んでくるんだ」

レオンハルト 「なんでしょう、凄まじく気持ち悪いことを言ってますよ、このおじさん」

アーロン 「おっさん……」

フィリップ 「こういう温泉でやることと言ったら決まってるでしょ! 青少年たちよ!!」

アーロン 「なんか始まった」

レオンハルト 「あの、普通に温泉に入りたいんですけど……」

フィリップ 「否! 女湯を覗くこと! これに尽きる!!」

アリア 「(女湯から)────水流よ押し流せ、水波陣アクアウェーブ

(SE 水が降りかかる音)

フィリップ 「ぶうぇっ!!」

アーロン 「おいアリア、水をかけるのはいいけど、お湯にできねえのか? こっちにもかかったぞ」

アリア 「(女湯から)すまない、だがこれで、そこのバカも頭が冷えただろう?」

フィリップ 「いやでも、まだ覗いてないよ! ここまでするのはひどくない~?」

ルーナ 「(女湯から)おっさん、覚えておきなさいよ」

フィリップ 「おじさんは小さいのには興味ないから!」

ルーナ 「(女湯から)殺す! 今すぐ殺す!」

ソフィー 「(女湯から)ちょっちょちょちょ! ルーナさん! 落ち着いて! 大きさだけが女の魅力じゃないですって!」

ルーナ 「(女湯から)ふん!」

(SE 殴打音)

ソフィー 「(女湯から)へぶし!!」

レオンハルト 「……なんだかにぎやかですね」

アーロン 「風呂は静かに入りたいんだけどな」

フィリップ 「へっくし! うぅ~、おじさんも湯舟入る」

アーロン 「身体流してから入れよ」

フィリップ 「流したよ! 不本意だけどね!」

アーロン 「あーはいはい」



 アクエリス、宿、女部屋。

アリア 「……まさか、キミたちと同室とはね」

ルーナ 「仕方ないでしょう。それとも、愛しの彼と一緒が良かった?」

アリア 「なっ、バカを言え。第一、私はアーロンのことなんか……」

ソフィー 「アリアさん、誰もアーロンさんなんて言ってないですよー」

ルーナ 「語るに落ちる、とはこのことね」

アリア 「……はあ、私をからかって楽しいかい?」

ルーナ 「ええ、とっても」

ソフィー 「……でも実際、お2人の関係ってどうなんですか?」

アリア 「……さあね。アーロンにとっての私は、上司だ。良くて相棒といったところか」

ルーナ 「あら、その言い方だと、アンタは違うように聞こえるけど?」

アリア 「私は──────────」

──────────────────

 アクエリス、宿、男部屋。

レオンハルト 「すー、すー」

アーロン 「…………ん」

(SE 扉の開閉音)

アーロン 「…………おっさん?」

──────────────────

 アクエリス、宿、女部屋。

(SE 窓が割れる音)

アリア 「!?」

ルーナ 「なに!?」

(SE 扉が破壊される音)

ソフィー 「うぇっ! こっちからも!?」

ルーナ 「……姿を現しなさい!」

(SE 弓を射る音)

ルーナ 「!!」

ソフィー 「な、何が起きてるんですか!?」

アリア 「襲撃か!?」

ルーナ 「…………いえ、去ったみたい」

つづく
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