3 / 4
第三話
しおりを挟む「おかしいな、とは思ってたんだよ。いくら幼馴染だからって、毎日高そうなプレゼント持って家に来たりはしないよな、普通」
ひとしきり笑った後、リリーさんは話し出しました。
「でも、ほら、あいつの家でけえじゃんか。だから、まぁ、私たち一般市民の常識とは感覚が違うのかなぁ、なんて納得してたんだが」
「えっと......あの、どこから」
どこから、ライオット様の勘違いなのか。
そう言いたくてどもってしまったのですが、リリーさんは質問の意図をくみ取って、答えてくれました。
「私が病気ってのは、ほんと。今も治ってないし、あいつも私も小さかった頃は、確かに家の中に缶詰め状態だった。あの時はつらかったよ」
リリーさんはにこやかな顔で続けます。
「でも、ちょうどライオットが勉強で忙しくなった頃かな。私の身体も成長してきて、今までとは別の、もっと新しい治療を受けられるようになったんだ。それから一年もしないうちに、普通の人とほぼ同じくらいには外に出られるようになったよ」
「あ......そうなんですね」
「そのころに出会ったのが、さっきまで一緒にいたあいつ......パンサーだ。愛想悪くてごめんな、夜になるとライオットが来るもんだから、あいつフラストレーション溜まってるんだよ」
私には、彼の気持ちが痛いほどよくわかりました。
自分の恋人が毎晩ほかの女のところに行くのと、自分の恋人のところに毎晩ほかの男が来るつらさは、おそらく同じくらいでしょう。
知らず知らず恨みがましい顔になっていたようで、リリーさんがたじろぎました。
「い、いや、私はパンサーのこともちゃんと話してるし、いい加減会う頻度を減らそうって提案もずっとしてるんだぜ?......あいつが私に気があるってことも、なんとなく気づいてるから。お前は仲のいい幼馴染で、恋愛対象としては見られないって、しつこいほど念入りに言ってるつもりなんだが.......」
あの人には、自分の都合のいいことしか聞こえませんから......。リリーさんも大変なお友達に苦労されているようで、どうも責める気にはなれませんでした。
「......っていうか、あんたライオットの婚約者なんだよな。頼むよ、あんたからもあいつの誤解、解いてやってくれよ」
「あー、いや.......」
そうして差し上げたいのはやまやまですが、ちょっとそれは難しいですかね。
理由を説明するために、今私が置かれている状況をかいつまんで話すと、流石にリリーさんの笑顔が引っ込みました。
「じゃあ、私のせいで、ユリアさんは」
「いや、そういうわけじゃ」
「そうだよ。私がもっと、しっかりしなきゃいけなかったんだ」
リリーさんは二、三度小さくうなずくと、何かを決意した表情で言いました。
「あんたにこんなこと言っちゃいけないかもしれないけど......私、今度パンサーと結婚するんだ。だからその前に、ちゃんとあいつに、けりをつけないといけない」
11
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されました。あとは知りません
天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。
皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。
聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。
「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」
その時…
----------------------
初めての婚約破棄ざまぁものです。
---------------------------
お気に入り登録200突破ありがとうございます。
-------------------------------
【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
四季
恋愛
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。
どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
わがままな妹に『豚男爵』との結婚を押し付けられましたが、実際はとんでもないイケメンでした。
水垣するめ
恋愛
主人公イザベルは義理の妹と母に虐められて育ってきた。
そんな中、わがまま妹フェリシーに『豚男爵』と呼ばれている男爵との婚約を押し付けられる。
逆らうことが出来ないので向かったが、イザベルを迎えたのは『豚男爵』とは似ても似つかない超絶イケメンだった。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?
当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。
ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。
対して領民の娘イルアは、本気だった。
もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。
けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。
誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。
弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
モラハラ婚約者を社会的に殺してみた笑
しあ
恋愛
外面はいいけど2人きりになるとモラハラ発言が止まらない婚約者に我慢の限界です。
今まで受けた屈辱を何倍にもして返して差し上げます。
貴方の誕生日パーティに特別なプレゼントを用意致しましたので、どうぞ受け取ってください。
ふふ、真っ青になる顔が面白くてたまりません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる