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Ⅰ 魔法使いのお仕事
第10話 樹上の決戦
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アリア・エインズワース:帝都郊外で店を営んでいる魔女。21歳。
アーロン・ストライフ:ひょんなことから魔法使いの助手兼用心棒をすることになった青年。21歳。
ソフィー:ハルモニア帝国第2皇女だった少女。18歳。
フィリップ・ベルナルド:ヴァンという怪鳥を相棒にしている弓使いのおっさん。32歳。
ルーナ:アルトリウスの命令でアリアたちに同行することになった女性。20歳。
アレキサンダー・ザ・ハルモニア:ハルモニア帝国第1皇子。27歳。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国の皇帝候補第4皇子。18歳。
世界樹、中腹。
フィリップ 「ぜえ、はあ、頂上はまだなのー?」
ルーナ 「うっさいわね、黙って登りなさいよ」
ソフィー あはは……。って、この樹、街の方まで浸食しちゃってますよ!」
アリア 「これほどの規模のものを展開するなんて……。ホムンクルスだけでまかなえるのか?」
アーロン 「シルヴィアたちは大丈夫なのか?」
ルーナ 「……それなら大丈夫よ」
アリア 「どういうことだ?」
ルーナ 「私の少ない知り合いに小隊長をやってるのがいるんだけど、そいつが騎士にしては変わってるやつでね」
ソフィー 「騎士にしては?」
ルーナ 「ええ、騎士のくせに貴族に媚びないハイデルバッハって小隊長が城を出ていくのを見たの。あいつが避難を指揮してるなら大丈夫よ」
アーロン 「ハイデルバッハ……? どっかで聞いたような……?」
フィリップ 「へえ、この国の騎士にまだそんなのがいたんだね」
アリア 「……どうやらおしゃべりの時間は終わりのようだよ」
ルーナ 「頂上が見えてきたわね……」
世界樹、頂上。
ソフィー 「お兄様!」
アレキサンダー 「ん? お前たちが来たってことは、パーシーはやられたか」
ソフィー 「お兄様、どうしてこんなことを……!」
アレキサンダー 「だから、帝国をぶっ壊したいんだよ。この腐った帝国を!」
アーロン 「この国が腐ってんのは違わねえけど、あんたも大概腐ってんな」
アレキサンダー 「おーおー言ってくれるねえ、アーロン・ストライフ」
アーロン 「名前を覚えていただいて光栄だな」
アリア 「アレキサンダー、キミはなぜ帝国を恨んでいるんだ?」
アレキサンダー 「恨んでる? 違うな、俺はこの帝国の未来を見ている」
フィリップ 「未来? この様子だと未来なんてないように見えるけど?」
アレキサンダー 「未来はある。だが今はそのために、帝国を壊す必要がある」
ルーナ 「繁栄は破壊の先にあるって? 馬鹿馬鹿しい。その御大層な理想のためにどれだけの人が犠牲になると思ってんのよ」
アレキサンダー 「だから? 俺には関係ねえよ。あいつが皇帝になるよりかはいいだろ」
ソフィー 「あいつ?」
アレキサンダー 「アルトリウスだよ。あいつにだけはこの帝国は任せられねえ」
アーロン 「どの口が言ってんだ」
(SE 剣を抜く音)
アレキサンダー 「まあ、ここに来たってことは、やるしかねえよな」
(SE アレキサンダーが高速で移動する音)
アーロン 「なっ!」
(SE アーロンを吹き飛ばす音)
アリア・ソフィー 「アーロン(さん)!!」
ルーナ 「速い……!」
フィリップ 「くっそ! ヴァン!」
(SE 指笛)
ヴァン 「キイイイッ!!」
(SE フィリップがヴァンに飛び乗る音)
アレキサンダー 「おいおい、情けねえな」
ルーナ 「────斬月」
(SE 刀を振る音)
アレキサンダー 「終わりか?」
ルーナ 「そんな、死角からの攻撃を……?」
アレキサンダー 「じゃあ、こっちからも行くぜ」
(SE ルーナが殴られる音)
ルーナ 「……ッ! ぁはっ!!」
ソフィー 「ルーナさん!!」
(SE 銃声)
アレキサンダー 「おーこわ。実の兄に銃向けんなって」
アリア 「……氷の槍よ」
(SE 氷の槍が射出される音)
アレキサンダー 「……無駄だって」
アリア 「やはり、避けられるか」
アレキサンダー 「はあ、敵じゃなかったら、好みだったんだけどな」
(SE 高速で移動する音)
アリア 「風よ、切り裂け」
(SE 風が巻き上がる音)
アレキサンダー 「ちっ、硬化」
(SE 風の刃が弾かれる音)
アレキサンダー 「ちょっとはわかってきたみてえだけど、ここまでだ」
アリア 「くっ……!」
(SE 剣がぶつかる音)
アーロン 「うちの店主に何すんだよ……!」
アリア 「アーロン……!」
アーロン 「悪いな、不覚をとった」
フィリップ 「ふう、ひやっとしたんだからね!」
アーロン 「さんきゅ、おっさん」
アリア 「……アーロン、アレキサンダーは恐らく未来を読む眼を持っている。気をつけろ」
アレキサンダー 「まあ、見破られるよな。そう、俺の眼は未来を見通す。お前らの攻撃は俺には通らねえよ」
アーロン 「なるほど。それでルーナが倒れてるのか」
ルーナ 「う、うっさいわね……」
アーロン 「じゃあ、どうして俺は不意を撃てたんだろうな?」
アレキサンダー 「知らねえよ」
アーロン 「けっ、皇族のくせにずいぶんと武闘派じゃねえか!」
(SE 剣がぶつかる音)
アレキサンダー 「……っ!」
アーロン 「ほらどうした、未来を見通せよ」
(SE 剣がぶつかる音)
アレキサンダー 「くっ! なぜお前の未来が見えないんだ!?」
アーロン 「やっぱりな」
アリア 「……本当に、どういうことなんだ?」
アレキサンダー 「だから潰しとけっつったのによ」
アーロン 「これで終わりだ!」
アレキサンダー 「くそ!」
(SE 剣を振る音)
アレキサンダー 「ぐあああっ!!」
アーロン 「この程度かよ」
アリア 「皇族が使える特殊な魔法、未来視か。厄介な敵だった」
アレキサンダー 「……なんてな」
(SE アレキサンダーが変身する音)
フィリップ 「うげえっ、なにこれ!」
アリア 「竜……? これが、もうひとつの魔法……」
アレキサンダー 「あまりこの姿は好きじゃないんだけどな」
(SE 前脚を振り下ろす音)
アーロン 「ちっ!」
アリア 「絶対零度の檻にて眠れ、氷の牢獄」
(SE 氷魔法が発動する音)
アレキサンダー 「だから、お前らの攻撃は通らねえんだよ」
アリア 「未来視は健在か……」
ルーナ 「……じゃあ、これはどうかしら?」
ルーナ 「────叢雲」
(SE あたりに霧が立ち込める音)
アレキサンダー 「霧……? おっとあぶねえ」
(SE 刀を振る音)
ルーナ 「避けられたか……ッ」
アリア 「いいや、それでいい───散れ、氷塵」
(SE 氷が砕ける音)
ソフィー 「決まった!」
フィリップ 「いいや、まだみたいよ」
アレキサンダー 「なるほど、未来を見ても避けられないほどの範囲で攻撃を仕掛けてきたか。考えたじゃねえか。さすがは天才錬金術師だな」
ソフィー 「全然効いてない!?」
アリア 「これが竜化……」
ルーナ 「どうすんのよ、これ」
アーロン 「おいおい、誰か忘れてねえか?」
(SE 翼を斬り落とす音)
アレキサンダー 「ぐあああっ!」
アーロン 「俺の未来は見えねえんだから、目を離すんじゃねえよ」
ソフィー 「やった、翼を斬っちゃいましたよ!」
アレキサンダー 「翼くらい、くれてやるよ」
フィリップ 「おい、なにか来るぞ!」
アリア 「ソフィー、距離を取るんだ!」
ソフィー 「はい! ルーナさん、こっちです!」
アレキサンダー 「遅い!」
アーロン 「狙いが、俺じゃない……?」
アレキサンダー 「お前はあとだ!」
アレキサンダー 「───焼き尽くせ、竜の獄炎!」
(SE 火炎ブレスの音)
アリア 「水の障壁よ……」
(SE 水が湧き上がる音)
アーロン 「…………ッ!」
(SE 黒いオーラが出る音)
(SE 火炎が相殺される音)
アリア 「……! アーロン?」
フィリップ 「おい、なんだいありゃ!?」
ソフィー 「あれが、アーロンさん……?」
ルーナ 「……」
アーロン 「これで、終わりだ……!」
アレキサンダー 「なんだよ、それ……。なんなんだよ!! その力が未来視を阻んでいたってのか!?」
(SE 黒いオーラを纏った剣を振る音)
アレキサンダー 「……ぐああああっ!!」
(SE 竜化が解ける音)
(SE アレキサンダーが倒れる音)
アーロン 「……! ぐふ……」
(SE アーロンが倒れる音)
アリア 「アーロン!!」
(SE アリアがアーロンに駆け寄る音)
アリア 「大丈夫か!?」
アーロン 「…………」
アリア 「……よかった、眠っているだけだ」
(SE 世界樹が軋む音)
フィリップ 「おーい、なんか崩れそうだよ!」
ソフィー 「わわわ!」
アリア 「アーロン……!」
(SE 世界樹が消滅していく音)
ルーナ 「……ッ、このままじゃ、全員地面に叩きつけられるわよ!」
ソフィー 「うわっ、アリアさん!」
アリア 「任せろ。風よ……」
(SE 風が巻き上がる音)
アリア 「しまった、ルーナは?!」
ルーナ 「ちょっと、旦那にばっか気を割いてるんじゃないわよ!」
アリア 「こ、こちらも必死なんだよ!」
フィリップ 「ルーナちゃん、捕まれ!」
ルーナ 「おっさん、遅い!」
フィリップ 「うーん、辛辣!」
◇
城内。
ソフィー 「ふう、やっと戻ってきましたねー」
アリア 「まあ、ずいぶんと風通しが良くなったみたいだけどね」
フィリップ 「いやあ、疲れた疲れた!」
ルーナ 「おっさん、途中から空から見てるだけだったわよね?」
フィリップ 「それは、なんかつけ入るスキがなくて……」
ソフィー 「うわー、おっさんっぽい言い訳ー」
フィリップ 「ソフィーちゃんまで!?」
アリア 「おい、寝ているやつがいるんだ、少し静かにしてくれないか?」
フィリップ 「おっと、そいつは失礼」
ルーナ 「……錬金術師、あれは、なんだったの?」
アリア 「あれ?」
ルーナ 「あの黒いオーラのことよ」
フィリップ 「たしかに、鬼気迫るっていうより、もっと凄かったよね」
ルーナ 「そう、あれはまるで、死神のようだったわ」
ソフィー 「アリアさんなら、なにかわかるんじゃないですか?」
アリア 「思い当たる節がないわけじゃないが……、と話は一旦中断のようだね」
ルーナ 「……!」
(SE 足音)
アルトリウス 「皆さん、ご苦労様です」
ルーナ 「アルトリウス殿下、ただいま帰還致しました」
アルトリウス 「どうやら、調査依頼は十二分に達成されたようですね」
アリア 「ああ。だけど……」
ルーナ 「元凶は、ウィリアム・パーシーとアレキサンダー殿下でした」
アルトリウス 「そうでしたか。ということは、愚兄はもう……?」
ルーナ 「はい……」
アルトリウス 「……まあ、皆さんが無事に帰ってきてくれたのでしたら、なにも問題はありませんね」
アリア 「まあ、ひとり眠っているけどね」
アルトリウス 「ところで、ボクの見間違いでなければ、そちらの女性はソフィアじゃありませんか?」
ソフィー 「……はい、お久しぶりです、アーサー」
アルトリウス 「やっぱり、ソフィアでしたか。ということは、あの会場にいたソフィアは偽物?」
ソフィー 「そうです。……けど、城には戻らない方がいいですよね」
アルトリウス 「そうですね、ややこしくなりそうですからね」
ソフィー 「というわけで、今後もしばらくお邪魔しますね、アリアさん!」
アリア 「はあ、仕方ない」
アルトリウス 「そういえば、ルーナさん、アリアさんたちと仲が良くなりましたね」
ルーナ 「そ、そういうわけで……」
アルトリウス 「いや、よかったですよ。これからもルーナさんには、アリアさんたちのお手伝いをしてもらいたいんです」
ルーナ 「め、命令とあれば、仕方ないですね」
フィリップ 「およ、ルーナちゃん素直じゃない」
ルーナ 「うっさい」
アルトリウス 「おや、ルーナさん?」
ルーナ 「こほん、なんでもありません」
アリア 「アルトリウス、これからも、と言っていたけど、今後は何をすればいいんだ?」
アルトリウス 「そうですね、選挙まではまだ時間があります。これまでと変わらず、人々の依頼をこなしていってください」
ルーナ 「討伐依頼ならば、私も同行しますので声をかけてください」
ソフィー 「……なんか、ルーナさんのその口調、調子狂いますね」
ルーナ 「うっさいわね」
ソフィー 「やっぱりそれがしっくりきますね」
ルーナ 「はあ……」
フィリップ 「そうそう、ルーナちゃんはもっとおじさんを罵倒してくれなきゃ」
ルーナ 「あーもう、気持ち悪いわね!!」
つづく
アーロン・ストライフ:ひょんなことから魔法使いの助手兼用心棒をすることになった青年。21歳。
ソフィー:ハルモニア帝国第2皇女だった少女。18歳。
フィリップ・ベルナルド:ヴァンという怪鳥を相棒にしている弓使いのおっさん。32歳。
ルーナ:アルトリウスの命令でアリアたちに同行することになった女性。20歳。
アレキサンダー・ザ・ハルモニア:ハルモニア帝国第1皇子。27歳。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国の皇帝候補第4皇子。18歳。
世界樹、中腹。
フィリップ 「ぜえ、はあ、頂上はまだなのー?」
ルーナ 「うっさいわね、黙って登りなさいよ」
ソフィー あはは……。って、この樹、街の方まで浸食しちゃってますよ!」
アリア 「これほどの規模のものを展開するなんて……。ホムンクルスだけでまかなえるのか?」
アーロン 「シルヴィアたちは大丈夫なのか?」
ルーナ 「……それなら大丈夫よ」
アリア 「どういうことだ?」
ルーナ 「私の少ない知り合いに小隊長をやってるのがいるんだけど、そいつが騎士にしては変わってるやつでね」
ソフィー 「騎士にしては?」
ルーナ 「ええ、騎士のくせに貴族に媚びないハイデルバッハって小隊長が城を出ていくのを見たの。あいつが避難を指揮してるなら大丈夫よ」
アーロン 「ハイデルバッハ……? どっかで聞いたような……?」
フィリップ 「へえ、この国の騎士にまだそんなのがいたんだね」
アリア 「……どうやらおしゃべりの時間は終わりのようだよ」
ルーナ 「頂上が見えてきたわね……」
世界樹、頂上。
ソフィー 「お兄様!」
アレキサンダー 「ん? お前たちが来たってことは、パーシーはやられたか」
ソフィー 「お兄様、どうしてこんなことを……!」
アレキサンダー 「だから、帝国をぶっ壊したいんだよ。この腐った帝国を!」
アーロン 「この国が腐ってんのは違わねえけど、あんたも大概腐ってんな」
アレキサンダー 「おーおー言ってくれるねえ、アーロン・ストライフ」
アーロン 「名前を覚えていただいて光栄だな」
アリア 「アレキサンダー、キミはなぜ帝国を恨んでいるんだ?」
アレキサンダー 「恨んでる? 違うな、俺はこの帝国の未来を見ている」
フィリップ 「未来? この様子だと未来なんてないように見えるけど?」
アレキサンダー 「未来はある。だが今はそのために、帝国を壊す必要がある」
ルーナ 「繁栄は破壊の先にあるって? 馬鹿馬鹿しい。その御大層な理想のためにどれだけの人が犠牲になると思ってんのよ」
アレキサンダー 「だから? 俺には関係ねえよ。あいつが皇帝になるよりかはいいだろ」
ソフィー 「あいつ?」
アレキサンダー 「アルトリウスだよ。あいつにだけはこの帝国は任せられねえ」
アーロン 「どの口が言ってんだ」
(SE 剣を抜く音)
アレキサンダー 「まあ、ここに来たってことは、やるしかねえよな」
(SE アレキサンダーが高速で移動する音)
アーロン 「なっ!」
(SE アーロンを吹き飛ばす音)
アリア・ソフィー 「アーロン(さん)!!」
ルーナ 「速い……!」
フィリップ 「くっそ! ヴァン!」
(SE 指笛)
ヴァン 「キイイイッ!!」
(SE フィリップがヴァンに飛び乗る音)
アレキサンダー 「おいおい、情けねえな」
ルーナ 「────斬月」
(SE 刀を振る音)
アレキサンダー 「終わりか?」
ルーナ 「そんな、死角からの攻撃を……?」
アレキサンダー 「じゃあ、こっちからも行くぜ」
(SE ルーナが殴られる音)
ルーナ 「……ッ! ぁはっ!!」
ソフィー 「ルーナさん!!」
(SE 銃声)
アレキサンダー 「おーこわ。実の兄に銃向けんなって」
アリア 「……氷の槍よ」
(SE 氷の槍が射出される音)
アレキサンダー 「……無駄だって」
アリア 「やはり、避けられるか」
アレキサンダー 「はあ、敵じゃなかったら、好みだったんだけどな」
(SE 高速で移動する音)
アリア 「風よ、切り裂け」
(SE 風が巻き上がる音)
アレキサンダー 「ちっ、硬化」
(SE 風の刃が弾かれる音)
アレキサンダー 「ちょっとはわかってきたみてえだけど、ここまでだ」
アリア 「くっ……!」
(SE 剣がぶつかる音)
アーロン 「うちの店主に何すんだよ……!」
アリア 「アーロン……!」
アーロン 「悪いな、不覚をとった」
フィリップ 「ふう、ひやっとしたんだからね!」
アーロン 「さんきゅ、おっさん」
アリア 「……アーロン、アレキサンダーは恐らく未来を読む眼を持っている。気をつけろ」
アレキサンダー 「まあ、見破られるよな。そう、俺の眼は未来を見通す。お前らの攻撃は俺には通らねえよ」
アーロン 「なるほど。それでルーナが倒れてるのか」
ルーナ 「う、うっさいわね……」
アーロン 「じゃあ、どうして俺は不意を撃てたんだろうな?」
アレキサンダー 「知らねえよ」
アーロン 「けっ、皇族のくせにずいぶんと武闘派じゃねえか!」
(SE 剣がぶつかる音)
アレキサンダー 「……っ!」
アーロン 「ほらどうした、未来を見通せよ」
(SE 剣がぶつかる音)
アレキサンダー 「くっ! なぜお前の未来が見えないんだ!?」
アーロン 「やっぱりな」
アリア 「……本当に、どういうことなんだ?」
アレキサンダー 「だから潰しとけっつったのによ」
アーロン 「これで終わりだ!」
アレキサンダー 「くそ!」
(SE 剣を振る音)
アレキサンダー 「ぐあああっ!!」
アーロン 「この程度かよ」
アリア 「皇族が使える特殊な魔法、未来視か。厄介な敵だった」
アレキサンダー 「……なんてな」
(SE アレキサンダーが変身する音)
フィリップ 「うげえっ、なにこれ!」
アリア 「竜……? これが、もうひとつの魔法……」
アレキサンダー 「あまりこの姿は好きじゃないんだけどな」
(SE 前脚を振り下ろす音)
アーロン 「ちっ!」
アリア 「絶対零度の檻にて眠れ、氷の牢獄」
(SE 氷魔法が発動する音)
アレキサンダー 「だから、お前らの攻撃は通らねえんだよ」
アリア 「未来視は健在か……」
ルーナ 「……じゃあ、これはどうかしら?」
ルーナ 「────叢雲」
(SE あたりに霧が立ち込める音)
アレキサンダー 「霧……? おっとあぶねえ」
(SE 刀を振る音)
ルーナ 「避けられたか……ッ」
アリア 「いいや、それでいい───散れ、氷塵」
(SE 氷が砕ける音)
ソフィー 「決まった!」
フィリップ 「いいや、まだみたいよ」
アレキサンダー 「なるほど、未来を見ても避けられないほどの範囲で攻撃を仕掛けてきたか。考えたじゃねえか。さすがは天才錬金術師だな」
ソフィー 「全然効いてない!?」
アリア 「これが竜化……」
ルーナ 「どうすんのよ、これ」
アーロン 「おいおい、誰か忘れてねえか?」
(SE 翼を斬り落とす音)
アレキサンダー 「ぐあああっ!」
アーロン 「俺の未来は見えねえんだから、目を離すんじゃねえよ」
ソフィー 「やった、翼を斬っちゃいましたよ!」
アレキサンダー 「翼くらい、くれてやるよ」
フィリップ 「おい、なにか来るぞ!」
アリア 「ソフィー、距離を取るんだ!」
ソフィー 「はい! ルーナさん、こっちです!」
アレキサンダー 「遅い!」
アーロン 「狙いが、俺じゃない……?」
アレキサンダー 「お前はあとだ!」
アレキサンダー 「───焼き尽くせ、竜の獄炎!」
(SE 火炎ブレスの音)
アリア 「水の障壁よ……」
(SE 水が湧き上がる音)
アーロン 「…………ッ!」
(SE 黒いオーラが出る音)
(SE 火炎が相殺される音)
アリア 「……! アーロン?」
フィリップ 「おい、なんだいありゃ!?」
ソフィー 「あれが、アーロンさん……?」
ルーナ 「……」
アーロン 「これで、終わりだ……!」
アレキサンダー 「なんだよ、それ……。なんなんだよ!! その力が未来視を阻んでいたってのか!?」
(SE 黒いオーラを纏った剣を振る音)
アレキサンダー 「……ぐああああっ!!」
(SE 竜化が解ける音)
(SE アレキサンダーが倒れる音)
アーロン 「……! ぐふ……」
(SE アーロンが倒れる音)
アリア 「アーロン!!」
(SE アリアがアーロンに駆け寄る音)
アリア 「大丈夫か!?」
アーロン 「…………」
アリア 「……よかった、眠っているだけだ」
(SE 世界樹が軋む音)
フィリップ 「おーい、なんか崩れそうだよ!」
ソフィー 「わわわ!」
アリア 「アーロン……!」
(SE 世界樹が消滅していく音)
ルーナ 「……ッ、このままじゃ、全員地面に叩きつけられるわよ!」
ソフィー 「うわっ、アリアさん!」
アリア 「任せろ。風よ……」
(SE 風が巻き上がる音)
アリア 「しまった、ルーナは?!」
ルーナ 「ちょっと、旦那にばっか気を割いてるんじゃないわよ!」
アリア 「こ、こちらも必死なんだよ!」
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ルーナ 「おっさん、遅い!」
フィリップ 「うーん、辛辣!」
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城内。
ソフィー 「ふう、やっと戻ってきましたねー」
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アリア 「おい、寝ているやつがいるんだ、少し静かにしてくれないか?」
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アリア 「あれ?」
ルーナ 「あの黒いオーラのことよ」
フィリップ 「たしかに、鬼気迫るっていうより、もっと凄かったよね」
ルーナ 「そう、あれはまるで、死神のようだったわ」
ソフィー 「アリアさんなら、なにかわかるんじゃないですか?」
アリア 「思い当たる節がないわけじゃないが……、と話は一旦中断のようだね」
ルーナ 「……!」
(SE 足音)
アルトリウス 「皆さん、ご苦労様です」
ルーナ 「アルトリウス殿下、ただいま帰還致しました」
アルトリウス 「どうやら、調査依頼は十二分に達成されたようですね」
アリア 「ああ。だけど……」
ルーナ 「元凶は、ウィリアム・パーシーとアレキサンダー殿下でした」
アルトリウス 「そうでしたか。ということは、愚兄はもう……?」
ルーナ 「はい……」
アルトリウス 「……まあ、皆さんが無事に帰ってきてくれたのでしたら、なにも問題はありませんね」
アリア 「まあ、ひとり眠っているけどね」
アルトリウス 「ところで、ボクの見間違いでなければ、そちらの女性はソフィアじゃありませんか?」
ソフィー 「……はい、お久しぶりです、アーサー」
アルトリウス 「やっぱり、ソフィアでしたか。ということは、あの会場にいたソフィアは偽物?」
ソフィー 「そうです。……けど、城には戻らない方がいいですよね」
アルトリウス 「そうですね、ややこしくなりそうですからね」
ソフィー 「というわけで、今後もしばらくお邪魔しますね、アリアさん!」
アリア 「はあ、仕方ない」
アルトリウス 「そういえば、ルーナさん、アリアさんたちと仲が良くなりましたね」
ルーナ 「そ、そういうわけで……」
アルトリウス 「いや、よかったですよ。これからもルーナさんには、アリアさんたちのお手伝いをしてもらいたいんです」
ルーナ 「め、命令とあれば、仕方ないですね」
フィリップ 「およ、ルーナちゃん素直じゃない」
ルーナ 「うっさい」
アルトリウス 「おや、ルーナさん?」
ルーナ 「こほん、なんでもありません」
アリア 「アルトリウス、これからも、と言っていたけど、今後は何をすればいいんだ?」
アルトリウス 「そうですね、選挙まではまだ時間があります。これまでと変わらず、人々の依頼をこなしていってください」
ルーナ 「討伐依頼ならば、私も同行しますので声をかけてください」
ソフィー 「……なんか、ルーナさんのその口調、調子狂いますね」
ルーナ 「うっさいわね」
ソフィー 「やっぱりそれがしっくりきますね」
ルーナ 「はあ……」
フィリップ 「そうそう、ルーナちゃんはもっとおじさんを罵倒してくれなきゃ」
ルーナ 「あーもう、気持ち悪いわね!!」
つづく
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