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1. フェイク写真と婚約破棄

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「一体全体、これはどういうことだ!」

目の前で怒鳴りつけるトニーの剣幕に、私は頭が真っ白になりました。
先ほど彼が叩きつけたのは、私と男性が手を繋いで歩いている写真です。でも、私には全く身に覚えがないのです。

「俺という婚約者がいるのに浮気とは、いい度胸してるじゃないか。ソフィア、お前との婚約は破棄だ!二度と顔も見たくない!」
「待って、待ってください!私は、こんな男、知りません!どうしてこんな写真が......」

私は必死になって言います。
別にトニーのことなんて好きでもなんでもないのですが、この婚約がこんな理由で破談になるのは困るのです。
この婚約は、私の両親がいつまでも結婚しない私に愛想を尽かし、豪商であるトニーの親と結託して強引に取り仕切ったもの。私が浮気したせいで婚約破棄した、なんてことをトニーに吹き込まれたら、私は帰る家をなくしてしまいます。

「うるさい、さっさと出てけ!」

トニーは私の頬を殴りつけました。
床に倒れた私は、よろよろと立ち上がると、写真を手に取ります。
本当に、どうしてこんな写真が。私は些細なことですぐ暴力を振るうトニーを怒らせないように、男性関係には特に慎重でした。

「......えっ?」

私は、写真に僅かな違和感を抱きます。
確かに、一見すると写真の中には私が映っているように見えます。ですが......。

私は確信しました。
この写真は、フェイクです。

問題は、これはトニーが仕組んだことなのか、それともトニーは騙されただけなのか、です。
私はそれを確かめるため、彼にある質問をしました。

「私には、本当に身に覚えがありません。この写真に映っているのは、きっと私に、とてもよく似た女性です。誰か、心当たりはありませんか?」

この質問に、彼は非常に狼狽しました。
そんな奴いるわけないだろ、とか、くだらない言い逃れはやめろ、とか、色々言ってはいましたが、どうでもいい。
彼の態度が、この婚約破棄が彼によって仕組まれたものだということを示していました。

こんな屈辱、許していいはずがありません。
必ず彼には、いや、二人には、正義の鉄槌を下してやりましょう。

私はそう決心すると、まだ痛む頬をさすりながら、彼を睨みつけ、その場を去りました。
















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